転生したら竜だった件   作:暁悠

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第二十二話 うつくしきしゅうえん

 一体何が──それが、ナーガの偽らざる本音だ。

 早々に生体神格化(アポテオーシス)を使ったヴェルアーブと、巨人のような容貌になったディゴルネが、グリイドに特攻していったところまでは見えた。

 しばらく激戦を繰り広げていたところ、ディゴルネが帰ってきた。

「ディゴルネ? ヴェルアーブ様は……?」

『……』

「ねえ、ディゴルネ?」

 筆舌に尽くし難い不安に襲われて、何度も何度もディゴルネに問う。

『アヤツは……戦っておる。戦って、おるんじゃよ』

 そこで察する。

(ああ……ディゴルネも、そう言うしかないんだ……)

 それと同時に、思い知る。自分達は、いつまでもヴェルアーブに全てを託す他ないのだと。

 そして、ついに天空浮遊城(ヘブンホールド)付近で、両雄は戦い始めていた。

 そこで、ディゴルネが思案する。

(どういう事じゃ? まず、ヴェルアーブが押されている。故に、グリイドの進行方向に追い詰められるのは当然。つまり、グリイドはここを狙っている──? いや、そんな筈は……そんな事は()()()に一度もなかった。(わらわ)への復讐か? いや、グリイドにそんな感情があるはずがあるまい。それじゃあ何が──そうか、そうか! 失念しておった!!)

 グリイドは、衝動的に生命を無に帰す存在だ。故に、より生命力が強い順に狙う。それは意図してではなく、ある種の本能によるものだった。

 そして、前回の世界との差異だが──

(前回では、ヴェルアーブは幻獣達に〝名付け〟など施しておらんかった! そうか、それで、世界有数の生命力溢れる個体が密集するここを狙っているというわけか!! ならばマズイな……)

 狙われているのが自分達とあっては、グリイドの事を完全に読み間違えており、不利である。

 そして、ある光景が繰り広げられ、ナーガが内心で悲鳴を上げる。

(──ああっ!!)

 ヴェルアーブが、グリイドに吸い込まれた。

「ヴェルアーブ様、ヴェルアーブ様ッ!」

「待って、ナーガ」

「止めないで、止めないでレイヴン! だって、だって、ヴェルアーブ様、ヴェルアーブ様がっ!!」

「わかってる。私だってわかっているわよ。でも止まりなさい。ナーガが行ったところで無駄死にするだけよ」

 レイヴンは冷酷に告げる。しかしその口調には、僅かながらに悔しさと無力感が混ざり込んでいた。常人なら気づけない程に小さな感情の機微だが、ナーガはレイヴンと付き合いが長かった。だからこそ察して、怒りを、悲しみを、悔しさを、噛み殺して冷静になる事が出来るのである。

「……」

「良く止まってくれたわ。私達よりも強いだろうから、あのグリイドの対処はキイラ、ファードヴェル、リルイン、ルイン、ネズ、ティターンに任せます。私とナーガ、ディゴルネは作戦会議です。作戦なしで突っ込むなんて無謀ですからね」

 こういう時のレイヴンは頼りになった。その冷静さと共に兼ね備えた指揮スキルを遺憾無く発揮し、テキパキと指示を出す。

 こうして話し合っている間にも──

『お出ましじゃ。全員、構えろ!!』

 グリイドが天空浮遊城(ヘブンホールド)に迫っていた。

 しかし。

『しかし、少しは安心するがいい。この天空浮遊城(ヘブンホールド)を覆う結界は、主や主に認められた者以外の侵入を極端に拒む。いくら破局(グリイド)といえども、この結界は容易には壊せん』

 これは、前回までの世界で立証してきた事だ。全ての世界で最終的に、ヴェルアーブ達は滅んでいて、しかも遅かれ早かれ世界が『破局』していた。それは、今とほぼ同時期の時もあれば、それより遥か未来の時もあった。

 しかしどの世界でも、グリイドは天空浮遊城(ヘブンホールド)の結界を破壊するのに十時間は費やしていた。

 なので、そこまで簡単に壊れるわけがない──そう踏んでいたのである。

 しかし、だ。

『──何じゃと!?』

 グリイドは、さも当たり前かのように、結界をスルリと抜けて侵入してきた。

 そう。差異が一つだけなわけはない。今回は、ヴェルアーブがグリイドに吸収されていた。その状況的に、二人は同一個体とも呼べる状態に至っており、グリイド=ヴェルアーブでありヴェルアーブ=グリイドという式が、一時的とはいえ成り立っているのだ。

『そうか、ヴェルアーブを取り込んだからじゃ! 全員、備えろ!!』

 ディゴルネは、グリイドが動き出すよりも早く指示を出した。しかし、グリイドの様子がおかしい。全身が赤、青、緑、黄、萌黄、白、黒の、七色の順に、何度も何度も明滅しているのだ。元々不可思議な挙動だった動きは尚も不可解さを増して、何か障害があるわけでもないのにクネクネとねじれ動いている。

(なんじゃ? 一体何が──)

 しばらくすると──

「──えっ!?」

『クソ、何が起こっておるのじゃ!!』

 グリイドは、そのまま七色に止めどなく明滅しながら、全身が崩壊するように粉々に砕け散った。

 絶え間なく変化する戦場。グリイドが砕け散り、爆炎が立った。煙が晴れると──

「──ああッ!!」

 ナーガが絶叫する。その目線の先には──地面に深々と突き刺さる、天空色(ゼニスブルー)の聖剣、天頂の聖剣(チャンピオンソード)があった。

 

 ナーガはレイヴンが制止するより先に動き出し、天頂の聖剣(チャンピオンソード)に駆け寄った。その聖剣を抜こうとするが、全く抜けない。ビクともしない。

「どうして、どうして──」

「……ナーガ」

 レイヴンが、ナーガの肩に手を置いた。悔しさが滲む表情(かお)だ。しかしそれでも冷酷に、今はそんな事を言っている場合ではないと、その瞳が雄弁に語っている。

「……」

 無言で、その剣を見つめる。

「……」

 一体どんな想いで、あんな巨悪に立ち向かったのだろう。どうして死んでしまったのか。

「…………」

 考えても答えは出ない。遥かなる家路から送られてきた、懐かしき記憶──走馬灯が彼女の脳内を駆け巡る。

 同時に、涙も。

「…………うっ……」

 ひとつ、ぽつりと、嗚咽を漏らした。

「……うっうう……」

 それは少しずつ大きくなっていく。

 どれだけ堪えようとしても漏れてくる。どれだけ自分を叱咤しても止まらない。

「………………………………ううっ……ふっ……うっ」

 涙を、後悔を、悲しみを、堪える苦しさで、思わず目眩(めまい)がしてよろめく。そんなナーガの肩を、レイヴンが支えた。

 彼女は、冷酷だ。しかし、情がないわけではない。今だって、ヴェルアーブの事実的な死に直面し、自分の心を雁字搦めにして、ようやく平静を保っていられているのだから。

 しかし……ナーガの心の深奥──その者との〝繋がり〟である〝回廊〟が、一瞬、鳴動したように感じた。同時に、ナーガの中に残っていた何かが叫ぶ。

 ──『諦めるな』

 と。

 その叫びを聞いたナーガは、不思議と勇気付けられた。諦めたら終わりだが、諦めない限り、希望はあると。その希望に賭ける事が出来ると。まだ、終わっていないと。

 それは欠片であり、微弱な残り火であり、風前の灯火のような小さな小さな残穢だった。それは確かに、目の前の聖剣に嵌め込まれているみすぼらしいただの石ころと繋がっている。

 まだ終わっていない──と、ナーガの瞳に勇気の炎が灯った。

「……………………そう、そうだ。まだ、終わってない」

「ナーガ……! そう、そうよ。まだ終わってなんていないの。諦めてしまったら、それこそ、全てが終わってしまうのよ」

 こうして、〝水鏡竜〟の最愛の少女は奮起した。強い意志を秘めたその瞳の中に、勇気の炎が燃えている限り、負ける事はないだろう。

 

 そして、作戦会議。

『あの聖剣──天頂の聖剣(チャンピオンソード)のみがグリイドから排出されてしまった理由だが……わかるか? まあ、そう聞かれてもわからんじゃろうが』

 それはそうなのだ。それは何度も何度も行われた繰り返しの中で起きた小さな小さな変化の連続が起こした一縷の望みたる奇跡であるのだから。

『たった一つ残った一縷の希望……正にそれよな、あれは。それに、アレに嵌っているみすぼらしいあの石じゃ』

「ですね。私や──レイヴン、ティターンも、あの石に、確かに感じました。あの方の息吹を。心の奥底にある〝扉〟の向こうで、まだ生命の息吹を感じました」

 ナーガは、自身が持てる語彙力の全てを使って説明しようとしている。まだ、終わってはいないと。

『……あれは、抜けぬよな?』

「はい、確かに」

『ならば、残された手立ては一つしかあるまい。あの内部に残された小さな残滓こそ、(わらわ)達の最後の希望故な』

「と、言いますと?」

『……率直に言うが、ヴェルアーブ直系の眷属たるお主ら三人には、生贄になってもらう』

「「「──ッ!?」」」

 それが意味するところは──

「──……つまり、私達の生命力をあの石に〝伝達〟させる、と言うことですわね」

「やっとおれの出番かいな!! 最近、おれ影薄かってんな……」

「そんな事ありませんわよ。幻獣捜索の面では、大変お世話になりましたわ」

 鋭いレイヴンが、キッパリと作戦内容を見透かしてみせる。その作戦内容に歓喜したのは、この世界で唯一無二の『伝達』能力を持つワードルトだった。

『……それで、どうじゃ?』

「やってみせます。私も、みんなも、ヴェルアーブ様の為ならこの身だって捧げてみせる」

 ナーガの覚悟は素晴らしいものだった。

 他の〝竜種〟と同じく、魂の〝本質〟を見抜く事が無意識的に出来るヴェルアーブは、こんなナーガだからこそ惹かれたのだろう。それは、ディゴルネも同じだった。

『では、早速始めるのじゃ』

 ディゴルネが呼びかけると、天頂の聖剣(チャンピオンソード)をワードルト、ナーガ、レイヴン、ティターンが取り囲んだ。

「それじゃ、行きますで?」

「ええ」

「いつでもオッケーです」

「……滾るな」

 ワードルトの問いに、三者三様の答えを返す。

 そうして──ワードルトによる、まさに神業とでも呼ぶべき所業が開始された。

 

 まず、ワードルトは三人と一つの石ころの中に残った『生命の残滓』を接続(コネクト)させる。そして、三人の活力や生きるための力そのものとも言える〝魂〟の内に秘めた生命力を、ワードルトを通してみすぼらしい石ころに注ぎ込んでいく。

 これは本当に神業で、能力的に戦闘向きじゃないので、長い間日の目を見る事が出来なかったワードルトの真価だった。

 まず、違う生命体同士の生命力を操作するなんて芸当が出来るのはワードルトだけである。名を得た事で、より上位の存在に至ったために開花した『情報制御能力』が、それを可能にしているのだ。

 しかし、物事がそう上手く行く筈もなく……。

『チッ、しぶとい奴じゃ!』

 そんなワードルト達の目の前で、グリイドが再生を始めようとしていた。同時に、あのみすぼらしい石ころが淡く明滅しているのも見える。

(光が!! そうか、お前も抗おうとしておるのだな、ヴェルアーブ!!)

 そう、思わずにはいられないディゴルネだった。

『幻獣達よ! 今、その牙を剥くが良い!! ソナタ等の主の為に、あの光を守り抜くのじゃ!!』

 ディゴルネから幻獣達へ、激励が飛ぶ。同時に、〝人化〟していた幻獣達は、自身の本来の姿──神聖なる獣の姿に戻り、その精神を研ぎ澄ましている。

『ヒャッハ、ヒャッハッハ──ヒャッハッハッハ♪』

 グリイドが完全再生を遂げた。

(チッ、ヴェルアーブの決死の攻撃も無駄足に終わるとは──いや、これはっ!? 確かに、確かに変わっておる!! そうか、通りでヴェルアーブが弱いわけじゃ!!)

 ディゴルネも、無下限演算領域にいるヴェルアーブと同じ結論に辿り着いたようだ。

(何が変わったのか、明確にはわからん。ただし、希望も見えてきたという事よな!!)

 事実──ヴェルアーブが使っていた〝天頂の聖剣(チャンピオンソード)〟は、ヴェルアーブが引き抜いて主と認められた時点で、ヴェルアーブという存在上の『特異点』とも呼べる小さな因子──ユニークスキル『願望者(カナエルモノ)』が、吸収統合されていた。つまり、権能が移されたのだ。

 その能力は、深層意識・表層意識問わず、願った事──想い──を実現する能力だ。その能力は、弱く小さな因子とはいえ、その影響力は絶大である。何故なら、その剣を取り込んだグリイドの最も大きく、唯一つであり、ずっと願っていた事を実現させてしまったのだから。

 即ち──〝全てを取り込み、それを糧として高次元存在へと至る〟というプロセスをすっ飛ばして、グリイドを具現化──つまり、物質存在にしてしまったのだ。

 しかし、まだ一歩足りない。まだ虚空存在と物質存在の狭間にいる状態だ。ここから、更に〝天頂の聖剣(チャンピオンソード)〟で干渉する必要がある。

 しかし……アレが使えるのは、ヴェルアーブのみだ。どちらにせよ、ワードルト達に賭けるしかなくなった。

(──仕方あるまい。玉砕覚悟で突っ込む他無いわな)

 ディゴルネも覚悟を決めた。

『全員、死ぬ気であの光を守るのじゃ』

「「「はいっ!!」」」

 全員の声が重なる。

 どす黒い絶望の中で、少しずつ、希望が芽吹いていた。

 

 ──が。

 

『ヒャッハ、ヒャッハッハッハ! ヒャッハッハッハッハッハッハ!』

 不吉な嗤い声が響く。グリイドの胸部中央にある核から、多大なるエネルギーが放出された。これはもう、この世のものとは思えない。それは意思が宿った負の存在力(マイナスエネルギー)であり、相殺不可能なエネルギーだった。

『何ッ!?』

 そのエネルギーで作り出された、女神の繊手(せんしゅ)のような真っ白い手が伸びた。それは、まず、無力な幻獣達を掴む。

「シャーーッ!!」

「バウッ、バウッ!!」

「キィ、キィーーーッ!!」

 幻獣達が喚く。それは恐怖から来るモノだ。目の前の手に心の底から恐怖し、反射的に威嚇しているのである。

 それを構わず、白い繊手(せんしゅ)は幻獣達を掴み──ヴェルアーブと同じくして、自身の核である〝無〟に放り込んでいく。

「グガァァァウッ!!」

 それをも恐れないのがキイラなのだ。その咆哮に、意思ある幻獣達は励まされ、立ち上がる。

 ファードヴェルが獄炎のブレスを吐く。

 キイラが破壊振動を放つ。

 ヴェズフェルが攻撃を出来る限り相殺する。

 ルインが溢れ出る力に身を任せてグリイドを攻撃する。

 リルインは、自身を弾丸と化してグリイドに特攻する。

 ジーナとノーヴェは、手数を駆使して、か弱い、まだ残っていた幻獣達を守る。

 ディゴルネは、残っていた五十%程度の細胞をかき集めて蛇形態となり、細胞に宿ったエネルギーを駆使してグリイドに一矢報いようとしていた。

 しかし、全ての行動が無駄に終わってしまう。どんな攻撃も無効化される。

 ──しかし、ファードヴェルとキイラ、リルインの攻撃は無効化されなかった。他の者達との違いは一つ。攻撃に、エネルギーを用いるか否か。この三人は、物理、または現象系の攻撃を得意としていたのだ。

 故に、最後まで残ったのだろう。

 それも、ちっぽけで僅かな時間だが。直ぐに、グリイドに吸収された。そして──

「うわっ、わっ、た、助けてや、ナーガはん!!」

「あっ、ワードルトくん!!」

 ナーガが手を伸ばすが──無慈悲にも、ワードルトまでもがグリイドに吸収されてしまった。

「そ、そんな……」

 これでは、計画を遂行出来ない──いや、出来る。

 ナーガがそう思った理由は一つだ。ナーガは、誰よりも色濃く、ヴェルアーブと繋がっていた。魂の契り──恋の契約を交わした二人の間を繋ぐ〝魂の回廊〟は、レイヴンやティターンのモノを遥かに凌駕する接続率を誇るのだ。

「……私は残ります」

「ええ、知っています。──あとは任せたわよ、ナーガ。貴女とヴェルアーブ様が、私達の希望」

「オレ達は、オレ達に出来ることを」

 二人も、戦場に向かった。

「──〝深い夜闇(ディープナイト)〟──」

 グリイドを、深い夜闇が包む。その中で何度も、何度も、果てしない攻撃を受けた。

 しばらくすると、夜闇が真上に収束する。

「──〝夜闇を駆る八咫烏(ミッドナイト・パニッシュメント)〟──ッ!!」

 次の瞬間、闇の柱がグリイドを包み込んだ。それは、筆舌に尽くし難い程の破壊的エネルギーを秘めていたが、吸収できない程ではない。致命傷は、避けた。

「なっ──」

 驚愕するレイヴンに理論不明の光線を撃ち込み、傷ついたところを吸収する。

「────貴様、よくも……」

 激しい赫怒をその見に宿すのは、ティターンだ。

巨神爆裂撃覇(タイタン・ブラスト)

 その、一度解放したら制御不可能な破壊の暴威が、グリイドを襲う。今度は吸収しそびれ、大ダメージを食らってしまった。

 グリイドは、頭を揺らす。

『ゴ〜〜〜〜〜〜ン、ゴ〜〜〜〜〜〜〜ン、ゴ〜〜〜〜〜〜〜ン、ゴ〜〜〜〜〜〜〜ン』

 揺らす度に、精神を蝕む鐘の音を打ち鳴らす。

「うぐっ!? くっ、うう……」

 流石のティターンも、これには抗えないようだった。怯んでいた内に破壊光線を撃ち込んで、吸収した。

「──レイヴン、ティターン……っ!」

 ナーガは、涙を流しながら生命力を注ぎ続ける。

 ──が、彼女も奥義に打って出ることにしたようだ。

「…………赤、黒、足して緋色。混合拳気『火緋(ヒヒ)(イロ)』──拳気『瑠璃(ルリ)』──」

 右手に緋色の拳気(オーラ)を、左手に蒼い拳気(オーラ)を。

「──足して、紫。三重混合拳気『純恋(スミレ)』──」

 それは、彼女を表すような拳気(オーラ)だった。

「────ヴェルアーブ様、また、ご一緒させてくださいね」

 ほんの少しの残滓だけ残して、全ての生命力を希望の石に一気に注ぎ込む。これでナーガの魂は完全に消失した──が、残された残滓が、命令されていた動作を実行する。

「──()彩白(さいはく)(りゅう)(せん)(かい)──依々(いい)恋々(れんれん)

 そのエネルギーの源は、愛。強大なまでのエネルギーの源は、たった一人の少女の愛なのだ。膨れ上がったエネルギー──愛の奔流が、グリイドに牙を剥く。

 もはや、耐えきる・耐え切らない、吸収する・出来ないの問題ですらない。それは、実体化してしまったグリイドという存在を消し去るには十分だったが──抜け殻であるナーガには、意思力がなかった。

 故に、立っていたのはグリイドである。

 そうしてグリイドは、この場に残った最後の存在(エサ)──ナーガを、無に放り込んだのだった。

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