笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

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第19笑:ナイトプールに来た人達の思惑(後編)

遂に姿を現した黒幕・零余子を冥冥に任せ、善逸達は再び粟坂と対峙する。

ただ、粟坂が誇る鉄壁の防御のカラクリを冥冥が暴いてくれたので、先程よりは気が楽に戦えた。

一方の粟坂は弱点がバレた以上、あべこべはもう使えない。

あべこべを使うと時透が投げるソフトテニスボールが粟坂の体を貫通してしまう。

だが、あべこべを使わないと善逸の霹靂一閃が粟坂を切断してしまう。

つまり粟坂は劣勢だ。

すると、お互い口数が増える。

「そろそろ、諦めたらどうだ?黒幕である盗撮犯は兎も角、アンタのネタは割れてる。勝ち目は無いぞ?」

「ふざけるな!このまま俺は、一生無下限呪術に怯えて暮らせって言うのか!」

粟坂の言い分を不愉快に感ずる善逸。

「つまり、貴様は竈門炭治郎と言う小娘の事を何も解っていないと言う事だな?」

「貴様こそ!無下限呪術の本当の恐ろしさを理解していない!」

「出身国上、核抑止力を賛成も肯定も出来んが、この際ハッキリと言おう。竈門炭治郎の敵は『理不尽』だ。罪無き仲間が理不尽に蹂躙される事を良しとしない。つまり、竈門炭治郎に理不尽と認定される行為さえしなければ、竈門炭治郎が使用する無下限呪術は敵ではない。彼女が纏う“優しい音”がそう言っている!」

「じゃあ何か!?長生きする為に自由を捨てろと言うのか!?」

粟坂の反論から邪気を感じた善逸が更にムキになる。

「自由を捨てるだと?違う!炭治郎は他人の自由を面白半分に奪う程乱暴じゃない!そう言うお前こそ、法律と自由の因果関係を履き違えている!」

善逸の反論から知能低下を感じた粟坂は呆れながら諭す様に告げる。

「そう言うお前こそ、安月給だけが取り柄の仕事中毒の社畜じゃねぇか。もっと頭を使いな」

善逸は完全にキレた。

「そう言う……ルールの必要性も知らないお先真っ暗な癖に天才騙って真面目を見下す雑魚下衆が!死の次に大嫌いなんだよ!」

「そうやって律儀にルールルールと五月蠅い事を言って、社会に顎で使われて国にいい様に搾取されるだけの社畜馬鹿は、もっと頭を使う事を覚えな」

ホワイトスパイとして悪徳企業が行う不正や要人を狙う妨害・暗殺と日々戦ってきたナイト・エージェンシーだからこそ、楽しながら簡単に儲かる術に溺れて法律の加護を失った犯罪者の生き汚さを飽き過ぎる程見てきた。無論、その末路も死に様も……

だからこそ、真面目を見下しながら弱者を蹂躙して理不尽な大金を得る腐った凶悪犯が心底気に入らない。

「俺は今……お前みたいな天才を騙る馬鹿犯罪者の事をお先真っ暗と言ったな?」

だが、そんな善逸の大義の怒りなど、粟坂にとってはどうでも良かった。

誰にも縛られず、何にも縛られず、ただ弱者を蹂躙し続ける事さえできれば、それで良い。

「お前は本当に学習能力が無いな。お先真っ暗なのは、正しい生き方を知らぬお間抜け社畜の方だ。世界はどこまで言っても弱肉強食。食われない様に工夫するのが、賢い生き方って言うだろ?」

「ならば証明してやるよ。俺とお前、どっちがお先真っ暗かを」

 

いよいよ舌戦がめんどくさくなってきた粟坂は、

「やる気が無いなら、そろそろ殺すか?」

粟坂は善逸達を皆殺しにして炭治郎の動揺を誘おうと中華包丁を思いっきり振り下ろすが、善逸は粟坂の中華包丁を右へと払い流し、その隙に納刀する。

「お前、あべこべさえなければ大した事ないじゃん」

善逸のこの苦し紛れの言葉はある意味的を射ていた。

善逸達が所属するナイト・エージェンシーは悪徳企業の不正捜索や犯罪組織の証拠発見、要人の警護などを行うホワイトスパイ派遣機関である。

故に、全ての悪党から恨みを買っている組織と言っても過言ではなく、だからこそ万が一の為の戦闘訓練も欠かさず行っており、構成員同士の模擬戦も星の数ほどこなしてきた。

また、リトル・エージェント時代に任務先で出会った老人に『雷の呼吸』を教わった事も善逸にとっては幸運だった。

それに対し、粟坂は相手の必殺の一撃を術式で凌ぎ、攻撃した後に出来た隙を狙うのが常套手段。つまり、相手が疲れるのを待ってから攻撃する性質上、無理して技数を増やす理由が無い。

その上、弱者の蹂躙を好む残忍さと嘘を平然と吐く純然たるゲスな性格が仇となり、呪術高専や御三家などの正規の育成機関に頼るどころか敵対しており、独学で鍛えなければならない立ち位置も粟坂の技数が増えない理由となっている。

粟坂が善逸に技数で大差を付けられて負けるのも至極当然である。

(だがよ、俺には……)

それに、粟坂には真に頼れる戦友がいない。

故に粟坂は常に1人だ。

この差はデカかった。

だから、時透にソフトテニスボールを投げつけられながら善逸の霹靂一閃を捌かなければならない状況を脱する方法を粟坂は知らないのだ。

(あべこべだけじゃ……どうにもできねえ……)

時透のソフトテニスボールと善逸の霹靂一閃に挟まれ、粟坂は遂にダウン。

更に、善逸は堂々と粟坂の腹を踏みつけた。

「が!?」

「俺はお前に、法律と自由の因果関係を魅せてやるって言ったよな?」

そう言いながらゆっくりと抜刀する善逸。

「貴様……何をする気だ?」

「今から貴様の四肢を2、3本ぶっこ抜いて、この俺が法律の加護と自由を同時に失う瞬間を拝ませてやるよ」

そう言いながら刀を振り下ろそうとしたが、時透が何かに気付いて善逸に命じる。

「善逸!避けろ!」

そう言われて粟坂の腹から降りると、善逸はギリギリで何者かの火炎放射を回避した。

「あぶね!?」

「誰!?」

それは、入隊試験用に藤襲山に幽閉された下っ端鬼でありながら、1級呪術師となり夏油一派に寝返り竈門姉妹をあと1歩まで追い詰めた、あの幼女鬼であった。

「その汚い足を除けてください……非術師(さる)さん」

 

「足を除けろって言ったよね?」

「そうです。この方はあなた達非術師(さる)が見下していい人じゃありませんので」

幼女鬼の言い分に対してわざとらしく頭を搔く時透。

「とは言ってもねぇー……そこの犯罪者(さる)を野放しにしたら、更に罪無き人が死んじゃうでしょ」

「罪が無い?呪術が使えない非術師(さる)が無罪になるのは、どう考えても、おかしいです」

冷ややかな目で幼女鬼を見る時透。

「あー、嫌だ嫌だ……こう言う『弱肉強食』を履き違えてる馬鹿な加害者(さる)は自分勝手で困る」

「でも、弱いのは罪です。弱い人達は寄ってたかって、強い人から居場所を奪っていく」

時透は溜息を吐いた。

「善逸君もさっき言ったよねぇ?そう言う奪う側を裁く為に法律はあるって。だから……」

「もし、その法律……」

「ぐ!?」

善逸達が気付いた時には、粟坂の頭頂部にナイフが刺さっていた。

即死だった。

「何時の間に!?」

「やっぱ時透先輩……こええぇー!」

善逸は自身の異常聴覚をもってしても言われるまで気付かなかった事を困惑しながら恥じ、後藤はただひたすら時透の恐ろしさを再確認した。

(気付けなかった?この俺が!)

(もう……時透先輩には遭いたくない)

自分の足元に転がっている粟坂の死体に視線を落とし、幼女鬼は身体を震わせた。

「どうして……非術師(さる)共は呪術師の命を何だと思っているのですか?彼がいったい何をしたと……かわいそうに……」

幼女鬼の言い分に身勝手さを感じた善逸が反論しようとするが、幼女鬼は聞こうとしない。

「呪術師の命の尊さが解らない非術師(さる)に生物を名乗る資格はありません。殺して差し上げないと」

「おおい!聴こえろ!俺が今言っただろ!時透先輩が成敗した悪人の罪状を!」

時透は善逸の肩を叩いた。

「無駄だよ。ああなったら正論は届かない。どんなに正しかろうとね」

「あの方の非術師(さる)駆除は意味のある許された行為なのです」

そう言いながら口から炎を吐く幼女鬼。

そんな幼女鬼の悪意に狼狽えながら呆れ果てる善逸。

「テロリストかこいつ!?正気かよ!?」

 

一方、零余子VS冥冥は接戦だった。

「なるほど……これが“鬼”か」

「しかも、私は下弦とは言え十二鬼月。そこら辺の雑魚鬼とは訳が違うんだよ」

冥冥は通常兵器換算で『戦車でも心細い』と評される1級呪霊を確実に祓える1級呪術師。つまり、彼女は戦車より強いのだ。

対する零余子も鬼の強さランキングベスト12と言っても過言ではない十二鬼月の一角を担う鬼。他の鬼に比べて再生力、血鬼術、実力が格段に高く非常に強い。

正に化物同士の戦いである。

ただ、呪術師と違って摺り減らしたスタミナをその場で回復する術を鬼は持っている。

「そんな事より、お腹が空いた。と言う訳で……」

零余子は逃げ遅れた客達に向かって走り出した。

「プランCへと移行させてもらうよ!」

プランCは竈門炭治郎抹殺計画の緊急最終手段。

ナイトプールの客達を次々と皆殺しにし、彼らの死体を見て後悔する竈門炭治郎の隙をついて殺す算段である。

まあ、本来ならプランAかプランBの内に終わらせるのが零余子の理想ではあったのだが……

そして、零余子は1人の女性を捕まえて口を大きく開け、

「口を開けろ」

その途端、零余子の口が閉じなくなった。

(何故だ……なぜ噛めない?……どうして噛めない?)

その答えは、憂憂が持っていた。

「お姉さま!探し者、漸く見つけましたよ」

憂憂が自身の術式を使って秋場雪賀を逃がす傍ら、粟坂を倒す為の助っ人を探していたのだ。

零余子がナイトプールの客を食い殺せなかったのも、狗巻の呪言によるものだった。

つまり、鬼と違って自身の弱点を補う術を呪術師達は持っている。

(ならば……私の血鬼術でナイトプールの客を斬り殺―――)

憂憂は七海建人も呼んでおり、七海が零余子を捕まえて殴り飛ばした。

「ぐはあぁー!?」

その時に歯が折れたのは零余子のミスだった。

「共鳴り!」

「ぐおぉー!?」

釘崎野薔薇も呼ばれており、お得意の芻霊呪法で零余子を追い詰める。

「1人では勝てないのであれば、よってたかって大勢でかよ。それだと強く見えてしまうぞ?私が」

と、強がって魅たものの、追い詰められているのは明らかに零余子の方だった。

そして、

「うわあぁーーーーー!」

「なんだぁー!?」

何故か累が全裸で吹っ飛んで来たのだ。

「累!?アンタ、今までどこで何やってたのよ!?」

だが、その質問に答えたのは累ではなく、

「このナイトプールにいる十二鬼月は、本当にこの2人だけなんだな?お姉……いや、お嬢ちゃん」

その声色に零余子は恐怖した。

「ま……まさか……あいつら……もう全滅したのか……」

そう!

とある理由により不機嫌になった炭治郎が改めて正眼の構えをとった。

「お前達の独裁政権、ここで終わらせる!」




原作との相違点

●粟坂二良

・令和7年まで生存。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを担当。
・かつて五条悟が使用していた無下限呪術を極めつつある竈門炭治郎を畏れ恨んでおり、故にその殺害を強く望んでいる。
・最期は時透無一郎が投げたナイフが頭頂部に刺さって死亡した。

●釘崎野薔薇

・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・東京都立呪術高等専門学校卒業生。
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