以前投稿したものを水面下で頑張って書いておりました。
鬼滅の刃 無限城編見に行きその熱が上がったので投稿する流れになりました。
まだ至らぬ点が多数あるかと思いますが何卒よろしくお願いします。
雅
花鳥風月。美しい自然や景色の事を指す。しかしそれは、必ずしもそれらに限った話ではない。
例えるならば……人。
その言葉に相応しき四人が、ここ鬼殺隊にいる。
鬼を滅する為に存在する非政府組織。日々命懸けで鬼を狩り、鬼による新たな悲劇を生ませない為に刀を振るう。
その組織に命を捧げ、鬼殺と隊士育成の任に選ばれた四人の隊士達。
鮮やかで苛烈に舞う花、天へと羽撃く鳥、全てを惑わす妖しい風、熱き想いを秘めた影の月。
その四人もまた、鬼によって大切なものを失い、人生を大きく変える事になってしまいながらも、何度も逆境に立たされながらも、隊士達は諦めなかった。
そして、自分達と同じ運命を辿らせない為に新たな鬼殺隊士達を強くする。その為に集められた。
そんな彼女達の事を、彼らは「雅」と呼んだ。
○○
日が登り始めた朝。日の光が立派な屋敷の庭に差し込む。そこに踏み込む一人の隊士。背中の桜の柄が特徴的な黒い羽織、腰には鬼殺隊の基本装備となる日輪刀、そしてなにより特徴的なのは赤い鬼面だろう。
鬼面で素顔が覆われているが、丸みを帯びた体格と豊かな胸でその正体が女性である事が分かる。
彼女こそが鬼殺隊の隊士育成部隊『雅』筆頭、
筆頭だけあってその実力は高く、指揮能力にも優れている。だが真面目で堅物、融通が効かない性格が指南にも出ており、鬼面もあって周りからは『花の鬼巫女』と恐れられている。
「カァー!カァー!筆頭ヘオ嬢カラ伝言!」
今の珍妙な声は緣のものではない。空から飛んできた鴉から発せられたものだ。
この鴉は鬼殺隊の隊士一人一人に与えられる伝令用の『鎹鴉』。ちなみに鴉達は人間と同じ、一匹ごとに性格も異なる。
「どうした?」
「少シ遅レル!先ニ始メテクレ!ダソウデスゼ!」
「……分かった」
溜息をつきながらも了承した緣は鴉を主人の元へと返してやり、縁側より屋敷の中へと入っていった。
この屋敷の中央には道場があり、そこで下の隊士達に稽古をつける。稽古の時間以外は雅の面々が集まり、会議やら伝達事項を伝える場となる。
道場の扉が開くと、中には既に二人の隊士が中央を空けるようにして待っていた。
左にいるのは中性的な出で立ちで、後頭部に巻いて結ってある黒髪の隊士が目を閉じて、正座している。
右で雑魚寝している白い短髪の少女であり、少女の方の隊服だけ白い。緣は二人の間を通り、上座にある座布団に正座する。
「揃っているようだな」
「緣さんですか。そこに寝ているのは輪廻さんだとして……一人足りない。
後ろの髪を結っている、中性的な顔立ちをしている黒髪の青年、
「藤襲山からここまでの道のりは遠い。まだ掛かるのだろうが……伊万里の事だ、また道草食ってるか……」
「私も行きたかった……」
薄ら目を開けて不満を呟いた
「最終選別の物見に二人も不要だ。あれはあくまでも務めだ……」
「それで、今年は何人生き残ると思います?」
御憑が緣に尋ねる。
その前に最終選別とは何か。
まず、最終選別とは鬼殺隊に入隊志願する者が必ずしも通る、言わば入隊試験である。
最終選別は藤襲山で行われ、そこでは藤の花が年中咲き誇っている。鬼は藤の花が苦手であるが、山中のある一帯にだけは藤の花が咲いていない。その中に鬼は閉じ込められており、入隊志願者はその中で七日間生き残らなければならない。
下山出来るのは七日間生き抜いた者のみ。もし脱落者がいたとしたら、それは死を意味する。
「一人か二人、下山出来れば良い方だ」
「確か、今年は二十人余りだったよね?志願者」
「果たして何人生き残ったのか……」
緣が立ち上がり、道場に繋がる前庭に出て空を見上げる。すると、雑魚寝していた輪廻が何かに気付いたのか急に起き上がると、緣がいる前庭に行く。
「緣……」
「そろそろだ」
輪廻と緣の予感が的中するように、空から屋敷に降り立つ一人の隊士が姿を現した。
彼女の抜群な体型にピッタリと収まっている隊服となっていて、袖は無く、太腿の外側の生地が網目状となっていて、露出した肌、強調されている胸と尻が艶めかしさを強調させている。
上体を起こすと後ろに束ねて結んだ髪に刺している鴉の簪が陽の光を反射させる。
「よっ、お待たせ」
雅の鳥
「遅いぞ」
「細けえこと言うなよぉ。こっちはこっちで大変だったんだぞ?」
「そんな事はどうでも良い。今回の選別では何人が生き残った?」
伊万里の軽口を全く相手にせず、さっさと本題に入れと言わんばかりにギロっと視線を向ける。
「分かった分かった!頼むから睨むな!本当に怖いよなそれ……」
緣の威圧に怖じた相夜のおちゃらけた態度は消え、真顔になる。
「ゴホン。今年の参加者の二十人余りの内、五人が生き残った」
「……意外と多い」
意外な結果に驚いている輪廻は目が少し見開いている。
「これがその合格者の名簿。ほれ」
ポケットから文を出して広げる。それは名簿になっていて、名前が書かれているのは合格した者である。緣が名を手にして、目を通す。それが終えたのか、文を伊万里に押し付けるように渡す。
「いや早っ!どうしたんだい緣?」
「読み終えた。後は好きに読んでいろ」
「ねえ、何て書いてあるの?読めない」
「分かった、読み上げよう」
輪廻は名簿を凝視しても何て書いてあるか分からないようで、御憑が名簿を手に読み上げてやる。
「
「玄弥……?!」
名前を聞いた輪廻が驚いた様子でそれを口にした。
「知り合いか?って不死川?」
「弟。実弥くんの」
「あー!あの風柱か!」
不死川玄弥という少年が鬼殺隊に入隊出来た事が嬉しいのか、感情表出が乏しい輪廻の言の葉に喜びが乗る。だがそれはそれ。残りの合格者が気になるところ。
「あとの二人は?」
「えっと……
「どうしました?」
名前を呼び上げている内に何か違和感を覚えて首を傾げる伊万里に御憑が問う。
「よくよく考えたらさ、この嘴平って奴なんだけど……姿が無かったんだよな」
「見落としたの……?」
「いや、あの時確かに四人しかいなかった」
「その嘴平がどこに行ったかは、今は置いておく。運良く生きていれば、会えるだろう。それよりも輪廻、御憑。今日の任務はどうなっている?」
考えても結論が出ない話はやめ、輪廻と御憑の任務の状況確認を行う。
「別の任務が来た……これ終わったら、そこに行く」
「僕の方は片付いて、まだ新たな任務は来ていません」
雅は隊士育成部隊ではあるが、同時に鬼殺の任務も受け持つことになる。雅は四人いる為、最低でも一人は任務に趣き、残った雅が稽古を担当する事になっている。
とはいえ稽古組が二人で十分なのだ。残った一人はどうするか、考えていた矢先、別の鎹鴉が道場に降り立った。
「巫女ヨ!次ハココヨリ東ノ村ダ!」
「次は私か……」
緣の鎹鴉、
「んじゃ、今回はあたしと御憑がここに残るか」
「そうしてくれ。私が昨日指導した隊士の稽古の内容は書いておく。その通りにやってくれ」
おう。と、伊万里は軽く返事をする。最後は、他に何かないか確認をする。
「その他、何かあるか?」
「あたしは無いよ」
「私も」
「特には」
「では各々、己が務めを全うせよ」
他に伝達事項がない事を確認し、そう伝えると緣は自室へと向かった。
「じゃあ、私も行くね……」
輪廻も自分の鴉を連れて任務先へと向かっていった。
御憑と二人きりになった伊万里は合格者の名簿を開いて、五人の名前を見直す。それが気になっていた御憑が相夜に聞く。
「何か気になる事でも?」
「ちょっと、見覚えのある面がいてさ……あ、こいつだ」
伊万里の目線に留まったのは、栗花落カナヲという少女。顔は一度見た事があったが、名前も知らず、それっきり忘れていた。
藤襲山でその顔を見た時に思い出したのだが、他の合格者がボロボロで息使いも荒かったのに、カナヲだけは無傷で息も上がっていなかったのを覚えている。
「その子がどうかされました?」
「いや、個人的に気になっただけさ。さて、あたしらも支度するよ。まずは飯だな」
名簿をポケットにしまった伊万里は伸びながら道場を一度出ていった。御憑も稽古が始まる前に朝食を取ろうと道場を後にした。
朝になると、下の階級の隊士達が雅の屋敷を訪れる。ここに来るものは負傷により、長期療養を余儀なくされた者、新たな任務を通達されていない且つ非番ではない時に鴉から通達を受け、雅の屋敷に呼ばれる。
呼ばれた者はここで雅の指導の下、訓練を受ける事になる。やり方は統一されておらず、稽古をする雅によって内容は異なる。
先程の緣のように、雅が急な任務で訓練を施せなくなった場合もあり、その時は稽古で残る雅に訓練内容を文に書いて申し送り、その隊士の訓練を施すように依頼する。
そして、その緣の訓練の内容は……
「太刀筋矯正、体幹の強化、攻撃の受け流し……受け流しなんてやった事ねえよ……。御憑、出来る?」
「いや、僕は正面からの打ち合いが殆どですから……」
参ったと伊万里はポリポリと頬を掻く。だがもう考えている時間がないと言わんばかりに、屋敷の門から声が聞こえてきた。
「すみませーん!訓練を受けに来ましたー!」
「あ、来ちゃったな……」
「来ましたね……」
緣からの手紙を握り潰して放り投げると、壁にかけてある木刀を二本、それぞれの手に持つ。
「よく来たなお前ら……雅屋敷に!」
こうなれば自分のやりたいようにやる。伊万里は自分の流儀に従ったやり方で稽古を始める。
雅
鬼殺隊当主 産屋敷耀哉の命により構成された特殊部隊。
鬼殺の任務の他、隊士育成の任についており、一般隊士達の生存率を引き上げる為に指導をする。
構成員は四人とも当主と柱の推薦で選ばれており、それだけあって全員柱に次ぐ実力を持っている。