ぺ氏は正義感の強い人だった。
彼は有力者の不正を暴き、その事で恨みを買い、無実の罪で炭鉱送りにされる。しかし、ある日、国から名誉挽回のチャンスを与えられる。そのチャンスに活路を見出すぺ氏だが…

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ぺ氏の小惑星開拓記

ぺ氏は持ち前の正義心から党のお偉いさんの不正を暴いた。

…までは良かったが、その国では目上の者に逆らう事は御法度、たちまち身に覚えのない罪で投獄され、そのまま炭鉱送りにされる。一生、元の生活には戻れないと覚悟した時、突然、国の宇宙開発を担当している人から、このまま炭鉱で一生を終えるか、死の危険を伴うが成功すれば人民の英雄と讃えられる道、どちらかを選べと言われる。

当然、このまま炭鉱で死ぬまで使い潰されるよりマシだと、チャンスを掴める選択を選んだ。そして、今、とある小惑星にいる。

 

国から課せられた使命は、小惑星の開発だった。

はじめてそれを聞いた時、ぺ氏は自らの選択を強く後悔したが、ミッションを聞いた時点で既に拒否権は無く、小惑星開発計画に参加する事となる。

計画の中身を知った時、それを計画と呼ぶことすら憚られるが、再び後悔する。

小惑星までロケットで行った後は全て丸投げなのだ。

丸投げというか上手く行ったらラッキー、失敗しても水のあるその小惑星をはじめに開拓しようとしたという事実は残せるから、今後主権を主張する時に便利くらいにしか思っていない。そのズボラな計画の中で犯罪者が死ぬ事なんてなんとも思っていないのだ。

それに気付き、はじめは絶望したが、逆に国にもぺ氏を無実の罪で犯罪者にした奴らにも徐々に腹が立って来て、何がなんでも生き延びてやる!と決意する。同じ様に小惑星に送られた数人の炭鉱夫を励まして小惑星の開発に取り組んだ。

 

まずは水の確保である。

小惑星には地上からの観測で水が埋まっている事は分かっていた。ロケットに積まれた掘削機を使い、そこまで穴を掘り、水源を確保する。無重力下では掘削作業だけでも一苦労だったがなんとかやり遂げた。

次に小惑星の外殻に持って来たソーラーパネルを設置して発電し、水を電離分解して酸素と水素に分けた。地球より太陽が遠い為、発電量を心配したが、大気が無い分、ダイレクトに太陽光を受けられた上、ソーラーパネルについて我が国は他国に売りつけるほど製造して持っていた。売りつけた先のある国ではソーラーパネルで山が丸ごと覆われて、そこに住んでいた熊が下山して民家を襲う事件が多発するほどだった。だから大量にあった在庫をロケットに積めるだけ積んでおいた為、何とか必要量を確保することが出来た。

この段階で地球から積んできた酸素の備蓄は半分以下になっていたので、恐怖から仲間の一人が発狂しかかっていたが、酸素の確保という成果で仲間達も持ち直してくれた様だ。

地球から持って来た藻に近い食用植物を水耕栽培で栽培を試みる。

ここでも発電された電気が役に立った。

光と水を与えられ、藻はぐんぐん育ってくれた。

初の小惑星産の生産成功である。

同じく地球から持って来た様々な種類の卵の孵化にもチャレンジしてみる。鳥類は軒並み全滅だったが、芋虫の生育には成功する。これで動物性タンパク質の確保も可能になった。

食べ物と水、酸素が自給出来るようになった事で、備蓄が徐々に減って死が近づいて来るというプレッシャーからは解放された。ぺ氏は仲間達と手を取りあい喜んだ。

 

近々の死の恐怖が去った事で、生活空間の改善に目が向けられた。

地球を離れて数ヶ月。

無重力での数ヶ月の生活で仲間も体に不調をきたしていた。

人工重力による住環境の改善が急務であった。

掘削機で縦横数十メートルの空間を作り、そこに直径30メートル、幅5メートル程の観覧車の様な、いやむしろハムスターの回し車の様な人工重力機を作る。本来ならば最低でも直径120メートルは欲しいところだが、乗って来たロケットを解体して作ったので、この大きさが限界だった。一応この機材でも地球と同じ重力を再現する事は出来たが、まるでジェットコースターになっている様な感じで、乗り物酔いになる者が続出した為、現在では地球の重力の1/4を少し超える程度で運用している。それでも上下がある生活を再現できた事で仲間達の体調も少しずつ良くはなっていった。

 

その頃になると、自分達の排泄物をずっと溜めていた物が、肥料としてギリギリ通用出来るレベルになっていた。

試しに、小惑星の石を砕いた物と混ぜて野菜の種を蒔いてみたら、見事に発芽してくれた。このまま野菜として育ってくれらかどうかはまだわからないが、新たな命が育っていく姿は皆んなの希望となって、小惑星での生活を潤してくれる。小惑星での生活は何もない生活ではあったけど、逆に無駄な物など何一つない生活と言うのは、常に何かもっと利用できる方法はないか?活用出来ていない物は無いか?と脳が刺激され、地球にいた時よりも、なんだかやりがいのある毎日を送れていた。

 

そんなある日、国から通信が入った。

タイムラグがある為一方通行の通信ではあったが、今までこちらからはちゃんと定時連絡を行っていた。しかし、国側から連絡が来る事ははじめてであった。住環境として曲がりなりにも継続して住む事が可能になった事で、本国のお偉いさん方は世界に先駆けた成果を誇示しようと考えたのだろう。小惑星の目立つ所に我が国の国旗を掲げよとの指示だった。

確かにロケットの積荷の中に大きな国旗はあった。

しかし、ここは何も物のない小惑星である。

大きな布地を遊ばせておく余裕は皆無である。

小惑星を開拓で毎日体を酷使する生活は衣服の消耗も激しいのだ。

本国には、積荷は小惑星にドッキングした時の衝撃でビリビリに破けて無くなってしまったので、新しいのを送るようにと通信を送っておいた。

通信を送った後、ふとまた国旗が届くのかと、ここに来てからあつらえた自分のパンツを覗き見ながら、

「そろそろこのパンツもくたびれて来たな」

と独り言を言う。

そんなぺ氏の履く赤パンツには五つの星が輝いていた。

 

 


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