雅なる隊士達   作:レーラ

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何とか投稿出来ました。皆さん、今年も愛読ありがとうございました。来年もまた、精一杯描きますので、よろしくお願いします。

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撫子の舞

 蜂を操る異能の鬼、鋒欠(ほうか)が炭治郎に狙いを定めて眷属である蜂を一斉に放った。刺されれば毒が体内に巡ってしまう。だが蜂を殺せば体内に仕込んである毒によって皮膚が焼かれる。

 

(来る……!あの蜂に刺されても、毒に触れてもダメだ……!俺に回避出来るのか……?!いや、ここでやらなきゃダメだ!)

 

 無垢なる人を、鬼の手から絶対に守り抜かなければならない。

 

水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫・乱!

 

 水飛沫のように縦横無尽に駆け巡りながら蜂を斬り捨てる。蜂を斬った事で毒が飛散するが、炭治郎の着地地点と接地面を最小にすることで常に跳び周り、毒を避けながら迎撃する。

 

「逃げるんだ!出来るだけ遠くへ!」

「は、はい!」

 

 子供の兄妹に逃げるよう促した。兄の方は妹の手を取って走った。

 

「逃がさないわ……っ?!」

 

 炭治郎達に気を取られた隙を突かれて、背後からの赤紫の刃に頸を斬られてしまった。

 

(ゆかり)さん!」

(こいつ……毒にやられているはず……!)

 

 確かに緣は毒に蝕まれている。血清なんてものも持っていない。だが蜂の毒は一匹だけならばさほど脅威ではない。だが次に刺されれば、今度こそ終わりだ。現に緣の視界は歪んだままだ。それを持ち前の平衡感覚で打ち消している。

 

 だがそれよりも、先程から頸を斬った時の手応えの無さ。

 

(頸を斬っても死なない鬼がいるのか?いや、ありえない。これはまさか……!)

 

 頸を斬っても死なないからくりの糸口に気が付いた。

 

「竈門!鼻を使え!」

「え?!」

「恐らくこいつは本体ではない!」

(本体じゃない……?!そんな事があるのか?!)

 

 緣の指令に耳を疑ったが、緣がこのような状況で冗談を言う性格ではない。ましてや毒に侵されている今、そんな余裕もない。現に、鋒欠の表情が一瞬歪んだ。

 

(図星か……!)

 

 確証は無かったが、緣はその一瞬を見逃さなかった。

 

「子供達は私が守る!行け!」

「は、はい!」

「させないわよ!」

 

 走る炭治郎の息の根を止めるべく蜂の大群を差し向けるが、全て緣の斬撃によって斬り捨てられた。

 

(早い……さっきよりも早く……!毒にやられている癖に……!)

「貴様の相手は……私だ」

 

 鋒欠の表情が怒りに歪む。毒に苦しむ顔が鬼面によって見えない。見えずとも、目の前にいる人間がまっすぐこちらを睨んでいるのを感じる。それが鋒欠にとって、癇に障る。

 

 

○○

 

 

 (ゆかり)の指示で鋒欠(ほうか)の本体を探す炭治郎。持ち前の嗅覚で鬼の匂いを探す。緣が何とか踏ん張ってくれているが、毒に侵されている以上、長くは持たない。

 

(何処だ?!何処にいる?!)

 

 匂いを辿ろうとしても、その前に阻む蜂の壁が匂いを遮断している。迫り来る蜂が矢の用に陣形を組んで狙い撃つ。

 

全集中・水の呼吸! 漆ノ型!雫波紋突き!

 

 日輪刀の切っ先で真っ直ぐ素早く突き、蜂矢の陣を分解させた。さらに日輪刀を素早く持ち替えて、型を繰り出す。

 

肆ノ型!打ち潮!

 

 波打つ動きのように複数の斬撃を繋げて繰り出し、迫り来る蜂を全て落とした。

 

「っ?!」

 

 同時に戦いの中に混じる異物のような匂いを感知した。緣が戦っている偽物とは別の、それもかなり強い血の匂いが。その匂いは後ろから発せられる。

 

「あそこか!」

 

 蜂がいない今の内に匂いの方へと走る。草木を掻き分けて進んでいくと、その匂いが強くなる。そして、その姿を捉えた。本体と同じ姿をしているが、よく見ると偽物が右目が露わになっているのに対し、炭治郎が見つけたのは左目が隠れていない。しかも、左眼には『下伍』と刻まれている。

 

(下弦ノ伍!新しい十二鬼月か!)

 

 先日、下弦ノ伍だった累を倒したというのに、もう新しく補充されていた。だがまだなりたてなのか累の時と比べればまだ弱い。

 

 炭治郎に気付いた本体の鋒欠は慌てて逃げ出した。

 

(絶対に逃がさない!)

 

 撒き散らす蜂を避けては蹴散らし、逃げる鋒欠を追い詰める。吊り橋まで逃げたが、継ぎ接ぎの足場ではすぐに転んでしまう。頸を取る絶好の機会だ。

 

全集中・水の呼吸!捌ノ型!

 

 トドメを刺そうとした時、唐突に鋒欠の口角が上がった。追い込まれたというのにこの状況で笑うなど、ありえない。その真実に気付いたのは、鋒欠が口を開けた時だった。

 

「はあぁっ!」

 

 咆哮と共に、口から蜂を放った。咄嗟に型を変えて蜂を弾いた。何とか不安定な足場に着地した。吊り橋の周囲を飛び回る蜂を見つける。

 

(あれが蜂なのか?!にしては硬すぎる!)

 

 簡単に斬れるはずの蜂から、まるで鋼を打っているかのような音が響いていた。困惑する炭治郎だったが、視線が下に向いた事で自分が置かれている状況に気が付いた。

 

(下は渓流になっている!川の流れも激しい……落ちたら一巻の終わりだ!)

 

 何とか目線を元の真っ直ぐに戻すが、さらに状況が悪化している事を認識した。蜂の群れが壁となって、橋の出入り口を二つとも塞いでしまっていた。

 

(逃げ道が!)

 

 足場は揺れて下手に動けない。橋という閉所では支える縄を斬ってしまう恐れで日輪刀を思うように振れない。出口は塞がれ逃げ場はない。上からも蜂の群れが炭治郎に狙いを定めている。まさに袋の鼠になっている。

 

「くっ……ふふふ……!あっはははは!ばぁーーかぁーー!ここは私の縄張りなのよぉ!本物の私を見つけられても、対策は万全なのよ!あんた達は私を追い込んだつもりでも……取り囲まれてるのはあんた達なのよばぁぁーーーかぁぁーー!」

 

 先程追い詰めたと思っていたのが、またしてもまんまと罠にかかり形勢が逆転。今度は炭治郎が追い詰められてしまった。打開策を見つけようと焦る炭治郎だが、蜂達がそれを見逃してくれるわけがない。

 

「今度こそしまいよ!」

 

 再び口から蜂を口から放った。射出された蜂は真っ直ぐ炭治郎に迫る。だが同時に炭治郎が背負う箱が開いた。そして瞬く間に炭治郎と蜂の間に割って入っては、蜂を弾いた。

 

「むむーっ!」

 

 竹を噛んだ鬼の少女。竈門禰豆子が共に戦うべく姿を見せた。

 

「禰豆子!」

「何なのそいつ……?何で鬼が人間守ってるの?!こんなのありえないじゃない!」

 

 無惨の血によって鬼になった者が、鬼に対して攻撃する。本来であればあってはならない事を目の当たりにした上に、せっかくの好機に邪魔が入って、鋒欠は再び癇癪を起こした。

 

「こうなったらそいつから殺してやるぅ!」

 

 三度、口から蜂を射出。鋼鉄の弾丸の如く放たれた蜂は禰豆子に襲い掛かる。禰豆子は唸り声をあげながら、鋭い爪で引き裂いた。

 

 だがまだ橋の周りを浮遊する鋼鉄の蜂が二匹が残っている。しかもその蜂の速さは通常の三倍であり、目で追うのは困難。炭治郎は持ち前の嗅覚で捉えられるが、目で追うしかない禰豆子には見えない。

 

「禰豆子!後ろだ!」

 

 炭治郎の声で振り返るも、鋼鉄の蜂が背中を穿つのが先だった。しかも針だけでなく蜂自体が体内に入り込んでしまった。次第に禰豆子が突然苦しみ出した。炭治郎が抱えてやる。

 

「どうしたんだ禰豆子?!おいしっかりしろ!」

「無駄無駄。その蜂が体内に入ると、その肉を食らって抉っていく」

 

 禰豆子から血の匂い。外は何ともなっていないが、体内では鋼鉄の蜂が暴れていて、禰豆子の肉を傷つけている。心臓に近づいていくと、苦痛も増大してのたうち回っていると、噛んでいる竹の隙間から吐血が漏れ出す。

 

「禰豆子?!うわっ!」

 

 禰豆子が体を橋に打ち付けると、ただでさえ支柱が不安定な吊り橋が大きく揺れる。禰豆子が苦しまないようにする為には、体内で食い荒らす蜂を摘出するか、鋒欠本体を倒す他ない。だがこの状況では脱出しようにもこの包囲網から抜け出せない。それでも手を拱いている余裕はない。禰豆子の出血量が多くなっていく。

 

「もうその子は再起不能。あんた達兄妹みたいね。だったら仲良く落ちるといいわ!」

 

 麗しい兄妹愛が目障りになって来た鋒欠。息の根を止めるべく、包囲を狭まる。

 

「むむぅぅーーー!!」

 

 禰豆子の悲鳴が木霊した時、口から漏れ出た血が突如が爆ぜる。その熱より生まれた炎が、襲い掛かる蜂を焼き殺した。一匹が炎によって朽ちると、また一匹燃え移り、その連鎖によって多くの蜂が燃え落ちる。壁となっていた蜂も、禰豆子の炎を恐れて我先にと逃げ出した事で瓦解した。

 

「は……?!えっ?!何なのこれ?!熱い!熱い!ああああぁぁ!!」

 

 唖然としていた所に、炎が鋒欠の顔に燃え移った。今度は鋒欠が痛みに悶え苦しむ立場になった。そして、禰豆子の苦しむ様子が少しずつ和らいでいる事に気が付いた。

 

(禰豆子の体内に入った蜂の匂いが消えている……!そうか!この炎が!)

 

 累の時にも用いた禰豆子の血鬼術『爆血』。自身の血を爆ぜ、鬼の身体や血鬼術を焼き、人には無害という特異性の血鬼術。それにより、禰豆子の体内を食い荒らしていた蜂も焼却したのだ。

 

 だが禰豆子の体力が限界に迎えたのか眠ってしまい、それと同時に炎が弱まった。鋒欠に燃え移った炎も鎮火した。

 

「今のって……血鬼術……?私の蜂が死んだんだけど……なのに、橋は燃えてないし……人間も無事……。私の蜂だけが燃えた……。しかも、体内で食い荒らしていたはずの蜂まで燃やされた……」

 

 数字が刻まれた頬が焼かれただけでなく、右目を隠していた長い前髪が焦げた事で、無数の腫れ物が浮かび上がる醜い右頬が露わになった。

 

「よくも……よくも私の顔を見たわね!鬼になってもこの顔は元に戻らなかったのにいぃぃ!!」

 

 狂気的な叫びを挙げた鋒欠。どうやら彼女の怒りを買ったようだ。地団駄を踏むと、橋が大きく揺れる。

 

「ふざけんじゃないわよ!こんな……こんな展開……ありえないじゃなぁい!!」

 

 次から次へと想定外の事ばかり起こり、掻き回された鋒欠。そこに隠していた醜い風貌を見られた事で怒りは頂点に達した。額に血管が浮かび上がった女王蜂の本性が露わになった。

 

「こうなったまとめて奈落の底に落ちるが……っ!」

 

 背後から尋常ではない殺気。振り返えればそこに鬼巫女が斬りかかって来た。辛うじて跳躍して避けたが、また余計な邪魔者が来てさらに腹を立てる。

 

「何でまだ立ってられんのよ?!私の分身は何やってんのよ?!」

「唐突に動きが鈍くなったからな。お陰で貴様に辿り着くのは容易だった」

 

 爆血に苦しんでいた時、分身体が維持出来なくなっていた。その隙に吊り橋まで走って来た。だが毒にやられて時間が経っているというのに、まだ立っていられる事にまた腹を立てた。

 

 だが緣はこれ以上、鬼に対して何も語らない。

 

「竈門!こっちまで走れ!」

「は、はい!」

 

 禰豆子を抱え、急いで走り出した。鋒欠の脇を掻い潜って緣の所まで走るが、そこまでまだ距離がある。

 

「逃がすわけないじゃない!」

 

 口から鋼鉄の蜂を吐き出した。標的は炭治郎。その驚異的な速さで炭治郎の頭を狙った。匂いで振り返らずに蜂が迫っている事を察知するが、あまりの速さに追いつかれるのは時間の問題だった。

 

(急げ!急げ!追いつかれる!追いつかれ……)

「屈め!」

 

 緣の咄嗟の指示で屈んだ炭治郎。何とかそれで避けられたが、今度は緣が標的になってしまう。だが構わず緣は日輪刀を振り下ろし、鋼鉄の蜂を真っ二つにした。

 

「よくやった。竈門。後は私がやる」

 

 僅かに歩み、炭治郎を守るように鋒欠の前に立ちはだかる。

 

「毒にやられているくせに……生意気抜かすんじゃないわよ!!」

 

 再び鋼鉄の蜂を解き放つ。それも三匹同時に。その上で通常の蜂を向かわせた。面で制圧すれば、日輪刀では対処しきれない。しかもこの閉所では思うように振るえない。

 

 こんなの、どうやって避ければいいのか。そんな方法すぐに思いつかず狼狽える炭治郎。だがそれでも緣は構えを解く事なく佇む。刀を水平に持ち替えて、下の刃に左手を添えた。

 

「「玖ノ舞 撫子神楽(なでしこかぐら)」」

 

 三方同時に迫る蜂を一閃の刃で斬り捨てる。さらに迫る蜂の群れに対し、跳躍すると無数の回転斬りで全て薙ぎ払う。斬られた際に撒き散らされた毒もひらりと避けながら、再び迫る蜂の群れを斬って少しずつ鋒欠に迫る。

 

 緣が蜂を全て斬る為、炭治郎と禰豆子には一匹も届いていない。後ろで緣の剣技を見ているが、何者をも寄せ付けない剣捌きと蜂と毒を回避する身のこなし。苛烈にして美しい剣舞を前に、戦場であるのに魅了されてしまう。

 

「何で?何で?!何で何で何で!!」

 

 数で押し潰そうとしても、緣は一匹も刺されない所かこちらに迫っている。追い込まれた鋒欠は慌てて逃げ出す。だがその前に跳躍した緣が目の前に立ち塞がった。赤い眼光が鬼を捉えた。

 

「た……助け……」

 

 鬼巫女に命乞いなど聞くはずもなく、赤紫色の刃による水平斬りによって頸が撥ねられた。今度は断面に蜂は存在しない。今度こそ下弦ノ伍・鋒欠は倒された。

 

 

○○

 

 

 私が……負けた?

 

 

 こんな奴に………?せっかく十二鬼月に入れたのに……!

 

 

 見られたくなかった!私の顔を……!

 

 

 ただ悪ふざけで投げた石が、たまたま蜂の巣に当たって……黒い着物を着ていた私が標的になった。

 

 

 一命は取り留めても、刺された所は腫れ上がってて治しようがなかった。

 

 

 それから皆、私を嗤い始めた……!醜女だなんだ好き放題言って……!

 

 

 両親も私の事を腫れ物のように扱って……!

 

 

 屈辱だった……!皆私の事を化け物扱いして……!

 

 

「なら、見返してやればいい。お前を嗤う奴を全て……殺せばいい」

 

 

 あの御方だけは笑わなかった……私を認めてくれた……!私を肯定してくれた……!

 

 

 力を授かった私は、みんな殺した。両親も友達だったやつも、私をせせ笑った奴らも!

 

 

 私の顔を見たやつはみんな殺す。鬼殺隊であっても……私の顔を見て、生きて帰った奴はいなかった!

 

 

 なのに……なんで……?

 

 

 アイツも何かを隠しているみたいだった……。

 

 

 あの赤い鬼の面を着けたあの女……。まるで、私みたいだった……。

 

 

 だからなのかな……こんなにイライラしたのは……。

 

 

 醜くなった自分を見ているみたいで……だからなのかな……。

 

 

 嗚呼……消えてゆく……身体が……。

 

 

 今度こそ……本当に死ぬんだ……この痛みと共に……

 

 

 

 地獄へ……

 

 

 ――

 

 下弦ノ伍・鋒欠(ほうか)は死んだ。頸を斬られ、胴体は崩壊した。頸は下の渓流に落ちて確認しようがないが、胴体が塵となって消えたとなれば、頸もまた同じ運命を辿る。鋒欠が放った蜂も既に落ちて塵となった。

 

 だが気になったのは、鋒欠の死に顔。恐怖とは別、まるで同情しているかのようだった。それはきっと、(ゆかり)に向けたものだろう。内側に何かを隠した者同士、何か思う所があったのだろう。だがそれが何なのか、今となっては確かめようがない。

 

 だがそれは問題では無い。不意に不吉な音が背後から奏でていたのが聞こえた。吊り橋を支える縄の一本が切れてしまった。微妙な均衡で保っていた吊り橋で、あれだけ大立ち回りしていれば、崩壊が早まるのは自然の理。残りの一本が切れるのも時間の問題だ。

 

「緣さん!早く逃げないと……はっ!」

 

 緣に知らせようとした時、異変に気が付いた。

 

(緣さん!まさか毒が!)

 

 緣を蝕む毒はまだ残っている。それがここまで踏みとどまっていたが遂に限界に達して、倒れてしまった。しかも倒れた先に支えるものは何も無かった。

 

「くっ……!」

 

 落下しそうになった所を、何とか辛うじて足場の板を掴んだ。だが手の力が少しずつ抜けていく。視界も定まらない状態では自力で這い上がるのも困難だ。

 

(力が…………入らない…………)

 

 落ちるしかない。諦めかけたその時、自分の腕を掴もうとする者がいた。視界が歪んでいるが、それが誰なのか分かった時、驚きの余り目を大きく見開かせてしまった。

 

「お前は……」

「むむー!」

 

 禰豆子が緣に手を伸ばそうとしている。大きく動いてしまうと橋の揺れで緣が落ちてしまう。少しずつ移動してここまで来て緣を助けようとしている。鬼が人を助けようとしているという、信じ難い事態に緣は呆然としてしまう。

 

「緣さん!待っててください!俺もすぐに助けます!踏ん張ってください!」

 

 移動する事で橋が大きく揺れないよう、慎重に進んでいる炭治郎。禰豆子の方ももう少しで緣に届く。手を伸ばそうとしていたが、その後ろでもう一本の縄が切れそうになっている。このままではすぐに切れてしまう。

 

「走れ」

 

 不意に告げられた禰豆子は驚いてしまう。何でそう言うのか、理解出来なかった。だが同時に、緣は限界を迎え足場から指が離れてしまった。

 

「むむぅーー!!」

「緣さぁん!!」

 

 禰豆子が腕を伸ばすが届かず、緣はそのまま渓流の中に飲み込まれてしまった。水飛沫が舞うが、緣が出てくる事は無かった。

 

「そんな……緣さん……」

「むむー!」

 

 禰豆子の声で後ろを振り返る。もう縄が切れてまう。急いで走り、吊り橋から脱出。同時に縄が切れてしまい、吊り橋は瓦礫となって渓流へと落ちていった。

 

「急いで探すぞ禰豆子!」

「むー!」

 

 炭治郎は流された方へと走った。このまま緣を喪えば、しのぶは後悔の抱いたまま生きていかなければならなくなる。そんな事は絶対させない。走りながら鎹鴉に蝶屋敷へ伝令を送るよう放った。

 

 




大正コソコソ噂話
鋒欠の過去

かつて人間だった鋒欠はまだ子供だった。だがそれ故に精神的未熟が強く、気に入らない同い年の子供相手に石をぶつけるという遊びをしていた。
だが罰が当たったのか、投げた先に偶々蜂の巣があり、ぶつけて落としてしまった事で蜂達の標的にされてしまった。命に別状はなかったものの、蜂に刺されて皮膚が腫れ上がり、その歪な容姿から立場が逆転、虐められた者達による報復を受ける事になる。
半殺しに遭うばかりか両親からの愛も享受出来なくなり、遂に家出。そこに無惨と遭遇した事で鬼に変貌。両親と周囲の人間に復讐を果たす。

なお累の後釜として下弦ノ伍になったが、無惨のパワハラ会議が開かれる直前に死亡した為、パワハラを受ける事は無いまま討伐された。もし参加していたら、無惨によってパワハラされていたとか。
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