転生したら竜だった件   作:暁悠

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 色んなキャラ登場


第七話 外の世界

 さて、勝利の余韻に浸るのもここまでにしようか。

 グリン姉さん相手に圧勝した俺だが、これからどうしよう? 究極能力(アルティメットスキル)はもう獲得しちゃったし……グリン姉さんの提案通りに軍人として働いてみるのもアリだが、この帝国はかなりきな臭い。皇帝がアレだもんな。自分を支配しようとしたヤツの下で働くなんぞ俺は御免だ。それくらいなら、ザード姉さんに殺された方がまだマシである。

 けど、グリン姉さんは優しくて好きなんだよなぁ……正直、ザード姉さんはまだ怖い。

「お悩みのようですね」

「どひゃあっ!? なっ、ナーガ!? いつの間に背後に……」

「ああ、すみません。ご無礼でしたね」

 堅苦しさはある程度抜けたが、やっぱりまだ堅いな──じゃなくて!? コイツ、全然気配なかったぞ!? 俺が油断して『万能感知』を切ってたのもあるが……。

 もしかしてずっと空気だっただけで、俺とグリン姉さんのお茶会(デート)の時も近くにいたのか……?

「お前、隠密の才能はピカイチだな」

「お褒めに預かり、恐悦至極にございます」

 堅っ!

「堅っ苦しいな。そういう言葉遣いじゃなくて、もっと気楽(フランク)に行こうぜ? 俺とお前は、実質的な家族なんだから」

 何気ない言葉だったが、ナーガには響いたようで──

「家族……家族…ですか。ヴェルアーブ様の、家族……。このナーガ、感激で胸が一杯です」

「感激しすぎだろ! 怖いよ!?」

 ホント、ビビるぐらい忠誠心が高い奴だ。グリン姉さんが優しいからと、躊躇してる場合じゃないな。

「ナーガ、その忠誠心は……本物か?」

「ええ。貴方様にどこまでも尽くす所存にございます」

「だったら……一緒に、来てくれるな?」

「当たり前です。全ては、貴方様の御心のままに」

 ……ならば、もう何の心配もいらない。

 

   ◇◇◇

 

 俺は、グリン姉さんの下に向かった。どうせ、ルドラのところにいるんだろう。

 謁見の間の扉を開けると──そこには。

「おや、貴殿か。珍しいな」

 ルドラ一人か…?

「皇帝ルドラ……姉さんはどうした?」

「使いに行っている」

 コイツ、グリン姉さんにパシらせたのかよ……。初めての家族はナーガだが、グリン姉さん達は〝竜種〟としての家族だ。まぁ、それをパシリにされて怒らないやつはいないわな。

 だが事を大きくしたくないので、怒らない怒らない。

「ふぅん」

「──それで、答えは出たのか?」

 おっとコイツ、またスキルで干渉してきてるな。隙あらばって感じだろうが、俺にはもう通用しない。なぜなら──

「お前に従うなんざ、御免だね。それにもう一回俺を支配しようとしてるみたいだが、無駄だぞ。俺も究極能力(アルティメットスキル)に目覚めたんだ」

「──ほう」

 ルドラは一瞬だけ忌々しげに俺を見つめた後、好きにしろと言った。

「だったら遠慮なく。一応グリン姉さんには俺の口から伝えたいから、少しの間ここにいるよ」

「ふん、好きにするがいい」

 気まずい時間が流れた。どうしようか……。

 ナーガは今のところ黙ってはいるが、これは……内心でルドラにブチ切れてる感じだな。額に青筋が浮かんでいる。

 俺は覚えたてのスキル『思念伝達』で、ナーガに話しかけた。

『なぁ、ナーガ』

『ヴェルアーブ様ッ!?』

『別に怒るのは勝手だが、それを外に出さないようにしろよ? 青筋、立ってるぞ。俺は別に気にしてないからさ』

 それで気づいたのか、ナーガの額に浮かんだ青筋が消えた。表情管理が上手いやつである。俺がもしこのくらいキレてたら、こんなことはできないだろう。

『流石だな』

『お褒めに預かり──』

『違うだろ? こういう時は〝ありがとう〟だ』

『あ、ありがとう…?』

『そう、ありがとう』

『あ、ありがとうございます……』

 少し不服そうだ。なんでそこまでして堅苦しい口調を続行しようとするのかねぇ。俺はそういうの苦手なのに。

『堅苦しいのは苦手なんだよ。だから、な?』

 そう言うと、ナーガも折れてくれたのか『わかりました』と言った。

 暇だし、『思念伝達』を続行しながらナーガの解析でも──ああ、いや、ここでやったら、ルドラに覗かれそうだな。

 そういえば……堅苦しいのとその反応で見れなかったし、姉さん方との戦い続きで意識を向けられなかったが……ナーガもまた、キレイな奴だなぁ……。

 俺とは正反対の真っ白で長い髪はさらさらで、海色の潤った瞳も綺麗だ。肌もツヤツヤだし、唇も──

「ヴェ、ヴェルアーブ様…?」

「あっ、えっ……何…?」

「あまり…見ないでください」

 ナーガが頬を紅潮させながら言った。こういうのなんて言うんだっけ。あざとい? あざといと言うか、可愛らしいな、コイツ。第一印象的には、思い出補正もあって彩花さんの方が可愛く見える。だが、多分実際はナーガの方が何倍も〝可愛い〟んだろうな。

 いやぁ、可愛いやつの恥じらいには破壊力があるね。

「あら」

「え?」

 グリン姉さんが見ていた。この目は……ああ、ヤバイな。これはからかわれる目だ。今すぐにでも逃げたい。

「ヴェ──」

「グリン姉さん! 俺は、ここを出て色んな国を巡ることにするよ! それじゃ──」

「ああ、ちょっと待ちなさい」

 呼び止められた!? そこまでからかいたいのか!?

「な、なんでしょう…?」

「これ」

 そう言って手渡されたのは……小さい袋? 中身はわからないが……軽いな。

「お小遣いよ。約束していたでしょう? 銀貨三千枚に、金貨千枚枚。大事に使うのよ?」

 多すぎやしませんか? 試しに銀貨を一枚取り出してみたが、この大きさの袋には、多くても銀貨二十枚が精々だった。それが四桁……? どうやって入ってるんだ?

「空間を歪ませているからね。幾らでも入るのよ」

 なんて便利な。

「ありがとうございます」

 今度こそ逃げ──じゃなくて、行かなければ。からかわれなかったし、スムーズに出られる。そう思ったのに……。

「ナーガちゃん、だっけ。大切にするのよ」

 耳打ちしてきやがった!! これだから色恋沙汰ってのは苦手なんだよ!!

 まぁ、言われなくともそうするつもりだがな。

「言われなくたってわかってるよ」

「よろしい。行ってらっしゃい」

 視界の端で、ナーガが頬を赤く染めたような……幻覚だな、そうに決まってる。

 それ以上呼び止められることはなく、俺はスムーズに帝国の首都、帝都ナスカ及び……ナスカ・ナムリウム・ウルメリア東方連合統一帝国を後にしたのだった。

 

  ─────────

 

「良かったの、ルドラ?」

 ヴェルグリンドはルドラに問いかける。ルドラはヴェルグリンドに、あらかじめ外に出ておくように伝えたのだ。その間は、好きにしていろ、と。

 ヴェルグリンドからしてみれば、不満である。自身の『並列存在』を使えば、ルドラの傍を離れずとも行動できるから。しかしルドラは、それも許さなかった。

 その理由は──

「良かったのだ。最初(ハナ)から、ヤツを支配できるとも思っておらぬ。アレは、脅威だ。余の手にも余る、脅威なのだ」

 それだけで、ヴェルグリンドには何があったのか伝わった。ルドラは、こうなる──つまり、ヴェルアーブがルドラに従わず、外に出ることを予見していたのだ。

 しかし──

「予想外だ。なぜ、ヤツはもう究極の力に目覚めている?」

「わからないわ、私にも。でも、お姉様を含む〝竜種(わたしたち)〟との戦いが、あの子の可能性を開花させたようね」

 それだけは断言したヴェルグリンドだが、実際、彼女にも詳細は不明だ。何しろ、発生し(うまれ)てから一ヶ月と少しで究極能力(アルティメットスキル)を獲得する事例など、稀有中の稀有なのだから。

 それこそ、ヴェルダナーヴァから直接究極を与えられた者達でもない限り。

 だからこそ、不審に思うのだ。ヴェルアーブは、今までの〝竜種〟と……それだけではない。今まで生まれた存在とは、何かが違う、と。

「警戒しなければならない。余の計画と……ヤツとの〝約束(ゲーム)〟に、支障が出かねないからな」

「わかっているわ、ルドラ」

 そう言って、ヴェルグリンドは微笑んだ。

 

  ─────────

 

 さて、帝国を出たは良いものの……これからどこに行こうか? 地図、とかないのだろうか。そういえば買ってなかったし、考えていなかった。

 

《告。この世界の地図情報を入手しております。開示・閲覧しますか? YES/NO》

 

 もちろんYESだ──って、はあっ!?

 なんで知ってんだよ!?

 

《解。個体名:ナーガによる情報提供です》

 

 え? ああ、送られてきた『暗号思念』はそういうことだったのか。

 実は、グリン姉さんとのお茶会中に、突如としてナーガから『暗号思念』が送られてきていたのだ。暗号化されていたので、『案内者』に解析をお願いしたのだが……まさかこの世界の地図とは。

 えーと、なになに?

 俺達が今いるのが帝国の正門から少しした場所。このまま行くと〝ジュラの大森林〟及び〝東の平原〟に行くことになるだろう。その更に東にある〝傀儡国ジスターヴ〟に行くのもありだと思うが、魔王の領地なので避けたい。その点、魔王同士の条約として、ジュラの大森林には不可侵条約が課されていた。安心だ。

「このまま行って、ジュラの大森林を目指そうか」

「わかりました」

 ナーガの口調も大分柔らかくなった。前までだったら「御心のままに」とか言ってそうである。

 ………

 ……

 …

 そこから平原を抜け、森に入った。

 俺もナーガも飛べるのだが、それをしてしまっては森という要素が死んでしまう。ナーガもゆっくりと歩くことに抵抗があったようだが、自然を観る楽しさを理解してくれたようだった。

 途中、魔物に遭遇した。孤刃虎(ブレードタイガー)という魔物で、結構冷や汗かいたものだ。俺のスペックからして負けるなんてことはないだろうが、前世の経験から、森で出会う猛獣には警戒してしまう。ちなみに、ナーガが一撃(ワンパン)で殺していた。強い。

 ついでに、ナーガの解析もしてみる。

 

《告。個体名:ナーガの情報を開示します──》

 

 名前:ナーガ

 種族:(シン)(リュウ)。上位聖魔霊──〝水霊(すいれい)(りゅう)

 加護:水鏡の加護

 称号:水鏡竜の家族

 魔法:〈水霊魔法〉〈元素魔法〉

 能力:ユニークスキル『流麗者(ナガレルモノ)

 耐性:物理攻撃無効、精神攻撃無効、状態異常無効、

    自然影響無効、聖魔攻撃耐性

 

 ──とまぁ、圧巻だった。

 ナーガのユニークスキル『流麗者(ナガレルモノ)』の効果は『干渉及び抵抗を弾く能力』で、含まれる権能は『思考加速・解析鑑定・法則操作・空間支配』など。例えば、空気抵抗を無効化したり空間の壁を無視して移動することができる。しかも任意でオンオフ可能。転じてつまり、これは『様々な法則・制約をすり抜ける能力』なのだ。

 かなり強力である。俺の究極能力(アルティメットスキル)流転之王(ヴァルナ)』と、どっちが強いかわからない。もしかするとこっちの方が──

 

《否。究極能力(アルティメットスキル)とユニークスキルの間には隔絶された〝差〟がある模様》

 

 だってさ。でも確かに、ユニークレベル止まりの『千変万化(カレイドスコープ)』は、ザード姉さんにその尽くを無効化された。きっとザード姉さんも何かしらの究極能力(アルティメットスキル)を所持しているので、やはりそういうことなのだろう。

 ただし、この『流麗者(ナガレルモノ)』が究極能力(アルティメットスキル)にまで至ったら話は別だ。その時は、もしやもすると俺の『流転之王(ヴァルナ)』よりも強力な権能に仕上がるかもしれない。

 

 そんなことを考えながら森を歩いていると……なんと。

「え?」

 目を疑う光景だった。

「あら、お客様でしょうか?」

 なぜなら目の前にいるのは……女の人。もちろんそれだけではない。あるのはウサ耳に、ウサギの尻尾……つまり、兎人族(ラビットマン)だ。

「こんにちは」

「こんにちは。どのようなご要件で…?」

 もの凄い流暢な日本語だ。いや、思念を乗せて喋ればどんな言語だろうと伝わるらしいので、俺が聞き取った限り「日本語に聞こえる」というだけか。

「あ、ああ──」

「わたくし共は冒険者なのです。道に迷ってしまったので、どうかお教えしてもらえないでしょうか?」

 ナーガが懇切丁寧に対応している……俺がエスコートされてしまった。

「う、うん。そうなんだよ。ここら辺にどこか、国はない? 小国でも構わないから──」

 出迎えてくれた()は〝フラメア〟という、なんと〝名持ち〟の兎人族(ラビットマン)だった。俺は俺自身とナーガに、割と気軽に〝名付け〟を行っていたが、実は危険な行為だったそうだ。本来、魔物の〝名付け〟とは、種族や存在としての垣根を超えて、親と子の〝魂の絆〟を繋ぐ行為だ。種族によっては親が子に力や未来を託す意味もあったりするのだとか。〝名持ち(ネームド)〟と〝名無し(ネームレス)〟の間には隔絶された〝格〟の差があるんだと。

「ああ、それでしたら、北に向かえばドワーフ王国がありますよ」

 ドワーフ王国。正式名称は、武装国家ドワルゴン。英雄王ガゼル・ドワルゴが統治するドワーフの国。対立する西方諸国と東の帝国に対し〝中立〟を誓う国家だ。

 森の中を流れる、アメルド大河。それを辿って北上することで、カナート大山脈に出る。その山脈の中に、ドワーフ王国があるのだとか。ジュラの森を西に抜ければ、イングラシア王国やブルムンド王国、ファルムス王国等の西方国家に出る。しかし今回はそっちに用がないので、北上してカナート大山脈を目指すのだ。

 山頂まで登る必要はない。ドワーフ王国は、アメルド大河の上流であるカナート大山脈の(ふもと)に、その領土を構えているから。

 山脈の、自然の大洞窟を改造した、美しい都。

 それが、武装国家ドワルゴンなのだ。

 現在の王である英雄王ガゼル・ドワルゴは、初代から数えて三代目になるらしい。若き日の祖父に似た覇気を纏う偉大な英雄であり、この地を公平に統治する賢王としての名声が高いそうだ。

 ドワーフの初代英雄王グラン・ドワルゴが国を興してから千年経つが、初代の遺志を継ぎ、歴史と文化、そしてその技術を守り、発展させてきたのだとか。

 そんな賢王が治める地こそが、武装国家ドワルゴンだそうだ。それにしても……このフラメアという少女、なんでそんなに情報を知ってるんだ?

 聞くと、フラメアは興味心旺盛な少女って感じの性格らしく、度々この村を出奔して各地を巡り歩いていたそうだ。その時に、ドワーフ王国にも行ったことがあるらしい。

 ドワーフ王国は人間のみならず、様々な〝亜人〟も住んでいるため、フラメアも歓迎されたんだとか。それなら、俺達が魔物──実際は、〝竜種〟とその眷属だが──だとバレても大丈夫そうである。

 ちなみに、〝人の振り見て我が振り直せ〟ではないが、俺を見て学んだのかナーガも完全に妖気(オーラ)を抑えている。故に、俺達が冒険者であるという言い訳が通ったのだろう。

「ありがとうございます。助かりました」

「いえいえ。……あ、そうそう」

「うん?」

 何だ?

「最近、近くのゴブリン村が急発展を遂げてるそうですよ。なんと、主はスライムだとか」

 スライム? スライムってあの、ネバネバしてそうで柔らかいスライム? 最弱の魔物という印象が強いが、そんなことあり得るのか?

「へえ。ありがとうございます。行ってみようかな」

「いいと思いますよ。そこからでも、ドワーフ王国には行けますし」

 だそうだ。決定だな。

「行ってみようか、ナーガ」

「ですね。お供します」

 にしても、スライムが主の村か……。

 何かを感じる。なんともいえない、何か。ただの勘違いか、それとも……俺が、惹き寄せられているのか。ジュラの大森林は元々、〝暴風竜〟ヴェルドラの加護が染み付いた土地だそうだ。封印されていたヴェルドラを目覚めさせないように、魔王間で〝不可侵条約〟が結ばれているというわけだった。

 もしかすると……いや、そんなわけはないな。ただ、見てみる価値はあるだろう。

 というわけで俺達は、スライムが主だというゴブリン村に向かうことにしたのだった。




 次回、リムル登場。図らずとも、ヴェルドラに接近するヴェルアーブ。一体どうなるのでしょう。
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