笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~ 作:モッチー7
零余子は最近焦っていた。
自分は下弦の肆。つまり十二鬼月の筈だ。
だが、最近は上位である上弦ばかりが無限城に呼び出され、自分達は全く呼ばれない……
そんな事態に零余子はある危惧を感じていた。
そこで彼女は那田蜘蛛山を訪れた。
下弦の伍である累の根城だからだ。
だが、
「何で君と手を組まなきゃいけないの?」
「何でって……お前が最後に無限城に呼ばれたの、何年前だ!?」
「それがどうかしたの?寧ろ、家族と共に平穏に暮らせるなら、それで良いよ」
累の釣れない態度に零余子はついボロっと陰口が出てしまう。
「何が家族だ。下弦にすら成れない雑魚を従えてるだけの独裁体制の癖に」
「何か言った?」
このまま累と口論になりかけたが、それでも零余子は累と手を組まなければならない理由があった。
「いやいや待て待て!私達が喧嘩してる場合じゃない!最近下弦が無限城に呼ばれないと言う事は、無惨様が私達下弦を見限るかもしれないって事よ!」
「無惨様が……下弦を見限る……」
その瞬間、累は無惨に言われたくない台詞が脳裏に浮かんでしまった。
「累、貴様は最近、下らぬ家族ゴッコしかしていないそうだな?その様な役立たずは最早不要だ」
その途端、涙目になりながらブルブル震える累。
「……嫌だ……」
脈ありだと判断した零余子は、わざと聞こえないフリをした。
「ん?何か言ったか?」
「嫌だ。僕達家族の静かな暮らしを邪魔するな」
「……同盟、成立♪ところで累、ナイトプールって知ってる?」
その結果がこれである……
寒崎椿にマイクロビキニを着せたがっていた秋場雪賀の命令で渋々ナイトプール内で暗躍する盗撮魔を捜索していた竈門炭治郎は、当の盗撮魔の罠に嵌って盗撮魔を含む2人の鬼に挟み撃ちにされてしまった。
しかも、盗撮魔の方は下弦の肆。つまり十二鬼月である。
夏油が送り込んだ幼女鬼ですら下弦に昇格していない。そんな幼女鬼ですら死力を尽くし奥の手や新能力を発揮しても倒せないのに、下弦とは言え本物の十二鬼月相手にどこまで戦えるか?
炭治郎は正直不安だったが、必死に冷静を装った。
「私1人を殺す為だけに多くの人達を巻き込んで、心が痛まないのかい?」
「とっくに気付いているとは思うが、アンタを食う為に那田蜘蛛山にいる鬼を掻き集め、ナイトプールの更衣室の写真をインターネットに売ったんだ。無下限呪術習得以降では初の言い訳は考えて来たか?」
「言い訳?君達を殺した理由の事かい?」
炭治郎は余裕に魅せたい笑みの額に、冷や汗を滲ませる。
「少々色気に欠けるが、まあ、女である事には変わりない。なら、その水着を斬り刻んであんたの傷だらけの裸もインターネットに売ってやるよ!」
零余子と累配下の鬼女が炭治郎を襲う。
零余子が手にした松の葉を巨大化させて炭治郎に突き刺そうとし、鬼女はほとんど見えない糸を小さい蜘蛛を介して炭治郎に取り付け、それを繰って炭治郎を操ろうとする。
判断が完全に遅れた炭治郎が両腕を盾にする事しか出来なかったが、幸い、無下限呪術の自動選別と常時発動に救われて無傷で済んだ。
「くっ!?……アレ?……痛くない?」
「嘘!?」
鬼女は完全に驚愕・狼狽するが、零余子は咄嗟に朝顔の種を炭治郎の足下にばら撒く。
「迦!」
だが、何も起こらなかった。
「何!?」
零余子の予定では急成長した複数の朝顔が炭治郎を締上げる筈だったのだ。
だが、無下限呪術が生み出した無限はそう言った邪悪な念話すら止めてしまうのだ。
「……噓でしょ……無下限呪術はそこまで出来るのか!?」
自分と鬼女の2人だけでは足りないと判断した零余子は、累配下の巨大蜘蛛に命令した。
「そこの兄!
とここで、炭治郎の足を掬う出来事が発生してしまう。
「うっ!何だ!?すごい刺激臭だ!」
突然うずくまる炭治郎に困惑する零余子。
「え?え?!」
(まさかこいつ……兄の体臭が苦手なのか?)
そう。炭治郎の嗅覚は警察犬顔負けなのだ。
「おえぇー!無下限呪術が自動発動する程臭いって……どんな生活をしたらそうなるんだよ!」
「……そうなの?」
それを観た巨大蜘蛛はこれを好機だと判断してしまい、零余子の命令を無視し始める。
(行け!蜘蛛共!)
「あ!?馬鹿!」
だが、巨大蜘蛛が放った小さな蜘蛛は、巨大蜘蛛の体臭のせいで勝手に発動してしまった無下限呪術に阻まれて炭治郎には届かなかった。
「!」
(やはり……兄の蜘蛛毒でもダメか……なら、本格的にプランBだ!)
「兄!お前も粟坂を手伝え!プランBに完全移行する!」
だが、巨大蜘蛛のプライドがそれを許さなかった。
「……!お前ら!もっと毒を打ち込め!」
「そんな事より粟坂に力を貸せ!お前1人で勝てるなら、こんな時間が掛かる……聴けやあぁー!」
巨大蜘蛛の体臭のせいで作戦の修正を余儀なくされた零余子が、舌打ちしながら鬼女に命ずる。
「チッ!?母!お前が粟坂の許へ往け!」
その結果、巨大蜘蛛は1人(?)で炭治郎と戦う羽目になってしまった。
一方、件の粟坂は零余子の命令を無視して(実際は兄の勝手な行動のせいで命令が届かず)勝手にプランBに移行しようとしていた。
「良いのかい?君が勝手に動いて」
「良いんだよ。俺が秋場雪賀を襲うフリをする事で、竈門炭治郎を迷わせて竈門炭治郎を殺し易くする。それがプランBだった筈だろ?」
「それはそうだけどさ―――」
「なら、つべこべ言わずに襲うべきだ。ほら、ナイトが送り込んだ例の金髪が秋場雪賀の許に向かってるぜ?」
因みに、粟坂は鬼ではなく呪詛師であり、雪賀を殺せばサマーから12億を貰えると誘われて零余子の仲間になった。
だが、粟坂が本当に殺したいのは雪賀ではなく炭治郎であった。
(俺達は自由だった……五条悟が生まれて世界の
粟坂が自分の過去を妄想している間に、善逸が雪賀達の許に到着した。
「ここから出るぞ!これはやはり罠だ!」
「でも、竈門様がまだ―――」
「その炭治郎ちゃんが時間を稼いでくれている間にだ!」
(しかし、俺達から自由を奪った五条悟は死んだ筈だった……なのに!竈門炭治郎が五条悟が使っていた術式を習得しようとしている!)
粟坂は我慢出来ずに勝手(?)にプランBを始めてしまった。
「チッ!やはり仕込んでいたのはあの2人だけじゃなかったか!?」
(俺達は自由だった……晩年にしてその自由が奪われた!)
しかも、先に仕掛けたのは粟坂の方だった。
(ふざけんな!俺は生涯現役!死ぬまで弱者を蹂躙する!)
「どきな。雪賀が用が有るのは……この俺だけだ」
「黙れ外道。秋場雪賀をお前みたいなやばい奴から遠ざけるのが、俺がナイトから与えられた任務だ」
「でやあぁー!」
その隙に椿が粟坂の頬を勢いよく蹴り飛ばした。
「脅かすなよ善逸。椿の圧勝じゃん♪」
だが、戦況は雪賀が楽観視する程優勢ではなかった。
「ナイトのエージェントの力はこんなものか?」
「何!?」
(今の蹴り、絶対に『全集中・常中』が混ざってただろ!?なのにこの程度のダメージで済ませた……)
「嘘!?椿の蹴りなのに!」
粟坂が余裕で雪賀達に近付く。
「やる気が無いなら、そろそろ殺すか?」
(しかもこの余裕……間違いない!こいつの呪術は防御系だ!)
しかし、粟坂はここで幾つかの誤算を犯した。
1つはさっきのやりとりを見れば解る通り、累のやる気の無さが粟坂の足を引っ張てる事。
もう1つは、突然の飛び蹴りとなって粟坂を襲った。それも2回も。
粟坂を襲った2つの飛び蹴りの内に1つが善逸が嫌味じみた文句を垂れた。
「善逸てめえ!あいつまで呼んだんなら、そう言う事は先に言えよ!」
だが、最初の飛び蹴りがそれをやんわりと否定する。
「何で?何で善逸が
その途端、後藤は一気に蒼褪めた。
「いえ……ぞんじてまう。ごめんなさい」
緊張と恐怖で噛んでしまう後藤であったが、それも無理は無い。
彼の名は時透無一郎。
一見若そうだが善逸と後藤の先輩で、訓練学校の教育係でもある。
課題を終えた候補生には笑顔で接する(優しい)が、課題を終えない候補生には冷たかったらしい。
しかもその課題はかなり厳しく、無人島や北極でサバイバルとか、敵地の真ん中に武器無しで放り込まれたりとかetc。
その内、後藤は時透の笑顔がトラウマになった。
善逸もよく見るとクールな顔が引きつってる。
「御免、後藤先輩。俺がマイクロビキニの魅力に屈しさえしなければ」
善逸にそう言われた途端、雪賀が嫌そうに自分を指差した。
「え?僕のせい?」
そこへ、時透がダメ押しの一言。
「じゃあ何で、秋場雪賀の護衛をしている筈の善逸が、こんな所で遊んでるのかなぁー?」
雪賀は改めて時透の恐ろしさを思い知った。
「……………………………………………………はい……(中退アフロ田中第1話参照)」
だが、呑気に漫才の様な会話を続ける余裕はそんなに無かった。
「おいおい。1番肝心な奴をほっぽって、何勝手に奥に進んでるんだよ」
時透と後藤の飛び蹴りをもってしても粟坂を止める事は出来ない。
「いい加減にしないと、本気で殺すぞ」
「無一郎さん。コイツ、防御系の呪術が使えるそうなので、どうぞ遠慮無く南極の真ん中に放り込んでやってください」
「……確かに、この男は頭を冷やす必要性が有るね」
「私も手伝います。雪賀に危害を加える気満々な様ですので」
善逸、時透、椿が臨戦態勢をとる中、後藤だけがキョトンとしていた。
「え?……これで終わりじゃないの?」
「何寝惚けてるの?仕事しなよ」
「……………………………………………………はい……(中退アフロ田中第1話参照)」
だが、粟坂は自分の術式に余程の自信が在ったのか、余裕の笑みを崩さなかった。
「将来有望。
(時透先輩の前だからあんな事言っちゃったけど、問題は、どうやって奴の防御系呪術を破るか……だな)
原作との相違点
●零余子
・令和7年まで生存。
・竈門炭治郎をおびき寄せるべくナイトプールの更衣室で盗撮騒ぎを起こしていた。
・竈門炭治郎を打ち倒すために累と手を組んだ。
・最近無限城に呼んで貰えない事に内心焦っていた。
・植物を操り植物武器を作り出す。
・『まったく最近の探偵ときたら』における『スクープおじさん』に相当する人物。
●累
・令和7年まで生存。
・最近無限城に呼ばれていない事について寧ろ好都合だと考えていたが、零余子の説得を受けて漸く事の重大さを理解した。
・竈門炭治郎を打ち倒すために零余子と手を組んだ。
●兄蜘蛛
・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では連絡役を任されていた。だが元々好戦的で残忍な性格なのか、零余子の命令を無視して勝手に動いてしまう。
・図らずも竈門炭治郎の異常嗅覚看破に貢献した。
●粟坂二良
・令和7年まで生存。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを担当。
・かつて五条悟が使用していた無下限呪術を極めつつある竈門炭治郎を畏れ恨んでおり、故にその殺害を強く望んでいる。
●時透無一郎
・鬼殺隊とは無関係。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)所属のエージェント。
・我妻善逸と後藤の先輩。
・平成生まれ。
・後藤が最も遭いたくない人物。
・『スパイガール!』における『志真蓮夜』に相当する人物。