ポケモンと俺   作:祐。

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変化の前触れ

 ポケモンも同伴可能なカフェ。そこの店員を務める自分は、繊細かつ多忙でありながらも不自由の無い日々を送っていた。

 

 今年で22歳を迎えながらもポケモントレーナーの資格を取ろうとしない自分は、世間にとって少数派の1人でもあった。ポケモンとの共存が当たり前になっているこの時代において、ポケモンを所有しないという選択は社会的にも賢明ではなかった。

 

 ただ、ポケモンを所有してない人間の中では、ポケモンの生態に詳しい方の人間だと自認していた。それもそのはずで、自分はポケモン同伴可能のカフェで人間とポケモン双方の接客をしていたからだ。

 

「お待たせいたしました! こちらはトレーナーさんの方で、リザードン級マメだくさんカレー。お連れのピッピには、フェアリータイプを虜にするスーパーアボカドサンドでございます。お連れのピッピが周囲の音を嫌がるようでしたら、奥の席が空きましたのでそちらへご案内することもできますが……はい、こちらの席のままで。承知しました。それでは、ごゆっくりどうぞ」

 

 ショッピングモール内に設けられたカフェのフードコート。通路を行き交う人間やポケモンを横目に、自分は一礼してからカウンターに戻った。

 

 時刻は夕方。時計を確認すると共に、レジを担当していた男性の店長に声を掛けられる。

 

「カンキくん、時間も時間だからそろそろあがっていいよ」

 

「あはい! 今日もお疲れ様でした」

 

「はい、お疲れ様。明日もよろしく」

 

 店の裏にある事務所で軽く着替えを済ませ、鞄を手に持ちカフェを後にする。ショッピングモールの通路を辿る途中、毎日のようにすれ違う人々やポケモンの光景を眺めてはそんなことを思った。

 

 ポケモンと触れ合うこと自体は嫌いじゃないんだよな。ただ、ポケモンがいなくても生活は安定しているから、だったらポケモントレーナーの資格を取るまででもないのかな。という感想。もちろん、ポケモンが傍に居てくれる生活というのは彩りに満ち溢れているのだろう。一方で、ポケモンという生物の命を預かる立場とその責任に耐えられる自信が無いのもまた事実。結局は保身が理由なのか? 何にせよ、今の自分にはポケモンを育て上げる覚悟が無い。なら、このままでもいいのだろう……。

 

 ……ということを考えながら、無意識に歩を進めていた。気付けば出入口の自動ドアを通り抜け、ビルの並びに沈みかけた陽の光景を見る。そこからいつも通りに徒歩で帰宅するものの、今日という日に限って形容し難い直感で立ち止まり、どこからか漂う違和感を抱きながらショッピングモールの周りを歩き始めた。

 

 自分でも何をしているんだろうと、そんなことを思い始めた時のことだった。違和感の正体とも言える気配の原因が、建物の隅、それも柱の陰になった駐車場の一角で倒れていたのだ。それは0.6mほどの体長であり、青色でゴツゴツとした表面と、丸い頭部に赤色の1つ眼が特徴的なポケモンだった。底面には白色の鋭い突起が3つ生えているものの、動きたくても動けない、そんなもどかしさを感じさせるようにそれらを弱々しく微動させている。

 

 見るからにポケモンだが、自分は初見であるその生物に激しく動揺した。ましてや、トレーナーズスクールにも通っていないから知見も浅く、最初は本当にポケモンなのかすら怪しんだ。しかしポケモンは不思議な生き物。中には幽霊やヘドロのポケモンだって存在するのだから、無機質な形のポケモンだって当然いるだろう。そう割り切った上で野生のポケモンには下手に近付いてはいけないと判断し、自分は急ぎ旧式のスマートフォンを取り出して知り合いに連絡した。

 

 この後というもの、少しして到着した知り合いのポケモンに力を貸してもらい、謎の青いポケモンをショッピングモール内のポケモンセンターに運び込む手伝いをしてくれた。その際に知り合いから、このポケモンは『ダンバル』という名前であることを教えてもらった。

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