笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

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第18笑:ナイトプールに来た人達の思惑(中編)

雪賀が粟坂に襲われている事に気付かない炭治郎は、零余子の命令を無視する兄と戦っていたが、

(この蜘蛛達は鬼じゃない!匂いが違う!何の罪も無い人達をこんな姿に変えて操るなんて!)

怒りで我を忘れて兄に突っ込む炭治郎。

「許せない……許せない!」

だが、突然の怒号が炭治郎を強引に冷静に戻す。

「落ち着けーい!」

その人物は、完全に人面蜘蛛である兄に負けないくらいの変わった格好をしていた。

上半身が裸で、ハート型のニップルステッカーとカチューシャを身に着け、顔には化粧をしている白人男性。ある意味1番目立つ人物だった。

「憶えておきなさい竈門炭治郎。慌てなきゃいけない時こそ冷静にならなきゃ、敵の思う壺よ」

謎の人物が炭治郎に説教を垂れる中、兄はしてやったりと言わんばかりにニヤリと嗤った。

「そこの変態、お前はもう負けてる。手を咬まれたろ?毒だよ。お前を蜘蛛にする毒だ」

「!?……貴様あぁー!」

炭治郎が怒りに任せて兄を斬ろうとするが、何かに引っ張られて動けなかった。

(何!?まさか、この男の術式に嵌った?無下限呪術がこの男の術式を危険じゃないと判断したからか?それとも……)

炭治郎は先程の変態に言われた事を思い出し、自分に怒りを恥じた。

(私の怒りが無下限呪術を歪ませたか?)

で、肝心の変態はと言うと、必死に力んで注入された毒を排出していた。

「ふん!」

「!?」

(は?毒を搾り出したぞ……何なんだコイツは……)

だが、兄の想定外はそれだけじゃなかった。

こっちを向いて(キューティーハニー)!」

「キューティーハニー!?」

変態に心を鷲掴みにされた蜘蛛達が、一斉に兄を襲った。

「何故俺を襲う!?くそ!」

想定外だらけの事態に兄は困惑して逃げ回る。

(くそ!こうなったら、奴らが届かない場所から俺の斑毒痰で!)

対する炭治郎は、謎の変態の変態行動のお陰で冷静のなれたお陰か、慌てず徒歩で兄の後を追う。

(そこからじゃ何も出来ないだろ!?ざまーみろ!グズグズに溶かしてやる!)

だが、炭治郎が習得した無下限呪術は冷静さを完全に失った悪党の悪足掻き如きで揺らぐ程やわじゃない。

(嘘!当たらない!)

「お前の骨1つこの世に残さない!」

打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間、空間は歪み、呪力は黒く光る。その現象を呪術界では『黒閃』と呼ぶ。

威力は通常の攻撃の2.5乗におよび、黒閃を経験した者としていない者には、呪力の核心との距離に大きな差が生じる。

「ヒノカミ神楽、輝輝恩光!」

蜘蛛に変えられた人々の仇を仕留める。“誠心”竈門炭治郎の本領。

五条悟に次ぐ呪術界の奇跡。

そこに与えられた呪いの力。

彼女は、黒い火花に愛されている。

呪術師は日輪刀を持たぬ故に鬼を殺す術が無い筈だったが、炭治郎が放ったヒノカミ神楽に黒閃が混ざった事で、鬼である筈の兄が跡形も無く消えた。

「ぎゃああぁーーーーー!?」

(これで……蜘蛛にされた人達が支配から解放されると良いが……後、臭かったぁー)

 

兄を倒した炭治郎に対し、変態が優しく語る。

「黒閃よ」

「こくせん?」

「黒閃を打つ感覚を覚えちゃうと、呪力の核心にぐっと近づいちゃうの。これからも呪術師を続ける心算なら、憶えておきなさい」

「呪力の……核心……は!」

炭治郎はハッとして例の謎の変態に礼を言おうと慌てて駆けるが、既に変態は去った後だった。

「待ってください!せめて礼だけでも!……行っちゃった……」

(御礼、言いたかったなぁー)

 

一方、善逸達は粟坂の頑丈さに苦戦していた。

「雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃!」

「ちょこまかと、すばしっこいなあお前」

(刃が通らない!?なんて頑丈な呪術なんだ!)

そんな中、零余子が慌てて現場に駆け付けるが、粟坂がたった1人で頑張ってる状況に頭を抱えた。

「あの馬鹿兄!累にプランBの事を伝えなかったのか!?」

その途端、累が不機嫌になる。

「君、僕の家族を悪く言う心算かい?」

(あ、やべぇ)

「その兄が竈門炭治郎と戦ってる。いや、既に死んでるかもしれん」

零余子の予想に呆然とする累。

「……マジで?」

その途端、遂に累が動き出すが、方向が逆。

「ちょっとちょっと!?どこ行くの!?」

「決まってる。炭治郎を殺しに」

「待て!1人で逝くな!」

とは言っては見たものの、最早、利用価値が有るのは粟坂だけだと確信する零余子。

「こんな事なら誘わなきゃ良かった。あいつらのせいで作戦が滅茶苦茶だ」

改めて善逸達の方を観る零余子。

「さて、粟坂には悪いが、そろそろ秋場雪賀を殺すか」

突然乱入した零余子に困惑する粟坂。

「おい!竈門炭治郎はどうした!?話が違うぞ!」

「悪い。累が作戦通りに動いてくれないから、その為の修正をしに来た」

「あのクソガキ!使えねぇなあいつ!」

「私もそう思う!」

零余子は近くの草をむしり取って血鬼術で剣に変える。

「更に予定変更だ。父!姉!プランCだ!ナイトプールに居る人間全員食い殺せ!」

零余子の命令に善逸が嫌そうに舌打ちをした。

「そこの盗撮擬き!お前は殺し屋を何人引き連れて来た!?」

善逸の質問を聞いて頭を抱える椿。

「……すみません。我々が軽率な事をしでかしたばかりに……」

だが、予想されていた惨劇は何時まで経っても起こらず、

「貴様……何の為にあの役立たず共を連れて来た?」

「私だって、累がここまでわがままだったなんて想定してないから」

そこへ、時透がダメ押しの一言。

「君ら、人望無いね?」

零余子は返す言葉が無かった。

「……………………………………………………はい……(中退アフロ田中第1話参照)」

 

とは言え、零余子の人望の無さが善逸を別の意味で追い詰めてしまった。

「……これは困った」

「ん?」

「人聞き悪いけど、炭治郎ちゃんを時間稼ぎにしてその隙に雪賀を逃がす算段だったんだけど」

善逸の口から炭治郎が出た途端、零余子と粟坂は少しだけドキッとした。

「ん?」

後藤は何故そこでとは思ったが、善逸は確信があった。

「お前らまさか、炭治郎ちゃんがこれ以上強くなる事を恐―――」

善逸はいきなり粟坂に襲われた。

「うわあぁー!?と言うか最後まで聴け!」

「どうやら、図星の様だよ」

時透に作戦を見抜かれて悔しそうに歯噛みする零余子。

「炭治郎と言う女性が本命であり、秋場雪賀暗殺は炭治郎の集中力を切る為のオマケ」

零余子はとうとう開き直った。

「それがどうした!どの道、秋場雪賀は賞金首だろ!」

「そうだね。それは認める」

「何?」

時透の冷静さに寒気を感じる零余子。

「でも、殺せなきゃ意味が無い。そうですよね?先生♪」

「先生!?」

気付けば、カラスの群れがナイトプール上空を覆っていた。

「何だ……これは?」

「誰が来た?何が来た!?」

「まさか、ナイトの教育係であるこの僕が、何の手も打たずにここにのこのこと来たとでも思った?いやぁー、レンタル料高かったから、我妻がうっかり倒しちゃったらどうしようかと冷や冷やしたよ」

やって来たのは、顔を三つ編みにした白髪で隠した謎の女性。巨大な斧を持っている事から戦闘要員だと思われるが。

「冥冥だ。よろしく頼むよ」

「冥冥だと!?」

粟坂の驚きに嫌な予感がする零余子。

「知ってるのか?」

「1級呪術師の中に守銭奴がいるって噂を聞いた事が有るが、まさかこいつの事か?」

「1級って、特級の次に強いって奴か?」

そんな冥冥が口を開く。

「ありがとう善逸。お陰で男の方の術式が解った」

「いや……正直言ってお礼を言うのはまだ早いんじゃないのか?」

冥冥が善逸にウインクする。

「大丈夫。既に対策済みだから言ったんだよ。それに……」

冥冥は雪賀の方を見る。

「足手纏いにはそろそろ退場して貰おうかな。ま、殺しはしないから安心しな。憂憂」

その直後、憂憂が突然前触れも無く現れた。

そして、憂憂と雪賀が突然前触れも無く消えた。

「……は?」

目の前の出来事に呆然とする零余子と粟坂。

「これで、竈門炭治郎の負担も少しは軽くなるってもんだ」

 

粟坂は怒りに任せて冥冥に詰め寄る。

「そこの糞尼!秋場雪賀をどこに隠した!?」

冥冥は動じず、愛用の斧をフルスイングする。

「いや、待って。それって俺達がさっきやったミスと全く同じ―――」

だが、冥冥の斧は粟坂を斬り裂く事は出来なかったが、代わりにまるで腹パンを受けたかの様なリアクションをする粟坂。

「え!?」

「ダメージが……通った!?」

善逸と後藤が漸く粟坂にダメージを与えた事に驚く中、冥冥はニヤリと笑った。

「やっぱりね。アンタ、あべこべだろ?」

後藤は理解に苦しんだが、善逸は粟坂の心拍数から図星なのだと察した。

「な……何故……それを……」

「我妻善逸とか言う子の頑張りのお陰かな?あれだけ攻撃が命中して無事なら、普通防御系を疑うだろ。で、私の記憶の中に、ちょうどあんたと似てる奴がいてね。いやー、私は金の神に好かれてる様だねぇ」

後藤はやはり冥冥の台詞の意味が解らなかった。

「御免。そのあべこべって、何?」

「術者に当たる攻撃の強弱を、文字通り『あべこべ』にしてしまうんだよ。強い攻撃を弱く、弱い攻撃を強くする」

冥冥が手にしていたのは、ただの水風船。

「何それ!?俺達の攻撃って、そんな風船未満って事かよ!」

後藤の文句に冥冥は笑って答えた。

「違う違う。あべこべを破るにはコツがいるって事さ。強い力と程々の弱い力の同時攻撃でないと、強い攻撃を弱くされ、弱い攻撃は弱いまま」

「く……くそが!」

冥冥の説明を遮るかの様に襲い掛かる粟坂であったが、カラスの群れの1羽が眉間を狙って急降下したので慌てて『あべこべ』を発動してしまう。

だが、これだと冥冥の思う壺であり、冥冥が投げた水風船が粟坂を吹き飛ばしてしまう。

「そいつ相手にあべこべを発動させるな!粟坂!」

と言われても、あべこべを解除すると斧で斬られるか黒鳥操術に食い殺される。かと言ってあべこべを発動されると水風船でタコ殴りにされる。

つまり、粟坂は既に詰みである。

それを察した零余子が冥冥に襲い掛かる。

その際、近くの草を毟って大きなハサミに変える。

冥冥はそれを紙一重で避けようとするが、あえてハサミ型にする事で一振りで連撃を繰り出せ冥冥に切り傷を付けた。

「おっと……こっちの対策はまだの様ね?粟坂!炭治郎の次にやばい女は私が片付ける!あんたはナイトの連中を!」

既に冥冥には勝てないと悟っていた粟坂にとってはありがたい命令だった。

「あいよ」

(意外と素直だなこいつ。呪詛師ってもっとわがままだと思っていたけど)

俗に言う『利害の一致』である。




原作との相違点

●竈門炭治郎

・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。
・更に、日下部篤也と禪院真希にヒノカミ神楽の基礎を叩きこまれた。
・2025年、秋場雪賀の護衛を命じられて私立善根高等学校に入学した。
・銃鬼との戦いの最中に夏油傑に見せられた竈門炭十郎の幻影の助言をヒントに反転術式のコツを掴み、術式反転「赫」を取得した。
・黒閃経験有り。
・『スパイガール!』における『雪乃晴』に相当する人物。

●累

・令和7年まで生存。
・最近無限城に呼ばれていない事について寧ろ好都合だと考えていたが、零余子の説得を受けて漸く事の重大さを理解した。
・竈門炭治郎を打ち倒すために零余子と手を組んだ筈だが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。

●兄蜘蛛

・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では連絡役を任されていた。だが元々好戦的で残忍な性格なのか、零余子の命令を無視して勝手に動いてしまう。
・図らずも竈門炭治郎の異常嗅覚看破に貢献した。
・黒閃を帯びたヒノカミ神楽を受けて消滅。

●姉蜘蛛

・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを任されていたが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。

●父蜘蛛

・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを任されていたが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。

●ラルゥ

・未だに夏油一派に所属。

●冥冥

・原作とほぼ同一。

●憂憂

・原作とほぼ同一。
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