笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

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第21笑:ナイトプール血戦決着!

「うわあぁーーーーー!」

「なんだぁー!?」

何故か累が全裸で吹っ飛んで来たのだ。

「累!?アンタ、今までどこで何やってたのよ!?」

だが、その質問に答えたのは累ではなく、

「このナイトプールにいる十二鬼月は、本当にこの2人だけなんだな?お姉……いや、お嬢ちゃん」

その声色に零余子は恐怖した。

「ま……まさか……あいつら……もう全滅したのか……」

そう!

累が手下に行った理不尽を察して不機嫌になった炭治郎が改めて正眼の構えをとった。

「お前達の独裁政権、ここで終わらせる!」

「そ……そ……そんなへし折れた刀で、何が出来るぅーーーーー!?」

口では偉そうな事を言っているが、零余子に勝算は既に無く、この攻撃はただの悪足掻きである。

しかも、零余子の破れかぶれな攻撃は炭治郎に届かず、その隙に冥冥の斧の餌食となった。

「が!?……だが、その程度の攻撃で―――」

炭治郎が投げたナイフが零余子の眉間に突き刺さり、血を採取されてしまう。

そして、炭治郎は累と零余子の眉間に刺さったナイフを抜くと、待ってましたとばかりに茶々丸がやって来てそのナイフを受け取る。

「お願い。珠世さんの所へ」

炭治郎が茶々丸が背負っているバッグに例の短刀を入れると、茶々丸が愈史郎の血鬼術を使って透明になった。

「ちょっと待て!何で貴様があの逃れ者の名を!?」

零余子の質問には答えず、炭治郎が皮肉を言う。

「喜べ。貴方達の血が久々に人の役に立つ」

斬り分けられてしまった零余子の上半身と下半身が合体し、元通りになった零余子の近くにあった草や花が次々と武器化した。

「私は死なない……私は死なないぞおぉーーーーー!」

とは言ったものの……

(この様子だと、粟坂はとっくに逃げたとみて間違いないし、累の手下の鬼は既に死んだ……更に、数もあっちの方が多い……)

零余子は必死に策を弄しようとするが……

(どうする。どうする……どうしよおぉーーーーー)

零余子は既に詰んでいる。

ただの盗撮犯だと勘違いさせて油断させるプランA。

秋場雪賀を襲うふりをして慌てさせるプランB。

ナイトプールの客を襲うふりをして慌てさせるプランC。

そのどれもが既に実行不可能。

しかも、憂憂が集めた呪術師達に包囲されている。

(……あれ?……私……終わった?)

 

ただ、憂憂が呼んだ呪術師の中にこの状況に困惑している者がいた。

勿論戦況が優勢なのは良い事だが、どうしても気になるのが……

「と言うかあんた……何でなの?」

そう。釘崎は累がなんで全裸なのかが気になっていた。

だが、零余子は一応『確かに』とは思うが、累はそんな事を気にする冷静さを欠いていた。

「そんな事より、僕の家族をぶち壊したそこの不細工女を殺―――」

「ちょちょちょ、待って待って!足を大きく動かすな!見える!見える!

食い気味に釘崎が慌て、累が呆れるしかなかった。

「この戦況でそんな事気にしますかね」

「そういうのいいから!」

対する釘崎は必死だ。

「そういうのってなに」

「そんな事より、自分を見て。ほら見て見て。よく視て」

釘崎の言ってる意味がまったく理解出来ず、構わず炭治郎に向かっていく累。

釘崎は、これまでの余裕が嘘の様に、必死な様子で累に訴えた。

「ちょちょちょちょちょ、ちょっと、ままま、待って、待って。そこの男の子の着替えが終わるまで待って」

炭治郎を襲おうとする累の体を手で制し、切実な声を出す釘崎。

「着替えが済むまで待って貰って」

「いや、何、何、何?」

「ちょちょちょ、なななななん、何で?何で何で?」

累と釘崎、両名の『何?何、何?』と言う問いが、ナイトプールに轟いた。

このコントの様なやりとりの元凶である炭治郎が俯きながら手で顔を覆った。

申し訳なさそうに俯く炭治郎が累の怒りと殺意を刺激した様だった。

「貴様……敵の前で何を……」

構わず炭治郎に向かっていく累。

炭治郎を襲おうとする累の体を手で制し、切実な声を出す釘崎。

「やばいから!コンプライアンス的にもやばいから!まずいから!」

累にしてみれば理解不能であり、気合を入れ直す様に指の骨をボキボキと鳴らし始める。

「邪魔するなら、君も死んでよ」

釘崎の顔がますます赤くなる。

「じゃあ、感じて感じて。ほら……観られて恥ずかしいじゃん。こう、なんつーの?デリケートゾーンに向けられる視線を感じて。そんなんだからさぁ、あの、コミュ障とか言われちゃうんだよ!」

しびれを切らした累が遂に血鬼術を発動させて釘崎を襲ったので、炭治郎が釘崎に抱きついて庇う。

「もうあの鬼、自分の容姿を気にする余裕を無くしてますよ!」

「マジか!?」

とんでもない姿で再戦の火ぶたを切った累に心底呆れる零余子。

「……いや……いくら私達が鬼だからって……なぁ……」

 

結局、全裸のまま襲い掛かって来た累を睨みつける炭治郎。

「私がさっきあんたらに虐げられていた女の子から託された技。また見たい様だね?術式順転、蒼。術式反転、赫」

さっきまで累の羞恥心の無さに呆れ固まっていた七海が、炭治郎がやろうとしている複合術式を観て、別の意味で慌てた。

(アレはまさか、茈!?何と言う事だ!乙骨憂太が立てた成長予定より、大幅に早い!?)

「全員散開!防御態勢!」

「だ、そうだ。そこの恥知らず男子から離れるよ!」

冥冥に猫つまみされる形で累から離される釘崎。

「ちょ、ま、えぇー!?」

狗巻も察して累との距離を広げる。

そんな中、零余子だけは呪術師達の動きの意味が解らず困惑していた。

「何々!?何を始めようと言うの!?炭治郎(あいつ)!」

その為、零余子は完全に逃げ遅れた。

「虚式、茈」

引力と斥力の融合による茈色の閃光が、先ずは零余子を完全に消し去る。

「なんだよ!もうおぉーーーーー!」

そして再び、累の頸から下全てを容赦無く抉り取った。

「ちょっと待った!ちょっと待った!またかよおぉーーーーー!」

しかも、先程の様な失敗をしない様、累の体が元通り再生する前に頭部を斬った。

「ヒノカミ神楽、碧羅の天!」

累の頭部は真っ二つとなり、黒い火花が累の頭部を内から焼いて消滅させた。

「どうやらあの娘、片目だけとは言え十二鬼月を倒しちゃったよ」

冥冥の軽口に反し、七海は素直に喜べなかった。

(黒閃まで!?やはり成長速度が予定より早い)

ここで遂に疲労困憊になったのか炭治郎が膝をついた。

「大丈夫か?竈門さん」

炭治郎は既に目玉グルグル状態である。

「さ、流石にちょっと、疲れましたぁー」

(ちょっとどころじゃない。さっき消し飛んだ十二鬼月の言い分が正しければ、彼女は既に虚式『茈』を2回以上発動させている)

と、その時、

「一旦引くぞ!奴は化物だ!」

善逸達が慌ててやって来て、炭治郎を含めた呪術師達に逃走を促そうとする。

「何を言ってるの?こっちは十二鬼月を2匹……」

釘崎の訴えは、善逸達を追って来たあの幼女鬼を見た炭治郎の驚きと狼狽にかき消された。

「アレは!あの時の強い鬼!」

そこに七海が絶望的な補足を付け加えた。

「しかも、彼女は1級呪詛師。1級呪霊を上回る強敵です」

その幼女鬼が、粟坂を()られた怒りから殺気だっている。

「どけ!炭治郎!そこの大罪非術師(さる)は……」

が、幼女鬼は突然目がハートになりながら後ろを振り向き、そのまま捨て台詞を吐きながら走り去った。

非術師(さる)共!今日の所は見逃して差し上げます!精々、非術師(さる)が呪術師を殺したと言う許されざる大罪を後悔しながら残り僅かな余生を楽しみなさい!」

「……は?」

幼女鬼の予想外の行動を見て、口をあんぐりと開けて、声にならない声を発する炭治郎であった。

 

危機が去った事を確認すると、善逸は安心したかの様に饒舌となった。

「いやぁー。あの女、化物だったわぁー。口から火を吐くし火から二丁拳銃を取り出すしで、あのまま戦っていたら確実に全滅してたわ」

「……でしょうね」

七海のこの言葉に善逸が愕然とする。

「……え?」

「何か?」

七海はいたって真面目に答えている。

それが善逸を更に困惑させる。

「いやいや、こう言うのって普通、『お前達の未熟さを棚に―――」

「あの鬼はただの鬼ではありません。もはやアレは1級呪詛師。下手な十二鬼月や1級呪霊より厄介な強敵です」

七海の口からは例の幼女鬼の危険性ばかりで、善逸の未熟さへの指摘そのものは一向に行わなかった。

「待てって、こういう『相手が悪過ぎる』発言は、絶対に成長の妨げになるから―――」

「その時点で、私はあなた方が例の1級呪詛師を見縊っていると、判断しますが」

『お前が未熟だから悪いんだろ!』すら言って貰えない程の圧倒的な差を突き付けられ、反論出来ずに口をあんぐりと開ける善逸。

それを観ていた時透は冷静に大切な質問をする。

「そんな事より」

「そんな事って……」

「秋場雪賀はどこに隠した?」

時透にとっては『善逸の勝利』は、目的ではない。

大事なのは雪賀の無事である。

それについて、憂憂の答えは、

「大丈夫ですよ。雪賀へのおしおきを兼ねて物凄く安全な場所に飛ばしましたから」

その答えに時透は困惑した。

「……おしおき?」

 

当の秋場雪賀は、夜蛾正道の眼前で正座させられていた。

「……」

「……」

長い沈黙の中、雪賀が汗だくとなる。

「……雪賀さん?」

「ヒッ!?」

突然口を開いた夜蛾に驚く雪賀であった。

 

秋場雪賀を死守すれば良いだけで、善逸が無理して勝利する必要は無い……

とは言っても、敵の圧倒的な力に屈して秋場雪賀をなすがままにされては護衛の意味が無い。

だから、時透は決断する。

「……呪術高専の皆さんがそこまで言うのであれば、最早可哀想なんて甘えは、言えないね」

その途端、後藤がかつての苦痛を思い出して仰天した。

「ちょ!?まさか……また北極点でサバイバルとか言わないでしょうね……」

時透は後藤をチラッと見てから答えた。

「今はそんな時間が無い」

「……助かったぁー……」

後藤の喜びの溜息を見て、善逸が愕然とする。

「後藤先輩……悔しくないの?」

そう言ったものを無視して話を進める時透。

「こうなったら……あいつらから日輪刀を貰い受ける!」

その言葉に驚く炭治郎。

「え!?実在するの!?鬼殺隊が!」

その途端、残念そうに呟く時透。

「……そいつら、戦力としては期待出来ない。ただ、幸いな事に日輪刀の作り方を知ってる。今の奴らは、それだけの存在だ」




原作との相違点

●累

・令和7年まで生存。
・最近無限城に呼ばれていない事について寧ろ好都合だと考えていたが、零余子の説得を受けて漸く事の重大さを理解した。
・竈門炭治郎を打ち倒すために零余子と手を組んだ筈だが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。
・最期は、黒閃付きのヒノカミ神楽で頭部を割られて消滅。

●零余子

・令和7年まで生存。
・竈門炭治郎をおびき寄せるべくナイトプールの更衣室で盗撮騒ぎを起こしていた。
・竈門炭治郎を打ち倒すために累と手を組んだ。
・最近無限城に呼んで貰えない事に内心焦っていた。
・植物を操り植物武器を作り出す。
・『まったく最近の探偵ときたら』における『スクープおじさん』に相当する人物。
・最期は、虚式「茈」の直撃を受けて消滅。
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