笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

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第9笑:坊ちゃん、困ります!

ある日の私立善根高等学校。

我妻善逸が大ピンチに陥っていた。

と言うか想定外!

情報不足による完全な想定外である!

「……やってしまった……」

善逸が返って来た答案用紙を視て愕然としていたが、何も知らない者が見たら、まるで善逸が赤点を取ってしまったかの様に見えるが、実際は逆で、

「何で雪賀さんが赤点を採ってんのおぉーーーーー!?」

つまり……善逸は『追試如きに自由時間を奪われる様な間抜けにスパイは務まらない』と言う思い込みに囚われ過ぎて、秋場雪賀が赤点を採る可能性を考慮せずにテストを頑張り過ぎてしまい、結果、雪賀だけ(・・)が補習授業を受ける事になってしまったのだ。

「こんな間抜けな理由で護衛対象から離れる羽目になるとは……不覚!」

それについて、雪賀の護衛を務める筈の寒崎椿は善逸を擁護した。

「そもそもの要因は、雪賀さんが赤点を採ってしまった事にあります」

「それじゃあまるで、僕が悪い事をしてしまったみたいじゃないか」

「『みたい』じゃなくて実際にしてしまったんです」

椿に厳しく叱責されてしまった雪賀が困り果てる中、善逸は一縷の望みを託すかの様に竈門炭治郎の方を見た。

「そうだ!炭治郎!お前は呪術の練習で忙しいから!テスト勉強なんてしてないよね!してないよね!お願い!してないって言って!」

だが、

「……ごめん」

炭治郎の返答に善逸は愕然とした。

つまり、善逸と炭治郎は雪賀が受ける予定の補習授業に参加出来ない事を意味していた。

そして、雪賀が補習授業を受けてる間は、椿1人で雪賀を護衛しなければいけないと言う窮地を意味していた。

「と……とりあえず乙骨さんに相談してみるね(汗)」

「何で?ちゃんと生徒として認定されている俺達とは違って、そいつは完全に部外者だろ?しかも、今回の補習授業の担当は不死川実弥。ちょっとやそっとでは例外を作ってくれねぇぞ?」

と、善逸にツッコまれてしまったが、何か手を打たないといけない緊急事態には変わりなかった。

「……何でこの2人が赤点採れなかったくらいでこんなに騒ぐの?」

「雪賀さんだけ(・・)赤点を採ったのがいけないんです」

「僕のせい?」

「雪賀さんのせいです」

 

「と言う訳で炭治郎ちゃんに助けを求められたんだけど、パンダくん、どうしようか?」

乙骨憂太の質問に対し、パンダは至極真っ当なツッコミを飛ばした。

「そいつ、本当に秋場財閥次期総支配人なのか?」

 

不幸中の幸いな事に、『サマー』が送り込んだ刺客が今回の補習授業を襲う事は無かったが、今後の為に善逸と炭治郎が雪賀が受ける補習授業に参加出来ない事態を未然に防がなきゃいけないと言う事で、

「しょーがない……やるかぁ……」

雪賀は渋々勉強する事になったが、

(1番苦手な数学……僕は文系に進むので、数学は捨てて良し!)

※よくない!

(英語は翻訳AIが発達しているから必要性ナシ!国語、理科、世界史、日本史……こんなんググれば良くない?美術とかも生成AIがやりゃーいいでしょ!)

と……こんな感じで一向に捗らず、

「椿ぃ……僕達若者が勉強する意義無くない?」

「屁理屈言わない!」

 

その頃、善逸は雪賀が受けた補習授業に参加した生徒達を秘密裏に調査してみたが、

「やはりこいつらには期待出来ねぇなぁ。あの嘴平伊之助(いのしし)ならそこら辺の変質者と互角に戦えそうだが……」

やはり結果は『期待外れ』であった。

「そりゃそうだよなぁー……何の訓練も受けてない素人が、本物の暗殺者や炭治郎や乙骨憂太の言う様な呪詛師とまともに戦えるわけ無いよなぁー」

そして、善逸は自分が犯した失態に向かって悪態を吐いて舌打ちをした。

「こんな事なら、下手に背伸びせずに赤点採っときゃ良かったぁー!本当に不覚だよ」

 

その頃、炭治郎の許を訪れたのは、

「あ、パンダさんに七海さん。御足労おかけします」

「話は乙骨くんから聴きました。大変でしたね」

「まさかこんな形で護衛対象に足を引っ張られるとはねぇー。そいつ、本当に秋場財閥次期総支配人なのか?」

「寧ろ、私達と雪賀さん達の足並みが揃わないのがいけなかったんですが―――」

「何で?そもそも、そいつが赤点採らなきゃこうはならなかったんだろ?」

「確かにそうかもしれませんが、どんな理由が有れ護衛対象から離れるのは」

「感心しませんよねぇー。普通」

だが、

「かと言って、答案用紙を無記入でと言うのは……」

「いくら何でも馬鹿げてるよねぇー」

「つまり、『良心が痛む事無く雪賀が受ける補習授業に参加する方法を教えてくれ』と言う訳ですか?」

「……出来ますか?」

七海は少し考えたのち、1つの提案、いやナイト・エージェンシーへの依頼を口にし始めた。

「ナイト・エージェンシーの手を煩わせる事になりますが、少し狡い手を打ってみましょうか」

「狡い手、とは?」

 

「つまり僕が良い点取れたら、椿からえっちなご褒美を貰えるって事おぉーーーーー!」

七海が提案した『善逸と炭治郎が雪賀が受ける補習授業に参加出来ない事態を未然に防ぐ』方法は単純明快で、ただ雪賀が赤点採らないよう『報酬(えさ)で雪賀を誘導する』と言うモノだったが、どう言う訳か椿が(本当の意味で)一肌脱がないと実行出来ない作戦へと豹変してしまったのだ。

(何を言ってるんだこの人は?)

「許せ寒崎。これも秋場雪賀護衛任務を円滑に進める為だ」

が、直ぐに雪賀が弱音を吐き始めた。

「でも、流石に数学とかは教えて貰わないと難しい……」

「つまり教師役が必要って訳か?」

「それなら既に手は打ってあります」

「えっ?椿が教えてくれるの!?」

が、椿の答えは、

「私の父が教えられます」

そう、寒崎椿の父親は国立理学部を卒業しているのだ。

「若い頃、家庭教師のバイトもしておりました」

「高学歴だったの!?」

と言う訳で、椿の父親による雪賀へのスパルタ教育が始まった訳だが、

「この公式は死ぬ気で覚えて!今日はこの問題集10ページ進めます!」

「ひいい」

「違います!その解を求める時に使う公式は―――」

「し……死ぬぅー……」

5時間後。

「5分休憩しましょう」

(きっ……厳しい……5分って……)

とは言え、全ては身から出た錆。なので、

「椿パパ、スパルタ過ぎる。でも、ここは頑張って……」

「御子息ー?戻りましたよー」

(頑張って背後から1発食らわせて逃げよう!)

と、こんな感じでスパルタ教育から逃げようとする雪賀だったが、椿の父親はいとも簡単に大辞典をキャッチした。

「御子息、そんなパワーでは私を仕留める事は―――」

が、雪賀は逃走を諦めようとはせず……

「スタンガン攻撃ー!」

「あばばばば!じゃなくて!御子息!席についてください!」

「ヤダー!勉強飽きたー!」

結果……大地震に襲われたかの様の部屋は荒れた。

これには椿も炭治郎も呆れ顔である。

「どうしてこうなった」

「よほど勉強が嫌いなんですね?」

とりあえず雪賀を起こす炭治郎。

「でも、逃げちゃ駄目な時もあります。努力精進を怠らず誠実に生きていれば、何時かそれに気付いて認めてくれる素敵な女性が現れますよ」

「お前……何を言って、る!?」

その際、自分と同学年の少女とは思えない程に痛ましく、分厚く、鍛え抜かれた炭治郎の手を見た雪賀は、秋場家に生まれてのうのうと生きて来た自分とは真逆の存在だと思い知らされた。

 

その後、真面目に勉強する様になった雪賀は段々と成績を上げて往った。

「ああ……模擬テスト80点です」

これには善逸も少しだけ安堵した。

「この調子を期末試験まで続けてくれれば、雪賀が受ける補習授業に参加出来ない事態は防げそうだ」

「頑張りましたね、雪賀さん」

「もちろんだよー」

が、ここで雪賀の椿を困らせる邪念が出てしまう。

「えっちなご褒美の為だもん」

(まだ憶えていたか……)

「駄目ですよ。て言うか約束してません」

「えーーーーー!」

「許せ寒崎。これも秋場雪賀護衛任務を円滑に進める為だ。こう見えて、秋場雪賀だって男子なんだから」

善逸の台詞にヤバさを感じた椿が反論する。

「我妻!貴方はどっちの味方なんですか!?」

「もっち、秋場雪賀護衛任務の為に派遣されたエージェントなんで」

「ナイト・エージェンシーの許可も得ました」

退路を塞がれる形になってしまった椿が渋々言葉を紡ぐ。

「とにかくまだ、期末の結果は判らないので」

「ええー」

そうして、試験期間は過ぎていき……

「数学82点。理科78点……」

「40点以上も上がったよ!椿!」

この会話に善逸が不安を覚える。

(え……78から40を引くの?)

しかも、

「ただその……国語38点。社会32点……理系科目以外が低くて……」

「つまり……赤点を2つも採ってしまったって事?」

「完全にそっちの勉強忘れてた」

結局、雪賀が受ける補習授業に参加出来ない事態を防ぐ事には失敗したが、炭治郎は雪賀の努力を認めてフォローした。

「でも一生懸命頑張ったんだし、猥褻な願いでなければ、受けてやっても良いんじゃないか?」

「やたー♪えっとじゃあ……」

と言う訳で、椿はチアガール姿になった。

「何故……」

「椿かわいーーーーー!」

ただ、雪賀をおもいっきり後悔させる事になってしまった。

(かわいいけど……テスト前にこの格好で応援させりゃ良かった……)

 

その頃、雪賀が受ける補習授業襲撃を企てていた呪詛師が、法衣姿の男が率いる炭治郎の観察を目論む呪詛師一派の手引きによって強大化した幼女の鬼に襲われていた。

「貴様……貴様の狙いも雪賀のあの腕輪か!?」

この呪詛師はオガミ婆と言って、降霊術を悪用した変装を駆使して荒稼ぎを重ねて来た凶悪犯だが、長時間の念仏を必要とする為、今回の様な奇襲への対応には不向きな術式である。

本人もそれを知ってて幼い頃に誘拐して血縁を偽って育てた孫達に自身の介護をさせてきたが、敵は十二鬼月に匹敵する鬼。生半端な者では停められない。

「いいえ。貴女には彼女を呼び出す為の伝え手になって欲しいんです。そう……竈門炭治郎を」




原作との相違点

●七海建人

・未だ生存。
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。

●パンダ

・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・お兄ちゃん核とお姉ちゃん核は無事。

●寒崎凍鶴

・本作オリジナルキャラクター。
・秋場家の護衛をしている一族出身。
・寒崎椿の実の父親。
・国立理学部を卒業した高学歴。

●オガミ婆

・未だ生存。
・羂索とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。だったが……

●オガミ婆の孫

・銃鬼の襲撃を受けて死亡。
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