転生したら竜だった件   作:暁悠

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第二話 その竜の名前

 そういえば、俺の名前はどうなるのだろう? ふと、そう思い立った。前世での名前を名乗ればいいじゃないかと思ったが、異世界がどんな名前文化かもわからないし……何より、竜が日本名を名乗ってきたら俺でも気味悪く思う。

 そう思ったので、〝竜種〟について聞いてみた。まだそこを聞いていなかったな、と。

 世界に四匹いるというが、その内訳は?

 

《解。世界に存在する〝竜種〟の存在を開示します》

 

 内訳はこうだ。

 一、〝星王竜〟ヴェルダナーヴァ。

 世界を創造した〝創造主〟であり、始まりの〝竜種〟。〝竜種〟の長兄。

 二、〝白氷竜〟ヴェルザード。

 ヴェルダナーヴァの次に生まれた、氷の女王。統べる属性は〝氷〟。〝竜種〟の長姉。

 三、〝灼熱竜〟ヴェルグリンド。

 ヴェルザードの次に生まれた、灼熱竜。統べる属性は〝火〟。〝竜種〟の次女。

 四、〝暴風竜〟ヴェルドラ。

 記録上最後に生まれた〝竜種〟。統べる属性は〝風・空間・水〟。〝竜種〟の末弟。

 

 という感じ。それにしても、かなりヤバそうな面子だ。これとほぼ同類に扱われるのか、俺……自信なくなってきたな。それに、兄妹なんだ。だったら俺はヴェルドラの次に生まれたから……俺が末弟になるのかな?

 てか、名前の規則性がミエミエなんだが……俺も従った方がいいのだろうか? 変に独自性を求めるのは野暮な気がする。

 するとどうしようか……。ヴェルザードなんかは〝ヴェル+ブリザード〟の安直なネーミングで、一発で氷属性だとわかる。

 ヴェルドラに関しては難しかったが、確かどこかの神話に〝ルドラ〟という暴風雨神がいた気がするので、つまるところ〝ヴェル+ルドラ〟だろう。だが、この異世界含む世界達の成り立ちとしては、今俺がいる世界が一番最初に生まれたようだ。そこから分岐するように、俺が元いた世界の他にも様々な世界が形成されたのだとか。

 だとすると、俺の世界に伝わった〝ルドラ〟や〝ブリザード〟という言葉も、もしかするとこの〝竜種〟たちの名前が捩られたものなのかもしれない。

 そう考えるとかなり面白い感じだな、異世界! ならば俺も従うとしようか、その名前の規則性に。

 ところで、俺が司る属性は?

 

《解。主様(マスター)が司る属性は絶対的な〝水〟の属性です》

 

 ほほぅ、〝水〟か。って、〝暴風竜〟と被ってないか?

 

《否。〝暴風竜〟ヴェルドラの主属性は〝風〟であり、〝空間・水〟は副属性です》

 

 つまり、簡単に言えばヴェルドラは他属性を扱えるが、〝風〟属性が一番得意ってことか?

 そう聞くと、ちょっと呆れ気味に《大体合っています》と言われた。失礼な奴である。俺はこの異世界に来たばっかりなんだぞ? いやまぁ、三十日以上経過してはいるが。

 で、話を戻そう。俺の属性は〝水〟らしいので、それにあった名前がいい。ただ、〝ヴェル+ナニカ〟に従うとして、「アクア」とか「ウォーター」とか、そんな安直でダサいネーミングは却下だ。せっかくの異世界なんだし、格好いい名前がいい。

 そうだな……水……水……確かペルシャ語で「水」って、かなり格好いい感じじゃなかったっけ?

 

《解。ペルシャ語で水は〝アー()〟と称されます》

 

 アーブ! 短いから〝ヴェル〟にくっつけやすいし、何よりカッコいいじゃないか! あくまで俺の主観だが、かなりカッコいい名前になるんじゃないか?

 ということで、俺の名前は〝ヴェル+アーブ〟で〝ヴェルアーブ〟に決定だ! ついでに〝暴風竜〟だの〝灼熱竜〟だのっていう、称号も決めちゃおう。

 そうだな……水…水界……〝水界竜〟ヴェルアーブにしようか。

 と、その時、異変が起きた。

「これは──」

 俺の力が増幅を始めている…?

 

《解。魔物は〝名〟がつくことで存在として大幅な進化を遂げます。主様(マスター)の場合はそれを自分自身に行ったのです》

 

 魔物は〝名付け〟によって進化する、と。今の俺にはそれが起きているのか。

 フーン──と、呑気に思っていたのだが、そうしてはいられない問題が起きた。

 問題というか、変化というか。元々芽生える予定だったのだろう。〝竜種〟にはそれぞれ基礎スペックに付随して固有能力が芽生えるそうだから、いつか来る〝竜種〟としての大成──進化時に芽生えると思ったのだ。

 だが、こんなに早いとは。

 俺に芽生えた固有能力は──

 

 ──『千変万化(カレイドスコープ)』──

 

 あまねく水が如く、常に変化し続ける。万物万象を自由自在に『変容』させる能力だ。

 カレイドスコープなんて名前なので、さっきの〝水界竜〟は取り消しだ。俺の真なる称号は──〝水鏡竜〟で決定だな。なんせ固有能力が〝万華鏡(カレイドスコープ)〟だからな。『変容』のニュアンスとしては最適だが。

 なんてことをしていたのだが、肝心の洞窟探検を忘れていた。いやそれどころじゃなかったんだけどね? ウッカリ忘れてしまっていた。

 早速探検開始──と思ったのだが。

「誰だ」

 上手く気配を消しているつもりだろうが、『万能感知』の扱いに慣れてきた俺としては見つけるのは容易である。俺がいる部屋の近くに何者かが迫っていた。

 その正体は──

「ハハッ、申し遅れてすみません、我が君」

 ──と、大仰な挨拶を述べる白き龍だった。

 

   ◇◇◇

 

 いや、は?

 急に名乗られたんで普通に困惑したんだが?

「え、ええと、君は?」

「わたくしは貴方様の眷属でございます。我が君主に了解を得ず名乗り出たこと、万死に値する大罪です。どうか──」

「いや、いやいや! そうじゃない! そうじゃないよ!? とりあえず顔上げて、状況説明お願いできる?」

「ハハッ、お望みのままに」

 扱いづらいことこの上ないなこの態度っ! 悪い気はしないんだけどね。堅苦しいのは嫌いなのだ。

 そう思いつつも、目の前の白龍に今までのことを説明してもらった。

 ………

 ……

 …

 ある日、俺の魂がこの世界に〝竜種〟の(タネ)として流れ着く。この洞窟内で誕生し、二十七日間の長い休眠につく。

 その間、俺の体から魔素が大量に漏れ出ており、俺が眠る洞窟内に巨大な魔素溜まりを形成。そこから俺の眷属として生まれたのが、目の前の白龍なのだとか。

 というか、白龍ってカッコいいけど呼びづらいな。何か固有名がほしい。今後、コイツみたいな白龍が生まれないってことはないだろうし、そうすると、コイツとの区別に苦労する。魔物はそんなことないみたいだが、俺の感性は人間のものなのだ。

「呼びづらいし、俺の中で認識に齟齬が生まれる可能性があるので、お前に名前をやろう」

 俺はコイツの君主らしいので、大仰に伝えてみた。すると──

「ああ、なんということでしょう……いち眷属であるわたくしにも〝名前〟を……なんと慈悲深く、なんと──」

「ああ、そういうのいいから。俺のことは〝ヴェルアーブ〟と呼んでくれ」

「ハハッ」

 面倒くさいのでカットである。こんなに褒められるのは慣れてないし、何より接しにくい。

「そうだな……ナーガ。お前はたった今から〝ナーガ〟を名乗れ!」

「忠誠を。このナーガ、貴方様に絶対の忠誠を誓うと約束いたしましょう」

 相変わらず堅苦しいが──ん?

 名前をつけた途端、ナーガの容態が急変し始めた。

「ヴェルアーブ様……わたくしは……」

「眠いのか?」

「は、い……この、ような…醜態を、晒すことを……お許し、くださ…い………」

 その言葉を最後に、ナーガはバタリと倒れ込んでしまった。

 俺は急いで、ナーガを即席の寝台に運ぶ。そこに寝かせて、魔素を固形化させた毛布で包んでおいた。

 ふう。これで一安心、と。

 ていうか、何が起こってるんだ?

 

《解。進化の眠りです。魔物は通常、進化する際は強烈な睡魔に襲われます》

 

 俺の時はそんなのなかったのに?

 

《否。主様(マスター)の自身に対する〝名付け〟は、存在の定着と安定に必要なものでした。生理現象と同質のものであり、それは『進化』とは違います》

 

 俺の認識が全面的に間違っていたと言われてしまった。ちょっと恥ずかしいので、これからは初めて触れる情報は必ず『案内者』を通すようにしよう。

 だが、本当の来客はここからだったのだ。

 

   ◇◇◇

 

「あら、もう眷属が生まれていたのね」

「──ッ!?」

 気づかなかった。否、気づけなかった。

 俺には常時発動している〝竜種〟相当の『万能感知』があるのに、それでも気づけなかった。

 それもまた否、それもそのはずである。多分来客は──

「ちょっと気づくのが遅いわね。私の愚弟(ヴェルドラ)は私の来客にもっと早く気づいたわよ」

 深海色(ブルーダイヤモンド)の瞳に、俺に似た真っ白な長髪を束ねた少女が、俺の前に立っていた。

「存じ上げない人だな。招いた覚えがないから、帰ってくれると嬉しいんだけど?」

 まず間違いなく、コイツは〝竜種〟だ。

「あら」

 その人の目が冷たく変わった。

「弟のくせに生意気な口を聞くのね。これは少し、教育(しつけ)が必要だわ」

 びっくりするほど冷たい声で告げられてしまった。これはもしかすると……〝藪をつついて蛇を出す〟なのでは? かなりの失敗(ミス)を犯したのでは…?

 そう思ったところで時間は戻らないので仕方ないのだが……もの凄い悪寒だ。少しでも気を抜くとまず間違いなく殺される。

 というか、女性寄りの外見なのに〝弟〟だとバレている。

「名前を聞かせてもらっても?」

「ヴェルザード、といえばわかるかしら」

 おっと、まさかの一番上の姉(ヴェルザード)だったか。確か属性は氷……俺って相性最悪じゃね!?

「俺はヴェルアーブ。よろしくな、姉さん」

「ようやく弟らしくなったわね。なら、私の試験(テスト)に合格できるか試させてもらうわね」

 テスト?

 ん? テスト?

 不穏だな、もの凄く……いやいや、そんなまさか……。

「テストって、具体的にはどういうことを?」

「私と戦ってもらうわ」

 嘘だろっ!? よりによって相性最悪な人と……。

「……背に腹は変えられない、か」

「覚悟はできたようね。それじゃあ、始めましょうか」

 

 ……こうして、俺にとって地獄の時間が始まるのだった。




 初っ端からVSヴェルザードです。最新巻まで『転スラ』を読んでいる人ほど楽しめるように作りますので、どうか原作小説・及びWEB小説版の方も読んでみてください。
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