転生したら竜だった件   作:暁悠

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第二話 テンペストの街

 いやはや、もの凄い──というのが、正直な感想である。

 街の中は、祭りはもう終わったのに賑わっていた。屋台も幾つか残っているようである。この先には円形闘技場(コロッセオ)もありそうだったので、そこに向かう人達も多そうだ。

 リムルは娯楽関係にうるさいので、こういうところを拘っていそうなのだ。リムルからすれば趣味感覚でも、俺や人々からすれば、かなりえげつない行為である。

 この世界、実はもの凄く危険な世界なのだ。魔獣や魔族の存在、それに魔王達の存在もあって、娯楽を楽しむ余裕など人々にはないのである。俺や俺の家族達は強いので問題ないが、やはり民間人はそうもいかない。

 なので、自由組合や西方聖教会が現状改善に努めているのだが……。

 たった数年で、それをリムルは成し遂げてしまった。しかも、街道整備なんかも進んで行っているようだ。警察機関や三権分立制度なんかも確立しているようで、どう見てもそこらの大国より栄えている。

 そりゃ話題になるよな──と、納得した俺であった。

 

 そして、何やら一際賑わっている屋台があるな。

 えーと、なになに……? どうやら、売っているのはタコ焼きであった。

 サラッと行っているが、ラーメンやハンバーガー等々、前世で見たような料理もたくさんある。無論、この世界にそんなものはない。どう考えても、リムルが作り出したのだろう。しかし……どうして知っているんだろうな?

 もしかしてリムルも、俺と同じ〝異世界人〟の転生者だったり……? ありえなくはない……。

 今度、ちょっと気楽に話しかけてみよう。もしかしたら、意気投合するかも。

 って、今は屋台の話だったな。

 

「クアーーーハッハッハッハ! 我がタコ焼きを食らうが良いぞ! クアーーーーハッハッハッハ!」

 

 そんな高笑いをしながら、店員がタコ焼きを作りながら叫ぶ。商売人にしては、やけに態度が大きいな……。

 

「タコ焼き?」

「おお、知っておるのか! 我の店が繁盛し、噂も回ってきたという証よな。これでリムルにも自慢出来るわ! クアーーーハッハッハ! どれ、買っていくか?」

「はい。って──」

 

 そこで、俺の目は店員の名札に目が行った。書いてあった名前は──〝ギメイ〟というものだった。

 偽名……。何なんだ、コイツは?

 

「おや? お主……我と似たような気配を感じるが……?」

「え、ええ……? あ、そうだ。つかぬことお聞きしますが、お名前は?」

「我が名はヴェル……いや違った、えーと、〝ギメイ〟であるぞ! 憶えておけ!!」

 

 はい、確定! この人、確実に竜種関係だな。男性の姿──というより、俺の〝兄〟は一人しかいないので──

 

「スミマセン、後でゆっくり、お話させていただいてもよろしいでしょうか?」

「うむ? 夜でいいならな。我ならばリムルへも顔が利くので、サービスしてやらん事もない! クアーーーハッハッハッハ!」

 

 なんとなく得意気である。もしかすると、気づいたのかもしれない。

 

 俺はタコ焼きを買い上げて、路上にあったベンチに座った。早速タコ焼きの包みを取り出す。

 

「それが、タコヤキ……?」

「そうそう。メチャクチャ美味しいんだぞ? これ」

「そうなのですね……」

 

 ナーガは、好奇心で目を輝かせている。このタコ焼きが、とても気になるようだった。

 ふふ、これを一度食べれば、ナーガもこの美味しさからは抜け出せまい──そう思って、俺はナーガにタコ焼きを差し出した。

 まだ熱いだろうが、ナーガにも問題なく『自然影響無効』があるので、さして問題はない。

 

「はふっ、はふっ……熱いですけど……美味しいですね!」

「だろ? 買って正解だったな」

 

 まさかこの世界でも食べられるなんて──という言葉は飲み込んでおいた。真実を話すのは、まだ先でいいだろう。一応は二人きりなので話してもいいかもしれないし、隠し事は良くないかも。でも、まだ話すべきではないと、そう思った。

 直感的に、話さざるを得ない時が来る──そう予感していたためである。

 

「何やらやわらかい……お魚の身、でしょうか?」

「ああ、うん。多分〝(タコ)〟って名前だよ」

 

 多分ね。多分異世界人のリムルからすれば、そう名付けるはずだ。というか、よく見つけてくるものである。都合良すぎないか?

 でもまあ、前にも確認したが、数多ある世界の中心がこの世界なのだ。どちらかというと俺の世界の方が遅く生まれたので、この世界の蛸似の魔物に、俺の世界のタコが似ているのだろう。

 まあ、そんな話は置いておくとしてだ。

 タコ焼きを味わうナーガの姿がまた可愛くて……。

 

「……あまりジロジロと見ないで」

「あ、ゴメン」

「緊張してしまいますから」

「ゴメンなさい」

 

 バレちゃった。気づかないように『万能感知』で眺めるだけだったのに、なぜバレてしまったのやら。

 やっぱり女性は怖いね。どんな世界でもね。

 

「さあ、ヴェ──アーブ様もお食べになってください」

「ええ? 俺は──」

「いいから」

 

 そう言われて、半ば強制的にタコ焼きを口に突っ込まれた。

 食べた事あるのに──とは思ったが、おやおや?

 

「あれ?」

 

 なんだかウマいぞ。何なら、前世のよりウマいかも。

 俺の魔物化が大きいのかな。魔獣の肉って事はモチロン魔素が染み付いてるだろうし、俺の体内にも魔素がある。その影響でちょっと美味しく感じる……とか?

 

《多分違うかと》

 

 あ、そうなの。てか、わかるんだ。

 

《当たり前です》

 

 そうなのね。これからも頼りにしてるよ、道標之王(ゾフィエル)さん。

 

《喜んで》

 

『思考加速』も使いながら精神会話を終えた俺は、ナーガに意識を向けた。

 

「アーブ様にも味わってほしかったのです。私の些細な我侭を、お許しください」

 

 許すよ。

 そりゃ許すよ。

 そんな理由聞いちゃったら、許す以外ないよ。

 

「許すに決まってるだろ? 第一、そんな事で怒ったりしないよ」

 

 ディゴルネがそんな事言い出したら即口論決定だけどな。

 ま、アイツに限ってそんな事起こり得ないわな。机上の空論ってやつだ。……使い方合ってる?

 

《…………大体は》

 

 呆れてるな。失礼な奴だ。

 

「そう、ですか……。それなら良かったです」

 

 ホッと胸を撫で下ろす──といった感じで、ナーガは言った。

 なんというか、可愛い。とにかく可愛い。

 俺は思わず、ナーガの頭を撫でた。

 ナーガは、一瞬だけ戸惑う様子を見せた。しかし、すぐに頬を赤らめて、俺に抱きついた。

 

「……おいおい?」

「我慢できませんでした。責任を取ってください」

「どこでそんな言い回しを覚えた!?」

 

 ま、聞かなくてもわかるけど。どうせレイヴンだろ。アイツなら、そんな事しそうだ。

 まったく、とんでもない奴である。レイヴン……悪意が無いのはわかるが、余計にタチが悪い……。今度から、こういう事はしないようにキツく叱っておかねば。

 

「……わかったよ」

 

 俺は潔く諦めて、ナーガを抱きしめ返す。

 ああ、ずっとこのまま居たい──なんて、思ったその時だった。

 

『おーい、アーブさん?』

 

 ……リムルからの『思念伝達』である。

 タイミング考えろよ──なんてボヤきながら、俺はそれに応じる。

 

『何だよ?』

『うちのヴェル──ギメイさんがお呼びだぞ』

 

 やっぱりだな。これはもう、確定だろう。

 情報は貴重なのだが……状況がなあ……。

 八つ当たりなのは百も承知だが、俺は内心で「ふざけんな!!」と叫んでおくのだった。




 次回、ヴェルドラ兄さんと邂逅します。
 実はファーストコンタクトなんですよね。リムルのところにヴェルドラがいるなんて思わないので。

 あ、上げた時のUA数が異常に多かったもので、モチベーションがぐぅん! となり、勢いのまま書き終えました。
 やっぱこういうの重要なんですよ(シランケド)。
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