主人公の性別が違うんだが…   作:ふくきたる

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第2話

高校生活にも慣れ、季節は夏になった。

制服は衣替えをして夏服に。

まだ朝方だというのに既に気温は高く、遠くの地面には陽炎が見える。

通学路では、太陽の陽射しを全身に浴びて気怠るそうに歩く生徒達がちらほら。

だが、この程度の暑さなぞ俺には効かない。

なぜなら俺はフリージング星人、ゲームで言えば氷属性みたいなもんだ。

自分の周りに冷気を発生させれば、あら不思議!

夏の気温なんて、なんのその!

電気代もかからず、二酸化炭素の排出もなく、環境にまで優しい!

一家に1人、フリージング星人がいるだけでなんとっ、

簡単に天然ものクーラーが手に入れる事が出来てしまうんです!!

この夏を快適に過ごしたいと思う、そんなあなたにっ、

ヒスイクーラーサービスはいかがですかっ?

おでかけ先や外仕事をして暑いと思っているあなたの元に駆けつけ、フリージング星人が快適な空間をお届けします!!

お値段は人件費込みでなんとっ、時きゅ…

 

「あ。おはよ〜、コーリ。今日は朝から暑いね〜」

 

「おはよう、古織」

 

「おはよう、2人とも。午後からはさらに暑くなるらしいよ」

 

脳内テレビショッピングをしていたら、ララと梨子に声をかけられる。

梨子はまだ普通だったが、ララはそれなりに汗をかいている様子だった。

 

「え〜〜〜。それなら、今日ずっとハダカのままで過ごそーかな〜〜」

 

「ふむ、素晴らしい提あ「絶対ダメ!!!」

 

梨子は慌ててララの発言を一蹴する。

 

「あは!ジョーダンだよ。リコってば、あわてちゃってカワイーんだからぁ♡」

 

「ララの場合、冗談に聞こえないの!!」

 

「でも、お家の中ならいいよね?だってリコと美柑は女の子なんだし。他には誰もいないんだからさ♪」

 

「え?う、うーん。家の中なら、まぁ…。いや、いやいやっ。やっぱりそれもダメだよ、ララはもっと恥じらいを持って!!」

 

俺そっちのけで会話が続き、2人だけの空気感が創り出される。

…………これはどうしたものか。全然、会話に混ざれる気がしない。

ここにずっといて2人のやりとりをただ見てるだけなのも何か変だし…。

かと言って、何も言わずに学校に向かうのもアレだしな。

うーむ…、

 

「…ねぇ、私の気のせいかもしれないけどさ。さっき古織、ララにハダカになること勧めようとしてなかった?」

 

「してない。気のせいだろ」

 

考えごとしてたら、いつの間にか梨子が近くに来ていた。

 

「ホントに…って、あれ?なんか古織の近くにいると、涼しい…」

 

「えっ!ホントっ⁉︎」

 

「っ、!」

 

おっと、気づかれてしまった。

冷気出しっぱなの忘れた。とりあえず、すぐ解除。

周りの冷気がなくなると、暑い気温が一気に纏わりついてくる。

 

「あれっ⁉︎急に元の暑さに戻っちゃった」

 

「む〜〜〜。リコのウソつき。全然、涼しくないよー」

 

瞳をキラキラさせて近づいてきたララだが、涼しくない事に気づき、梨子に詰め寄る。

「ごめんごめん」と謝る梨子。

またも2人だけの空間が漂い始めたが、ララはいつもより元気がなく、少し辛そうだ。

デビルークに夏があるのかどうかは知らないが、フリージングに四季はなかった。

常に冬のような寒い気温が続くフリージング。

それでも作物は育つし、宇宙は不思議です、はい。

いや、その話は置いといて。

前世で夏を経験している俺でも、宇宙人となった今ではこの気温は辛い。

気温が低い星にいたからなおさらだ。

もしデビルークがフリージングと同じ四季がない惑星なのであれば、今のララは環境の変化に相当苦労しているはず。

この誤解は俺が生んでしまったものだし、彼女に助け舟を出す。

 

「ララさんや。そんなに暑いなら、これ使うかい?」

 

「え?これは地球の扇風機?」

 

鞄から取り出してララに渡したのは、充電式コンパクトハンディファン。

 

「そうそう。手元にあるスイッチを押してごらん」

 

「ここ?わかった!」

 

ララがハンディファンのスイッチを押すと、羽の部分が回り出し、ララの綺麗な髪を靡かせ始める。

そこですかさず、ヒスイクーラーサービスの出番だ。

ララとハンディファンの間に冷気を発生させる。

すると…、

 

「わ〜〜〜!涼しい〜〜〜♪」

 

it's perfect。

曇りなき笑顔で感謝を述べるララ。

はい、可愛い。その笑顔が見れただけで満足です。

それにしても起動してくれてよかった。

熱中症対策として一応買っておいたけど、一度も使った事がないから動くか心配だったわ。

電池も取り換えてないし。

 

え?どうしたの?

それの仕組みが気になるから分解したい?

別にそれは構わないけど、今やるとまた暑くなっちゃうよ?

それあげるから、教室に着いてからにしときなさい。

 

「はーい♪」と元気良く返事をするララ。

さすが、デビルーク王家の発明王。考えることが一般人とは違うな。

でも、工業系の人達はそーゆーことをいつも考えているかもしれん。

こういう人達がいてくれるから、世界の技術はどんどん進歩していくのだろうな。

マジでありがたい。

 

「いいなぁ。ねぇ、古織。私の分もある?」

 

「ん?あぁ、いいよ。ほら」

 

鞄の中から下敷きを取り出し、梨子に手渡す。

 

「それで俺を煽いでくれ、めっちゃ暑い」

 

「いや、扱いの差っ!!」

 

「しかも私じゃなくて古織を煽ぐの⁉︎自分でやりなよ‼︎」

 

下敷きを返却され、ギャーギャー叫ぶ梨子。

悪いな夕崎、あれはプリンセス専用なんだ。

悔しかったら、今すぐにララの婚約者になってお前もプリンセスになるんだな。

そして他のヒロインも皆んなまとめて幸せにしなさい。

大丈夫、君ならできるから。

つーか実際、こいつらの関係性って何なんだ?

身辺調査の時にそれとなく探りを入れたが、何かはぐらかされるし。

まぁ、俺には関係ないから何でもいいんだけどね。

それより近いからさっさと離れてほしい。冷気纏えないじゃん。

 

「え?」

 

「何?どしたの?…もしかして具合悪い?」

 

先程まで騒いでいた梨子が突然黙り固まってしまったので、少し不安になる。

 

「心配してくれてありがとう。でも、そうじゃなくて…。ほら、あそこ」

 

彼女が指差す方向へ顔を向けると、そこには上下長袖で黒色のジャージを着用した男が壁に隠れるようにして立っていた。

顔はサングラスとマスクで隠れており、さらにフードまで被っている。

 

「おいおい、マジか。ボクサーの減量ってこんな暑い日に、あんな格好して運動しなきゃいけないのか。凄い世界だ…」

 

「うん、絶対違うよね。どう見ても盗撮犯だよね。古織くんにはあのデジカメが見えてないのかなぁ?」

 

そう言われると、確かに男はデジカメを手に持っていた。

盗撮犯は俺達の視線に気付いたのか、急いでその場から逃走する。

 

「あっ!待てっ!!」

 

梨子は頑張って盗撮犯を追いかけたが、地の利を生かされて上手く撒かれてしまったとのこと。

「何で一緒に追いかけてくれなかったの⁉︎」と軽く怒られ、盗撮犯を捕まえるの会に強制的に参加が決定した。

 

 

◼️

 

 

「コーリ!朝はありがとね」

 

朝のHRが終わって1時間目までの短い休みの合間、ララが机の前にやってきた。

 

「機械の仕組みはわかったし、あれなら家にある部品で作れそう!だから、これ返すね♪」

 

「え、ナニコレ?」

 

机の上に置かれたハンディファンは、朝に渡したものとは全くの別物となっていた。

なんかめちゃくちゃゴツいドライヤーみたいになっとる…。

 

「それはね〜、『びゅんびゅんゲイルくん』だよ!」

 

「…びゅんびゅんゲイルくん?」

 

「そう!その扇風機は凄い涼しくて良かったんだけど、ちょっと風量が弱いと思ったんだー。だから手元にあった部品で少しだけ改造して、風量の調整をしてみたの」

 

ほへー、なるほど。

こんな短時間で改造出来るなんて、めっちゃ凄いな、発明王。

しかし、今はまだ自分が宇宙人である事をララは隠しているみたいだけど、こういう事は隠さないでいいのだろうか。

まぁ、何はともあれ、

 

「おぉ!ありがとう、ララ。機械がいじれるなんて凄いな!大切に使わせてもらうよ」

 

「えへへ、それほどでもないよ〜。今度、使った時の感想を聞かせてねー♪」

 

彼女はそう言うと踵を返し、梨子たちがいるグループへ戻っていった。

数分後、骨川先生が教室にやってくる。

騒がしかった教室が徐々に静まり、本日最初の授業が始まった。

 

 

◼️

 

 

あっ

 

骨川先生の声のみが響く教室で、いきなり誰かがガタリと椅子から立ち上がる。

その人物は梨子。

クラス中の視線を集める彼女はバッとこちらに振り向き、目と目が合う。

 

「古織っ、朝のアイツがいた!早く追いかけないと。また見失っちゃうよ!」

 

「え?」

 

え?どこにいたの?

そもそも最初からソイツを見かけてない俺は、見失うもくそもないんだが。

そんなことを思っていたが、近づいてきた梨子に腕を掴まれ、ズルズルと廊下へと連行される。

廊下に出たら、確かに朝の黒い男が走って逃げている姿を捉える事ができた。

 

「ほら、いたっ!絶対に逃がさないんだから!!行くよ、古織!」

 

「アイアイサー」

 

2人同時に駆け出す。

教室の中から「古織に梨子ちゃんを取られたーっ!!」という猿山の悲鳴が聞こえたが、安心してくれ猿山、俺にその気は微塵もない。

よーいドンで盗撮犯を追いかけてはいるが、俺は宇宙人で梨子は地球人。

当然、力の差は走力にも出てくる。

 

「俺は先に行く、夕崎も頑張って追いかけてきてくれ」

 

「うん、お願い」

 

少し後ろで走っている梨子に声を掛けて、少しずつスピードを上げていく。

あともう少しで追いつきそうだったが、階段に続く廊下の方に曲がり、一瞬だけ姿を見失う。

俺もすぐに階段方面に曲がったが、目の前にいたのは階段から落ちてきた巨漢の男だった。

 

「ぐぺっ!!」

 

全身を覆い隠すように潰され、あらゆる箇所に痛みが走る。

 

「古織っ、何か凄い音が聞こえきてきたけど大じょ…、って、古織ーっ!!」

 

後から来た梨子が、巨漢男の下から出てきた俺を見て駆け寄ってくる。

でも、肩を掴んでガクガクするのはやめてほしい。

ちゃんと、意識あるから。全然、死んでないから。

結局、盗撮犯には逃げられてしまった。

次の授業は体育で、女子は今日から水泳が始まるとのこと。

「準備があるから私行くね。また今度、絶対に捕まえよう!」と言われ、今回は解散になった。

 

 

◼️

 

 

俺は次の授業をサボり、屋上に来ていた。片手には改造されたハンディファン。

うちのクラスの女子達だろうか、プールの方角からは楽しそうな声が微かに聞こえてくる。

さらに屋上にある梯子を登り、給水塔の近くで横になる。

少し汚いと思うが気にしない。さっき廊下で潰された時の方が汚いと思うから。

どうせなら女の子が良かった。

原作のリトさんだったら、胸に顔を埋めていたのかなと独りふと思う。

 

俺が屋上に来た理由は2つ。

まず1つ目は、単純に授業が怠くなった事。身体もまだちょっと痛いし…。

そして2つ目は、ララがくれた改造扇風機を試してみる事だ。

原作にもララの発明品はたくさん出てくるが、どれも失敗したり、少し不具合がある事が多い。

だから誰もいない屋上で試そうと思い、ここにやってきたのだ。

さらにプラスして、今日は炎天下。

こんな暑い日にわざわざ屋上に来るやつはいない。

早速試してみようと起き上がり、電源ボタンを押そうとした瞬間、屋上のドアが開く音がした。

 

「マジかよ」

 

すぐに息を潜め、ゆっくりと下の様子を伺う。

するとそこには、盗撮犯と複数人の男子生徒が興奮した様子で会話を始めた。

 

「さすがセンパイ‼︎女子更衣室じゃなく水中にカメラを仕掛けるあたりがマニアックだぜ‼︎」

 

「バカめ。時代は水中なのさ‼︎」

 

「いや、違うね。いつの時代も、ラッキースケベこそが時代の頂点なのさ‼︎」

 

「っ、!誰だっ⁉︎」

 

やべっ、つい反応しちゃった。

まぁ、いいや。

とりあえず、ここから降りよう。

 

「お、お前はっ!さっきまで俺を追いかけてきた男じゃないかっ‼︎」

 

「やぁ、久しぶり。さっきはよくも巨漢を使って俺をぺしゃんこにしてくれたなぁ」

 

扇風機片手に苛立ちながらじりじりと近づく。

すると盗撮犯は、周りを確認してから逃げ場がない事がわかると交渉を持ちかけてくる。

 

「ま、待ってくれ‼︎ここにオレが集めた秘蔵のコレクションがある。お前のクラスにいる美少女、ララ・サタリン・デビルークと西連寺春菜の写真を無料でやろう。それでこの場はおさめてくれっ、頼む‼︎」

 

「…ほう、それだけか?」

 

「な、なら夕崎梨子の写真も譲る‼︎」

 

「いや、それはいらん」

 

「くっ…!じゃ、じゃあ、今度、お前が狙っている女子の写真を撮ってくる。それでいいだろう⁉︎お前も男なんだからこういうのに興味があるはずだ‼︎」

 

どうしてもこの場を乗り切りたい盗撮犯は必死そうだ。

だが、そんなことじゃあ俺の心は動かない。

 

「たしかに、俺も男だ。そういうのにも興味はある。人間の三代欲求の中に性欲は入っているしな」

 

「そっ、そうだろう⁉︎なら写真で「だが違う‼︎」っ、⁉︎」

 

盗撮犯の言葉を遮り、話を続ける。

 

「さっきも言ったが、ラッキースケベこそが頂点だ。お前みたいにその瞬間を待つのではなく、私生活の中でふとした瞬間に訪れるチラリズム。それが起きた時の幸福感。これこそが正義であり至高なのだ‼︎そしてなにより…」

 

「盗撮は犯罪だろ、バカが」

 

片手に持っていたハンディファンを強風にセットし、盗撮犯に向ける。

キュインキュインと何かを溜めている音が鳴りだす。

 

「おい、待て!何だ、そのゴツいドライヤーみたいなのは⁉︎それで何をするつもりだ⁉︎」

 

「ちょうど今、うちのクラスの女子達がプールで授業をしている。みっちり怒られてこい」

 

「待って、お願い!許してっ、もうやらないから‼︎ここにある写真を全部あげるからっ‼︎」

 

「ぶっ飛べ!!」

 

電源ボタンを押すと、竜巻のような爆風がハンディファンから放たれる。

 

「あーーーーっ」 「「「センパーーーーーイ」」」

 

盗撮犯はプールの方角に飛んでいき、そして徐々に見えなくなっていった。

いやはや、よかった。

ゲイルではなく、もはやトルネードだったけど。まぁ、よかった。

ここまで格好つけておいて、全然風量が弱かったら笑い者になるところだった。

いつの間にか取り巻きみたいな生徒達はいなくなってるけど。

しっかし、これはもう使えないな。ララには悪いけど、これは危険すぎる。

家で厳重に保管しておかないと。

手に持っている扇風機を見つめ、そんなことを思っていると、屋上に1枚だけ写真が落ちている事に気づいた。

裏面になっている写真を拾い上げ、写っているものを確認する。

そこには、仲睦まじい姿で廊下を歩いている3人の女子生徒が写っていた。

ララ・梨子・春菜の3人は、とても自然な笑顔をしており、写真からでも楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

 

「なんだよ、スゲー良い写真も撮れるんじゃん」

 

ワイシャツの胸ポケットに写真を入れて、そのまま教室に戻った。

 

 

◼️

 

 

その後、梨子の話によると。

プールの授業中、クラスの1人が防水カメラを見つけ大騒ぎに。

授業を中断して女子生徒がプールサイドに全員集まった頃、ちょうど盗撮犯と盗撮写真が空から降ってきたとのこと。

盗撮犯に正体は、野球部の弄光センパイという人らしい。

原作にそんなヤツいたっけ?と記憶の中を探したが、残念ながら該当者はいなかった。

まぁ、モブの1人なのだろう。

うちのクラスの女子にこってり絞られて、最終的に停学2週間となったみたいだ。

盗撮しといてたったの2週間かよ⁉︎とも思ったが、あの校長じゃそんなもんかとも思う。

そして最後に、3人で写っていた写真を梨子に渡すと、それを見たララは大層気に入ったらしい。

写真立てを買って、自分の部屋に飾り、嬉しそうに眺めている姿を梨子はよく見るんだってさ。

よかったね、弄光センパイ。

ララからの好感度だけは下がってないみたいだよ。

 

 

 

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