ポケモンと俺   作:祐。

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巡り巡った縁

 数年前から“地方再開発”のプロジェクトが始まった、山の国『シナノ地方』。

 

 シナノ地方は虫食いの葉っぱを想起させる縦長の形状を象った島であり、山脈に囲まれた独自の盆地を有する地方である。海を跨いだ先にはカントー地方及び陸続きのジョウト地方が存在しており、言語や文化が共通している点からカントー地方ジョウト地方共々から親しまれている。

 

 同様の共通点として、生息するポケモンが似通っているという意見も挙げられていた。ただしこれについては、シナノ地方で開始された地方再開発プロジェクトの一環により、他地方のポケモン達を導入したことでその説は破られることとなる。結果、シナノ地方に生息するポケモンの種類は劇的に増え、シナノ地方は他地方を凌駕する多種多様のポケモン達で溢れるようになった。

 

 自分が住んでいる『ジョウダシティ』も例外ではない。シナノ地方の中央に位置するこの街は、地方内で3番目に大きな都市として栄えている地域である。今までは活気のある街並みに人間とポケモンが共存する光景が展開されていたが、ポケモンの種類が増えたことで景色に一層もの多様性が見受けられるようになり、同時に外来種の導入が要因となる問題も多発した。一連の事情によって、地方再開発プロジェクトに疑問を呈する声は少なくない。

 

 

 

 

 

 自分がショッピングモールの隅で発見したダンバルは、地方再開発プロジェクトで導入された外来種とのことだった。加えて捕獲が非常に困難なポケモンであるらしく、所有するトレーナーが少ないため、シナノ地方においては非常に珍しいとされている。ダンバルを見た友人も捕まえたいと言っていた様子から、ポケモンに疎い自分でも希少性を理解することができた。如何せん、ダンバルというポケモンは勤めているカフェで見たことが無い。

 

 直にも、ポケモンセンターの女医さんから声を掛けられた。

 

「お連れになられたダンバルは元気になりましたよ」

 

「ありがとうございます。その……治療費とかはどうなるんでしょうか?」

 

「野生ポケモンの治療に関しては基本無料になります。ポケモントレーナーの免許証はお持ちですか?」

 

「いえ、持ってません」

 

「でしたら、今回保護したダンバルはこちらでお預かりして、治療が済み次第リリースという形で対応させていただくことになりますが、それでよろしいですか?」

 

「そう、ですか……」

 

 女医さんの返答を聞いた自分は、どこか寂しい感情を覚えた。

 

 何故? どうして胸に穴が空いたような感覚になるの? ()ぎる疑問に困惑していたこちらの様子を見てなのか、女医さんは間を置いてから言葉を続けてきた。

 

「それか、育て屋さんに保護を依頼する方法もございます。こちらでの治療が済み次第、育て屋さんにダンバルを預かっていただく措置です。この場合は諸々の手続きから別途料金を頂くことになりますが、今回こうして保護したポケモンとのご縁を大切にされるのならば、そのような方法も可能であることをお伝えいたします」

 

「お預かりしてもらっても、俺にはトレーナーの免許がありませんから……」

 

「なので、こちらや育て屋さんにダンバルを預かってもらっている期間中に、あなたには免許証を取っていただくことになりますね」

 

「預かってもらっている間に、免許を?」

 

 そんなことができるのか。

 どことなく希望を感じた自分は、少し考え込んだ末に女医さんへとその言葉を伝えた。

 

「今、ダンバルと面会することってできますか?」

 

 

 

 

 

 ポケモンセンターの受付で手続きを済ませた自分は、女医さんに案内される形で施設の奥へと通された。

 

 分岐した通路の1つを通り、広々とした治療室に連れられる。そこにはムウマやボスゴドラといった預けられたポケモン達が安静にしており、その一角にチューブを取り付けられたダンバルが小型のベッドで横になっていた。

 

 自分が近付くと、ダンバルも何かを察したように顔を上げた。身体ごと頭部を持ち上げ、僅かに浮き上がった状態でこちらに向いてくる。

 

 赤い1つ目が、じっと見つめてきた。どこに口があるのかすら分からないし、この無機質な身体でどんな表情をするのかも想像できない。ポケモンについて全然知らない自分が不安を胸にダンバルと向き合っていくと、直にもダンバルはチューブを引っ張りながらこちらへ近付いてきた。

 

 女医さんが急ぎで点滴スタンドを移動させる。それを横目にダンバルは背中の部位をこちらの懐に擦り付け、どこか甘えるようにくっ付いてきた。きっと、この瞬間に自分は“それ”を決意したのだと思う。

 

 今まで自ら触れることのなかった、ポケモンという不思議な生物。その一匹であるダンバルの背中を撫で掛けると、ダンバルは赤い目を閉じて心地良さそうに身を委ねてきた。同時に自分は愛情に近い温かな感情で心が満たされ、間もなくとその硬い身体に愛着が湧いてしまったのだ。

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