転生したら竜だった件 作:暁悠
グリン姉さんに案内されて、何やら豪華な回廊を歩いている。
ちなみに、ナーガはお留守番だ。何かと忠誠心の高いやつなので、コミュニケーションで失敗する……つまり、ナーガが皇帝に突っかかっていく可能性が大いにあった。なので、俺達がデート……ではなく、ミニお茶会をしていたカフェで待機させている。グリン姉さんが結構なお金を持たせていたので、暇を持て余すことはないだろう。
「この先に皇帝が?」
「ええ。皇帝ルドラ・ナスカ」
ん? ルドラ? そういえば、ザード姉さんがグリン姉さんに「愛しのルドラ」だとかなんとか言ってたよーな……。
「ねえグリン姉さん、ルドラさんって……」
「あら、やっぱりわかるのね。そうよ。私とルドラは恋仲にあるの」
「ええっ!?」
驚きの事実である。軍人で、かなりの高給取り何だとは思ったが……まさか、地位としては皇后に位置する感じなのか? それなら、お金持ちなのも頷ける。だが、そんな人が高級店とはいえあんなカフェにいていいのか……? というか、〝竜種〟の寵愛を受ける皇帝か……一体どんな人なんだ?
疑問が尽きない。
「ウフフ。色々と思考を張り巡らせているようで何よりだわ」
バレてるし……まぁ別にいいけど。これに関しては、探りを入れるのも隠す気はない。ただ、グリン姉さんの逆鱗にだけは触れないように細心の注意を払わなければ。
「さて、謁見の覚悟はできたかしら?」
うん?
「なんで覚悟?」
「あ……ああ、いや、何でもないわ。用意はいい?」
「まぁ……いいけど……」
なんだか、何かが引っかかる。
◇◇◇
部屋の大扉を開いた先にあったのは、広大な広間だ。様々な彫刻が施された柱が立ち並び、高級そうな絨毯が敷き詰められている。
奥を見ると、五メートルくらい先に数段高くなっている場所があった。そこには玉座らしきものがあり、一人の男が腰掛けている。
髪の色は輝くような金髪で、青い瞳を持っている。ザード姉さんとは系統の違う〝青〟だ。ザード姉さんは〝
「──帰ったか、ヴェルグリンド。ソヤツが?」
「ええ、ルドラ」
グリン姉さんもそう呼んでいるし、間違いない。コイツ……いや、この人が──
「お初にお目にかかります、皇帝。ヴェルアーブと申します」
俺は腰を折って奏上した。
「ふむ。貴殿が新しく生まれた〝竜種〟か」
名前で呼んでくれないな。それにしても……皇帝ルドラ、もの凄い威圧感だ。これ、俺が精神生命体だから助かってるが、並の人間だったら威圧感で圧死してるんじゃなかろうか。
それくらいの威圧感だ。
「余は皇帝、ルドラ・ナム・ウル・ナスカ。我が〝ナスカ・ナムリウム・ウルメリア東方連合統一帝国〟の皇帝である」
やっぱりか。って、うん? ちょ、ちょっと待て。ちょっと待ってくれ。
今、この人自分のこと〝余〟って言わなかったか!? 実在するんだ、その一人称!?
正直笑いをこらえるのに必死である。だが、今は皇帝との謁見の最中。しかも傍らにはグリン姉さん。死んでもバレるわけにはいかないので、全力で隠匿する。
「──ふむ、やはり、究極の力は有しておらぬのだな」
うん?
「ええ、そうね。生まれたばかりだもの、仕方ないわ」
「それもそうよな。余の期待し過ぎであったか。だがしかし、それでも十二分に強力だろう」
「ええ、ええ。そうね」
な、んだって? ちょっと…何を言ってるか聞き取れない……。
それに頭がクラクラして……何も考えられなくなっていく──? どんどん、頭が真っ白に──って、ヤバイ! 絶対これ、何かの干渉を受けてるッ!『案内者』、早急な
《了。直ちに実行します》
すると、僅か三十秒足らずで俺の思考が明瞭になった。
なんとか、干渉から逃れたみたいだな。
《是。無事に
やはりスキルによる干渉なんだな? その発生源は……まぁ十中八九、皇帝ルドラか。
《是》
スキルの解析を急いでくれ。ルドラは俺が対処しておく。
《了》
いやあ、『案内者』さんは頼りがいあるね。
さて、皇帝ルドラ……一体どんな思惑があって俺に干渉してきてたんだ?
「皇帝ルドラ……だっけ? 俺にスキルで干渉してきてたな。何が目的だよ」
危険な予感がしたので、もう容赦はしない。もしかするとグリン姉さんと戦うことになりかねないが、その時はその時。全力で足掻くまでだ。
《一部解析結果をお伝えします。スキル効果は『意思の支配』です》
意思の支配? そんな凶悪なスキルもあるのかよ、この世界は? まぁ、ありそうっちゃありそうだがな。俺の『
「俺を支配しようとしてたよな?」
こういう時はとことん強気に。
「──ほう、気づくか。どういうことだ、ヴェルグリンドよ」
「…わからないわ。確かに、この子に究極が宿っている気配はなかったもの」
さっきから言ってる究極ってなんだ?
って、『案内者』からの返答がない……。そんなに『解析』に難航してるのかな?
「しかし、余の支配に抗ってみせるとは。余の期待は確かなものだったのかもしれん」
「悪いけど、アンタに服従する気はない。そういうのは嫌いでね。別に〝少し言う事を聞く〟程度ならいいが、絶対服従だけはイヤだ。断固拒否するね。グリン姉さんは怒るだろうが、俺もそうなると徹底抗戦だ」
まだ使ったことのない『
「やはりいつ見ても凄まじいな、〝竜種〟の
「……驚いたわ。生まれたばかりだというのに、この大きさはお姉様レベルね」
フーン。意外と俺のスキルも強いのかもしれない。
さて、試しに攻撃してみるか。俺は自分の小指を切り落として、握る。ヤクザのケジメじゃないが、小指が一番小型だったというだけだ。
やることは簡単。同じように〝核分裂性物質〟として『変容』させ、全力の握力と水分子操作、質量そのままでの超圧縮で超臨界状態にして投げつける──〝
実質的な小型核爆弾に『変容』させた小指を、全力でルドラに向かって投げつけた。さて、俺も吹き飛びかねないので、ザード姉さんから学んだ『多重結界』で体を覆っておく。イヤもしかすると、『自然影響無効』や『物理攻撃無効』があるので心配はないかもしれない。だが、もしもがあっては困るのだ。
さて、結果は? しっかりと命中したように見えたが──
「──ふむ。興味深い能力だ」
なんと、皇帝は無傷。それどころか、この格式高い謁見の間にすら、傷一つ付いていない。
「ヴェルアーブ、お前──」
「良い、ヴェルグリンド。考える時間をやろう。ヴェルグリンド、案内しろ」
「……わかったわ」
グリン姉さんは少し不服そうだった。まぁ、その気持ちもわからんでもないが……不服なのは俺の方である。俺が考えうる限り、現状で最高火力であろう攻撃が命中したのに無傷。多分『結界』を使っていたんだろうが、核爆発を受けてなお無傷とは……。
これ以上戦っても勝てないことは明白なので、大人しくグリン姉さんに従うことにしたのだった。
◇◇◇
「まったく……急に攻撃を仕掛けるなんて、無礼とは思わないのかしら?」
もの凄い怒気と威圧感を含ませて、グリン姉さんが俺を睨みつけてきた。弟だし、敬語ももういるまい。
「だって! 俺、スキルで支配されかけてたんだぞ? グリン姉さんの大切な人なのは百も承知だが、流石に甘んじて支配を受け入れるほど思考放棄してないんでね」
流石にちょっと強めに言った。今でも納得していない。
ちなみに、俺達が今いるのは俺用に斡旋された個室だ。寝台や小さなテーブルセット等、人一人が暮らすにはちょうどいい狭さの部屋だった。
「……まぁいいわ。ルドラは許したんだもの。私も目を瞑りましょう」
詮索を入れるというのは入室前に示しておいたので、色々と質問してみよう。
「……皇帝ルドラ、なんで俺の攻撃が一切効かなかったんだ? ザード姉さんにも効かなかったが、また別の不気味さがあるというか……」
どう考えても、俺の『多重結界』より高性能だった。
「そうそう、あと〝究極の力〟って何。すっごい気になるんだけど」
これも聞いておかなくては。究極の力……もう名前からしてカッコいい。
「……順を追って答えるわね。まず、究極の力についてだけれど、
「アルティメットスキル?」
「そう。お前は持っていないでしょう? 私もルドラも持っているわ。攻撃が効かなかったのは、ルドラの
また謎が深まったぞ。
俺が持っているのは最大でユニーク止まりだが、更に上があったとは。
というか、俺も欲しいんだけど──って、望んで手に入るモノでもないか。
「欲しいのね、究極の力が。ルドラの支配を受け入れれば、ルドラの権能の一部を貸し与えてくれるわよ」
「それだけはヤだ」
断固拒否である。究極の力というぐらいだから、自力で獲得したい。
そう答えると、グリン姉さんは至極残念そうな顔をした。
さて、どうするか。そのままグリン姉さんに聞いてみるのもアリだが──いやアリだな。聞いてみるか。
「グリン姉さん、アルティメットスキルって、どうすれば獲得できる?」
俺の問いに、グリン姉さんは難しい顔をした。
「……一番の近道はスキルの進化かもね」
ほう、スキルの進化。って言っても、どうすればいいんだ? 道のりが不明瞭すぎて何をすればいいのかワカラン……。
「とにかく究極について〝知る〟のが手っ取り早いわね」
うん?
オイオイ、待て待て、それって……。
「早速実践してみましょうか」
やっぱ戦うのかよ!? 俺、またボコボコにされるのか……。
頂点存在と連戦するヴェルアーブが不憫でなりません。