笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~ 作:モッチー7
炭治郎の観察を目論む呪詛師一派の策略に嵌った乙骨憂太は、十二鬼月の1人である玉壺の呪術高専侵入を許してしまった。
善逸にとってもこの事態は想定外であり、自分の不注意さを呪った。
「すまない」
「何の事?」
「俺がこんな化物に
が、当の玉壺はそれを嘲笑う様に否定する。
「
「邪魔者?」
憂太は実に無惨らしい考えだと思った。
恐らく、禰 豆子を一刻も早く人間に戻したい炭治郎の無下限呪術を恐れ、呪術師の徹底排除を決断したのだろう……憂太はそう思った。
「呪術を舐めてんのか!?そんなに呪術師が邪魔なら、無惨自ら来い!」
玉壺はそれも否定する。
「お断りする!ここにわたくしが到着したのです。無惨様の手を煩わせるまでもない!」
そして、玉壺は憂太にとって予想外な事を言った。
「それに、これは新入りの進言を基に動いている」
「新入り!?」
「まあ、情けない事に、不覚にもその者に抜かれてしまいましたがねぇ」
憂太が驚く中、善逸は既に臨戦態勢を取り、
「雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃」
まるで瞬間移動の如く高速移動しながら玉壺とすれ違い、すれ違いながら抜き打ちを見舞う善逸。
「時間稼ぎ、ありがとよ乙骨。弱い犬程よく吠えるとは、正にこの事だな」
玉壺の胴体を切断した事で勝ちを確信した善逸だったが、善逸の異常聴覚がそれを否定する。
(何!?こいつの心臓、まだ動いているだと!?下半身を失った筈なのに!)
「やってくれましたねぇ……この玉壺様の芸術的な身体を切断しましたね?」
「くそ!見た目通りの化物め!」
「化物?それは君が審美眼のない猿……」
善逸は、霹靂一閃を連発して粉々にしてやろうとするが、
(こんだけ斬れば……何で動く!?奴の心臓!?)
それどころか、別の場所に在った壺から玉壺がにょきと生えた。
「斬りましたね!?わたくし自慢の壺を!」
霹靂一閃連発の副作用で空中に投げ出された状態に陥った善逸は、瞬時に武器を切り替え、二丁拳銃で玉壺を銃撃した。
「はあ……はあ……はあ……こんだけ銃弾が貫通すれば……」
だが、善逸の期待通りの展開は……来なかった。
「何でぇー!?顔面と心臓と肺に着弾した筈なのに!何でこいつの心臓はまだ動いてんの!?」
想定外過ぎる展開の連続に、善逸は大混乱した。
「何なんだこの化物は!?」
次は自分の番と言わんばかりに善逸を睨む玉壺。
「随分騒がしい猿だな貴様は!無教養の便所虫が!」
そして、一瞬の隙をついて善逸の肩に噛みつく玉壺であった。
「ぐ!?」
「私の腹の中で、精々芸術のなんたるかを、思い知るが良いぃー!」
その直後、何者かが柏手を打った。
「何やってんの君?物凄く痛いんだけど」
「それはそうだろ?わたくしに食われているのだから……」
よく視ると、さっきまで黄色だった筈の善逸の頭髪が、急に黒くなっていた。
「……誰だお前?」
そう……玉壺が気付いた時には、善逸と憂太の立ち位置が入れ替わったのだ。
しかし、玉壺はどうでも良かった。
(まあ、どうでも良いか。コイツをさっさと食い殺して、あの無教養の便所虫をさっさと―――)
が、玉壺は何者かに突き飛ばされ、憂太を手放してしまった。
(なんだ!?わたくしは何時殴られた!?動きが全く見えなかった!?)
玉壺が慌てて手に持った壺から水流を発射した。
「血鬼術!水獄鉢!」
水流は憂太を閉じ込め、液体ゆえに柔らかくグニャグニャと変形して内部からの破壊での脱出を防ぎ、同時に水責めで敵を溺れさせる。
(勝った!)
だが、柏手が響いた途端、憂太とぬいぐるみの立ち位置が入れ替わった。
「何いぃー!?何時の間に抜け出した?」
しかも、そのぬいぐるみは只のぬいぐるみではない。
(暴れてる。わたくしの水獄鉢の中で)
ぬいぐるみに見えたそれは、実は夜蛾が作った戦闘用呪骸である。
(いや!そんな事より、奴はどうやってすり替わった!?)
「知りたい?」
憂太の突然の発言に玉壺が慌て驚く。
「おわ!?何時の間に!?」
「これは本来、東堂葵と言う術師が使用する術式で
柏手が響いた途端、玉壺の目の前にいた筈の憂太が消え、代わりに筋肉質に膨れ上がったパンダが出現した。
「何だこいつ!?」
呪骸の心臓となる核は本来1つ。だがパンダの中には3つの核があり、メインの核を入れ替える事でボディを転換出来る。
「
それこそがゴリラモードの真骨頂。
当てたものの内部に衝撃を浸透させる、防御不可能の打撃。直撃すれば、いかに十二鬼月とてひとたまりもない。
だが、玉壺の手に持った壺から蛸の足に似た触手が溢れ、パンダの視界を遮る。
「血鬼術!蛸壺地獄!」
いかに激震掌が大威力と言えど、それは『当たった物の内部を破壊する』事が本質。血鬼術を障害物として挟まれては、ダメージにならない。
「危な!?何なんだこれはぁー!」
玉壺はまたしても憂太に背後から声を掛けられた。
「お疲れ様、パンダくん」
「ぬおぉー!?すばしっこい奴だなお前ぇー!」
だが、憂太の返答は玉壺の想定外であった。
「いや、僕は1歩も
「何を嘘を言っている。現に貴様は―――」
「これが
「入れ、替える?」
試しに憂太が柏手を打つと、憂太とパンダの立ち位置が入れ替わり、玉壺がパンダに正面を取られる形となった。
「ぎ!?」
だが玉壺はいやしくも十二鬼月。
壺から壺への瞬間移動でパンダの激震掌を回避する。
「危険極まりないな貴様ら!だが、お前の様な手足の短いちんちくりんの刃、私の頚には届かない」
が……柏手が響いた途端、憂太と玉壺の立ち位置が入れ替わり、玉壺がパンダに正面を取られる形となった。
「うお!?いい加減にしろ貴様ら!」
玉壺が慌てながら怒る中、憂太は呑気に自身の術式の説明をする。
「とは言え、僕の
玉壺は言ってる意味が解らなかった。
「本物じゃない?どう言う事だ?」
「僕の本来の術式は模写。他者の術式を無制限にコピーしてるだけ。良く言えば見真似稽古。悪く言えば贋作だよ」
「贋作!?と言う事は、完成度は―――」
その時、憂太のスマホにメールが届いた。
「ん?ちょっと待って」
「おい!」
メールの内容を見た憂太は、意を決して柏手を打った。
「また消えた!?今度は誰と―――」
「堕ちろぉーーーーー!」
狗巻棘は一族に伝わる高等術式「呪言」の使い手。つまり、喋るだけで相手を呪う事が出来るのだ。
が、術の性質上、意図せず人を呪う事も多く、その為、普段は会話の語彙をおにぎりの具に限定している。また、連続で使用したり、「死ね」などの、より強力な言葉を使用するほど身体(特に喉)への負荷がかかるので、多用は出来ない術式でもある。
そんな呪言をもろに受けた玉壺の体に何倍、何十倍もの重力が襲った。メリメリと骨が軋む音が響き、やがて玉壺の足元が砕け、地面ごと圧し潰されてゆく。
だが、玉壺は壺から壺への瞬間移動で再び憂太の前に現れる。
「いい加減にしろよ蛆虫共……」
またしても柏手が響いたので、玉壺が慌てて身構えるが、憂太の身に何も起こらなかった。
「……あれ?」
「と、こんな感じで手を叩いただけで相手を驚かせる事も、
「殺すぞ!」
改めて憂太の殺害を決意する玉壺だが、憂太は柏手が響く度に一瞬でどこかに行ってしまうので、
「こうなれば、一斉攻撃だ!」
ニシキゴイに人の手足を生やした様な姿の使い魔を次々と発生させ、更に手にした壺から金魚が飛び出して無数の針を飛ばした。
「血鬼術!千本針魚殺!」
(こうやって広範囲な攻撃を続けて行けば……)
だが甘かった。
千本針魚殺の餌食となったのは、どれも玉壺がさっき発生させた使い魔ばかりで、憂太には1本も当たらない。
「いい加減にしろよマジで!」
(いかん!このままでは、抜け出せない!)
けど、日輪刀を持たぬ憂太達も攻め切れずに困っていた。
(今は
「……ねえ君」
「ん?何だ?」
「君はTAROMANのファンかい?」
「ほほう。貴様もTAROMANに興味が有ると?」
「でも、その割には岡本太郎要素が1つも無いよね?特にその壺、岡本太郎らしさが微塵も無いよ。1からやり直したら。それとも、才能無し最下位?」
その途端、玉壺は両耳から直線状の溶岩を噴射する程激怒した。
「舐めんなよ小童が!その致命的で絶望的な不細工面をクロマグロ並みのイケメン顔に作り変えてくれるわあぁーーーーー!」
それを見た憂太がパンダと狗巻に耳打ちをする。
「パンダくん、狗巻くん、僕はこれから
パンダと狗巻は、視線を交わし、頷いた。
「応!」
「シャケ!」
一方、玉壺の驚異的な再生力に完膚なきまで完敗した挙句、憂太の
(くそ!不覚だ!あの化物相手に打つ手が無かったとは言え、呪術高専から真相を訊き出す為の
で、どうにかこうにか玉壺がさっきまでいた場所に戻れた善逸であったが、パンダに肩を掴まれ、
「停まれ」
自慢の異常聴覚が仇となり、狗巻の呪言をもろに受けて足が停まってしまった。
「ぐ!?……動けない?これも呪術の一種か!?」
パンダは善逸の質問には答えず、ただ警告するだけだった。
「止めておけ、巻き込まれる」
「巻き込まれる?まだあの化物が近くにいると言うのか?」
「それもあるが……素人に領域攻略はキツイって」
幼少からホワイトスパイになる為の教育を受けてきた善逸にとっては理解不能な言い分だった。
「……領域?」
原作との相違点
●狗巻棘
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・左腕を失っていない。
・パンダとコンビを組む事が多い。