五等分の花嫁 〜小話・日常集〜   作:スロウ

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二乃と三玖が互いに譲らない話。
こちらは前編です。




風太郎を探せ 前編

バチバチと火花を散らしながら、キッチンで激しい電撃の睨み合いを繰り広げる二乃と三玖。二人ともエプロン、ガスマスク、帽子を装備し、今まさに、電子レンジから特製クッキーを取り出した二乃と、パン焼き器からあんぱん、メロンパン、クロワッサンを取り出す三玖。

 

「四葉。二人はなぜガスマスクを。見苦しいので止めてくれませんか」

 

ソファーで赤縁の眼鏡を掛け、熱心に勉強する五月は、多忙で頼れない一花の代わりに四葉を仲介役に取り立てようとする。

 

「いやーそれは厳しいですね。」

「ここは常に空気が綺麗ですよ。それなのに…見てるこっちが恥ずかしくなります。貴方はそう感じないのですか」

 

四葉は大袈裟な仕草でキョロキョロ見渡す。

 

「んー?誰も見てないじゃないですか」

「——私がそう言ってるんですぅ!」

 

気づけば小競り合いしていた二人の完成品は、袋に封印されていた。

 

「あれ。食べないんですか?」

 

と、四葉に聞くと、五月の視界に大きな影と人差し指が。

 

「シーッ」

「ワッ、な、何ですか?」

「五月、あれはですね、さる方へのプレゼントなんです。」

「さる方へ…? 誰ですか。」

「上杉さんに決まってるじゃないですか」

「えぇ…それで火花を。」

「あっはは、いつものことだし。」

「まったく、そうですね。」

 

そんな会話をしている隙に、二人の影はなかった。

 

「あれ…二乃と三玖は直接届けに?」

「そうです。上杉さんの休日は密室勉強一択です。」

「失礼ですが間違ってはいませんね。でもあの二人、道知らないんじゃ…四葉、心配だから追いかけられますか? 道はスマホで教えます」

「はいはーい!」

 

 

◯◯ ◯◯

 

風太郎が密室勉強中と豪語した四葉だが、惜しい。勉強とらいはからの説教を喰らっていた。

そして二乃と三玖は今日、風太郎が特に用事が無い情報を四葉から入手しつつ、出来立ての手作りクッキー&パンの鮮度も温度も落ちるであろう、自力で競走する長い長い船旅に挑んでいた。

 

「っふふ、諦めるなら今のうちよ。アンタクラスでもビリッケツだったでしょ。」

「はぁ…はぁ…そっちこそ、私と同じ道で行こうとする時点で、最短ルート、分かってない、私を見失うと、先に辿り着くかもしれないって、心配してるから、距離も稼ぎきれないし、かと言って回り道もできない…はぁ…はぁ……。」

 

気概だけはあるが、通りゆく人は、どう感じるべきかと頭を悩ませた。

 

「お互い遅すぎるっ」

「名勝負…上杉対武田みたいっ」

「詳しく知らないけど絶対違う例え言ってるわよね」

 

三玖は自覚していた。持久力は互いに無いが、攻撃的になった二乃と競走で張り合うことは難しく、そもそも二乃に料理の腕前で負けてることも、重々承知していた。かといって騙したり卑怯な真似をすることはしない。その信条は互いに似ている。

 

「はあ…はあ…あれ、おか、しい、離されてく」

「あーあ、やっぱりね。」

 

二乃にだけは負けないはずの持久力でも劣るのは、ショックだった。

原因は明らか。三玖の作戦ミスなのだ、

 

(先に着いて風太郎を満腹にさせて、二乃のを食べられなくする作戦……我ながら妙案だったのに、に、荷物嵩張って、体力奪われる)

 

離される、離される、どんどん離される。

交差点の曲がり角を一足先に越えた二乃に、バイバーイと煽られる始末に。

 

「っ…ムカつくけど、限界…。」

 

三玖は止まった。敗北を悟ったが、奇跡が。

 

 

″風太郎、待って〜〜〜″

「!?」

 

三玖は立ち止まった。汗を拭いつつ辺りを確認する。

すぐ先の交差点に出た二乃に、聞こえてるはずがない。

 

″風太郎、どこーー″

 

二回も聞こえるのは空耳じゃない。

(やっぱりだ。風太郎が、居る。あの辺だ)

 

三玖は二乃の進んだ方の逆を行く。リードを取っていた二乃は悪寒を感じ、振り向いた。

 

「三玖…? いくらなんでも来なすぎじゃ。」

 

と、引き返した頃には、豆粒のようになっている三玖の走る姿が。

 

「はああ!? ちょっとどこ行くのよ、そっちだと戻っちゃうって!」

 

躊躇っている間に、三玖は視界から完全に消えた。

 

「わけわからないんですけど。」と言いながら一応追いかけた。

(この勝負…勝った!)

 

 




※追記:添削と加筆を多めにしました。
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