笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~ 作:モッチー7
無下限呪術が使える炭治郎が刀鍛冶の里に出張中を狙って秋場雪賀の命を狙う敵は、目の前に4人。
この状況に我妻善逸が歯噛みしながら舌打ちをする。
「そんなに無下限呪術が怖いなら、殺し屋辞めちまえよ!」
だが、その程度の文句ぐらいで引くなら秋場雪賀の命は狙わない。
「雪賀!死ねぇー!12億、いただきじゃー!」
叫ぶなり両手に持った二挺マシンガンを撃ちまくる男。
それを合図にその場にいた敵味方全員が散開する。
「巻き込むんじゃねえよ!」
スキンヘッド呪詛師の文句は無視され、男は鼻歌を歌いながら、無茶苦茶に二挺マシンガンを撃ち続ける。
男を挟む形で現れる甘露寺蜜璃と不死川玄弥。2人は、同時に飛び蹴りを繰り出した。タンクトップの男の顔が左右から飛んで来たキックに挟まれ、ぐにゃりと歪んだ。たった一撃、いや、左右同時の二撃で男は崩れ落ちた。
「呪術は?」
呑気な事を言う善逸だが、残る敵は3人。そのどれもがギャグを言う暇を与えようとはしない。
先ずはスキンヘッド呪詛師が雪賀めがけて全力疾走する。
(一番乗り、貰った!)
だが、待ってましたとばかりに椿の飛び蹴りがスキンヘッド呪詛師の顔面を襲う。
「何!?俺の速さに!?」
スキンヘッド呪詛師は運悪く先程の飛び蹴りで重度の脳震盪になってしまい仰向けに倒れた。おまけに、善逸がダメ押しの心算でスキンヘッド呪詛師の股間をサッカーの様に蹴り飛ばした。
「あう!?」
その衝撃でスキンヘッド呪詛師の脳震盪が完治してしまったものの、スキンヘッド呪詛師は別の意味で戦闘不能に陥り、両手で股間を押さえながら座り込んでしまう。
その間、巨躯呪詛師が泥と一体化して巨大な壁となった雪賀を飲み込もうとするが、筋繊維の密度が常人の8倍も有る蜜璃のパンチが泥の壁を文字通り歪ませた。
「嘘!」
その隙に、玄弥が善逸の毛髪とスキンヘッド呪詛師の腋毛を食べた。
「お前の術式!……まさか」
「その、まさかだよ!」
その途端、玄弥が超音速で全力疾走する。
不死川玄弥は相手の身体の一部を食べる事で、一時的に相手の能力を使用出来るのである。
そんな玄弥のスピードに翻弄された巨躯呪詛師の泥の壁が、滅茶苦茶に触手攻撃を繰り返し過ぎて形がどんどん崩れていく。
「お!お!おお!?」
そして、遂に泥の壁が護るべき巨躯呪詛師を晒してしまい、待ってましたとばかりに蜜璃のパンチが巨躯呪詛師の顔面にクリーンヒット。巨躯呪詛師もまた重度の脳震盪を患った。
最後に残った鎖青年が分銅付き鎖を振り回しながらキョロキョロとチャンスを窺うが、数では完全に形勢逆転。相手は護衛対象を死守しなければならない状況とは言え、1人に対して4人で対応出来る状況なのである。が、次の瞬間、よろめいたのは善逸の方であった。
鎖青年が空を打たせたのではない。空を打たせた事に間違いはないが、彼は逃げ出したのである。彼は身をひるがえし、背を見せて、まろぶ様に逃げ出したのだ。
サマーが提示した12億欲しさに秋場雪賀の命を狙った呪詛師が、背を見せて逃げる、これは彼がどんな技を使うよりも意表外の事であったとみえて、流石の善逸も1、2歩およいだ。
「そんなに無下限呪術が怖いなら……殺し屋辞めちまえよ……」
だが、彼らは逃げた男を追わなかった。いや、追えなかった。
「えい」
運良く雪賀の背後に突然出現した形となったあの青年が、重面春太が雪賀の背中を何度も刺したのだ。
「えいえい」
複数の呪詛師が届かなかった偉業をしているのにも関わらず、重面の表情はあまり変わらない。まるでいつもの日常を行っている感覚である。
そんな重面は、自分を散々苦しめた善逸を発見し、小馬鹿にする様に説教を垂れた。
「いいかいー。僕がこうするだけで全てが解決するんだよぉー。僕は12億……」
そこで重面の台詞は停まった。
重面が雪賀の背中を何度も刺している。にも拘らず、重面の視界の中にいる善逸の隣にいる雪賀が気の毒そうにこちらを観ていたのだ。
「え?……どう言う事?……」
じゃあ、重面に何度も背中を刺されている雪賀は誰だ?
その答えを示すかの様に雪賀が重面の方を振り返りながら甘露寺蜜璃となった。
「誰だよこの女!?」
狼狽する重面に対して蜜璃が静かに深く怒った。
「さっきの奴、物凄く痛かったよ」
そう。体躯を構成する筋繊維の密度が常人の8倍も有るのでフィジカルギフテッドと間違われ易いが、甘露寺蜜璃の本当の術式は『変装』だったのだ。
そんな常人の8倍の握力が重面の腰を挟んだ。
「あの……ちょっと―――」
「おしおきが必要だね?……高い高ーい」
蜜璃が赤ちゃんをあやす要領で重面を真上へと投げ飛ばした。
「あーーーーー!?」
常人の8倍の筋力が投げたのだ。かなりの高度を記録する筈だ。
「馬鹿な奴だ。この俺に敗けた時点で逃げれば良いのに」
そして、両足で着地した重面が微動だにしなくなった。
「あ?こいつ、かかって来ねえぞ?」
善逸の過剰聴力が重面の異変に気付いたので、善逸は左手を重面の口に当てながら右手で重面の脈を計った。だが、
「……死んではるわ」
善逸達は全く知らない事だが、重面は善逸との戦いで術式を使い果たしていたのだ。
重面春太の術式は『奇跡』を貯める。
日常の小さな奇跡(デジタル時計のゾロ目等)を重面の記憶から抹消して蓄え、重面の命に関わる局面で放出する。奇跡の多寡は目元の文様で識別出来る。即死レベルのダージを受けても、命を落とす代わりに紋様の数が減るだけで済む。
だが、重面は自分の顔の文様の意味をよく理解しておらず、目元の文様に対する自覚もない。
だから、重面は自分が術式を使い果たした事に気付かずにのこのことやって来てしまったのだ。
これもまた、正式な育成機関の力を借りずに呪術を悪用した彼の報いである。
残る敵は逃げ出した鎖青年だけの筈だが、善逸の過剰聴力がちょっと遠くの心拍数異変に気付いたので、善逸が慌てて走り出した。
「おい!どこへ行く気だ!?」
玄弥の文句を無視して走る善逸であったが、突然飛び蹴りに襲われたので慌てて後ろに下がる。
だが、善逸は今の飛び蹴りに違和感を感じた。
(何だ?さっきの飛び蹴りから心拍数がしない!?どう言う事だ!?)
「て、あれ?」
善逸は自分を襲った跳び蹴りの正体を知って困惑した。
「こいつ……死んでるぞ」
先程の逃走した鎖青年が縄で頸を括られ、縛り首となって死亡していたのだ。
後からやって来た椿達は、そんな鎖青年を視てある推測を立てる。
「これって、口封じでしょうか?」
だが、善逸は別の予測をしていた。
「いや、口封じにしては目立ち過ぎる。寧ろ、見せしめ」
「見せしめ!?」
「ああ。何の成果も生み出さずに無様に逃亡したら、無傷では終われないぞと言うね」
蜜璃が怯えながら呆れた。
「怖ぁー……秋場雪賀の味方で良かったぁー」
善逸はその言葉が楽観視に聞こえたが、あえて口にはしなかった。
(だと良いがな。今日の段階で既に5人。鬼の居ぬ間とはよく言ったものだ)
だが、どちらの予測もハズレだった。
鎖青年を殺したのは、小夏カンナ(枷場美々子)だった。
秋場雪賀が死ねば竈門炭治郎が私立善根高等学校にいる理由が無くなってしまうからだ。
「
殺した鎖青年に決別の言葉を掛けると、カンナはその場を後にした。
スキンヘッド呪詛師が漸く目を覚ました時には、既に全てが終わっていた。
「うっ!?」
まるでキスの様なひょっとこ口を晒しながら(善逸に股間を蹴られたせいで)汗だくで狼狽するスキンヘッド呪詛師。勝敗は既に決したからである。
「止めとけ。これ以上続けて負けたら、俺達か俺達以外のどちらかに殺されるぞ」
スキンヘッド呪詛師は残念そうに両手を上げた。
「お前ら……無下限呪術が使えるあのクソアマにおんぶに抱っこじゃなかったのかよ……」
「それ……集団の力を見下す愚かな言い分だ」
スキンヘッド呪詛師は捕縛されて呪術高専の取り調べを受ける事となった。
次の日……
「我妻さん……お客様です……」
「おいおいまたかよ?昨日5人片付けたって言うのによ」
「しつけえよ!護る方の身にもなれ!」
竈門炭治郎の無下限呪術が怖い癖に、12億欲しさに秋場雪賀の命を狙う呪詛師のわがままに呆れる善逸達であった。
原作との相違点
●不死川玄弥
・都立呪術高専2年生。準1級呪術師。
・不死川実弥に呪術高専入学を反対されている。
・相手の身体の一部を食べる事で、一時的に相手の能力を使用出来る。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●甘露寺蜜璃
・都立呪術高専2年生。準1級呪術師。
・よくフィジカルギフテッドと間違われる。
・術式は『変装』。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●重面春太
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・我妻善逸との戦いで術式を使い果たしたところで甘露寺蜜璃の投げ技を受けて死亡。
●音速の鬼
・鬼舞辻 無惨とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・その後、東京都立呪術高等専門学校に捕縛されて取り調べを受けている。
●泥鬼
・鬼舞辻 無惨とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・その後、東京都立呪術高等専門学校に捕縛されて取り調べを受けている。
●鎖鬼
・鬼舞辻 無惨とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・逃走中に小夏カンナ(枷場美々子)の襲撃を受けて殺害される。
●ランボー風の殺し屋
・実写版『SAKAMOTO DAYS』からのゲスト出演。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う殺し屋。
・甘露寺蜜璃と不死川玄弥に蹴られて失神。