雅なる隊士達   作:レーラ

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そういえばモンストと鬼滅の刃コラボやってましたね。

なかなか柱が出てこず、結局風柱は入手出来ず……悔しい


鬼巫女と蟲柱

 胡蝶しのぶ。鬼殺隊 最高位 柱の一角。肩書である蟲柱は彼女が用いる流派、蟲の呼吸に由来している。

 

 (ゆかり)の前にふわりと降り立った彼女だが、その身長は緣のそれよりも下回っている。だがそれよりも特徴的なのは、彼女の笑顔。

 

 緣の頭上に蜘蛛の糸で吊るされている小屋の上で黄色い頭の少年の腕に注射を打ち込み、薬を投与する。それを済ませると少年隊隊士を抱える。

 

 「今日は月が綺麗ですね。疼木(ひいらぎ)さん」

 

 (ゆかり)に向けた笑顔。向けられた方の心中はとても穏やかなものではない。

 

 それは、事後処理に駆け付けた(かくし)の面々を戦慄させた。

 

  胡蝶しのぶ(蟲柱)疼木 緣(鬼巫女)。この二人は犬猿の仲と揶揄されている。

 

 ある時、二人がすれ違った際、簡単な挨拶の一言で別れた。

 

 ある時、鬼巫女と蟲柱が同じ食堂で飯を食ったが、別々の席で目が合おうとも、一言も言葉を交わさなかった。

 

 ある時、蟲柱が鬼巫女の裾を掴むも強引に振りほどいて倒した。

 

 などなど、二人の不仲話は挙げればキリがない。

 

 そんな二人が同じ現場にいるとなれば、何が起こるか分かったものではない。隊律によって隊員同士の争いはご法度であるとはいえ、仮に喧嘩になれば、隠では止められるわけがない。

 

 黒子頭巾で目元以外は顔を隠していても、この場にいる全員が恐怖で震えているのが分かる。戦えない(かくし)達は木々の陰から震えて穏便に済む事を願う事しか出来ない。

 

「いつまで隠れている?さっさと出て来い」

 

 しのぶを見据えていたはずの(ゆかり)が、(かくし)達の方を見ずに姿を現すよう促した。しかも相手はあの鬼巫女である為、さらに恐怖に落とした。

 

 だがいつまでも隠れているわけにもいかず、泣く泣く茂みから姿を見せた。

 

 緣が日輪刀を鞘から抜いて、その刀身が月夜に照らされる。それを見た今にも泣きそうになっている男の(かくし)の一人が喧嘩しないよう進言する。

 

「あ、あの……疼木(ひいらぎ)様……。こ、胡蝶(こちょう)様とは……」

 

 だがせっかくなけなしの勇気を振り絞った進言も無視され、緣は高く飛んだ。まるでしのぶに斬りかかろうとしている。

 

「ひ、疼木(ひいらぎ)様!なりませ……」

 

 隠達が止められるわけもなく、そのまま一閃の煌めきが走る。しのぶから通り過ぎて、そのまま降りてきた。

 

「疼木様……!なんて事を……」

「馬鹿!よく見ろ!」

「えっ?」

 

 隣にいた男の隠に促されて注視する。

 

 すると、緣の左肩に人を抱えていた。同じ鬼殺隊の隊服を着用しているのだが、腕が本来の形をなしていない。頭上を見上げるとよく見ると蜘蛛の糸で吊るされている隊員が数名いた。

 

 緣は彼らを助ける為にその糸を切ったのだ。真意に気付いた隠は安堵して胸をなでおろす。

 

「疼木様が私闘するわけないだろ?あの人は人一倍厳しいだけで、そんな馬鹿な真似はしない」

「そ、そうなんですね……っていうかよく知ってますね後藤さん」

「あの人には世話になってるからな」

 

 後藤と呼ばれた男の隠の説明に納得して頷いた。

 

「これより吊るされた隊員を降ろす。お前達は彼らの処置を。よろしいですね?」

「皆さん、よろしくお願いしますね」

 

 緣としのぶが連携して指示を出し、隠の一人に先程降ろした黄色髪の隊員の身柄を預けた。

 

「は、はい!」 

 

 隠達が仕事に掛かる。容赦ない所もあるが、任務で妥協は一切しない。誰に対しても公平に、私情を挟む事をしない。

 

 緣は次々と糸に吊るされた隊士達を降ろし、身柄を隠達に預けていく。

 

「これで全員だ」

「はい。ありがとうございます。後は我々が」

「ここは任せたぞ」

 

 事後処理は(かくし)達には任せ、(ゆかり)はそのまま先へ進んだ。鬼はあの金髪の新人隊員が討伐したが、規模の被害の大きさを考えれば一体だけではない。

 

 鬼は基本的に群れて行動する事はしない。それは鬼の血がそうさせているのだが、時にその例外の事案がある。念には念を入れ、索敵に向かう。

 

「私を置き去りにして、何処へ行こうとしているんですか疼木(ひいらぎ)さん?」

 

 背後からしのぶに声を掛けられ振り返る(ゆかり)

 

 まるで故意に声をかけずに行ったように言われるが、実際その通りである事を見抜かれていた。あっという間に空いていた距離を縮められ、隣に並走している。

 

「何故わざわざこちらに?怪我人の治療に……」

「必要分の薬は既に渡してあります。後は(かくし)の方々でも問題ありません」

「では、二手に分かれた方が効率的にも良いかと思いますが……」

「どうしてそんな事を仰るのでしょうか?私といるのが、そんなに嫌なのですか?」

 

 しのぶの額に青筋が一つ浮かび上がっている。笑みを崩していないが怒っているのは明白。(ゆかり)は目を背けた。

 

(その笑みを向けないでくれ……)

 

 (ゆかり)はしのぶが苦手……ではない。しのぶが見せる笑みが苦手だった。

 

 彼女が見せる笑顔は人を魅了し、鬼殺隊を勇気づける力があるのは分かる。だが、緣にとってはそれが呪いのように思えてならない。振り払おうと先に進む……

 

()

 

 突然苗字から名前で呼び捨てにされ、歩もうとした足がまた止まった。

 

 

 大丈夫よ(ゆかり)

 

 私達三人で、人も鬼も救いましょう

 

 

 朗らかな笑顔。優しく名前を呼んでくれる声。嬉しい時も、悲しい時も、まるで自分の事のように寄り添ってくれた友の存在。(ゆかり)の脳裏に蘇った。

 

「二人きりの時くらい、堅苦しいのはやめてって言ったじゃない」

 

 しのぶの声が現実に引き戻される。しのぶは口調だけでなく、先程まで振りまいていた笑顔も消えて、真剣な表情で緣の目を見ている。

 

「任務に忠実なのは良いけど……いい加減、自分を大事にして。こないだだって、大怪我をしたのに……」

「蟲柱様……」

 

 上官からの助言にしては、まるで自分の事のように心配しているように思えるが、それを(ゆかり)は遮った。

 

「任務の途中です。公私混同は慎んでください」

 

 そのまましのぶを置いて駆けて行った。その背中を、しのぶは呆れながら見ていた。

 

(やっぱり駄目か……。皆、私達が仲が悪いって言ってるけど……これじゃあ勘違いされても不思議じゃないわね……)

 

 噂の真実というのは大した事ではない。それを誰かが誇張して広め、事実とは大分かけ離れていく。ただ避けられているだけだというのに、何故二人は険悪だとされているのか。

 

しのぶはそんな事には構わず、(ゆかり)の後を追うのだった。

 

 

○○

 

 

 殺される……

 

 

 一人の(みずのと)隊士の脳裏にその一言が過ぎった。

 

 猪の頭皮を被ったその少年は、勇敢にも一人になろうとも自分より一回り以上も巨大な鬼に立ち向かい、首を斬ろうとした。

 

 だが予想以上にその首は固く、その手に持っていた二本の日輪刀は折れてしまった。呆気にとられた所を頭を片手で掴まれてしまい、握り潰されそうになっていた。

 

「オレノカゾクニチカヨルナアアアァァァ!!」

 

 鬼の本能というより、自分達の領域に侵入された事に腹立てているようである。だがどの道、殺して食らう事に変わりはない。

 

 被り物から血が噴き出し、声も挙げられない。このまま握りつぶされて自分は終わる。

 

「見つけたよ!」

 

 だが突然聞こえてきた女の声。その間もなく、ほぼ同時に鬼の両腕を斬り落とした。鬼の首に刃が届いたのか、首筋から血飛沫が舞うが、斬り落とすまでには至らず、自己再生を始める。

 

 だが寸での所で少年の頭は潰されずに済んだ。猪少年は何が起こったのか、女の背中を見て理解した。

 

「だ……誰だ……あいつ……?あいつの腕を……斬ったのか……?」

 

 喉をやられたのか、猪少年の声に濁りが混じっているかのように発せられる。鬼の腕を斬った女、斑鳩伊万里(いかるがいまり)が日輪刀を鞘に納めて少年に駆け寄った。

 

「流石に首まで届かなかったか。大丈夫かい?って……猪頭?!あ、被り物か……」

 

 人の顔じゃなかったのがビックリしたようだが、頭を持ち上げるとそれが被り物であり、中身はちゃんとした人間であると確認する。

 

「あーあ。こりゃあ相当やられてたみたいだね。けど新人にしちゃ良くやった方だな」

 

 感心しているが鬼はまだ生きている。鬼は首を日輪刀で斬るか日の光を浴びせなければ死なない。巨体の鬼は既に腕を再生し終え、伊万里を潰そうとその拳を振り上げている。

 

「危ねえ!」

 

 少年が叫ぶが、鬼が上げた拳を振り下ろした。だが、伊万里は少年を抱えると高く宙返り、回転しながら着地する。少年は呆気にとられたまま、木を背に降ろされる。

 

「後は私に任せな」

 

 少年にそう呼び掛けると、鬼の方に向き直って二本の日輪刀を抜刀する。

 

「さて……この落とし前、高くつくぜ。」

  

 そう言うと歯を見せるように笑い、飛翔した。鬼は咆哮をあげながら叩き落とそうと腕を振るうが、伊万里は空中で身体を反らして回避、木の幹を足場にして蹴るって宙返りをする。

 

「こっちだこっち!何処に目ぇつけてるんだい?!ハハハハ!」

 

 鬼を弄ぶように挑発、高笑いが響く。それが効いてるのか分からないが、力任せに振るう拳を伊万里は空中で軽々と避け続けている。

 

「さぁて……今度はこっちが狩る番だ。狩られる準備は出来てるだろうなぁ!?」

 

 空中で鬼に問いかける。飛んだ先にあった木の幹を強く蹴った。真っ直ぐに鬼の方に向かい、鳥が羽ばたくかの如く両腕を大きく広げると、日輪刀の刃が月光によって煌めく。

 

 

鳥の呼吸 弍ノ型 燕落(えんらく)太刀(たち)!!」

 

 

 左右斜めから斬撃が一度に二重も放たれる。伊万里が地に足を着けたと同時に、鬼の頸が虚空に舞う。頸と泣き別れした鬼の胴体は背中から倒れ、大きな音を出してそれ以降動く事は無かった。

 

 日輪刀で首を斬られた鬼は灰となって消滅する。この鬼もその例外はなく、身体も首も塵となって消えた。

 

 

○○

 

 

(凄え……何だアイツ……?!鬼の攻撃を宙で避け続けやがった……!それだけじゃねえ……!一瞬で間合いに入って、鬼の首を斬りやがった!)

 

 猪少年はの伊万里(いまり)の戦いに息を呑んだ。自分の力では倒せなかったあの鬼を一瞬で、傷一つ負わずに倒してしまった。

 

 その強さを目の当たりにして、少年の心は踊った。

 

(凄えぇ!ワクワクが止まらねえぞ!)

 

 日輪刀を鞘に納めた伊万里(いまり)は猪少年の方の方を見て、こっちを見ている事に気付く。

 

「どうしたんだい?怪我してるんだからここはさっさと山から降りて……」

「凄えええぇぇ!」

「うぇっ?!」

 

 潰れかけた喉で鮮明さを欠いた声が大きく響く。まさか至近距離で叫ばれるとは思わず、咄嗟に耳を塞いだ。少年はそのまま伊万里(いまり)に詰め寄った。

 

「今のどうやってやったんだ?!俺様に教えろ!そして俺と戦え鳥女!」

「はあぁっ?!アンタ何言ってんだい?!」

 

 今、まさに九死に一生を得たばかりだというのに急に元気になった猪少年。本当に大怪我しているのかと疑いたくなる。

 

 しかも教えろとせがまれた上で戦いを挑む者など聞いた事がない。

 

「お前はあの十二鬼月に勝った!そのお前に俺が勝つ!そうすりゃ俺が最強だ!」

「馬鹿かテメェ?!あんなん十二鬼月じゃねえ!それにす

らやられかけて私に挑むとか百年早えわ!」

 

 十二鬼月の鬼は上弦の鬼と下弦の鬼、それぞれ六体ずつおり、全員目に数字が刻まれている。その数字は強さを表すものだが、今狩った鬼の目には数字はない。

 

 つまり十二鬼月以下の鬼だという事だ。

 

 だがそれを説明した所で、猪頭の少年は引き下がるつもりはないようだが。

 

「んだと?!俺だってあんな雑魚、十二鬼月じゃねえの知ってたから!権八郎(・・・・)が……ゴオォッ!」

 

 伊万里(いまり)も我慢の限界だったようで、猪頭の少年の腹に拳が見事に入った。怪我人の味方の腹を殴るとは鬼畜の所業ではあるが、黙らせるには十分だったようで完全に気を失った。

 

「何だコイツ……?何でこんな奴が生き残れたのか不思議だわ。……ん?」

 

 呆れて後頭部をポリポリ掻いていると、人の気配に気付いた。振り返るとそこには半々羽織の隊員がいた。

 

「随分と遅い到着だったじゃないか。水柱さん(・・・・)よ」

 

 上官である柱に対して、伊万里(いまり)は躊躇いもなくタメ口を叩いた。水柱・冨岡義勇(とみおかぎゆう)はそんな事を気にする素振りも、表情一つも変えずに歩いて接近して来た。

 

「倒したのか?」

「え?あ……まあ仕方なかったんだよ。こいつ、いきなり私に挑もうとしてきて……」

「鬼の方だ」

「え?!あ……そっちか」

 

 もう少し言葉を多めに出せよ、と思いながらも鬼を倒した事を伝えた。肝心の十二鬼月はまだ倒していない事も含めて。

 

「そうか。(ならばそいつの面倒を見て)ここで待っていろ。

「はぁっ?!何で私がここで……ってか速っ!」

 

 既に義勇の姿はなく、伊万里(いまり)も少年を置き去りにして後を追うのだった。

 

 

○○

 

 

「何処にもいないなぁ……」

 

 最初に入山した雅、輪廻(りんね)は山中を徘徊、もとい索敵している。三毛猫の(かおる)も輪廻の肩から降りて索敵に参加しているが、鬼と出くわす所か鬼殺隊士すら見当たらない。

 

 輪廻(りんね)は、(ゆかり)達とは反対に位置する方角から入山しており、ここから入ったのは彼女ただ一人。その方から鬼も隊士も見つけるには時間を要する。

 

 だが何も起こらない現状に飽き飽きしたのか、(かおる)をぽふっと頭上まで持ち上げるとそのまま白髪の上に乗せて、突っ走り始めた。

 

「こういう時は走るに限る」

 

 大した理屈のない行動。(かおる)も呆れている。

 

「にゃぁ!」

 

 だが突如、(かおる)輪廻(りんね)の頭上でじたばたし始めた。手を離してやると薫は飛んで降りた。

 

「どうしたの?」

 

 何かを察知したのか、尋ねようとしたが、輪廻(りんね)も反応して目を見開かせた。耳を澄ませると音が聞こえてきた。

 

「剣戟……」

 

 すぐに薫を肩に乗せて、微かに聞こえた剣戟の方へと走っていった。草木を掻き分けて、時には葉を頭に被る事になっても構わず突き進む。

 

「俺と禰豆子(ねずこ)の絆は!誰にも……引き裂けない!!」

 

 少年の雄叫びが轟き、草木枝葉を大きく揺らした。まだ姿は見えないはずが、ここまで聞こえてくる程だ。近づいている。

 

 だがこの声のおかげで何処にいるのか、ハッキリと追跡する事が出来る。そして遂に辿り着いた。

 

「これって……」

 

 足を止めて、光景を目の当たりにした輪廻(りんね)の目は瞬きを忘れてしまうくらい見蕩れていた。

 

 額に痣がある市松模様の羽織を着た赤毛少年の隊士がボロボロの状態で地に伏しているが、こちらを見て驚愕している。彼は生きている。

 

 対して蜘蛛の巣模様の着物を着た、まるで子供程度の大きさしかない鬼の頸が転がっていた。左眼には『下伍』と数字が刻まれている。これがこの那田蜘蛛山を支配している鬼、下弦ノ伍・累だ。

 

 この状況からして、累の頸を斬り落としたのは赤毛少年の隊士だろうが、それよりも輪廻(りんね)が驚いた理由は別にある。

 

 桃色の麻模様の着物をしている女の子が、仰向けのまま眠っている。口は竹の轡をしているが、輪廻には分かっていた。

 

 この少女は、鬼であると。




大正コソコソ噂話

雅の鎹鴉

紅葉(くれは)
緣の雌鴉。よく自分が作詞作曲した歌を唄っているのだが、流暢に喋れないせいもあって評判はイマイチ。現代で言えばジャイアンリサイタル。

黒助(クロスケ)
伊万里の雌鴉。四羽中では一番若手であり、破天荒な伊万里に惹かれている事もあって、自分こそが最高の相棒であると自負している。それ故か伊万里の舎弟である虎次郎とは仲が悪くいつもどつき合っている。

旋毛(つむじ)
輪廻の雌鴉。真面目で輪廻のサポートに全力を注いでおり、自由奔放な彼女に振り回されるようなことがあっても文句一つ言う事なく従っている。

珠(たま)
御憑の雄鴉。四羽の中では一番大柄。御憑に対して過保護なところがあり、変な虫が寄らないよう常に警戒している。
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