笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

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第31話:ショートコント『我妻善逸VS重面春太』

炭治郎が刀鍛冶の里にいる以上、暫くは無下限呪術の力を借りずに秋場雪賀を護らねばならないのだ。

それが、呪術界にとってはどれ程のハンデになるのか、我妻善逸はもう直ぐその身で味わう事になるのであった。

 

とは言え、呪術高専だって馬鹿ではない。

善根高校には既に2人の生徒(都立呪術高専2年生)が送り込まれていた。

ただ、甘露寺蜜璃はやる気満々なのに対し、不死川玄弥は個人的な理由で善根高校に行く事を嫌がっていた。

が、特級である憂太の命令には逆らえず、

「2級以上の術師は本来、単独での活動も許されてる。つまり、いつまでも君達を甘やかしてる場合じゃないって事だよ」

と言われて強制的に送り出されてしまったのである。

「たくよおぉー、乙骨先輩も大事な事を忘れないで欲しいぜ」

玄弥の愚痴に対して、善逸は呆れながらその訳を言い当てた。

「君の兄は不死川実弥だったか?未だに都立呪術高専入学を反対されてるんだって?」

「知ってんなら、何故止めなかったんだよ」

それについては善逸も厳しく言うしかない。

「こっちも失敗は許されないんだよ。秋場雪賀の右腕についてる秋場財閥次期総支配人の証、アレがサマーなんかの手に落ちたら日本の政財界は大混乱するからね。使えるモノは全て使わせて貰うよ」

玄弥は舌打ちするが、だからと言ってこの任務が無効になる訳も無い。

「まあまあ、そう言わずに頑張ろうよ!」

「おわぁー……」

蜜璃の可愛さに見とれてしまった善逸に後頭部に銃口を向ける玄弥であったが、善逸が直ぐに抜刀して刀を玄弥の首にピタリと添わせた。

「動けるねー。安心したよ」

「ちっ!今の涎は誘いかよ」

「お恥ずかしながら半分外れ。あんな可愛い娘が来たら、誰だって見惚れる」

が、秋場雪賀を狙う欲深な呪詛師は蜜璃に見惚れる時間を与えてはくれなかったらしい。

「おいおい。無下限呪術持ちがいなくなった途端にこれか?」

「あ?」

「早速で悪いけど、俺はお客様を迎えに行く。後の説明は寒崎椿と言う女ボディーガードに聞いてくれ」

「特徴は?」

「秋場雪賀にべったり張り付かれてるから、見れば直ぐ判る!」

「べったりって!?……どうやって判別しろって言うんだ?」

 

「君達かい?炭治郎の代理の呪術師って言うのは?」

蜜璃と玄弥は、秋場雪賀の隣にいる女性が寒崎椿だと思った。

(べったりってそう言う意味かよ?)

(好きなのかな?椿さんって言う人が)

「あのぉー……私の顔に何か?」

 

善逸が発見した敵はサイドテールの金髪で、華奢な体格の小柄な青年。

「君の……その手に持ってるのは何だい?」

青年は慌ててUターンするが、善逸がパルクールと雷の呼吸の要領で先回りして再び青年の眼前に立つ。

「そう言う危ない物を持ってる人を護衛対象に近付けたとあっては、ナイトの―――」

「そんな事言わないでさぁー、そのまますんなり通してよぉー」

食い気味に青年が答え、善逸は面食らった様な顔をした。

「……お前馬鹿か?」

「馬鹿は君の方じゃん。せっかく12億が目の前にあるって言うのにさぁー」

青年はふざけてはいるが本当の事を言っている。

善逸は動揺の声を上げた。

「ん、ちょま、ちょまって?え、本気で言ってるの?」

「誰だって12億欲しいじゃん。だからさ、秋場雪賀を殺させてよぉー」

容赦なく殺害宣言し、青年が善逸に背を向けて走り出した。

それをいやいや待てと阻止する善逸。

「ちょっと待て!待てって!」

関取同士のがっぷり四つの様に、両者が体をがっちりと組み合った。

「待てって、一旦話そうぜ」

なおも青年は善逸から逃れて秋場雪賀を殺しに行こうとする。

「こういう、ごちゃごちゃした事をやるキャラは女にモテないんだよ、解る?」

面倒な戦いを避けて秋場雪賀だけを殺そうとする青年をなんとしてでも押しとどめようと、善逸は奮闘した。

その勢いに諦めたのか、体を引く青年。

「あっ」

あらぬ方向を指差して、善逸の視線を誘導。まんまとフェイントに引っ掛かった善逸に背を向けて走り出したので、善逸が再び青年とがっぷり四つの体勢へ入る。

「違う違う!お前、そう言うのは。そう言うフェイントはお前、女にモテないから!」

進路を必死に塞ぎ青年を突き飛ばす。改めて対峙したところで善逸は言った。

「なあ、お前は殺し屋で呪詛師だろ?非術師如きがとか無いの?」

「無い」

またも青年が食い気味に答えた。

「いやいや、他の呪詛師は俺がいても平然としてたから。逃げなかったから」

「俺はそこまで強くないもん。じゃあねぇー」

強引に逃げようとする青年を食い止める事4度目。

「ちょちょちょ、違うっては」

何が何でも青年を秋場雪賀に会わせたくない善逸。絶対に余計な戦闘をせずに秋場雪賀を殺したい青年。2人の意地と意地のぶつかり合いがしばし続いた。前後にフェイントをかける様に体を動かし、善逸を翻弄する青年。善逸は文字通り体を張って青年の通過を阻止した。

「フェイントやめろ、フェイント!そう言うフェイントは女にモテなくなるから!」

もはや面倒になったのか、善逸が青年の首を片手で締め上げる。

「チョーク、チョーク!チョーク入ってる!チョーク入ってる!」

「ここからは、本気でいかせてもらう」

眼中にすら入れて貰えない我が身のちっぽけさと、青年の卑劣さに、善逸はムキになっていた。

 

細い路地裏に、ドンと大きな音が鳴り響く。青年の華奢な身体が吹き飛ばされて来たのだ。

(俺の術式が無かったら、死んでた)

大穴の空いた壁から、のしのしと善逸が納刀しながら姿を現す。

「殺し屋の癖に簡単に吹き飛ぶじゃねえか」

突如、何かが飛んで来た。一瞬驚いて、直ぐに冷静に避ける善逸。

それは、青年が持っていた剣であった。因みに、その剣は組屋鞣造と言う呪詛師が制作した呪具で、非力な所有者の握力を補うように柄の方から握り返すなど、この様な非常に小物臭い人物には勿体ない多機能を誇っている。

未だに逃走を諦めない青年に呆れつつ居合の構えをとる善逸。

「このまま暗殺も諦めてくれたら嬉しいんだけど……雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃」

倒れ込む青年だったが隙を突いて手放していた剣を呼び寄せ、そのまま背後から善逸の頭への直撃を狙うが、善逸の耳は聞き届けるのであった。

「甘いよ。六連!」

高速移動と居合い一閃を六連続で放つ事で、敵の認識外からの不意打ちや複数対象への同時攻撃ができる上に、周囲の立体物を利用した高速移動で撹乱や、狭所や足場の悪い場所にも対応できる。

「空気読めよォ!」

と逆ギレする間もなく、一発目とは比べ物にならないほどのスピードで屋外まで吹き飛ばされ、その先の建物に看板が外れるほどの勢いで激突した。

だが、この惨状を作った善逸に勝利の笑みは無く、寧ろ青年の身勝手さへの不満でいっぱいだった。

「こんなにしぶとい癖に、『自分が楽しければそれで良し』『弱い者イジメが好き』と言う理由で強きを助け弱きを挫くか……モテねぇ野郎のする事だぜ!」

だが、善逸の耳が別の敵の動きを聞き届ける。

「炭治郎が……無下限呪術がいなくなった途端これかよ!?」

善逸は迷いつつも青年の剣を蹴り飛ばし、青年に背を向けて秋場雪賀の許へと走った。

(た……助かったぁー!)

善逸に見逃された青年は、安堵し過ぎて自分の顔を再確認する事を完全に忘れていた。と言うか、自分のしぶとさと自分の顔の因果関係を正しく理解していないと言うのが正しい説明とも言えた。

これもまた、呪術高専などの公式組織に属さない呪詛師の欠点であり、ちゃんとした育成を受けなかった自分勝手が犯したミスであった。

 

一方、玄弥、蜜璃、椿が雪賀を護衛しながら2人の呪詛師と戦っていた。

「遅い遅い遅い!そんな遅さじゃ、この俺にとっては案山子だぜ!」

スキンヘッドの呪詛師が顔を含めた全身に藍色の幾何学模様の様な紋様を青く光らせる事で、一定時間だけ脚力を強化して凄まじい速度で加速する。

玄弥がスリーブガンと小刀で対応しようとするも、スキンヘッド呪詛師が速過ぎてまったく命中しない。

それどころか、

「秋場の奴、邪魔!俺の流れ弾に当たっちまうだろうが」

「他人のせいにするなんざ……え!?」

蜜璃が約150kgものバーベルを軽々と持ち上げた。

「貴様は天与呪縛……フィジカルギフテッドか!?」

と勘違いするのも無理は無いが、蜜璃の術式は別にあり、ただ単に体躯を構成する筋繊維の密度が常人の8倍も有るだけである。

「糞!?天与呪縛持ちに構ってる場合じゃない!」

だが、スキンヘッド呪詛師の左頬に椿の右ハイキックが命中する。

「何!?」

「生憎、貴方の様な速さを売りにしている方との模擬戦を何度も行ってきましたので」

それを見た玄弥が椿にスキンヘッド呪詛師の処理を任せた。

「そっちは頼むぜ……俺はあっちにするから」

そう言うと、巨躯呪詛師が放つ泥弾を次々と撃ち墜とす。

「チッ、バレていたのか」

それを見たスキンヘッド呪詛師が焦り始める。

「クソ!同業者か!?」

「仲間じゃねえのかよ!?」

そんなスキンヘッド呪詛師の背中を踏む様に蹴る善逸。

「まったく……千客万来だな?と言うか、俺は今日、何回霹靂一閃をやらされてるんだ?」

さっきまで『お客様対応してくる』とか言ってどっか行っていた善逸が、何時の間にか現場に戻って来ていたので驚く蜜璃。

「早っ」

「それより、そのバーベルを如何する心算?」

善逸の指摘を受け、蜜璃がバーベルを巨躯呪詛師に投げつけた。

「ちょ!?」

泥を壁に変えてそれを防ぐ巨躯呪詛師。

「危ないだろ!フィジカルギフテッドか!?」

しかし、その隙に分銅付きの鎖が雪賀を襲った。

「貰った!」

幸い、雪賀を襲った分銅は椿に蹴られて善逸に弾かれ、蜜璃に引っ張られた。

「何!?……おわあぁー!?」

蜜璃に引っ張られて転んだ目の大きな少年を見て呆れる善逸。

「おいおい。どんだけ炭治郎の出張を待ち焦がれてたんだこいつら?」

そして更に、

「雪賀!死ねぇー!12億、いただきじゃー!」

玄弥の真正面に現れたのは、有名なアクション映画の主人公を真似たらしきタンクトップにマシンガン装備と言う姿の男だった。言うまでもなく、殺し屋である。

「お……おま……どんだけ無下限呪術を恐れてたんだよお前らあぁーーーーー!」

が、夜空は善逸の怒号の様な質問には答えてくれなかった。




原作との相違点

●不死川玄弥

・都立呪術高専2年生。準1級呪術師。
・不死川実弥に呪術高専入学を反対されている。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●甘露寺蜜璃

・都立呪術高専2年生。準1級呪術師。
・よくフィジカルギフテッドと間違われる。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●不死川実弥

・私立善根高等学校数学教師。
・胡蝶カナエに横恋慕した生徒達や「算数ができなくても生きていけるから大丈夫です」とぬかしたワニの様な女と揉めた過去が有るらしい。
・だが、ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)は彼をあまり危険視していない。
・未だに不死川玄弥の呪術高専入学に反対している。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●重面春太

・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。

●音速の鬼

・鬼舞辻 無惨とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。

●泥鬼

・鬼舞辻 無惨とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。

●鎖鬼

・鬼舞辻 無惨とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。

●ランボー風の殺し屋

・実写版『SAKAMOTO DAYS』からのゲスト出演。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う殺し屋。
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