笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

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第4笑:炭治郎ちゃんの初任務

2025年4月。

竈門炭治郎は私立善根高等学校の校門前に立っていた。

「ここかぁー。乙骨さんが言っていた学校って」

 

炭治郎は憂太の指示を聴いて自分の耳を疑った。

『入学ぅー!?私が今からですか?』

炭治郎はてっきり鬼狩りに強制同行させられるとばかり思っていたので、学校に行けるとはこれっぽっちも思わなかった。

だが、憂太は炭治郎の力不足を指摘するかの様に宥めた。

『そう自分をせかさないの。言ったでしょ?僕達は禰 豆子ちゃんの為にも鬼舞辻無惨に負ける訳にはいかないって』

『それはそうですけど』

『だからこそ、幾つかの任務をこなして場数と経験値を稼ぐ。幸い、『ナイト・エージェンシー』が高校生向けだけど呪詛師を掻き集めるのに適した任務をちょうど抱えていたんだ』

『ないとえーじぇんしー?』

2023年7月まで平穏な暮らしを送っていた炭治郎にとっては聞きなれない言葉だった。

『ナイト・エージェンシーはホワイトスパイ派遣機関の事で、不正の証拠を捜索したり覆面警備員などの仕事をしている団体だよ』

『つまり、今から往く学校の不正を暴けと?』

「ううん。炭治郎ちゃんにやって欲しいのは覆面警備員の方だよ』

そう言いながら、憂太は炭治郎に1枚の写真を渡した。

『秋場雪賀。秋場財閥と呼ばれる小国に匹敵する影響力を持つ大企業の次期総支配人に内定した……筈だったんだけどね』

流石の炭治郎も憂太の「筈だった」に不穏な空気を感じた。

『権力争い!?呪術を使ってこの人を排除しようとしている人がいるって事!?』

『そのまさかだよ。今回の任務に関わると思われる呪詛師達の狙いは、雪賀の右腕に装着されている腕輪。この腕輪こそ秋場財閥次期総支配人の証だよ』

炭治郎は任務の重大さにチョット引いた。

『そんなやばい腕輪が悪人の手に渡ったら……』

『間違いなく、日本財界は大混乱だろうね』

(そんな重大な任務を素人にやらすな!)

『と言う訳で、任務はその少年の護衛と修正だ。日本財界の命運が懸かっているから心して懸かれ』

 

炭治郎は後悔の溜息を吐いた。

「我ながら……とんでもない事を安請け合いしちゃったなぁー」

が、何時までも悲観している訳にはいかないので、両頬を叩いて気合を入れる。

「だが、こんな所で挫けてる暇は無い!私が挫ける事は絶対に無い!」

その時、炭治郎が背負ってる箱から何かを引っ掻く音がした。

「禰 豆子、箱の中はキツくないか?」

すると、引っ掻く音は治まった。

「そうか……乙骨さんには、本当に色々お世話になったな」

因みに、その箱は太陽光と外敵から身を護る為、62口径5インチ単装砲1000発の衝撃にも耐えうる様設計された、言わば1人用シェルターである。

 

が、炭治郎が校舎の中に入ろうとした時、1人の男に呼び止められた。

「ちょっと待て」

「何でしょうか?」

「その耳は何だ?」

男は炭治郎の耳が気に入らなかったらしい。けど、炭治郎は身に覚えが無いので首を傾げるばかりである。

「耳?私の耳がどうかしました?」

「とぼけるな!では何故、ピアスを装着しながら登校した?」

どうやら、男の本当の狙いは父の形見である耳飾りであった。

生活指導の冨岡先生は、親の形見だろうが何だろうが、校則違反のピアスは許さない。

だが、まだ基礎レベルとは言え無下限呪術とヒノカミ神楽を習得した炭治郎を捕らえるのは困難だった。

「すみませーん!父の形見なんですー!」

炭治郎は謝罪しつつ攻撃を躱す。当たった日は保健室行きである。

でも、例え当たらなくても、捕まれば形見没収は免れない。

と言う訳で、炭治郎は慌てて校舎に逃げ込んだ。

対する冨岡は炭治郎を追おうとするが、その背後に嫌な予感がしたので、追撃を一旦中断する。

「後、そこの猪!」

「あ?この俺様になんか―――」

冨岡は、反抗的な態度をとった生徒の左頬を狙って竹刀をフルスイングした。

「もっと真面目に制服を着こなせー!」

「ぐえぇー!」

確かに、素足で一年中半袖でシャツの前は常に全開。学校には弁当しか持ってこないでは、生活指導の冨岡が怒るのも無理は無い。

「以後気を付ける様に」

が、そのせいで冨岡は炭治郎を取り逃がしてしまったのであった。

 

そんな冨岡と炭治郎のやり取りを視ていた女子生徒が、悔しそうに舌打ちしながら炭治郎の後を追う様に校舎に駆け込んだ。

「くっそ!あの馬鹿真面目先公め!初日でいきなり炭治郎を見落とすとは……」

慌てた女子生徒は、炭治郎を捜索しながらスマホで電話を掛けた。

「はさ……小夏先生!申し訳ありません!」

スマホ越しに女子生徒の報告を聞いた小夏は、別段慌てる様子も無く、寧ろ焦る女子生徒を宥めた。

「落ち着きなさい。炭治郎の狙いは既に割れている」

「つまり、秋場雪賀を探し出せば良いんですね!?」

「それについては……非術師(さる)報酬(めいれい)に屈した呪詛師(アホ)の残穢を追いなさい。私もそちらに向かう」

「解りました!」

てきぱきと炭治郎を追う女子生徒への指示を終えた小夏がスマホの通話を切り、足早にある者の許へと急ぐ。

「よほど術式によるステルス移動に自信が御有りの様だけど、これだけ残穢を撒き散らしたら意味無いでしょ?」

雪賀を狙う呪詛師の愚かさに、小夏は歯噛みしながら悔しそうに舌打ちをした。

「くっ!あの時……私達が勝ってさえれば!」

 

一方、当の雪賀はナイトが派遣したエージェントと思われる男子生徒との同行に難色を示した。

「何であいつが僕の半径100mから離れられないって事になるんだよぉー!」

「これも雪賀さんの安全の為です。我慢してください」

スーツ姿の長身な女性の説得にも納得出来ず、雪賀はナイトの判断に不満を口にする。

「そんなの、椿がいれば大丈夫じゃん!」

この様子では、物陰に隠れてコッソリは難しそうだと判断したエージェントは、作戦を変更して雪賀の前に出る事にした。

「そこまでコソコソしている態度が気に入らないと言うのであれば……ナイト・エージェンシー所属の我妻善逸と言います。以後、御見知り―――」

だが、それがかえって雪賀の機嫌を悪くした。

「くーーーーー。僕はねぇー!椿の強さとえちえちボディーを舐めるなと……」

(フォローになっていない)

だが、雪賀のナイトの決断と憂太の余計なお世話への非難は、雪賀の足下から生えた悪意に満ちた両手と、それに事前に気付いた善逸のタックルによって阻まれた。

「いきなり抱きつくな!僕は男だぞ!」

「その容姿で男を騙られても、真実を知らない人は納得しません!それに……」

善逸と椿は、雪賀の足下から何の前触れも無く生えた両腕を注視しようとするが、なす術無く見失い……

(!?)

「床に沈んだ?」

再び雪賀の足下から悪意に満ちた両手が生えた。

「またか!?」

善逸の咄嗟の判断のお陰で雪賀はまた謎の手に触れられずに済んだが、

「これが……乙骨が言っていた呪詛師の力か!?」

(相手の姿が見えない!?どこを攻撃したら良い!?)

2人にとって未知過ぎる現象であり、根本的な対処法が解らぬまま、もぐら叩きの様に生えては沈む謎の手から雪賀を遠ざけるのが関の山となってしまい、

(不味い!このままでは……ジリ貧だ!)

(せめて……攻撃さえ出来れば!)

だと言うのに、雪賀はある意味呑気過ぎる文句を言った。

「何で善逸(おまえ)ばっかなんだよぉー!?どうせなら、椿に抱きつかれたかったよ!」

「生憎、俺は耳と足が良いんで!」

が、善逸と椿の善戦虚しく、床から生えた手が遂に雪賀の足を掴んでしまった。

「しまった!」

「雪賀さん!」

しかし、ここで漸くあの少女が……炭治郎が間に合ってくれた。

「させるか!」

炭治郎が咄嗟に無限を発生させる事で雪賀が床に沈むのを防いだ。しかも、無限の勢いに屈した謎の手が雪賀の足を放してしまう。

「申し訳ありません!遅くなりました!」

「大丈夫!ギリギリセーフだよ!」

「貴女が来てくれなかったら、雪賀さんが大変な事になりました!」

 

ご都合主義的に現れてしまった炭治郎による攻撃にイラっとした呪詛師は、遂に口を開いてしまった。

「何だ貴様らは?次から次へと」

「床が喋った!」

「いい加減にしろ!気色悪いもの使いやがって。いい加減出て来い!」

雪賀と善逸が床に沈んだ状態のまま喋った呪詛師に驚く中、椿と炭治郎は軽く状況を確認した。

「呪術って、こんな芸当も出来るのか!?」

「乙骨さんの話だと、それは生得術式次第との事だそうで」

「つまり、敵は床の中に隠れるのが得意と?」

炭治郎は呪詛師が撒き散らした残穢の匂いを確認しつつ、

「どうやらその様です」

呪詛師は床に沈んだ状態のまま雪賀の足を掴もうとしたが、炭治郎の六眼(りくがん)と嗅覚がそれを捕らえた。

「そこの金髪さん、今、こいつに『出て来い』と言いましたよね?」

その質問に、椿が代わりに答えた。

「お恥ずかしながら、未だに敵の姿が見えず、どこを攻撃すれば良いのかが……」

合点が入った炭治郎が自信を持って宣言する。

「なら、こいつを生得術式の沼から引き摺り出す!」

そこで、炭治郎は無下限呪術の出力をアップさせて『出られない』と言う勘違いを助長する。

「ぐっ!?このままではこの沼から出られなくなる!俺が作った沼なのに!」

炭治郎との我慢比べに早々と屈した呪詛師が、大慌てで炭治郎達の眼前に全身を晒してしまった。

「貴様も術師か?同業者か!?」

その言葉に、炭治郎が不快感を露わにする。

「同業者?人を襲う事しか能が無い呪詛師(おに)には言われたくない。それだけの呪術(ちから)を持っていながら、罪無き人々にその暴を振るうのか?何が楽しい?何が面白い?命を何だと思っている?」

対する呪詛師が舌打ちをする。

「チッ!高専の手下かよ……随分頭の悪そうな事をする―――」

「糞真面目な社畜は馬鹿のする事とでも言う心算か?正に『悪銭身に付かず』だな」

「何でそうなる!」

「楽して稼いだ金に希少価値は無い。だから簡単にパーッと散財(つか)って直ぐ破産()くす。それに、こーんな犯罪で得た金なんて、逮捕されたらあっけなく没収されちゃうよ」

「賢く稼ぎ続ければ良いだけの話だろ!いい加減、秋場雪賀(そのおんな)を渡せ。そうすれば、12億を山分けしてやらんでもないぞ」

「嫌なこった。秋場雪賀は男だし」

「嘘つけ!その形のどこが男だ!」

「それに、お前は1度逮捕されて貧乏の辛さを学んだ方が良い。私がお前の逮捕を手伝ってやるから」

「クソガキが!」




原作との相違点

●竈門炭治郎

・2009年7月14日生まれ。
・竈門家長女。
・実家はパン屋。
・2023年7月23日に乙骨憂太に保護され、憂太の許で約1年8か月ほど修行して無下限呪術と六眼の基礎を叩きこまれた。
・更に、日下部篤也と禪院真希にヒノカミ神楽の基礎を叩きこまれた。
・2025年、秋場雪賀の護衛を命じられて私立善根高等学校に入学した。
・『スパイガール!』における『雪乃晴』に相当する人物。

●冨岡義勇

・私立善根高等学校体育教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●嘴平伊之助

・私立善根高等学校1年生。
・プロレスの時間(『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』参照)使用可能。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●熱田睡蓮

・本作オリジナルキャラクター。
・女性呪詛師。
・私立善根高等学校1年生。
・竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる『ある方』のスパイ。
・特技は催眠術。
・頭部は黒木智子(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!)で首から下は香椎愛莉(ロウきゅーぶ!)。

●小夏カンナ

・私立善根高等学校英語教師。
・竈門炭治郎を観察する為に潜り込んでいる『ある方』のスパイ。
・熱田睡蓮の上司。
・正体は●●●●子。

●秋場雪賀

・本作オリジナルキャラクター。
・私立善根高等学校1年生。
・秋場財閥次期総支配人。
・美少女並みに滅茶苦茶可愛い男子高校生。
・少女趣味を持っているが、ちょっとゲスでスケベ。
・『坊ちゃん、困ります!』における『桜小路透』に相当する人物。

●寒崎椿

・本作オリジナルキャラクター。
・秋場家の護衛をしている一族出身。
・主な任務は秋場雪賀の護衛。
・高身長でグラマーなイケメン女子。
・『坊ちゃん、困ります!』における『七実』に相当する人物。

●我妻善逸

・私立善根高等学校1年生。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)所属のエージェント。
・秋場雪賀を護衛する為に送り込まれたスパイ。
・雷の呼吸使用可能。
・聴覚が非常に優れている。
・『スパイガール!』における『奈々木新』に相当する人物。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●沼鬼

・鬼舞辻 無惨とは無関係。
・高額報酬欲しさに秋場雪賀をつけ狙う呪詛師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
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