笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

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第2笑:藤襲山7泊キャンプ

2025年3月5日。

竈門炭治郎と乙骨憂太の姿は、藤襲山の中にあった。

「乙骨さん、本当にこの山で7泊するだけで鬼殺隊に入隊出来る時代が在ったんですか?」

「『窓(術師ではないが呪いを視認でき、多業種に潜む協力者)』が回収した資料を視る限りではそう言う事になってるらしいよ」

とは言われても、一見すると藤の花が咲き誇る長閑な山にしか見えない。

何も知らない者から観れば、この様な長閑な山と鬼と呼ばれる危険生物との接点が解らない。

言い出しっぺの憂太も半信半疑だが、1つだけ確信を持って言える事があった。

「ただし、藤の花に守られた2合目より上に泊まる事。それが条件だ」

「ここより上……乙骨さんが以前言っていた『鬼は藤の花が嫌い』と関係があるって事ですね?」

「そう。原因は不明だけど鬼は藤の花に含まれている香りや毒素に弱い。だからなのか鬼殺隊に協力的な家は藤の花の絵を玄関先に飾っていたらしんだ」

炭治郎は1つだけ矛盾点を感じた。

「でも、その藤の花に護られた山に、鬼はどうやって登るんですか?」

その質問に対する答えは……憂太も知らない。

「ゴメン。それは解らない。僕が知っている事は『藤襲山に7泊するだけで鬼殺隊に入隊出来る』。それだけなんだよ」

その答えに炭治郎は納得出来なかったが、とは言え憂太から科せられた試練には変わりないので、とりあえず藤の花に守られた2合目より上に往く事にした。

「では、行ってきます」

「ま、トライ&エラーだよ。もしこの7泊キャンプが鍛錬にならないと言うのであれば、その時は『やらない後悔よりも、やって後悔』をしてから話そうか」

 

だが、藤の花に護られたエリアを出た途端、藤襲山7泊キャンプと言う試練への猜疑心を後悔する事になった。

(藤の花が無くなったら、急に鬼の匂いが濃くなった!)

そして……1泊目の夜にしてもう藤襲山7泊キャンプの洗礼を()ける羽目になる炭治郎であった。

「久方振りの人肉だ!」

「俺の獲物だぞ!」

「黙れ!」

早速2人の鬼が口喧嘩をしながら炭治郎の許にやって来た。

この様子を見て、炭治郎は確信した。

(そうか!鬼にとってこの山は監獄だったんだ!この山に棲み付いてしまった鬼は、2合目より下にある藤の花のせいで行動範囲が制限され、許容範囲内でしか人を食う事が出来ないんだ!)

そしてそれは、炭治郎の鬼への哀れみへと姿を変える。

(乙骨さんの話だと、鬼か死ぬ方法は4つしかなく、老衰や寄る年波ですら鬼を殺す事は出来ない。だとすると、この山に暮らす鬼は永遠とも言える空腹と戦わなきゃいけないと言う事か!?)

 

炭治郎が目の前の鬼達の生き地獄に対してあれこれ考えている間も、2人の鬼は先鋒を奪い合う為の口喧嘩を繰り返しながら炭治郎の隙を窺っていた。

(怯むな!乙骨さんの教えを思い出せ!)

 

『僕達が使用する呪術を要約すると、『体内に溜め込んだストレスを消費しながら発動させる超能力』と言ったところかな』

『ストレス?』

『そう。人間は体内で『想い』を生成し、余った『想い』は体内から抜け出て『呪い』となる。だが、僕達呪術師はその『想い』を体内で『呪い』に変えて呪術にする』

『その呪術を使えは、日の出になるまで鬼の猛攻に耐えられる!?』

『そう。先ずは僅かな『想い』から『呪い』を捻出する方法を学びなさい。どっちにしろ、武器が無ければ鬼とは戦えない』

 

(恐怖に屈するな!想いを呪力に変えるんだ!)

呪力を捻出しながら炭治郎が臨戦態勢をとる。一方の2人の鬼もまた、何時までも口喧嘩を続けても意味が無いと悟ったのか、先手必勝とばかりに炭治郎に飛び掛かった。

(そして……呪力を『無限』に変えろ!)

 

『『無下限呪術』?』

『そう。君にはその素養がある。君が初めて無惨と戦った時、君は無意識に無下限呪術を使っていた』

『それを使えば、勝てるんですか?無惨に』

『勝てる!けど、険しい道だよ』

『険しい……道……』

『無下限呪術を使いこなすには、先ずは六眼(りくがん)を習得する必要がある。六眼(りくがん)が無ければ無下限呪術は武器どころ……使用者の脳を破壊する欠点……弱点となる』

 

六眼(りくがん)よ……起動しろ!)

あらゆる術式を視認し、呪力を高解像度で観測出来る六眼(りくがん)は、あらゆる呪いを丸裸にする。

「食ってやるぜぇーーーーー!久方振りの人肉をおぉーーーーー!」

「どけえぇーーーーー!俺が食うんだあぁーーーーー!」

(私の『想い』よ!力を貸せ!)

あと少しで爪が炭治郎に触れると言う時に、2人の鬼は突然止まってしまった。

「何だ!?何故当たらねぇ!?」

「触れない!何で!?」

無下限呪術使用者を害する者は無限に阻まれ、近付く程低速化し接触出来ない。特に呪術に関する知識が全く無い無知な力任せ如きでは触れる事すら叶わない。

そうとは知らずに2人の鬼は必死に口を開閉させるが、文字通りの『当たらなければどうということはない!』である。

(乙骨さんの言う通りだった!無下限呪術さえ使いこなす事が出来れば、私は鬼と戦える!)

 

とは言え、今の炭治郎は六眼(りくがん)と無下限呪術の基礎を会得しただけに過ぎず、まだ無限を武器に転用する方法を身に着けていなかった。

だから、炭治郎が今出来るのは、目の前の呪いや想いをサーモグラフィーの様に解析する事と無限を盾として利用するのみ。まだまだ武器とは呼べない。

だから、今の炭治郎は無下限呪術以外の方法で鬼を攻撃しなければならない。

「とりあえず……これで!」

突然頭突きされた鬼が思いっきり吹き飛んだ。

(頭が……硬い!)

炭治郎の持ち前の石頭でする頭突きは、人間であれば脳震盪を起こさせる程の威力である。しかも、現出させた無限で守られている為、その威力は更に倍増される。

(人間の癖に何でここまで頭が硬いんだ!?なんだ!分からん!分からねば!)

2人の鬼はなんとしても目の前にいる炭治郎を食べようともがくが、食い殺した人間の数が1桁の雑魚鬼とまだまだ基礎レベルとは言え六眼(りくがん)と無下限呪術を使える様になってきた炭治郎の実力差は歴然としており、返り血を浴びせる事すら困難と言う体たらくであった。

一方の炭治郎はその隙にリュックから一振りの刀を取り出した。

 

『もし万が一呪力を使い果たした時の為に、何かの体術を使えるようにした方が良い』

『体術って?』

『なんでも良い。幸い、竈門家にはその為の道標は既に出来ている』

『この本は?』

『君にとって最厄日であるあの日、失礼して竈門ベーカリーから盗んで来た物だ。『ヒノカミ神楽』の事が詳しく書かれている』

『ヒノカミ神楽!?お父さんが毎年大晦日に徹夜で踊り続けていたアレの事!?』

『それなんだけど、日下部先生の見立てでは、これは神楽でも能楽でもダンスでもない……強力な剣術なんだって』

『剣術!?私のお父さんはそれを家内安全を祈願する為の神楽として利用していたと言うの!?』

『……全ての物に理由はある。君のお父さんが何故これ程の剣術を神楽として利用していたのか?そして、この剣術を後世に残そうと本にしたその理由。そこには君のお父さんの想い……思惑があったんだと僕は思う。それに』

『それに?』

『その父さんがお亡くなりになった今、他の誰かが踊り手を務めなきゃいけない。炭治郎ちゃん、君の出番だよ』

 

それからと言うもの、憂太の元担任である『日下部篤也』と憂太の元同級生である『禪院真希』にヒノカミ神楽の基礎を叩き込まれる毎日であった。

お陰で、炭治郎の剣の腕は実戦で通用する程に上達した。

 

一方の2人の鬼は久しぶりの人肉が目の前にあるせいか、目の前の圧倒的な力を前にしても引くに引けなくなってしまった。

「余計な真似をするな!大人しく俺に食われろ!」

「俺が何十年人間を食っていないか!貴様に解るか!?」

「知るか。見境無く何でも食うアーバンベアの様な事を言うな」

(それに、私にはやらなきゃいけない使命がある!)

 

六眼(りくがん)と無下限呪術の基礎を習得したら、後は簡単な任務を幾つかこなして貰い場数を増やし、最終的には鬼舞辻 無惨を超える力を手に入れて、君の妹を人間に戻す方法を引き摺り出す』

『出来るんですか!?禰 豆子を人間に戻す方法!』

『僕には解らない。だから探すしかない。だから鬼化の鍵を握る鬼舞辻 無惨に勝つ必要がある』

『きぶつじ……むざん……』

『僕達が鬼舞辻 無惨を倒して鬼化の謎を全て解く。後は、晴れて自由の身だよ。君も、君の妹もね。だから……強くなってよ。僕や無惨に置いて行かれないくらい』

 

(だから、今は負けてる場合じゃないんだ!)

炭治郎は、未だ懲りずに炭治郎に襲い掛かる2人の鬼の眼前で上段の構えをとる。

(日下部さんとの鍛錬を思い出せ!父さんの動きをトレースするんだ!)

「ヒノカミ神楽!円舞!」

炭治郎が円を描く様に刀を振り下ろした!

それだけで、鬼が真っ二つになった。

ヒノカミ神楽の威力を前にして、斬られていない方の鬼はおろか、実行した炭治郎すら驚きを隠せなかった。

「えーーーーー!?」

「凄い……禪院さんの言う通りだ……」

真希から「その名字を使うな」と厳命されているが、尊敬や恩義の念のせいか真希の事をどうしても『禪院さん』と呼んでしまう炭治郎。

だが……

「ふざけるな!」

両断された方の鬼が両手で自分の頭を押さえると、真っ二つになった筈の身体が合体して斬られる前の姿に戻った。

「やはり駄目か……日輪刀じゃないと……」

「いい加減、さっさと食われやがれぇーーーーー!」

突き付けられた現実に歯噛みする炭治郎だが、2人の鬼がこれ以上炭治郎を襲う事は無かった。

「うっ!?」

(何だ?この腐った様な臭いは!?)

森の中から出て来たのは、全身に幾つもの腕を纏った大玉の様な高身長の鬼だった。

「くそ!あいつがもうきやがった!」

「今の俺じゃあいつには勝てねぇ!ちきしょう!」

2人の鬼が逃げた理由を理解してしまった炭治郎が緊張する中、大玉鬼が炭治郎に質問した。

「そこの娘、今は、しょうわ何年だ?」




原作との相違点

●呪術

・『KEY THE METAL IDOL』の『巳真家に代々伝わる超能力とその原理』を追加させていただきました。

●日下部篤也

・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・とある諸事情(呪術廻戦第269話参照)のせいで、冥冥にシン・陰流の当主を推し付けられた。
・乙骨憂太の指示で竈門炭治郎にヒノカミ神楽の基礎を叩き込んだ。

●禪院真希

・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
・大型二輪免許取得済み。
・とある諸事情(呪術廻戦第149話参照)のせいで禪院家大破の実行犯として捕縛されるも、憂太が五条家当主代理の権限を使って罪状を抹消した。
・乙骨憂太の指示で竈門炭治郎にヒノカミ神楽の基礎を叩き込んだ。

●藤襲山

・かつては鬼殺隊の私有地だったが、現在は空き家状態。
・鬼殺隊最終選別の内容も呪術界にはやや曖昧かつ不完全にしか伝わっていない。

●ヒノカミ神楽

・竈門ベーカリーが鬼舞辻無惨に襲撃された日に憂太が盗んだ書物等に詳細が書かれていた。
・日下部篤也や禪院真希が憂太から渡された書物を参考に再現し、これを基に炭治郎がヒノカミ神楽を習得した。
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