笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~ 作:モッチー7
さっきまで広範囲に影響を及ぼす血鬼術を使用した壺を捜索していた筈の炭治郎だが、訓練用AIロボット縁壱ワンゼロを発見するやいなや、その矛先を縁壱ワンゼロに向けた。
(縁壱さん……私のヒノカミ神楽がどこまで通用するか、試させていただきます!)
縁壱ワンゼロは炭治郎の唐竹を払い、そのまま左薙の反撃……と見せかけた刺突を繰り出す。
しかし炭治郎もまた、即座に引き戻した刀でその刺突を逸らした。
風を切る縁壱ワンゼロの斬撃を、刀で防ぎながら回り込めば……縁壱ワンゼロの背後を取る事が出来た。炭治郎にとってはこれ以上ない好機。
しかし、炭治郎の右斬上を縁壱ワンゼロは軽やかに跳躍して避ける。
(ここまで出来るの!?けど崩した!)
ならば、狙うのは着地の瞬間。いくら軽やかに跳んだとて、鉄は重力には逆らえない。
縁壱ワンゼロが着地するタイミングを見計らい、炭治郎は右薙を放つ。
間違いなく、姿勢を整える前に縁壱ワンゼロを捉える軌道で刀を振るった。の、だが……
「マジか!?」
まるで体操選手の如く、縁壱ワンゼロは両足を水平まで広げて地に伏せ、炭治郎の右薙をくぐってみせた。
斬上気味の刺突を、炭治郎は危なげなく躱した。
そして、炭治郎が再び刀を構えれば、すかさず縁壱ワンゼロの攻撃が飛んでくる。
(今の私じゃ……無下限呪術を使わないと、縁壱さんには勝てない!)
踊る様に戦う縁壱ワンゼロの斬撃を、炭治郎は無限の鉄壁防御を生かし、間合いを上手に使って捌いてゆく。
そんな炭治郎VS縁壱ワンゼロを観ていたロリ巨乳大好き青年と玉壺が、口をあんぐりと開けた。
「……凄い!まるで神々の戦いだ!」
(これが本当に人間の動きか!?無惨様が例の耳飾りを警戒するのも納得だ!これは急ぎ殺さねば……)
だが、縁壱ワンゼロが戦闘中に突然停まってしまった。
「嘘ぉっ!」
これについて青年は、ある機能を予測した。
「これってもしかして……あー、やっぱり」
「やっぱりって?私まさか、壊しちゃったの!?」
「いいえ。訓練生が水分不足や疲労困憊にならない様に一定時間経過すると一時停止する仕様の様です」
炭治郎は呆れ笑いをした。
「ハハハ、これは訓練用だったね」
だが、無下限呪術が無いと縁壱には届かない事に、悔しさを通り越して罪悪感を抱いていた。
(今の私じゃ汚物辻どころか縁壱さんにすら勝てない……ごめん!禰 豆子!)
その頃、鬼舞辻無惨被害者の会の本部がある刀鍛冶の里に危機が迫っていた。
夏油傑が
「玉壺の奴、随分先走ったね。君に上弦の肆を盗られた事が余程悔しいと診える?」
「笑い事じゃありません。夏油様が例の場所を知らなかったら、私は途方に暮れてましたよ」
そこに2人の門番が立ち塞がる。
「出る杭は……」
合言葉を確認する心算だったが、夏油達の目を見て慌てて抜刀する。
「襲撃だ!十二鬼月だ!」
門番が手にしたホイッスルが厄介だと思って2人を殺そうとする
「夏油様?」
「待って、こっちの方が面白くなる」
一方の門番2人組はホイッスルを鳴らし終えてもなお襲ってこない事に屈辱を感じた。
「何!?待っただと!?」
「十二鬼月にコソコソは不要だと?ふざけるな!」
対する夏油は余裕だった。
「そうさ。強者が弱者に適応する矛盾が……大の苦手でね」
その途端、
「あ。訊き忘れてましたが、この里に殺してはいけない
その質問に対し、夏油はニヤリと笑った。
「いや……その点は気にしなくて良い」
刀鍛冶の里にけたたましいホイッスルが鳴り響いた。
「何々何!?」
「襲撃だ!まさか、ここも鬼に嗅ぎ付けられたのか!?」
「襲撃!?」
と言って、炭治郎は縁壱ワンゼロがある場所まで来た理由を思い出して慌てた。
「そうだった!あの壺!どこだ!」
この状況に玉壺も慌てた。
(あの馬鹿新人め!もっと静かに侵入出来ないのか!?)
しかも、玉壺は炭治郎と目が合ってしまった。
両者暫く沈黙したのち、
「いたぁー!」
「ぬお!?」
玉壺は慌てて血鬼術を使用する。
「血鬼術、千本針、魚殺」
玉壺が放った巨大な金魚の口から放たれる無数の毒針。
だが炭治郎には無下限呪術がある!炭治郎の自由を徐々に奪っていく筈だった毒針は、炭治郎の目の前で停まり宙に浮いた。
「な!?」
そんな芸当が可能なのかと驚いた一瞬の間に、今度は玉壺に向かって赤い球が飛んで来た。防御も虚しく思いっきり吹っ飛ばされてしまう玉壺。
「術式反転、赫」
玉壺は瞬間移動の如く炭治郎の背後へと転がり込んだ。前後を窺いながら、なんとか体勢を整えようと試みる。
直後、炭治郎が攻撃を仕掛けてきた。僅かな気配の揺らぎに玉壺が直ちにその場を離れる。
「速い!?」
「(悔しいが)貴様にだけは言われたくない!」
「おい!あの目はまさか!?」
「くっそ!よりによって十二鬼月かよ!」
「里の鍛冶師は直ちに予備の里へ避難!それ以外は鬼殺隊の誇りに賭けて里を護り通せぇー!」
次々と集まる鬼舞辻 無惨被害者の会のメンバー達の前で、夏油と
「で、夏油様、どれとどれが
「いや、内通者以外は全員……
「いや……それだと私、こいつら全員を殺さなきゃいけなくなるんですが」
口ではそう言っているが、
「ま……その方が(選別が)楽で良いんですけどね」
そして……炎凝呪法が生み出す様々な武器が、鬼舞辻 無惨被害者の会のメンバー達の命を刈り取り淡々と削っていく。
直ぐに増援が現れ刀で斬りかかって来たが、宙で身をひるがえして軽々避ける。
「十二鬼月が、何でこんな所に!?」
だが、3人の剣士が夏油に刀を振り下ろす事は無かった……
その前に裏切り者に背後から射殺されたからだ。
「お久しぶりです。ボス。ちょっと痩せた?」
この男こそ、夏油一派の内通者の宇田である。
「久しぶりだね。宇田君」
「もしかして、十二鬼月も連れて来たの?」
「うん」
「派手にやり過ぎだよ。あの馬鹿共」
「悪いね。1年間もスパイみたいな事させて」
「鬼殺隊って命懸けの仕事多いし、福利厚生もお粗末。そっちよりだいぶブラックでしたよ」
「友達できた?」
「出来たけど……現場派遣勤務なんで、今頃死んでますね」
「ごめんね」
「いっすよ。ボス、
そんなフレンドリーな会話をしていた宇田だったが、どうしても問いただすべき質問が有った。
「で、いよいよ始めるんすね」
「腐敗した
そんな中、
「止まれ貴様。今この里は夏油様の管理下にある」
「死にたくなきゃ消え失せろ」
だが、夏油一派に雇われた殺し屋2人は、タクシーから降りた乙骨憂太にあっさりと斬られて倒れた。
一方、時透は里の資料室で読書に耽っていたが、手にした書物の内容と善逸が語るヒノカミ神楽が何故か噛み合う事に、ある種のファインプレーを感じて怖くなってきた。
(何だ……この呼吸は、太刀筋がヒノカミ神楽に似てる!?この呼吸も!この呼吸も!この呼吸もだ!乙骨憂太が竈門炭治郎とか言う娘に仕込んだのは、無下限呪術・六眼・ヒノカミ神楽だけの筈じゃなかったのか!?我妻のアホ、竈門炭治郎に関する致命的な見落としが在るんじゃないのか!?)
最後に日の呼吸に関する書物に触れようとした瞬間、里に敵襲を知らせるホイッスルが鳴り響く。
(尾行された!?僕達が!?)
もしも、この里が鬼の襲撃を受けた理由がナイト・エージェンシーの来訪だとしたら、正にホワイトスパイ失格と言っていい程の痛恨の失態である。
一応、その時の為の策を弄してはいるが……
その……ナイト・エージェンシーが用意した万が一の備えに蜂の巣にされる
「じゃんじゃん撃ちまくれぃ」
「あーい」
武部の合図の下、
「あい、3、2、1……撃ち方、やめー」
だがその直後、4人のエージェントが瞬く間に斬首された。
彼らは一応、善逸から鬼のしぶとさに関する報告を聴いてはいたが、まさかここまでしぶといとは正直思っていなかったのだ。
そんな油断が、ナイト・エージェンシー側にも死者を出してしまったのだ。
「あー、クソッ。今日会社休みゃ良かったぜ」
そう言いながら水筒に入っているウイスキーを飲む武部。
そこへ、時透が漸く到着する。
「これだけ用意して無傷だと!?……何人死んだ?」
「ここまででざっと40人。侵入からおよそ2分」
武部の報告を聴いて頭を抱える時透。
「……バケモノか」
時透が懐の拳銃に触れようとした時、
「ん?なんか来た?」
九十九由基が時透の肩を叩いて制止させる。
「やめときな。こいつは、ただの鬼じゃないよ」
「やべぇババアが来た。私、
対する九十九は余裕の表情で時透に指示を出す。
「あんたらは下がってな。特に若い方、アンタは炭治郎ちゃんに伝えなきゃいけない真実が有るんでしょ?」
九十九の指摘に時透がドキッとする。
(何故それを!?)
「生きな!アンタが炭治郎ちゃんの許に到着するまでの時間くらいは、稼いでやる!」
原作との相違点
●鬼殺隊
・日中戦争および太平洋戦争の煽りを受けて人材不足に陥った。
・令和7年時点で『鬼舞辻 無惨被害者の会』として細々と活動しつつ再結成を準備していたが……
・『SAKAMOTO DAYS』における『有月憬(×) / 楽 /宇田 VS 殺連関東支部職員』に相当する組織。
●刀鍛冶の里
・令和7年時点で『鬼舞辻 無惨被害者の会』の本部として利用されていたが……
・『SAKAMOTO DAYS』における『有月憬(×) / 楽 /宇田 VS 殺連関東支部職員』に相当する場所。
●宇田
・鈴木祐斗による日本の漫画作品『SAKAMOTO DAYS』からのゲスト出演。
・表向きは鬼舞辻 無惨被害者の会のメンバーだが、実際は夏油一派所属の呪詛師。
●武部
・鈴木祐斗による日本の漫画作品『SAKAMOTO DAYS』からのゲスト出演。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)の戦闘部隊隊長。