笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

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第8笑:鬼舞辻 改め汚物辻

十二鬼月への昇格を目論む矢琶羽とそれに巻き込まれた朱紗丸の魔の手から珠世を庇った炭治郎だったが、

「そこの呪術師よ、術式を収めなさい。既に戦いは終わりました」

「終わった?貴女はあの鬼に何をしたんです?」

珠世の謎めいた台詞に軽く混乱する炭治郎に対し、朱紗丸は大慌てで首を横に振った。

「違う……わしは何も言っておらぬ!何も喋ってはおらぬ!」

(怯えてる!?さっきまで殺意満載だったのに、何で!?)

その答えは、朱紗丸の急激な変化が残酷(・・)に示した。

朱紗丸の口と臍から極太で筋骨隆々な腕が生えた。

それを見た炭治郎がされなる攻撃を警戒したが、珠世がそれを優しく制止する。

「いいえ……彼女はもう直ぐ死にます。残念ながら」

その言葉通り、突然生えた腕が朱紗丸を殴り始めたのだ。

「その名を口にしましたね。呪い(・・)が発動する……可哀想ですが……さようなら」

珠世のこの言葉で、炭治郎は朱紗丸の身に何が起こったのかを正しく理解した。

「あの鬼は……無惨に殺された……そう言う事ですか?」

珠世は悲しげで残念そうに言葉を紡ぐ。

「……ええ。無惨はある事件をきっかけに、鬼に自白を禁じました。つまり、鬼は許可無く無惨の事を喋ってはいけないのです」

炭治郎は複雑な気持ちで拳を握り締めた。

(甘かった!自分を囮にすれば鬼を捕縛出来ると安易に考えてしまっていた自分が!この鬼は……私に殺された様なものだ!)

その間、無惨の自白禁止の呪いにタコ殴りにされていた朱紗丸の口からか細い要求が漏れた。

「鞠……鞠……」

炭治郎は涙を堪えながら近くにあった鞠を朱紗丸に手渡した。

「はい……これで良いんだな?」

「遊ぼ……遊ぼ……」

炭治郎は耐え切れずに滝の様な涙を流した。

「……ええ……何して……遊ぼうか!?」

そして、朝日が矢琶羽と朱紗丸を焼き尽くして消滅させるが、無惨の邪悪な悪意への怒りが強過ぎて、炭治郎の耳に矢琶羽の悲鳴は届かなかった……

「……鬼か……鬼舞辻無惨(あいつ)は!」

「そこの呪術師……貴女はいったい?」

珠世は炭治郎が何者か判らなくなってきたが、炭治郎の耳飾りを見てハッとする。

(あの耳飾りは!?この子まさか……私に希望を与えてくれたあの男の!?)

そして、珠世は決断する。

「私は珠世と言います。既に気付いていると思いますが、私も鬼です」

「な!?珠世様!?殺されますよ!」

だが、確かに珠世が鬼だと既に気付いていたが、炭治郎はこの2人が敵だとは思えなかった。

「竈門炭治郎と言います。こっちは妹の禰 豆子と言います」

 

「そうですか。鬼に変えられた妹さんを救う為に」

「ええ……」

炭治郎は迷ったが、珠世がその迷いを優しく否定した。

「私達は大丈夫です。密かに鬼を研究して無惨の呪いを解除していますので」

炭治郎は正直怖かった。朱紗丸の二の舞になるのではないのかと。

だが、禰 豆子の姉としての使命の方が勝ったので、炭治郎は遂にあの質問を吐いた。

「では単刀直入に訊きます……鬼を人間に戻す方法は在りますか!?」

対する珠世が出した答えは、

「無いのであれば、造るしかありません」

「造るって、鬼を人間に戻す方法をですか?」

「そうです」

炭治郎にとっては竈門ベーカリー壊滅事件の時から探し求め続けた光明に、漸く手が届いた気分だった。

その光はマッチの様に小さいかもしれないが、炭治郎にとっては掛け替えの無い至宝だった。

「で!材料は!私は何をしたら良いのですか!」

愈史郎は珠世に飛び掛かりそうな炭治郎を慌てて制止する。

「落ち着けお前!珠世様の御話を最後まで聴け!」

「あ……すいません……」

申し訳なさそうに座る炭治郎を見てクスッと笑う珠世。

「良いのですよ。貴女も、無惨に多くの者を奪われてる身なのですから」

が、珠世は直ぐに真顔になる。

「治療薬を作る為には、沢山の鬼を調べる必要があります。貴女にお願いしたい事は2つ」

そう言うと、珠世は熟睡している禰 豆子の方を見た。

「1つ、妹さんの血を調べさせて欲しい。2年もの間、人を食っていないにも関わらず、まったく凶暴化していない禰 豆子さんの奇跡に、賭けてみたいのです」

炭治郎は一瞬迷ったが、

「解りました。で、もう1つは?」

「2つ……出来る限り鬼舞辻 の血が濃い鬼からも血液を採取して来て欲しいのです。出来ますか?」

そっちの方は、既に覚悟は出来ていた。

「解りました。どの道、鬼舞辻 を!……もとい!汚物辻を倒す心算で呪術を学んできましたから!」

それを聴いた珠世は、堪え切れずに笑ってしまった。

「ブッ!くく!」

「珠世様?」

「御免なさい。今まで(自分を含む)鬼舞辻 無惨を殺したくなる程恨んだ者ならウンザリする程見てきましたが、鬼舞辻 をここまでコケにした者は初めてでした」

対する炭治郎は真顔で答える。

「あんな糞を魅せられたら、誰だってああ言いたくなりますよ」

珠世は炭治郎の真剣な眼差しを視て決心する。

「解りました。貴女に、私達の命運を託しましょう」

「珠世様!?よろしいのですか?こんなお人好しに賭けても」

「私は……彼女達を信じます。事情が有るとは言え鬼となった者と助け合っていて、鬼舞辻 に殺された者への哀悼の意を忘れない貴女なら、鬼殺隊ですら成し遂げられなかった奇跡、起こせるのかもしれません」

 

後日、老爺姿の鬼が炭治郎に勢い良く吸い寄せられた。

「むおぉーーーーー!?」

「あんたの笛のせいであんたに近付けないのであれば、あんたが私に近付いてくれれば良いだけの話よ!」

「サラッと超やばい事言ってる!」

「ヒノカミ神楽、烈日紅鏡!」

∞を描く様な斬撃が老爺鬼の身体を4分割した。

「おいーーーーー!儂を誰だと思っておるぅーーーーー!」

老爺鬼は頭部から腕を生やして炭治郎に襲い掛かったが、

「ヒノカミ神楽、日暈の龍・頭舞い!」

炭治郎の更なる斬撃が老爺鬼の身体を更に粉々になった。

「何なんだ貴様は!?糞っ!糞っ!儂はこれから十二鬼月に―――」

「あっ、忘れ物した」

「おいーーーーー!」

炭治郎が投げつけた短刀が老爺鬼から血を吸い採った。

「刺したら自動で血を採ってくれるなんて……こんなの作った愈史郎さんは器用だな」

そこへ、1匹の猫がやって来た。

「この子か?」

この猫は茶々丸と言い、珠世の使い魔である。

「こんな雑魚の血で悪いけど、珠世さんの所へこれを届けてくれ」

炭治郎が茶々丸が背負っているバッグに例の短刀を入れると、茶々丸が愈史郎の血鬼術を使って透明になった。

「珠世だと!?そいつを殺せば、儂は十二鬼月、に!?」

老爺鬼が茶々丸に飛び掛かろうとするが、炭治郎の無下限呪術がそれを阻む。

「気を付けてお行き」

「おのれぇーーーーー!何者なんじゃあぁーーーーー!」

そうこうしている内に夜明けとなってしまい、

「ぎゃあぁーーーーー!」

「『許して』なんて甘ったれた事は言わない。でも、感謝はして欲しい。やっと死ねて無惨の呪縛から解放されたんだ」

炭治郎の悲し気な顔の意味を理解出来ない老爺鬼は、恨みの言葉を吐いた。

「糞っ!糞っ!貴様さえいなければ!儂は十二鬼月に!」

それを最期に老爺鬼は消滅した。

(汚物辻……首を洗って待っていろ!鬼に殺された人達の為にも、汚物辻に鬼に変えられた人達の為にも!)

それを観ていたカンナがニヤリと笑った。

(出したわね?『蒼』を)

だた、カンナが完全に満足しているわけではなかった。

(でも、赫はまだ出していない。まだ使いこなしていないのか?それとも、十二鬼月より下の雑魚鬼如きでは赫を引き摺り出せないのか?)

そこで、炭治郎の観察を目論む呪詛師一派は、次の一手を打つべく最終選別用に生け捕られた鬼達が棲む藤襲山へと向かった。

 

一方、鬼舞辻 無惨は炭治郎の成長と発言に怒りを覚えた。

「あの太刀筋……あの男を思い出させるあの太刀筋……」

そんな事も遭ってか、法衣姿の男は無惨に進言する。

「そろそろ、只の血鬼術だけでは歯が立たなくなってきている。いよいよ、十二鬼月の出番では?」

だが、無惨はそれを否定する。

「何を言っている?十二鬼月は青い彼岸花の捜索で忙しいのだ。お前も早く探し出せ」

「良いのかい?我々が青い彼岸花の正体を知る前に、あの娘が君を」

法衣姿の男は無惨に睨まれた為、渋々口を閉ざす。

「貴様……そんなに無下限呪術が怖いか?恐ろしいか?」

法衣姿の男は溜息を吐きながらその場を後にした。

「解ったよ。青い彼岸花を探しに行けば良いんだろ」

「行くではない……『往く(・・)』だ!」

法衣姿の男は、無惨の青い彼岸花一辺倒に呆れながら部屋を後にした。

 

そんな法衣姿の男が当ても無く歩いていると、複数の呪詛師がやって来た。

「藤襲山に囚われている鬼の中に小学生ぐらいの女児が居ましたので、はさ……カンナの指示で稀血10人分と禪院家に殺されたと思われる女流呪術師達を食わせました。因みに、10人の稀血は全員非術師です」

それを聴いた法衣姿の男が溜息を吐いた。

「禪院家は最期まで相変わらずか……稀血の方は気を遣わせて悪かったね」

「いえ」

「で、その件の女児の方は?」

「は。つい先ほど、血鬼術と炎凝呪法に目覚めました」

「そうか……呪術を使う鬼か……流石の無下限呪術でも手古摺るだろうね。それこそ……茈を引っ張り出さなきゃいけない程に……くくくくく……ふははははははははは!」

 

そんな幼女の鬼は、まだ人間だった頃に親に売られて他の遊女達に虐待されており、その結果、鬼の中では引っ込み思案で内向的と言える性格になってしまった。それ故、鬼殺隊候補生が藤襲山にやって来た時も怯え過ぎて上手く襲えず、ただ何十年も空腹と飢餓に苦しめられてきた。

だが今は、自分を藤襲山から救い出してくれた呪詛師一派に恩返しするべく、顕現させた炎を拳銃に変えて恐怖に打ち勝とうとしていた。

震える手で彼女が銃口を向けるのは、竈門炭治郎の写真の……




原作との相違点

●鬼舞辻無惨

・令和7年まで生存。
・個人投資家として成功し、悠々自適の生活を送っている。
・気まぐれで(一応あの耳飾りの行方を追ったうえでの行動)竈門ベーカリーを壊滅させたが、その事がきっかけで禰 豆子が鬼と対立する鬼となり、炭治郎が無下限呪術と六眼を習得するきっかけになってしまった。
・朱紗丸粛清を機に、炭治郎に『汚物辻』と言う仇名を付けられた。

●笛鬼

・令和7年まで生存。
・煉 獄杏寿郎とは無関係。
・竈門炭治郎と交戦し敗北。
・死因は日光の浴び過ぎ。

●茶々丸

・原作とほぼ同一。

●銃鬼

・本作オリジナルキャラクター。
・最終選別用に生け捕られて藤襲山に囚われた幼女の鬼だったが、竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派の策略によって稀血を有する非術師10人と禪院真依・禪院扇の脳を食わされ、下弦に匹敵する呪詛師として覚醒した。
・弾道や軌道などの『動き』を操る血鬼術と炎凝呪法を開花させており、銃などの武器に呪力を籠めて打ち出し、高威力のチャージショットを発射する事も可能。
・引っ込み思案で内向的傾向を有するものの、自分を藤襲山から救い出してくれた呪詛師一派に奉公するべく鬼特有の傲慢・凶暴に徹しようとする健気な一面も持っている。

●禪院真依

・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで死亡認定を受けている。
・脳を竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派に奪われ、銃鬼に脳を食われた。

●禪院扇

・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで死亡認定を受けている。
・脳を竈門炭治郎の観察を目論む呪詛師一派に奪われ、銃鬼に脳を食われた。

●炎凝呪法

・本作オリジナル術式。
・炎を顕現させ、火を物体に変える術式。
・『呪術廻戦』における『構築術式』や『焦眉之赳』に相当する術式。
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