陵南高校で全国を目指す   作:第ゼロ感

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5話

 

 亮の怪我は順調な回復を見せ、当初の予定通りの1ヶ月での完治に成功した。

 高校バスケにおける三大大会といえば夏のインターハイ・秋の国体・冬のウィンターカップとなるが、秋の国体においては夏の決勝リーグにおいて1年ながら活躍を見せた魚住と亮に声が掛かる事となった。

 亮としては当然出たいという気持ちがあった。しかし夏の間治療に専念し、脚が完治したとはいえ1ヶ月のブランクがある中、9月の1ヶ月間リハビリをかねて徐々に練習負荷を上げていくのに対して、その後の10月の国体に出場させるというのは、復帰明けの亮という立場を客観的に見て現実的ではない部分があった。

 故に亮は泣く泣く秋の国体は辞退する事となり、陵南からは魚住のみが参加する事となった。

 

 「相模の分まで俺がやってやる。見ていてくれよ」

 

 悔しがる亮の背中を叩いて励ました魚住は、その宣言通り目覚ましい進化を遂げる事となった。

 通常の陵南での練習に加えて、選抜メンバーとしての練習をこなさなければならない魚住のスケジュールは確かにハードなものであったが、夏の悔しさがあった魚住が音を上げる事はなかった。

 同じく選抜に選ばれた海南センター野崎にも教えを乞い、貪欲にその技術を吸収した。

 普段の練習では中々味わえない己と同格以上のセンターとの練習から得られるものは多く、魚住の実力は加速度的に伸びていく事となった。

 

 そうして秋の国体。

 海南を主軸とした神奈川選抜は全国においても活躍を見せた。

 PGに牧、SGに藤真、Cに魚住と1年を主軸としたスタメンであったが、決して全国の猛者共を相手に引けを取る事なく、特にPFにコンバートした野崎と魚住のツインタワーは、その圧倒的な高さから全国でも猛威を振るった。

 そんな神奈川選抜の快進撃を止めたのは最強・山王工業がそのまま選抜を務める秋田県選抜であった。

 伝家の宝刀であるゾーンプレス。牧・藤真のガードコンビは1年ながらに対抗してみせたが、いかにスーパールーキーと騒がれていようが彼らはまだ1年でしかない。試合が後半に差し掛かるにつれて体力不足から精彩を欠き、ターンオーバーを誘発するようになった。

 野崎・魚住という強力なフィニッシャーがいても、ボールを供給できなければ意味を成さない。

 さらにスタメンで3ポイント成功率が信頼できるのが藤真だけというのも神奈川としては痛かった。

 無論、神奈川選抜にも3ポイントを打てる選手は他にもいるが、あくまでも打てるレベル止まり。

 格上相手に下剋上を果たすための爆発力。その点においては相模の不在は痛かったといえるだろう。

 神奈川選抜はベスト4で姿を消す事となった。

 

 そして冬のウィンターカップ予選。夏とは違い、出場権は1校のみ。

 結果として優勝校は夏と同じく海南大附属となった。

 復帰した亮と秋の国体を通じて成長した魚住は確かに強かった。だが陵南にとって不運だったのが、陵南の土台を支えていた3年生の引退だった。

 大学が付属している海南や、全国常連の翔陽はその事から内部進学やスポーツ推薦などから進路が決まっており、残りやすい立場にいるのに対し、まだ全国的には実績のない陵南は現実的な問題として進路先の問題が浮上してくる。人生の重要な岐路に立つ3年生を責める事など決してできない。

 3年生という代え難い戦力の有無はそのまま勝敗に直結した。

 

 試合結果は悔しい結果に終わったが、田岡は決してそれを悲観していなかった。

 確かに今大会において3年生の不在は痛かった。若いチームで強敵相手に戦わなければならなかったのは厳しかった事は間違いない。

 だがそれは見方を変えれば陵南は他のライバルチームよりも早く、新体制でのチームとして経験を積む事ができたという事だ。

 前々から練習においてDF力の高さを見せ、注目していた1年の池上といった新戦力を試す事ができた。悪い事ばかりでは決してない。

 

 (まだだ……今は力を蓄える時。本番はまだこれからだ……)

 

 田岡は内心をギラリと燃え上がらせ、チーム構想に力を入れる。

 

 (県内屈指のガードの宮城のスカウトは失敗したが、今年は東京の中学からあの天才プレイヤー・仙道をスカウトする事ができた……)

 

 魚住・相模・仙道。全国へのピースは着々と揃いつつある。その才能を活かすも殺すも後は自分次第である。

 

 (腕が鳴るな……!)

 

 田岡がニヤリと笑う中、5対5練習を行う亮がコーナーから3ポイントを決める。

 

 「おお〜!」

 「ホント外さないな!」

 

 カウンターで相手チームにボールが入る。アウトサイドの池上からゴール下の魚住にパスが入る。

 

 「フンッ!」

 

 ブロックしようとした亮を跳ね除け、そのままダンクを決めた魚住に対してこちらにも歓声があがる。

 

 「おお〜!」

 「日に日に強くなってってねーか?魚住の奴」

 「ああ、気合十分ってやつだ」

 

 対峙する魚住と亮。お互い考えている事は一つだった。

 

 ((勝つ!夏のインターハイは絶対に勝つんだ!))

 

 今日も陵南の練習は熱を帯びる。相模亮の1年はこうして幕を閉じた。





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