転生したら竜だった件 作:暁悠
いやはや、もの凄い──というのが、正直な感想である。
街の中は、祭りはもう終わったのに賑わっていた。屋台も幾つか残っているようである。この先には
リムルは娯楽関係にうるさいので、こういうところを拘っていそうなのだ。リムルからすれば趣味感覚でも、俺や人々からすれば、かなりえげつない行為である。
この世界、実はもの凄く危険な世界なのだ。魔獣や魔族の存在、それに魔王達の存在もあって、娯楽を楽しむ余裕など人々にはないのである。俺や俺の家族達は強いので問題ないが、やはり民間人はそうもいかない。
なので、自由組合や西方聖教会が現状改善に努めているのだが……。
たった数年で、それをリムルは成し遂げてしまった。しかも、街道整備なんかも進んで行っているようだ。警察機関や三権分立制度なんかも確立しているようで、どう見てもそこらの大国より栄えている。
そりゃ話題になるよな──と、納得した俺であった。
そして、何やら一際賑わっている屋台があるな。
えーと、なになに……? どうやら、売っているのはタコ焼きであった。
サラッと行っているが、ラーメンやハンバーガー等々、前世で見たような料理もたくさんある。無論、この世界にそんなものはない。どう考えても、リムルが作り出したのだろう。しかし……どうして知っているんだろうな?
もしかしてリムルも、俺と同じ〝異世界人〟の転生者だったり……? ありえなくはない……。
今度、ちょっと気楽に話しかけてみよう。もしかしたら、意気投合するかも。
って、今は屋台の話だったな。
「クアーーーハッハッハッハ! 我がタコ焼きを食らうが良いぞ! クアーーーーハッハッハッハ!」
そんな高笑いをしながら、店員がタコ焼きを作りながら叫ぶ。商売人にしては、やけに態度が大きいな……。
「タコ焼き?」
「おお、知っておるのか! 我の店が繁盛し、噂も回ってきたという証よな。これでリムルにも自慢出来るわ! クアーーーハッハッハ! どれ、買っていくか?」
「はい。って──」
そこで、俺の目は店員の名札に目が行った。書いてあった名前は──〝ギメイ〟というものだった。
偽名……。何なんだ、コイツは?
「おや? お主……我と似たような気配を感じるが……?」
「え、ええ……? あ、そうだ。つかぬことお聞きしますが、お名前は?」
「我が名はヴェル……いや違った、えーと、〝ギメイ〟であるぞ! 憶えておけ!!」
はい、確定! この人、確実に竜種関係だな。男性の姿──というより、俺の〝兄〟は一人しかいないので──
「スミマセン、後でゆっくり、お話させていただいてもよろしいでしょうか?」
「うむ? 夜でいいならな。我ならばリムルへも顔が利くので、サービスしてやらん事もない! クアーーーハッハッハッハ!」
なんとなく得意気である。もしかすると、気づいたのかもしれない。
俺はタコ焼きを買い上げて、路上にあったベンチに座った。早速タコ焼きの包みを取り出す。
「それが、タコヤキ……?」
「そうそう。メチャクチャ美味しいんだぞ? これ」
「そうなのですね……」
ナーガは、好奇心で目を輝かせている。このタコ焼きが、とても気になるようだった。
ふふ、これを一度食べれば、ナーガもこの美味しさからは抜け出せまい──そう思って、俺はナーガにタコ焼きを差し出した。
まだ熱いだろうが、ナーガにも問題なく『自然影響無効』があるので、さして問題はない。
「はふっ、はふっ……熱いですけど……美味しいですね!」
「だろ? 買って正解だったな」
まさかこの世界でも食べられるなんて──という言葉は飲み込んでおいた。真実を話すのは、まだ先でいいだろう。一応は二人きりなので話してもいいかもしれないし、隠し事は良くないかも。でも、まだ話すべきではないと、そう思った。
直感的に、話さざるを得ない時が来る──そう予感していたためである。
「何やらやわらかい……お魚の身、でしょうか?」
「ああ、うん。多分〝
多分ね。多分異世界人のリムルからすれば、そう名付けるはずだ。というか、よく見つけてくるものである。都合良すぎないか?
でもまあ、前にも確認したが、数多ある世界の中心がこの世界なのだ。どちらかというと俺の世界の方が遅く生まれたので、この世界の蛸似の魔物に、俺の世界のタコが似ているのだろう。
まあ、そんな話は置いておくとしてだ。
タコ焼きを味わうナーガの姿がまた可愛くて……。
「……あまりジロジロと見ないで」
「あ、ゴメン」
「緊張してしまいますから」
「ゴメンなさい」
バレちゃった。気づかないように『万能感知』で眺めるだけだったのに、なぜバレてしまったのやら。
やっぱり女性は怖いね。どんな世界でもね。
「さあ、ヴェ──アーブ様もお食べになってください」
「ええ? 俺は──」
「いいから」
そう言われて、半ば強制的にタコ焼きを口に突っ込まれた。
食べた事あるのに──とは思ったが、おやおや?
「あれ?」
なんだかウマいぞ。何なら、前世のよりウマいかも。
俺の魔物化が大きいのかな。魔獣の肉って事はモチロン魔素が染み付いてるだろうし、俺の体内にも魔素がある。その影響でちょっと美味しく感じる……とか?
《多分違うかと》
あ、そうなの。てか、わかるんだ。
《当たり前です》
そうなのね。これからも頼りにしてるよ、
《喜んで》
『思考加速』も使いながら精神会話を終えた俺は、ナーガに意識を向けた。
「アーブ様にも味わってほしかったのです。私の些細な我侭を、お許しください」
許すよ。
そりゃ許すよ。
そんな理由聞いちゃったら、許す以外ないよ。
「許すに決まってるだろ? 第一、そんな事で怒ったりしないよ」
ディゴルネがそんな事言い出したら即口論決定だけどな。
ま、アイツに限ってそんな事起こり得ないわな。机上の空論ってやつだ。……使い方合ってる?
《…………大体は》
呆れてるな。失礼な奴だ。
「そう、ですか……。それなら良かったです」
ホッと胸を撫で下ろす──といった感じで、ナーガは言った。
なんというか、可愛い。とにかく可愛い。
俺は思わず、ナーガの頭を撫でた。
ナーガは、一瞬だけ戸惑う様子を見せた。しかし、すぐに頬を赤らめて、俺に抱きついた。
「……おいおい?」
「我慢できませんでした。責任を取ってください」
「どこでそんな言い回しを覚えた!?」
ま、聞かなくてもわかるけど。どうせレイヴンだろ。アイツなら、そんな事しそうだ。
まったく、とんでもない奴である。レイヴン……悪意が無いのはわかるが、余計にタチが悪い……。今度から、こういう事はしないようにキツく叱っておかねば。
「……わかったよ」
俺は潔く諦めて、ナーガを抱きしめ返す。
ああ、ずっとこのまま居たい──なんて、思ったその時だった。
『おーい、アーブさん?』
……リムルからの『思念伝達』である。
タイミング考えろよ──なんてボヤきながら、俺はそれに応じる。
『何だよ?』
『うちのヴェル──ギメイさんがお呼びだぞ』
やっぱりだな。これはもう、確定だろう。
情報は貴重なのだが……状況がなあ……。
八つ当たりなのは百も承知だが、俺は内心で「ふざけんな!!」と叫んでおくのだった。
次回、ヴェルドラ兄さんと邂逅します。
実はファーストコンタクトなんですよね。リムルのところにヴェルドラがいるなんて思わないので。
あ、上げた時のUA数が異常に多かったもので、モチベーションがぐぅん! となり、勢いのまま書き終えました。
やっぱこういうの重要なんですよ(シランケド)。