笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

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第24笑:上弦の肆、炎菓

分身体の最高戦力である憎珀天まで失った半天狗(?)に残されたのは、逃げの一手のみ。

(あ……相性が悪過ぎるーーーーー!)

だが、幼女鬼が発射した誘導弾はしつこく半天狗(?)を追い回す。

「ヒィィ!」

(斬られれば分裂出来るものを、燃やされてしまっては分裂出来ぬ!憎珀天の石竜子(とかげ)も燃やされてしまった!)

そうこうしている内に、半天狗(?)を追尾していた誘導弾が次々と床に命中して爆発し、半天狗(?)が宙に投げ出されて幼女鬼がそれを待ち構える。

「あっ……あぁ……」

「お待ちしておりました」

半天狗(?)は咄嗟に幼女鬼の顔に掴みかかって握り潰そうとする。

「弱い者いじめをォォォ……するなああああ!」

だが、幼女鬼が持つサブマシンガンはいつの間にかグレネードピストルへと姿を変えていた。

「てめえの理屈は全部糞です。ボケ野郎さん」

グレネードピストルから放たれた擲弾は、半天狗(?)の腹に命中して爆発し、黒い火花を撒き散らした。

「ふぅー……これで勝、った!?」

幼女鬼は漸く自分の重大な失態に気付いた。

半天狗(?)の舌に刻まれている文字は『恨』、だが半天狗本体の舌には『怯』の字。

つまり、この鬼は影武者(にせもの)なのだ。

「どこに隠れた……」

だから幼女鬼は気付けなかった。

恨の鬼の心臓の中に隠れた、豆粒の様に小さい半天狗本体を。

幼女鬼が気配に気付くより早く半天狗は動いた。と言っても逃げの一手のみである。

しかも半天狗本体の全速力は先程の恨の鬼より速かった。

「ふざけないで頂きたい!小賢しいですね!忿懣が溜まります!」

だが、幼女鬼にとって幸いだったのが、乱射した銃弾が床や柱などに多数突き刺さっている事。

それを火に戻せば……

「ぎゃあぁーーーーー!?」

半天狗本体の逃亡を阻む炎の壁となる。

「つーかまーえた♪」

そして、幼女鬼は半天狗本体を火達磨にしながら右手で握り潰した。

「うわあぁーーーーー!」

その瞬間、半天狗の脳裏に1人の男の言葉がフラッシュバックする。

「貴様のした事は、他の誰でもない貴様が責任を取れ。この二枚舌の大嘘吐きめ」

(これってまさか……)

 

「旦那様は知らぬふりをしてくださっているが、私が許せぬ。これから奉行所へ行く」

1人の男性がとある盲人から盗みを咎められ、奉行所へ告発しようとする彼を口封じに殺害。

しかし結局奉行所へ送られ、そこで裁きを受ける事となる。

「別の町でも貴様は盗みと殺しを繰り返していた様だな?同情の余地も無し」

町奉行の薄情な一言に男性は反論する。

「滅相もない、儂には無理でございます。この様に目も……」

男性は自分の弱さを晒した心算だった。

が、町奉行は培った観察力でそれが嘘だと看破した。

「貴様は目が見えているだろう?以前この白洲の場へ来た按摩(あんま)は、私が話し始めるまで塀の方を向いていたぞ」

「ぐっ!?」

最早言い逃れが出来ない状況下で、男性は更に見苦しく言い逃れをする。

「儂が悪いのではない!この手が悪いのだ。この手が勝手……」

「手が悪いと申すか!?ならばその両腕を斬り落とす!」

食い気味に町奉行が答え、男性は面食らった様な顔をした。

「……え?」

当然両手を落とすくらいで済まされる筈もなく、男性は打ち首を言い渡された。

ところがその日の晩……

「明日打ち首とは可哀想に 私が助けてやろう」

たまたま居合わせた鬼舞辻無惨の手によって男性は鬼となり、報復の為に奉行の寝込みを襲った。

対する町奉行は手にした刀で応戦するも敵わず、それでも最期まで臆する事無く、

「貴様がなんと言い逃れようと事実は変わらぬ。口封じしたところで無駄だ。その薄汚い命をもって罪を償う時が必ず来る」

町奉行が最期にした事は、毅然とした糾弾であった。

 

そして時は令和7年。

(まさかこれ……走馬灯かあぁーーーーー!?)

己の悪行を突きつけるかの如き走馬灯を見た半天狗は、己の責任から逃げ続けてきた卑劣さごと断罪の呪炎に焼かれ、その罪の報いを受ける事となった。

「ぎゃあぁーーーーー!」

灰と化した半天狗を捨てる幼女鬼であったが、散々苦戦した怒りからかその灰に唾を掛けた。

とにかく、270年を超える年月も被害者を騙りながら罪無き人命を殺め続けた『生まれながらの外道』が遂に死んだのである。

 

琵琶の音が響くやいなや、幼女鬼は鬼舞辻無惨の目の前に転送された。

「まだ生きていたか」

気付けば、幼女鬼の左右に6人の鬼がまるで上座・下座に別れて並べられている様に並んでいた。

その中には夏油傑の姿もあった。

その6人の鬼全てに共通する特徴として……両目の眼球に数字が刻まれている事。つまり、この者全員が十二鬼月の上位である『上弦』なのだ。

その1人である玉壺は、1つだけポカンと空いている場所が気になった。

「ん?……あれ?半天狗殿はどこに行かれた?」

が、幼女鬼はそれどころではない。

自分が役に立つ事を証明しないと、目の前の無惨に殺されてしまうからだ。

「ご覧いただけましたか?私が半天狗を殺すところを。ですの、で!?」

その直後、幼女鬼の首に何かが刺さった。

その正体は、無惨の触手であった。

「うぁっ…カッカっ…か…ああ…かぁ…ああ…あぁ……」

「気に入った!私の血をふんだんに分けてやろう。ただし、お前は血の量に耐え切れず死ぬかもしれない」

無惨の血を注射の様に流し込まれた幼女鬼は、あまりの激痛にもがき転がる。

「だが、順応出来れば更なる強さを手に入れるだろう」

幼女鬼は何度も立ち上がろうと四つん這いになるが、激痛激しく、何度もうつ伏せになってしまう。

(駄目だ……ダメだ駄目だダメだ駄目だ!死ぬわけには……恩を……返さなきゃ!)

「がっ……がああぁーーーーー!」

幼女鬼の目に劇的な変化が現れた。

左目に『上弦』、右目に『肆』の文字が浮かび上がった。

それを観た無惨が上機嫌で幼女鬼に命じる。

「そして私の役に立て。耳に花札の様な飾りを付けた鬼狩りを殺せば、もっと血を分けてやる」

夏油は幼女鬼の処刑が回避された事に安堵の溜息を吐き、黒死牟はただジッと幼女鬼を直視する。

童磨は呑気に幼女鬼に質問した。

「そうかぁー……肆かぁー……半天狗殿は亡くなられたかぁー……で、そこの君、名前は?」

代わりに答えたのは夏油だった。

炎菓(えんか)……は、如何ですかな?」

炎菓(えんか)か……まあ、それで良かろう」

一方の玉壺、妓夫太郎、堕姫は少し焦っていた。

今まで上弦や十二鬼月どころか、血鬼術にすら達していない鬼殺隊最終選別用に捕らえられて藤襲山に閉じ込められた雑魚鬼が、入れ替わりの血戦に勝利して上弦の肆へと飛び級したのだから。

(この小娘が、わたくしより上だとぉー!?)

特に堕姫は妓夫太郎と結託して漸く上弦の陸なので心中穏やかではない。

(え……私……結構ヤバイ位置にいない?)

幼女鬼改め炎菓(えんか)が漸く立ち上がると、琵琶の音色が鳴り響き、夏油と妓夫太郎達の間に座らされた。

 

炎菓が入れ替わりの血戦を成し遂げて上弦の肆と成ったのを見届けた夏油が無惨に提案する。

「とは言え、最初から炭治郎はきつかろう。慣らし運転は必要だ」

「で、私にどうしろと?」

「実は……『鬼舞辻無惨被害者の会』の拠点が漸く判明してね、その見苦しい残穢の全処分、炎菓に任せてみては如何か?」

そんな夏油の提案に玉壺が困惑する。

「え?言っちゃう?ね、サマーオイル。全部、言っちゃう?しかも、わたくしが掴んだ情報なんですけど」

が、玉壺の困惑は無視され、無惨が玉壺と炎菓に命じた。

「玉壺。情報が確定したら、炎菓と共にそこへ向かえ」

その直後、琵琶の音色が鳴り響き、中空に突然現れた襖が無惨と上弦達を隔てる様に閉まり、無惨の姿は見えなくなった。

それを聴いた玉壺が震え悶えた。

(そんな……わたくしが掴んだ情報なのに……御無体な……でも、そこが良い……)

そんな玉壺の眼前に一瞬で現れた童磨。

「あ」

「玉壺殿、その『鬼舞辻無惨被害者の会』とはどこなのだ?俺も一緒に往きたい」

「いや……それは……」

「教えてくれないか?この通り、だ!?」

突然、童磨がハチの巣と成った。

無惨の血を注射の様に飲まされた激痛から漸く解放された炎菓の散弾銃だった。

「貴方は何も言われていない筈ですよね?なのに何故……」

だが次の瞬間、炎菓の右腕が斬り落とされて床に落ちた。

「炎菓……」

何時の間に来たのか、黒死牟がゆらりと炎菓の右前に立っていた。

「よいよい黒死牟殿。俺は何も気にしていない」

が、黒死牟は童磨の意見を無視して炎菓に説教を垂れる。

「お前の為に言っているのではない…序列の乱れ…ひいては従属関係にヒビが入る事を…憂いでいるのだ…」

それを聞いた童磨が指を鳴らす。

「あー、なるほどね」

それも無視され、黒死牟の炎菓への説教が続く。

「炎菓よ…気に食わないのであれば…再び…入れ替わりの血戦を…挑む事だ」

そんな黒死牟を童磨が宥める。

「まあまあ黒死牟殿。俺はわざと避けなかったんだよ。ちょっとした戯れさ。こう言う風にして仲良くなっていくものだよ。上に立つ者は下の者にそう目くじら立てず、ゆとりを持って―――」

「炎菓…私の…言いたい事は…解ったか?」

対する炎菓はただ一言、

「私は、成し遂げるべき事をするまでです」

「そうか…励む…事だ」

その途端、黒死牟がいきなり消えた。

「さよなら黒死牟殿。さよなら」

その直後、玉壺がこの隙にとばかりに叫んだ。

「わたくしと炎菓を同じ場所に飛ばしてくだされー!」

「待ってくれ!じゃあ俺も……」

童磨の台詞はまたしても無視され、玉壺と炎菓の姿が琵琶の音色が響いた途端に消え、それを合図に夏油が飛び去って行った。

妓夫太郎と堕姫も何時の間にかいなくなっており、ポツンと1人残る童磨。

「おーい!琵琶の君。もし良かったらこの後俺と―――」

「お断りします」

琵琶を持った女性にまで無視される様に童磨の姿も消えた。

「誰も彼もつれないぁー」




原作との相違点

●半天狗

・令和7年まで生存。
・最期は炎菓の炎凝呪法で燃やされ、炎菓に握り潰された。

●半天狗を裁いた奉行

・原作とほぼ同一。

●銃鬼 / 炎菓(えんか)

・本作オリジナルキャラクター。
・最終選別用に生け捕られて藤襲山に囚われた幼女の鬼だったが、竈門炭治郎の観察を目論む夏油一派の策略によって稀血を有する非術師10人と禪院真依・禪院扇の脳を食わされ、1級呪術師に匹敵する呪詛師として覚醒した。
・弾道や軌道などの『動き』を操る血鬼術と炎凝呪法を開花させており、銃などの武器に呪力を籠めて打ち出し、高威力のチャージショットを発射する事も可能。
・引っ込み思案で内向的傾向を有するものの、自分を藤襲山から救い出してくれた夏油一派に奉公するべく鬼特有の傲慢・凶暴に徹しようとする健気な一面も持っている。
・黒閃経験有り。
・半天狗に入れ替わりの血戦を挑んで勝利し、上弦の肆となった。
・夏油傑に炎菓(えんか)と命名された。
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