転生したら竜だった件   作:暁悠

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 ヴェルグリンドとマサユキのイチャイチャを書けるのはもっともっと後な気がする……。


第四話 灼熱の姉さん

「それじゃあ早速行きましょうか」

 俺は元気よく返事したのだが……どこにいるんだ、グリンド姉さんは?

「ヴェルグリンドちゃんなら、ここから東に飛んだ先にある帝国にいるわよ」

 何なんだホントにこの人はっ!? とことん油断ならない人なんですケド……。一体どこまで俺の思考を読んでるんだ?

 もうホントにわけがわからない。

 おっと、ザード姉さんがスキルを発動するのを感じ取ったぞ。これは……この人のことだから、〝見取り稽古〟的な感じでワザと感じ取らせてるのかな?

 ザード姉さんの腹の底を探ってみるのも楽しくなってきた。もしかすると、案外俺と近い考え方で相手の思考を探っているのか? そこも、機会があればちょっと試してみよう。それぐらい許されるだろ。

 そんなことを考えていると、周りの景色が急に変わった。というか──

「変わり過ぎでは!?」

 あまりの急変具合に頭が痛くなりそうだ。何が起こったんだ、これ?

 

《解。個体名:ヴェルザードの『空間支配』による『転移』です》

 

 転移? そんなこともできるのか、この世界。というか、『法則操作』なんてものがある時点で今更か。

 あ、そうだ。その『空間支配』ってやつ、『解析鑑定』でどうにか解析できないか?

 

《可能です。実行しますか? YES/NO》

 

 もちろんYESだ。

『案内者』さんが『空間支配』について解析してる間に、グリンド姉さんに会っておこう。

 と思ったのだが、もうお出ましのようだ。ザード姉さんの視線の先にいるのは──

「お姉様がこちらに出向くとはね。その子が?」

「ええ、そうよ。そっちこそ、自分で出向いて良かったのかしら? 愛しのルドラから離れてしまって」

「馬鹿を言わないで。『別身体』に決まっているじゃない。それに、下手な者を向かわせるよりも私自ら出向いた方が早いわ」

 蒼く長い髪に俺と同じ黄金(きん)(いろ)の瞳を持つ、絶世の美女だ。間違いなく、この美人さんが〝灼熱竜〟ヴェルグリンド……。

「初めまして、グリンド姉さん。ヴェルアーブって言います」

「あら、私のことがわかるの? 妖気(オーラ)は完全に隠しているのだけどね。新しい弟が優秀なようで安心したわ。じゃなきゃ、お姉様が何度も消滅させることになるものね」

 と、微笑みながら言った。美人が微笑みながら言うことなので一瞬聞き逃しそうになったが、その内容はヤバイなんてもんじゃない。もしヴェルドラと同じように一撃で殺られていたら──

 そう思ったところで、思考を断念した。考えただけでも悪寒がするというものである。本当に全力を出してよかったと、そう思う。

「それで、どうして私の下を訪れたのかしら」

 単刀直入だな。〝竜種〟ってのはみんなして無駄を嫌う性格らしい。まだヴェルダナーヴァとヴェルドラには会ってないので何とも言えないが、多分そうだろう。

「この子が、私以外の〝竜種(きょうだい)〟にも会いたいって言ったのよ。この子は優秀だから、少しくらいは言うことを聞いてあげても良くはないかしら?」

「悪いだなんて言っていないわよ。でもヴェルドラの時のような、乱暴な教育はしていないようで安心したわ」

 なんかもうヴェルドラが不憫だ。一体何されたんだよ、ヴェルドラ兄さんは。

「ら、乱暴な教育…? つかぬことお聞きしますが、乱暴な教育とは……具体的に、どういう?」

 俺がそう聞くと、グリンド姉さんは一息ついてから話し始めた。

「本当に乱暴な教育よ。確かにヴェルドラは自由奔放で暴れん坊さんだったけれど……あれはやりすぎだわ。物理的に〝心を入れ替えさせる〟って言えばいいかしら。〝竜種〟は死ぬと、記憶と魂を引き継いで、事実的な〝転生〟をするの。それは知っている?」

 グリンド姉さんは、ザード姉さんより幾分か優しかった。ザード姉さんだったら「これは知ってるわよね?」なんて言って、圧をかけてきそうなもんである。

 それに比べたらグリンド姉さんは……優しくて、理想の姉さんって感じだ。

「はい」

「話が早くて助かるわ。それで、心を入れ替えさせるっていうのは──」

 と、そこまで話されて察した。というか、察しない方が難しい。つまるところ、ヴェルドラは……。

「暴れる度に殺されて、人格のリセットを行われていた、と……」

「あら、察しがいいのね。それにしても乱暴よね。どうしてもっと優しくできないのかしら。ねえ、お姉様?」

「ヴェルグリンドちゃんが甘やかしすぎるのよ。ちょっと厳しいくらいが、暴れん坊さんにはちょうどいいの」

「それでも、暴れる度に人格リセットなんてやりすぎよ! もっと優しい面も見せなきゃ、あの子だって心を開いてくれないわ。もっとナデナデするとか、色々と方法はあったじゃない。まあ、あの子が失踪した今、それは意味のない議論だけれどね」

 そういえばヴェルドラは失踪したんだったな。いつの日かパッタリと反応が途絶えたのだとか。

「ザード姉さんが怖くて逃げたんじゃ…?」

「なにか言ったかしら」

「いえ何でも。何でもありませんよ、お姉様」

 あの発言はマズかったか。あのまま続けていたら、間違いなく逆鱗に触れていた。危ない危ない。

「ヴェルアーブは賢いのね。特別に〝グリン〟と呼ぶことを許すわ」

「ありがとうございます、グリン姉さん!」

 ああ、グリン姉さんは癒やしだ……ちょっと上から目線だが、それもお姉さん味がしていい感じだ。……そういう趣味はないよ?

「もう! やっぱり、ヴェルグリンドちゃんは甘いわね」

「こういうのを〝飴と鞭〟っていうのよ。こういうのを教育で使いこなしてこそ、いい姉と言えるんじゃないかしら?」

「言うじゃない」

 と、俺は気楽なもんだが姉二人は(いっ)(しょく)即発(そくはつ)の雰囲気に。

「まぁまぁ! 喧嘩なんてしないでください、姉妹なんだし!」

 俺がそう言うと二人とも落ち着いたので良かったが……〝氷〟のザード姉さんと〝火〟のグリン姉さんの関係性は、文字通り〝水と油〟なのかもしれない。

「せっかくだし、少し帝都内を見ていかない? ザード姉さんは……()()帰ってもらえるかしら?」

 グリン姉さんがとんでもない圧を乗せてザード姉さんに告げた。さっき〝飴と鞭〟と言っていたが、もしかするとグリン姉さんの〝鞭〟は、その〝飴〟の優しさに比例してエグいものなんじゃ……まぁ、まぁ、失敗しなければいいのだ。グリン姉さんを怒らせるようなことをしなければいいだけの話である。

「……弟の前で醜態を晒すわけにもいかないわね。いいわ、今日のところは免じて差し上げます。それじゃあね、ヴェルアーブちゃん」

 ザード姉さんはそう言い残して、また消えた。これも『転移』か。見れば見るほど便利そうな能力なので、解析が終わり次第実用化してみよう。楽しみである。

「さて、早速行きましょう?」

「はいっ!」

 グリン姉さんと街巡り(デート)かぁ……ちょっと幸せな気分だな、これ。

 

   ◇◇◇

 

 東の帝国──正式名称〝ナスカ・ナムリウム・ウルメリア東方連合統一帝国〟は、技術的にもこの世界で最先端の都市だそうだ。

 なんと、異世界からやってくる〝異世界人〟なる人々がいるらしく、そんな〝異世界人〟の保護数が一番多いのもこの帝国なんだと。

 俺とグリン姉さんが今いるのは、帝都にあるカフェだ。一番高級なものだそうだが……それを聞いた時、俺はかなり全力で遠慮した。まだ小市民の感覚が抜けきっていないし、何より、そんなお高いものを食べるお金なんて持ち合わせていない。そもそも、この世界の通貨を少しも持っていなかった。

 それを伝えたところ……なんとグリン姉さんが全額負担してくれるというので、〝長い物には巻かれろ〟精神でご馳走してもらうことにした。

 これがまた美味で……男だから気まずいという理由で食べられなかったスイーツ……特に、生クリームをふんだんに使用したパフェなんてものは流石になかったが、ショートケーキぐらいはあった。それと一緒に甘い紅茶を口にして──

「んん〜〜〜っ♪」

 頬が落ちそうなぐらい甘く、美味しい。前世ではこんなに甘くて美味しいもの、お目にかかることができなかった。「俺は男子だから」と思っていたし、「スイーツは女子が食べるもの」って先入観もあったから食べることをしなかったのだ。実は俺、かなりの甘党だったんだよね。しかしまぁ、バレないように、小さめのスイーツを味わう程度だった。だが今の俺の見た目は、どちらかといえば女性型に近い。何も気にすることなく食べられるのだ。

「ウフフ、お口に合ったようで何よりだわ」

 そんな俺を、グリン姉さんが微笑みながら見ている。いつ見ても美人なんだよな、グリン姉さんは。それに加えて優しいし、本当に理想のお姉さんって感じだ。

 一番高級なお店と言うだけあって、中にいるのは軍服を着た人ばかりだ。この国は軍事国家でもありそうだったので、軍人は高給取りなのだろう。というか、グリン姉さんのお財布が心配だ……こんな高そうなケーキをご馳走になったのはいいものの、同時に罪悪感が湧いてくる……。

「……あの、ご馳走になって、なんですけど…お金とか、大丈夫なんですか? このお店のお菓子、凄く高そうだし……」

 あまりにも心配だったので言ってみた。すると──

「大丈夫よ。何も心配せず、味わいなさい。弟に優しくするのは、私の楽しみでもあるのよ」

 美人の微笑みは破壊力が高い。

 俺の心を鷲掴みにするのに、それは最適だったようだ。

 もしかすると、グリン姉さんも軍人だったりするのだろうか…? まあ、それは俺の知ったところではないが……。

 

 ケーキを食べ終え、紅茶を飲み進める。

「そういえば、グリン姉さんはここで何を?」

「うーん、そうね。軍人さんってところかしら」

 喋り方にもお姉さん味があって──って、今はそういう話じゃないな。

「やっぱ、軍人って高給取りなの?」

「まあ、そうね。……そうだわ。今度、ヴェルアーブにお小遣いをあげましょう。あとは、一回、軍人さんとして働いてみないかしら? お金に困っていそうだし、いい提案だと思うのだけど」

 おお! それはいい。実際お金に困ってるし、俺にとっては魅力的な話だ。

「いいんですか?」

「もちろん。私は結構偉い立場にいるの。アナタをちゃんと推薦してあげるわ。そしたら、反対意見も出ないもの」

 やっぱり軍人だったのか。そりゃ、こんな高級そうなお店でスイーツを奢れるわけである。

「まぁ……私なら許可を取れるし、一度、この国の皇帝と謁見してみない?」

 皇帝……帝国だもんな、そりゃいるか。こんな大帝国の皇帝がどんなもんか見てみよう。

「いいんですかっ!?」

 俺はワザとらしく目を輝かせた。

「ええ、もちろん。弟の頼みだもの」

 ふっふっふ、計画通り。

 おっとイカン。これが表情に出ないようにするのが案外大変なんだよな。

 それにしても、皇帝か。やっぱり、荘厳な服装してたり、自分のことを〝余〟って言ったりするのかな? そこら辺も含めて、かなり楽しみだ。

 

  ─────────

 

 ヴェルグリンドは内心で微笑む。

(こんなに考えてることが筒抜けなのに、バレていないとでも思っていそうね。そこも含めて、可愛いわ、ヴェルアーブ)

 そして、ヴェルグリンドは夢想する。

(この子がルドラの〝駒〟になってくれれば……〝ゲーム〟は、もう私達の勝ちも同然ね)

 ヴェルアーブに、次なる試練が降りかかろうとしていた。




 ヴェルアーブとヴェルグリンドもそこそこイチャイチャしてない…?
 してない(断言)。姉弟愛です。

 勢いが乗ってきたので、かなりスムーズに書けました。
 次回、皇帝ルドラとのファーストコンタクト。話は少し短くなりそうです。
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