笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~ 作:モッチー7
1人の悪しき呪詛師が、術式を使って寒崎椿と我妻善逸を掻い潜って秋場雪賀を拉致しようとするが、竈門炭治郎が間一髪で乱入した事で拉致は未遂に終わり、悪しき呪詛師が漸く雪賀達の前で全身を晒した。
「秋場雪賀への襲撃を辞め、このまま去るのであれば、私は見逃しても良いと思っているけど、どう?」
「ふざけるな。12億だぞ」
「残りの人生を刑務所暮らしで消費する事になってもか?」
「ふん!さっさと秋場雪賀を拉致して逃げ切れば良いだけの話だろ!」
自分勝手な事を言う呪詛師の邪悪な判断に対して不満そうに舌打ちをする炭治郎。
「馬鹿が……貴様が今からすべきは、家に帰って自分の人生を考え直す事だったのに……」
呪詛師が再び床の中に沈もうとしていたので臨戦態勢を取ろうとする炭治郎だったが、背後からの殺気を臭いで感じたので、
「雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃!」
善逸がすれ違いざまに呪詛師の腹を箒で引っ叩いた。
「速、ぐえぇーーーーー!」
その勢いのせいで、呪詛師は床から足を出してしまう。
「しまった!?」
「やはりか!お前の術式は、壁や地面に対し沼地を発生させ沼の中を自在に動き回れる……と言ったところか?」
「何故それを―――」
炭治郎の正答に素直に驚こうとする呪詛師だったが、椿がそんな暇を与えない。
「2度と雪賀さんに触るな」
椿の連打になす術無くタコ殴りにされる呪詛師。
これには流石の善逸もドン引きする。
「……うわぁー……いくら何でも
そして、椿のダメ押しの回し蹴りを食らって吹っ飛ぶ呪詛師。
それを観ていた炭治郎は、逃走を選択出来なかった呪詛師の欲深さに呆れた。
「やはり貴様がするべきは自分の人生を考え直すだったな?と言うか、御強いじゃないですか2人共」
だが、椿は素直に喜べなかった。
「御冗談を。貴女が何者かは知りませんが、貴女がいなければ、雪賀さんは今頃……」
「まあ、そんな硬い事は抜きにして、私は竈門炭治郎。乙骨さんに頼まれてここに来ました」
それを聞いて善逸が軽く驚く。
「君が乙骨憂太が言っていた『呪術側の助っ人』って奴か?」
「はい」
「……呪術高専の中に、君って居たっけ?」
「いいえ。今日が久々の通学です」
善逸は困惑した。
「これを言うのはスパイとして失格だけど……君……何者?」
そうこうしている内に、2人の教師が先程の呪詛師を縄で締め上げていた。
「たく……部外者が学び舎で暴れてんじゃねぇよ!」
雪賀達はどうしても、その内の1人の容姿に目が行ってしまう。
「うわぁー……傷だらけだなぁー。あの人」
「あの方にどのような過去が?」
「彼は、私立善根高等学校数学教師の『不死川実弥』。短気で怒りっぽいが数学をバカにされた時以外は良識的ツッコミ担当。身体の傷については……学園のマドンナ的存在である生物教師の胡蝶カナエに横恋慕した生徒達と揉めた事と、まるでワニみたいな女と揉めた事ぐらいしか掴んでいない」
「つまり、数多の喧嘩の積み重ねがあの傷を生んだと?」
「だと思いたいね。本部もこの男をそこまで危険視していないし」
が、実弥の目立ち易い容姿のせいで椿と善逸は、本当に猜疑の視線を向けるべき
(ん?あの縛り方は?)
炭治郎は、女性教師の縄の縛り方に不安を感じ、その縄を
(やっぱり!想いを呪力に変換するのを阻害する縛り方だ!)
今回の護衛任務に挑むにあたって、乙骨憂太から移動系術式を有する呪詛師を無力化する方法を幾つか学んできたが、それを秋場雪賀の敵になるかもしれない呪詛師がそれを実行しているとは……
(前々から秋場財閥の一件を知って教師として忍び込んだ!?何と言う用意周到!)
だが、その女性教師から殺気の臭いが一切感じない。
(チャンスを待っているのか?あいつの様な早い者勝ちの短期決戦に走らず、じっくり油断と勝機を待つ心算か!?)
女性教師は炭治郎が
(なんて慎重かつ大胆な女なんだ!?ああ言うタイプの殺し屋の方が、案外手強いかも!?)
炭治郎は呪詛師の疑いのある女性教師『小夏カンナ』を
カンナの潜伏期間を打ち破れる程の信頼と証拠が無いと判断したからだ。
故に、ギリギリで先程の呪詛師と炭治郎達との戦いを観戦出来た熱田睡蓮の悪意に満ちた熱視線を炭治郎は見落としてしまった。
「素晴らしい……これが無下限呪術の力。『あの方』が手放しで称賛したのも頷ける」
どうやら、睡蓮もある目的の為にこの学校に潜入した呪詛師の様だが、カンナ同様直ぐに雪賀を襲う心算は無い様だ。
「さて……問題は……どうやって竈門炭治郎に捕まらずにはさ……小夏さんの許に向かうかだな……」
その後、カンナが『高専』が動き出す前に呼んでおいたパトカーに、炭治郎達に敗れた呪詛師を引き渡した。
「糞!放せ!と言うか、なんだこの縛り方は!?沼が……沼が出ねぇー!?」
「こいつですか?この学校に不法侵入した変態と言うのは?」
警官の態度に不満を感じる実弥。
「そうだが。そんな事より、生徒達に危害が及ぶ前にちゃっちゃとそいつを逮捕して欲しいんだけど」
実弥に文句を言われた警官達の上官の方が頭を下げながら事情を説明する。
「申し訳ありません。この者、窃盗と脱獄の常習犯でして」
「おい!もっとちゃんと監視してくれよ!始まってからじゃ遅い事もあるんだからよ」
実弥が警官達の対応に不満を抱く中、捕まった呪詛師が大慌てしながら地団駄を踏んだ。
「放せぇーーーーー!他の奴に先を越されちまうぅーーーーー!俺の12億が、俺の12億があぁーーーーー!」
「何が12億だ?映画に出て来る暗殺者の心算か?お前の下らん与太話の続きは、署でたっぷり聞く!」
そんな呪詛師にカンナが耳打ちをする。
「ごめんなさいね。平成29年のあの日に私達が負けてしまったせいで」
呪詛師はビックリ仰天して狼狽した。
「平成29年だと!?貴様、あの日はどこで何を―――」
が、呪詛師は直ぐにパトカーに押し込められた。
「待ってくれ!この学校は色々とやばいんだよ……12億だけじゃない……平成29年も居るんだよぉーーーーー!」
「何を言っているんだ!?今は令和7年だ。そんな事より、早く乗れ!」
「そう言う事を言ってんじゃない!平成29年はやばい!本当にやばいんだって!」
容疑者である呪詛師がパトカーに乗ったのを確認した警官達の上官の方は、突然カンナに耳打ちをされた。
その内容に上官は驚いた。
「高専だと?そこの方、アンタはいったい」
とは言え、今は学校に不法侵入した殺人未遂容疑者の護送が優先なので、当たり障りのない形でカンナに釘を刺した。
「後日、事情聴取に来て頂く事が有ります。現場にいた者として」
実弥が気怠そうに答えた。
「はいはい。状況証拠ね。解りましたよ」
そして、パトカーは例の呪詛師を乗せて出発した。
それを見ていた悲鳴嶼行冥は、(カンナの耳打ちを聞き取れなかったせいか)涙ながらにこうつぶやいた。
「金銭と権力に取り憑かれているのだ。彼が早く(悪意から)解き放たれる事を願う」
だが、パトカーは何故か警察所には向かわず、
「そこで一旦停まれ」
「は?何故です警部補?」
「……あいつらに、引き渡す」
呪詛師は上官の言うあいつらの正体が乙骨憂太だと気付いて慌てふためく。
「馬鹿!そこで停まるんじゃない!お前ら如きがあいつに勝てる訳ねぇだろ!」
「そうだ。ここから先は、
先程の呪詛師の逮捕を確認したところで、善逸は周囲を警戒しつつ護衛任務を円滑に進める事を目的とした自己紹介を改めて行った。
「俺は我妻善逸。もう気付いてるとは思うが、ナイト・エージェンシー所属のエージェントで、今回の任務は秋場雪賀の護衛だ」
「私は竈門炭治郎。乙骨さんに秋場さんの事を頼まれてこの学校に来ました」
「私の名前は椿。私の一族は、名家・秋場家の護衛をしています」
「僕は秋場雪賀。僕は椿の事が大好きです」
「……ん?」
善逸は首を傾げた。
「雪賀さん、今回の自己紹介は、あくまであんたの護衛を円滑に進める為の簡易的なモノで―――」
だが、雪賀の口は止まらない。
「椿は可愛いし、その目も、高い背も、僕は大好きだよ!」
「雪賀さん……」
「あと、おっぱいクソデカなとこも、エッロい尻も、ほんとスケベな体で最高。むほほ」
「雪賀さん?」
善逸が慌てて制止した。
「はいはいはいはい。一応俺が周囲を警戒しているとはいえ、そう言うバカップルの馬鹿話は人目を気にしながらやってください」
そんな秋場達のやりとりに困惑する炭治郎であった。
「……これは面白い学校生活になりそうだ」
一方、早速雪賀を襲った呪詛師から例の『12億』について問いただそうとする乙骨憂太と夜蛾正道だったが、当の呪詛師はカンナに『平成29年』と言われたショックでまともな返答が出来ない状態だった。
「本当だ!嘘じゃない。あの学校には『平成29年』が居るんだよ!
「そんな事より、誰に頼まれて、あの学校に行ったの?」
「お前は本当に乙骨憂太かぁ?『平成29年』だぞ!憶えてるだろ!?」
夜蛾が困惑しながら溜息を吐いた。
「……今日も、駄目そうだな?」
「……ええ……相変わらず『あの学校には平成29年が居る』の一点張りですよ」
「……平成29年と言えば……」
憂太が口惜しそうに俯いた。
「僕が呪術高専に転校した日……そして……あの男に……大切な仲間を傷付けられた日だ!」
日下部篤也が面倒くさそうに言った。
「じゃあ何か?あの事件の生き残りが、秋場雪賀を狙っていると言うのか?」
憂太は首をゆっくりと横に振った。
「……多分違うと思います。あの男は……大金如きで満足する程……無欲じゃない」
その頃、睡蓮とカンナが高級タワーマンションで鬼舞辻 無惨に謁見した法衣姿の男にある報告を行っていた。
「炭治郎は既に、無下限呪術を取得した様です」
「ただ、あのアホが弱過ぎたせいか、蒼と赫の有る無しは確認出来ませんでした」
報告を男は満足げに答えた。
「つまり、あの女はすくすくと育ってる訳か?
原作との相違点
●不死川実弥
・私立善根高等学校数学教師。
・胡蝶カナエに横恋慕した生徒達や「算数ができなくても生きていけるから大丈夫です」とぬかしたワニの様な女と揉めた過去が有るらしい。
・だが、ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)は彼をあまり危険視していない。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●胡蝶カナエ
・私立善根高等学校生物教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●悲鳴嶼行冥
・私立善根高等学校公民教師。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。
●夜蛾正道
・未だ生存。
・虎杖悠仁や両面宿儺とは無関係。
●平成29年
・乙骨憂太が東京都立呪術高等専門学校に転校した日。そして……
・とある事件のせいで、呪術師や呪詛師にとってはある意味禁忌的な存在となった……