笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~ 作:モッチー7
急ぎ竈門炭治郎の許へ急ぐ乙骨憂太。
「でも、まだ基本中の基本だけとは言え、その娘、無下限呪術が使える筈だろ?」
「それと、ヒノカミ神楽を使える様にしたんじゃなかったのか!?」
だが、憂太は残念そうに首を横に振る。
「いや……確かに僕は炭治郎ちゃんに無下限呪術と六眼を覚えさせた。けど、僕はまだ反転術式の存在を伝えてない!だから、炭治郎ちゃんは出来て無限と蒼が限度。茈どころか、赫すら使え」
だが、憂太達の前に1台のショベルカーが立ち塞がる。しかも、フォークグラブ(ツメで物を挟んで移動・積込み・解体を行うアタッチメント)タイプだ。
「何だ!?」
「この忙しい時に、秋場雪賀の命を狙う殺し屋か?」
操縦席の上で胡坐をかいている熱田睡蓮は質問には答えず、憂太の事を小馬鹿にする。
「随分呑気な教育手法だねぇー!そんなんでよく竈門炭治郎に鬼舞辻 無惨を斃させるって言えたねぇー!」
これで憂太の嫌な予感が確信へと変わる。
(あのドライバー……あそこにいる呪詛師に操られてる。これだけの呪力があれば、僕達が動き出す前に秋場雪賀を殺せる筈……)
「何しに来たの?ここには秋場雪賀はいないよ?」
熱田はクスッと笑った。
「確かに、私の真下にいるドライバーに秋場雪賀を殺せば12億が手に入ると教えた。しかし、邪魔者がいるからそう簡単には殺せないとも教えてある」
「邪魔者は炭治郎ちゃんの事か!?」
「自分の胸に手を当て……貴様が本当にまだ生きているかを確認したらどうだ!」
(やはりな……この呪詛師の背後にいるのはサマーじゃない!夏油だ!)
憂太はカマをかけて視る。
「何故今更秋場雪賀を狙う!?金欠か!?」
その途端、熱田は不機嫌になる。
「貴様……あくまで秋場ではなく竈門を助ける気か……」
(我妻とか言うエージェントが言っていた鬼の背後にいるのも……夏油か?)
狗巻がネックウォーマーを指でずらしながら叫んだ。
「眠れ!」
その途端、ショベルカーのドライバーが居眠りを始めてしまった。
「しまった!呪言か!?」
熱田が歯噛みしている間に臨戦態勢を整えるパンダ。
「往け!こいつらの足止めは、俺と棘がやる!」
「任せた!」
その隙に邪魔なショベルカーの脇を通る憂太と真希。
「くそ!不味い!こら!起きろジジイ!」
熱田がドライバーを叩き起こそうとするが、パンダがそれを呑気に待つ筈もなく……
「うぉおりゃあぁーーーーー!」
パンダに殴られそうになった熱田が慌ててショベルカーから降りる。
「ちっ……外したか?」
熱田が催眠術の振り子代わりに使うチャクラムを取り出す。
「所詮は
一方の炭治郎は……追い詰められていた。
夏油一派が送り込んだ幼女鬼の炎凝呪法は無下限呪術で押し返せるし、弾道を血鬼術で変えても無下限呪術に阻まれて炭治郎には届かない。
本来なら、まだ基礎レベルとは言え無下限呪術が使える炭治郎に負ける理由が無い。
だが、問題は炭治郎以外の人間……つまり、ほぼ人質状態にあるファミレスの客や店員が炭治郎の足を引っ張ているのだ。
外れた銃弾が客や店員に当たりそうになる度に無限を使って銃弾を停め、幼女鬼に食われそうになった人を発見する度にその人を引き寄せて救出する。
そんな事を繰り返していては、余計な疲労が溜まるのも無理は無い……
「何故……茈で一気に片付けようとしないのです?そうすれば、この戦いは直ぐに終わるのに」
炭治郎は茈の意味が全く解らなかったが、使わないのではなく使えないと高を括っていると勘繰った。
(茈は恐らく……かなり強力な呪術を指す言葉だと思うが、そんな物をここで使えば被害が更に馬鹿デカくなる!こいつ……それを解って言っているんだ!なんて卑劣な奴なんだ!)
だが、この頑固なお人好し故の勘違いが炭治郎の首を絞める事になる。
そもそも、夏油一派に巻き込まれた客や店員を守る意思は無い。
寧ろ、
だから、この戦いで例のファミレスが死体だらけになっても気にもしていないのである。
それでも、ファミレスの客や店員を守る事を諦めない炭治郎は、お人好しで不器用な戦い方を己に強いる。
「粋がるなよ雑魚が。
「だったら、茈とかで一気に片付けて、私が弱い事を証明したらどうです」
炭治郎は苦虫を嚙み潰した様な顔をした。
(下手な挑発は私を寒くするだけか……)
打開策がまったく思い浮かばない炭治郎。
それを観ていた夏油が少々困った顔をしながら呟く。
「んー……乙骨はやはり反転の存在を炭治郎に教えてない様だね?」
それを聴いたカンナが少し焦る。
「では、この戦いは全くの無意味。鬼舞辻 を喜ばせるだけの無駄足だと言うのですか?」
夏油はカンナを安心させるかの様に首を横に振る。
「いや、乙骨が与えぬのなら、我々が与えたら良い。反転の存在を知る切っ掛けを」
この戦いに禰 豆子も一応参加していたが、ダメージの蓄積が多過ぎて回復目的の熟睡に移行してしまった。
そんな禰 豆子に何者かが話しかける。
「禰 豆子、起きて」
「ん?」
「このままだとお姉ちゃんまで、炭治郎まで死んでしまう。だから、起きて」
「んん?」
「今の禰 豆子なら出来る。頑張って」
それは、深層心理の中に居る死んだ母親の記憶だった。
そんな亡き母親の『想い』が、禰 豆子に新たなる力を与えた。
一方、炭治郎は何者かに声を掛けられて困惑していた。
「炭治郎、憎しみを捨てろ」
そこにいたのは、無惨に殺された父親。
偽物?変身の術式?
全ての可能性を、
(本物……!)
そして、竈門炭治郎の脳内に溢れ出す、13年間の青い春。
刹那。
だが彼女の脳内では1分などとうに―――
炭治郎が気付いた時には、あの幼女鬼が炎に包まれていた。炎凝呪法が使える筈のあの幼女鬼が。
「何だ!?この炎は!?私の言う事を聞かない!」
そして、禰 豆子が炭治郎を庇う様に幼女鬼に立ち塞がる。
「ん!」
「禰 豆子!?お前、その傷で―――」
炭治郎の心配をよそに、禰 豆子が気合を込めて拳を幼女鬼に向ける。
(血鬼術、爆血!)
すると、幼女鬼が再び炎に包まれる。
「まさか……この炎は……血鬼術!?」
(血鬼術!?……まさか、これが禰 豆子の!?)
その直後、炭治郎の耳に死んだ筈の父親の声が入る。
「憎しみに頼り過ぎるな。憎しみは傷付ける事しか出来ない」
(憎しみを捨てろ?……そうだ!禰 豆子は私を守る為に無理して血鬼術を使ったんだ!なら、私は無理をしてでも、護りたいと言う『想い』を無理矢理呪術に変換する!)
「もう大丈夫だ禰 豆子!お前のお姉ちゃんは、まだ戦える!」
そう言いながら、幼女鬼へと指を向ける。
「これ以上……お前の好きにはさせない!術式反転、『赫』!」
炭治郎が放つ赤い光弾を口から吐き出した炎を土壁に変える事で防ぐ幼女鬼。
(どうにか炭治郎に赫を使わせるたが……)
幼女鬼は浮かびかけた弱音を必死に振り払った。
(いや……もって魅せる!炭治郎が茈を使うまで!)
だが、幼女鬼の悲痛な覚悟に反し、炭治郎の赫2発目に合わせる様に禰 豆子が血鬼術を使用する。
「術式反転、『赫』!」
(血鬼術、爆血!)
竈門姉妹の合体技を受け、幼女鬼は遂に戦場と化したファミレスから叩き出された。
赫と爆血の合わせ技に押し出される形でビルから転落して道路に叩き付けられた幼女鬼だったが、炭治郎に茈を使わせると言う使命を果たそうと無理矢理起き上がる。
が、そんな幼女鬼を夏油が優しく宥めた。
「大丈夫。この戦いは無駄じゃない。だって、竈門炭治郎に反転のコツを教える事が出来たんだ……君の戦いは無駄じゃない」
その半分は憂太に言い聞かせる形となった。
「反転だと?」
睨む憂太に臆する事無く苦言を呈する夏油。
「まさか、反転の事を教えずに鬼との戦いに参加させる心算だったのかい?だとしたら、無下限呪術を買いかぶり過ぎではないのかな」
「お前のやり方では早熟を強い過ぎるだけだ。教えないとは言っていない」
「気長過ぎるよ。彼女がそこまで、待ってくれるとでも?」
その直後、四足歩行をする錦鯉の様な怪物が憂太を襲った。
が、真希が跡形も無く微塵斬りにする。
「こっちだって成長してるんだ。7年前と同じだと思うなよ」
だが、その程度の時間だけで十分だった。
「それでは皆さん、戦場で」
その言葉を最後に、夏油は幼女鬼をサイの様な呪霊の背に乗せ、馬の様な呪霊に跨って走り去ってしまった。
カンナもまた別ルートで逃走しており、ファミレスに残されていたのは、巻き込まれた人達とそれを守った竈門姉妹だけだった。
「遅くなってごめん。これを、珠世さんの所へ……」
そう言いながら気絶した炭治郎の手から零れ落ちた採血器を茶々丸が口でキャッチし、珠世の許へと走り去った。
気絶して倒れそうになる炭治郎を支える憂太。
「本当なら、3年間の秋場雪賀護衛任務を終えてから反転術式を取得させる予定だったが……」
夏油が敷いたレールの乗っかる形で反転術式を会得してしまった竈門炭治郎。
そして、夏油の目に宿る『上弦の弐』と言う文字。
その事実に憂太が歯噛みする。
「無惨め……随分余計な奴を復活させやがって……」
そこへ、遅れてやって来たパンダが声を掛ける。
「おーい。無事かー?」
「炭治郎ちゃんと禰 豆子なら無事だよ。寧ろ、悪い意味で元気になり過ぎたかも」
「どう言う意味?」
「……いずれ解る」
「それよりパンダ。さっきのデカブツはどうした?」
真希の質問に対し、パンダはバツが悪そうにゆっくりと答えた。
「あー……秋場雪賀はとりあえず無事だ」
「だろうな。で、襲った相手はどうした?」
「あー―――」
「逃げたんだよね?パンダくん」
「ちょっ!?待て乙骨!」
「逃げられただぁー?」
「シャケ」
「あー!棘!お前、なに本当の事を……あ!」
「何やってんだお前はあー!?」
またワチャワチャとケンカをするパンダと真希を観ながら、憂太は今後の事を考えるのを後回しにした。
(今はまあ、炭治郎ちゃんの頑張りにケチをつけるのは止そう)
原作との相違点
●竈門炭治郎
・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。
・更に、日下部篤也と禪院真希にヒノカミ神楽の基礎を叩きこまれた。
・2025年、秋場雪賀の護衛を命じられて私立善根高等学校に入学した。
・銃鬼との戦いの最中に夏油傑に見せられた竈門炭十郎の幻影の助言をヒントに反転術式のコツを掴み、術式反転「赫」を取得した。
・『スパイガール!』における『雪乃晴』に相当する人物。
●竈門禰 豆子
・2010年12月28日生まれ。
・竈門家次女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の暗示(人間は皆家族であり、家族を守り、家族を傷つける鬼を許すな)と反転術式によって人食欲を喪失。
・銃鬼との戦闘時に死んだ母親と深層心理で出会った事をきっかけに自分の血を発火・爆発させ燃やしたい物だけを燃やす血鬼術「爆血」を自分の意志で開花させる。