笑術廻戦~もしも竈門炭治郎が五条悟だったら~   作:モッチー7

8 / 23
第6笑:炭治郎ちゃんはお人好し?

我妻善逸。

表向きは私立善根高等学校1年生だが、彼の本来の所属はナイト・エージェンシー。つまりスパイである。

今回彼に与えられた任務は、秋場財閥次期総支配人である秋場雪賀の護衛。

なので、毎朝、ナイトが開発した特殊カメラを使って校門を通る生徒達を解析している。

「……今日も健全な登校風景、っと」

ただ、善逸にはちょっとした下心が有った。

「しかし……この学校は美人が多いなぁー!」

私立善根高等学校2年生で(一応)華道部の栗花落カナヲ。

同じく(?)、私立善根高等学校2年生で華道部の神崎アオイ。

私立善根高等学校3年生で薬学研究部とフェンシング部を掛け持ち胡蝶しのぶ―――

善逸の邪念を感じた生活指導担当の冨岡が、善逸の目の前に立っていた。

「うわぁ!?冨岡先生!?」

「お前今、服以外の物を観ようとしていただろ?」

冨岡の指摘に対して慌てて否定する善逸。

「失敬な!俺は秋場雪賀の護衛だぞ!」

そう言いながら善逸は特殊カメラによる登校する生徒達の解析を再開するが、そんな善逸の前を半袖でシャツの前は全開の伊之助が通過しようとした。

(あのバカ……余計な奴の前で余計な事を……しかも弁当しか持ってねぇ……)

当然、

「制服をちゃんと着こなせぇー!」

冨岡の鉄拳制裁が伊之助を襲った。

「ま、そうなるわな」

その後も、善逸は登校する生徒達の解析を続け、遂に肝心の雪賀が護衛である椿を連れて学校にやって来た。

「あ、椿さん、おはようございます」

「我妻さん、毎朝お疲れ様です」

すると、雪賀が騒ぎ出した。

「椿に近付かないでよぉーーーーー!」

「何でだよ!?ただの中間報告だろ」

「椿が他の男に引っ掛かるのは嫌ーーーーー!」

「心配ありません。高校生に手を出さないので」

「僕には手を出してよおぉーーーーー!」

(めんどくさい)

雪賀の厄介な性格に呆れつつ、雪賀が無事に校舎に入った事を確認すると、善逸は再び登校する生徒達の解析を続けた。

が、

「カア!カア!8時25分!8時25分!授業開始5分前ェエー!」

「おい!予鈴が鳴ってるぞ!早く教室に入れぇ!」

鎹鴉の叫び声と不死川の怒号を聴いて善逸が困惑する。

「え!?炭治郎はまだ来てねぇよ!」

そこへ悲鳴嶼がやって来て、

「竈門君ならまだ来ないよ」

「……何で?」

 

その頃、炭治郎は駅で変質者と揉めていた。

「やめろ!尻を出すな!しまうんだ!」

「出す!」

「出すな!」

電車に対して変態行為をする男。こいつは本当にやばい。

そのせいで遅刻してしまった炭治郎を不憫に思った駅員の三郎さんが一筆書いて渡したのだが、肝心の変質者が、

「今日こそは」

何故か何時の間にかいなくなってしまうのだ。

「本当に気色悪い変質者だ、打ち首にして欲しい」

 

「このお人好し」

「……ゴメン」

炭治郎の遅刻理由に呆れる善逸と悲鳴嶼。

「誇らしい事ではあるが、やはり遅刻は問題だ」

「ごめんなさい。でも、ほっとけなくて」

「……それをお人好しって言うんだよ……」

職員室での説教から解放された炭治郎と善逸は小声で話し合った。

「頼むよ。他は兎も角、呪術の方はからっきしなんだ」

「あー、あの時の沼男の事?」

「アレは正直、スパイとしては羨ましい限りなんだけどね」

「羨ましい……ね。でも、その力を正しく使わないのであればただの迷惑。排除対象ですよ」

その時の炭治郎の顔はどこか悲しげであった。

他人の感情を読み取る程非常に優れた聴覚を持つ善逸は、そんな炭治郎の悲し気な顔に心底呆れた。

「……本当、お人好しだなお前は」

が、ナイトの厳しい鍛錬を積まされ、スパイのなんたるかを叩き込まれた善逸もまた、『力の正しい使い方』に思うところはあった。

(ナイトから教わった爆弾解除、潜入、変装、戦闘、それを犯罪者の為に使ったらどうなるか……それぐらいは散々聞かされてきたよ)

そんな2人の背中を小夏カンナが複雑な気持ちで視て(・・)いた。

(撮り鉄界隈ではかなり有名な変態だと聞いていたが、所詮は非術師(さる)か)

その後は、何事も無く授業は進み、今日の雪賀護衛任務は終了する。

(流石は特級呪術師と恐れられた乙骨推薦の助っ人様だ。居るだけでちょっとした抑止力になっている)

善逸は確かに炭治郎の実力を認めてはいる。だが、それは対人戦に限った事であり、調査・推理の方面はやはり善逸達ナイト・エージェンシーが頑張る必要がある。

(『平成29年』の方の調査は9割9分俺の私怨だが……問題は『12億』の方だ。もし大方の予想通りだったら……頼みましたよ!後藤先輩!)

 

2日後。

『12億』に関する調査結果が善逸のスマホに届いた。因みに、これもナイトが開発した特殊スマホである。

「どうしたんです?急に我々を呼び出して?」

「その前に、怒らないで聴いてくださいね」

善逸のその言い方に不安を感じる椿。

「それは……どう言う意味ですか?事と次第によっては―――」

善逸に飛び掛かりかけた椿を炭治郎が制止する。

「それを聴いて悲しい気持ちにはなるが、私達は君を怒らない。約束する」

そう。炭治郎は相手の感情を嗅ぎ取る程非常に優れた嗅覚の持ち主。だから、善逸が今から事実を告げようとしている行為に悪意は無いと察したのである。

「話してくれ。秋場雪賀護衛任務に関するとんでもない暗部について……」

 

炭治郎は、改めて『親ガチャ』の影響力を思い知らされた。

そんな理不尽に完膚なきまで叩きのめされた気分で帰宅していると、乙骨憂太と出会った。

「どうしたんだい?そんな悲しい顔をして」

その途端、炭治郎は泣き崩れた。

「乙骨さぁーーーーーん!(涙)」

「何々!?何!?」

憂太は炭治郎から秋場雪賀護衛任務に関するとんでもない暗部を聞かされる。

「つまり、あの沼男の背後に『サマー』と呼ばれる犯罪組織がいたと言う訳ね?」

「……はい」

善逸曰く、『サマー』は密輸や闇バイトなどの総大将の様な犯罪組織で、ナイト・エージェンシーは『サマー』撲滅を目的とした調査・偵察を何度も繰り返してきたが、ボスの正体もメンバーの数も、本部がどこにあるのかも、全部謎だと言う。

そして、そんなサマーが秋場雪賀から秋場財閥次期総支配人の証である腕輪を奪いにやって来て、例の腕輪に12億と言う懸賞金を賭けたと言うのだ。

「なるほどね。それならあの沼男が危険を顧みずに秋場雪賀を襲うのも辻褄が合うね?」

憂太はある種の納得を得ていたが、その後の炭治郎の説明に怒りが籠る。

「……私が不機嫌なのは、その後ですよ」

 

善逸は、サマーだけが黒幕だとは思っていなかった。

だからこそ、善逸は椿に秋場雪賀護衛任務に関する覚悟を問うた。

その問いに椿は確かに困惑したが、ある程度予想は出来ていたらしく、迷わず、

『私の仕事は雪賀さんの護衛です。相手が誰であれ、私はそれを全うするだけです』

 

だが、炭治郎はそんな椿の宣言を全然納得出来なかった。

炭治郎が悲しんでいる理由を知った憂太が溜息を吐いた。

「……だから……君はそんなに怒ってる訳だね?」

炭治郎はしばらくだんまりしていたが、振り絞る様に言った。

「親ガチャって……事実だったんですね……」

憂太は親ガチャと言う言葉を嫌っていたので説教しようとした。

「何を言ってるんだい!親ガチャなんて負け犬の遠吠えにすぎ―――」

だが、炭治郎は大声でそれを否定する。

「私だって最初はそう思ってましたよ!だから、自分の両親が小さなパン屋に過ぎなかった事を恨んだ事なんて1度も無かった!でも……私があんな貧乏で小さなパン屋でぬくぬくしている間……間……」

その途端、炭治郎は再び秋場雪賀を襲うであろう過酷過ぎる宿命を思い出し、再び泣き崩れた。

「雪賀くんが何をしたって言うの!?秋場家に生まれたと言うだけで雪賀くんがあんな目に遭うなんて……非道いよ……非道いよぉー……」

それを見て、憂太は何も言えなくなった。

「炭治郎ちゃんって……本当に優しい子だね……」

 

善逸は今日も、毎朝の日課であるナイト・エージェンシー製の特殊カメラを使った登校する生徒達の解析を行っていたが、今回は溜息ばかりが出た。

(昨日は判断をミスったなぁー。炭治郎と秋場家は赤の他人だとばかり思っていたが……)

そう思いながらも登校する生徒達の解析を続けていたが、善逸にとっては予想外過ぎる人物が目の前にいた。

「炭治郎!?てっきり今日は来ないとばかり思っていたぞ!」

対する炭治郎は新たな決意を胸に満面の笑みで答えた。

「来るに決まってるだろ。私はこれ以上、雪賀くんを苦しめる心算は無いからね」

そして、善逸の左横を素通りする際、小声でこう宣言した。

「寒崎椿に秋場葛練は殺させない!秋場雪賀護衛任務が呪術高専やナイトの手を煩わせる必要が無い、話し合いだけで簡単に片付く楽な仕事だと証明して魅せる。それが、私の秋場雪賀護衛任務に対する覚悟だ!」

裏の世界を知り尽くした者にとっては、権力争いの本当の恐ろしさを知らない甘ったれた戯言だが、炭治郎のあの覚悟満載の笑顔を魅せられたら、そんな真実は本当にどうでもよくなってしまう。

だからこそ、善逸は笑顔で溜息を吐いた。

「……本当に……お人好しだな?あいつは」

しかも、炭治郎はこれからも秋場財閥を悩ませ続ける権力争いと言う剣呑を吹き飛ばすオチまで発生させてしまった。

「こらー!貴様、またしてもピアスを装着しながら登校したな?」

「ごめんなさい!父親の形見なんですー!」

「あー!あの馬鹿真面目先公!またむやみに竈門炭治郎を走らすなぁー!」

慌てて逃げる炭治郎とそれを追う冨岡とそれを慌てて追う睡蓮を観て、善逸はある種の確信を得た。

「これが……日常と言う名の『光』と言う訳か……ナイト・エージェンシーのエージェントをやってて良かったと思えるよ……」

が、例の特殊カメラが胡蝶しのぶを捉えた途端、冨岡の厳しさが善逸を襲った。

「そこのお前、またしても服以外の物を見ようとしていただろ?」

冨岡の指摘にドキッとしながらも必死で否定する善逸。

「ちょ!?何を言ってるんですか!?俺は秋場雪賀の身の安全をですね―――」

 

それを校舎から観ていた雪賀が満面の笑みを浮かべた。

「相変わらず楽しいね?この学校は」

「はい」

「葛練兄さんもこっちに来れば良いのにね?」

「……はい―――」

そこへ、炭治郎が慌てて椿に助けを求めた。

「椿さん!助けて!」

そこへ、冨岡が睡蓮に抱きつかれてカンナに窘められながらやって来た。

「本当にやめて!炭治郎を走らせないで!」

「何を言ってんだお前は!?本派と言えば、竈門がピアスを装着しながら―――」

「冨岡先生、とりあえず落ち着きましょう。PTAや教育委員会にとやかく言われてしまう恐れもありますし―――」

それを観て大笑いする雪賀の頬が濡れている本当の理由を知る者は……少ない!




原作との相違点

●栗花落カナヲ

・私立善根高等学校2年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●神崎アオイ

・私立善根高等学校2年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●胡蝶しのぶ

・私立善根高等学校3年生。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●鎹鴉

・『キメツ学園!』とほぼ同一。

●魘夢民尾

・熱田睡蓮に操られ、竈門炭治郎の目の前で変態行動を行ってしまった。
・熱田睡蓮の見立てだと非術師らしい。
・それ以外は『キメツ学園』とほぼ同一。

●三郎

・『キメツ学園』とほぼ同一。

●後藤

・鬼殺隊とは無関係。
・ナイト・エージェンシー(『スパイガール!』参照)所属のエージェント。
・我妻善逸の先輩。

●サマー

・本作オリジナル組織。
・善逸曰く、密輸や闇バイトなどの凶悪犯罪の総大将の様な犯罪組織。
・『スパイガール!』における『スター』に相当する組織。

●秋場葛練

・本作オリジナルキャラクター。
・秋場雪賀の兄。ただし、雪賀とは秋場財閥次期総支配人の座を奪い合う政敵関係。
・『スパイガール!』における『黒宮ミナト』に相当する人物。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。