笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

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第22笑:パワハラ反省会

零余子が企てた竈門炭治郎抹殺計画……もとい、竈門炭治郎が修得した無下限呪術から逃げた姉。

しかし、その代償は大きかった。

「う!?」

そもそも、姉の姿も力も累から貰った借り物に過ぎず、累が死亡するか累の姉と言う役割を辞めるかすると消えてしまう、幻の様な紛い物に過ぎない。

「力が……抜ける!?累の奴……死んだのか?」

姉は本来、極悪な利己主義者で現代的な悪辣さを持つ鬼であり、累の手下の中ではかなり勘も良く狡賢い。

だが、元々力を持たない弱い鬼だった事も有ってか、炭治郎との圧倒的な力の差が『累を見捨てて逃げる』の代償を姉の脳裏から奪い去ってしまったのだ。

「しくじった。しくじった!私だけは今までしくじった事無かったのに!この家族ゴッコを!」

このままでは那田蜘蛛山に移住する前の弱い自分に戻ってしまう事を恐れた姉であったが、那田蜘蛛山で得た力の本来の持ち主である累を(うしな)った時点で、もうどうする事も出来ない。

現に、鬼の再生力が姉を元の……血鬼術を持たぬ雑魚鬼だった頃の顔に戻そうとしている。

「冗談じゃないわよ!もっと力をよこせ!クソガキ!」

しかも、姉……もとい元姉に近付く足音が元姉の運命を図星を衝きながら嘲笑う。

「鬼の最期はどれも儚い。鬼は死んだ途端、この世に何も残せない。胃袋の中に居る人間達ですら」

元姉は血鬼術で攻撃しようとするが、肝心の強酸性の糸束がいっこうに出ない。

「やはり累の死に気付いていませんでしたか。炭治郎さんの言う通り、累の言う家族愛は紛い物だった様ですね?」

「ぐ!?」

先程1級呪詛師認定された幼女鬼が只ならぬ圧迫感で訊ねる。

「可愛いお姉さん、貴女は何人殺しましたか?」

血鬼術が使えない頃に戻ってしまった事を漸く察した元姉は、

「……5人。でも、命令されて仕方なかったのよ!」

と嘘の涙の演出付きで言いくるめて逃れようとする。

だが、小手先の弁明が効かず、最早面倒になったのか、幼女鬼が元姉の頸を片手で締め上げる。

「頸、頸!頸入ってる!頸入ってる!」

「お姉さんは正しく罰を受けて生まれ変わるのです。そうすれば私達は仲良くなれます。呪術師の命を奪っておいて何の罰もないなら殺された呪術師が報われません。一緒に頑張りましょう。大丈夫!お姉さんは鬼ですから。死んだりしませんし、後遺症も残りません!」

元姉は幼女鬼の危険性に気付いて身の丈に合わぬ逆上をしてしまう。

「頸入ってるって言ってんだろ!死ね、糞女!」

「それは……貴女の仕事じゃない」

「え?」

その直後、幼女鬼はまるで落とし穴に落ちるかの様に襖の中に消え、元姉もそれに巻き込まれた。

 

完全に本来の姿に戻った元姉が目を覚ます。

「ここは……」

と言いかけて……目の前の光景に圧倒された。上下左右や重力の概念が無茶苦茶な広大過ぎる城内だからだ。

「なんなんだ!?なんなんだ!なんなんだここは!」

元姉が慌てて走るが、そもそも出口どころか入口すら解らない状態では完全に無意味である。

しかも、琵琶の音色が響く度に元姉は強制的に瞬間移動をさせられた。

「ダメだ……出られない!なんなんだ!?……ここは!」

更にダメ押しとして、先程の幼女鬼とは比べ物にならない程の殺意を内蔵した視線が元姉を精神的に圧迫する。

(こうべ)を垂れて(つくば)え。平服せよ」

無惨が命令した途端、元姉は何故か正座させられていた。その隣で、あの幼女鬼が土下座していた。

「……え?」

その途端、無惨の異様に長いパンチが元姉の頭頂部を少しだけ抉った。

「あっ、あっ……」

「正坐で足りると思ったか?実る程なんとやらだ。余程頭が軽いと見える」

(息……息……息……息息息息息!息、して良いんだよね?殺されないよね?)

元姉は既に汗だくである。

しかし、そんな元姉の淡い期待は早々と砕かれた。

「累が殺された。下弦の伍だ」

(無理無理無理無理無理!累を失った私に―――)

「何が無理だ?言ってみろ」

思考を読まれてしまい、元姉は更に追い詰められる。

(何でこんな事に……殺されるの……せっかく累の家族ゴッコに付き合うだけで生き永らえる立ち位置に成れたのに―――)

「十二鬼月に数えられたからと言ってそこで終わりではない。そこから始まりだ。より人を喰らい、より強くなり、私の役に立つ為の始まり」

(嫌だ!嫌だ!嫌嫌嫌嫌嫌!死にたくない……死にたくない……死にたくなぁーーーーーい!)

元姉は無惨の前から全速力で逃亡を図る。

それを幼女鬼は嘲笑う。

「バカだねぇー」

(何とか逃げ切れ!何とか!)

気付けば無惨に頸をもぎ取られていた。

「……え?」

無惨が元姉の頭部を無造作に捨てると、元姉は自分の身体の異変に漸く気付いた。

「何で?……何で体が……元に戻らない!?」

「最期に何か言い残す事は?」

と遠回しに死刑宣告を言い渡される元姉。

だが、この期に及んでもなお、他人が悪いかの様な事を言ってしまう。

「竈門さえ……竈門炭治郎さえいなければ!零余子の馬鹿女が藪蛇なんかしなければぁーーーーー!」

「私よりも鬼狩りの方が怖いか?」

その言い訳を『敵前逃亡』と見做され、元姉の頭部に、無惨の蹴りがめり込んだ。

元姉はサッカーボールの様に宙を飛んだ……

 

そして、無惨は幼女鬼にも遠回しに死刑宣告を言い渡す。

「最期に何か言い残す事は?」

対する幼女鬼は静かに粛清免除を願い出た。

「私はまだお役に立てます。もう少しだけ、ご猶予を頂けるのであれば、必ずお役に―――」

「具体的にどれ程の猶予を?お前はどの様な役に立てる?今のお前の力でどれ程の事が出来る?」

無惨の食い気味な問いに対し、幼女鬼はある者を指名した。

「半天狗を……半天狗を殺させて頂ければ、私は必ず、より強力な鬼となり、戦います」

幼女鬼の予想外の指図に興味を示す無惨。

「入れ替わりの血戦を申し込むか?半天狗に」

「もし、この私が半天狗より弱いと判断為されるのであれば、私の人生はそこまで。その時は、遠慮無く」

そんな粛清から逃れる為の死闘に挑む幼女鬼の弁明を、無惨は受け入れた。

「そもそもな話、私が殺すも半天狗が殺すも同じ事。鳴女!半天狗を連れて来い」

琵琶の音が木霊した途端、半天狗が幼女鬼の眼前に出現した。

が、一見すると額に大きなコブと二本の角がある臆病そうな老人にしか見えない。

「ヒィイイイ!無惨様、これは一体どう言う事でぇー?」

「そこにいる累を見殺しにした役立たずが、貴様に入れ替わりの血戦を申し込むそうだ。だから、貴様がそいつを殺せ」

「ヒィイイイ!かしこまりまし、た!?」

幼女鬼が発射した複数の銃弾が、半天狗の身体を何度も貫通した。

「いくらなんでも遅過ぎます。無惨は既に『よーいドン』と言いました」

しかも、幼女鬼の血鬼術に操られた複数の銃弾(実際は弾道を操っている)が何度もUターンして半天狗の身体を何度も貫通する。

だが、無惨はまだ半天狗の敗北を認めない。

粉々にされた半天狗の身体が、各個バラバラに再生し始めたからだ。

「……数で圧し切る戦法ですか?上弦にしては拍子抜け……」

が、4人に分離した半天狗の姿は、先程の臆病な老人とは比べ物にならない程若々しかった。

「何をしているんだ馬鹿者が!」

「即死できぬというのは哀しいのう」

「震えるがいい!歓喜の血飛沫をもっと上げてみせろ!」

「楽しそうだのう!儂も仲間に入れてくれ」

幼女鬼は改めて半天狗が十二鬼月に任命された理由を理解する。

「……なるほど……これは確かに厄介です、ね!?」

十文字槍が幼女鬼の左腕を斬り飛ばす。

(速い!?)

だが、幼女鬼は臆する事無く周囲を炎上させ、更に火炎をを吹き付けて左腕を再生させる時間を稼ぐ。

(腐ってもと言う訳ね。でも、こっちも負ける訳にはいかない!)

 

半天狗は、本体含めて最大6体までの分身を作る血鬼術を使用する。

空を自在に飛び音波攻撃を放つ『空喜』。

錫杖から電撃を繰出す『積怒』。

三叉槍の使い手の『哀絶』。

羽団扇で突風を起こす『可楽』。

そして、いずこかへ隠れた本体とまだ姿を現していない分身体。

本体を見つけださないかぎり、理不尽な多対1の消耗戦を強いるこの鬼の単独討伐は困難を極めるだろう。

「カカカッ、喜ばしいのう。分かれるのは久方振りじゃ」

「おおおお、これは楽しい面白い。初めて食らった感触の攻撃だ」

「何も楽しくはない、儂はただひたすら腹立たしい」

「哀しい程熱い……」

4体の分身体の性格が別々なので、喋られると意外と五月蠅い。

夏油から与えられた任務の遂行に尽力したい幼女鬼にとっては只々イライラさせるだけであり、半天狗戦最大の難敵は自分の忍耐力ではないかと疑う程であった。

「五月蠅いです。静かにしてください」

幼女鬼がダブルサブマシンガンを乱射するが、4体とも軽々と回避する。

特に飛行能力を持つ空喜は、まるで弄ぶ様に幼女鬼の真上を取る。

「真面目に()らぬか!空喜!」

積怒の怒号もなんのその。空喜はただ真上から爪で幼女鬼を引っ掻くのみだ。

「どうだ俺の爪は?この速度切れ味!金剛石をも砕く威力だ」

積怒が空喜の油断・慢心に舌打ちする中、哀絶が再び幼女鬼に十文字槍を向けた。

「血鬼術、激涙刺突」

5つの衝撃波が幼女鬼を襲い、幼女鬼の四肢を斬り落としてしまう。

「無駄にしぶといのは、哀しいのう」

「でかした!哀絶!」

積怒がここぞとばかりに錫杖から電撃を放って幼女鬼の動きを封じた。

「可楽!」

可楽が羽団扇を扇いだ途端、幼女鬼の身体が吹っ飛んで太い柱に激突し、床へ叩き付けられた。

「やったか!?」

積怒が期待しながら叫ぶが、煙が多過ぎて幼女鬼の姿が見えない。

「ええい!鬱陶しい煙じゃ!可楽!もう1度じゃ!」

だが、四肢を失った筈の幼女鬼が再びダブルサブマシンガンを乱射する。

「何!?十二鬼月ではない筈の者の再生が、何故こんなにも早い!?」

そう。煙の中から出て来たのは、四肢が元通りとなった幼女鬼であった。

「反転術式……本来は負のエネルギーである呪力を掛け合わせて正のエネルギーを生み出して治療に活かす高等呪術。最低出力は順転の2倍。今の私では、自分を治療するのが限界ですがね」

積怒は舌打ちをしながら言い放った。

「クソガキが!」




原作との相違点

●姉蜘蛛

・令和7年まで生存。
・ナイトプール襲撃計画では秋場雪賀やナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の足止めを任されていたが、粟坂二良と違って自分勝手に動く。
・累を見殺しにして逃げた罪で無限城に連行され、鬼舞辻無惨に粛清された。

●半天狗

・令和7年まで生存。
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