主人公の性別が違うんだが…   作:ふくきたる

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第3話

 

とある旅館の大広間に、彩南高校の1年生達は整列をして座っている。

 

「えー、今日から三日間の臨海学校‼︎みんな、自然と大いに触れあって楽しい思い出を作ってください‼︎」

 

話をしているのは校長。

先程の発言どおり、今日から臨海学校が始まる。

昨日までじりじりと日本に近づいていた大型の台風が急激に進路変更をして、中止になることなく無事に宿泊先の旅館まで到着していた。

今夜は恒例の肝だめし大会があるらしく、大広間は生徒達の声で一気に賑やかになる。

 

「なぁ、古織。ここの肝だめしのジンクスって、知ってるか?」

 

「ジンクス?」

 

既に校長の話が終わり、次に指導部の鳴岩という先生が話している最中だが、目の前に座っていた猿山がこちらを向き、ひそひそと話しだした。

 

「そう、ジンクス。この臨海学校の肝だめしで最後までたどり着けた勇気あるペアはな、なんと必ずその後、結ばれてカップルになるらしいぜ」

 

「へー。マジか、スゲーじゃん」

 

「…なんかお前、リアクション薄くね?絶対、信じてないだろ」

 

「いやいや、そんなことはないさ」

 

別に猿山の話を信じていないわけじゃあない。

ただ俺の脳内は今、原作にあった臨海学校の話を思い出せそうで思い出せないもどかしさが勝っていて、他のことにあまり意識が向いていない。

だから、リアクションが薄くなってしまったのだ。

うん、ダメだ。思い出せん。諦めて猿山の話を聞いてあげよう。

 

「まぁ、お前の気持ちもわかるぜ。俺も最初は嘘だと思ったからよ。でも、去年も一昨年もこれでカップルが誕生したって、センパイが言ってたんだよ。だから、この話はマジだぜ!」

 

その瞬間、猿山の思考が何となく読み取れたので先手を打つ。

 

「ほーん。それで、俺はお前に何をすりゃいいんだ?」

 

「へへっ。さっすが、古織。話が早くて助かるぜ」

 

猿山は不適な笑みを浮かべる。

 

「2年と3年のセンパイに聞いたんだが、この肝だめしのペアはくじ引きで決めるらしい。各クラスの男女がそれぞれくじを引いて同じ番号同士がペアになるっていう仕組みだ」

 

「なるほど、完全に理解した。俺が夕崎と同じ番号を引いたら、お前に渡せばいいんだな?」

 

俺の言葉を聞いた猿山の瞳がキラリと光る。

そして徐々に口角が上がっていき、ニンマリとした表情になった。

 

「完璧だ、古織!もちろん、タダでとは言わない。もし古織が引けた場合、明日の昼は俺が奢ろう。それでいいか?」

 

「もちろんだ、友よ。交渉が上手いな。しかし、今のままじゃ確率は低い。さらに根回しすることをおすすめする」

 

「あぁ、わかってる。俺はこの後、何人かにこの話を持ちかける。まずは1番近くにいたお前からさ」

 

「健闘を祈る、猿山」

 

「おうよ。古織もよろしく頼むぜ!」

 

最後にがっちり握手を交わし、猿山は嬉しそうに前を向いた。

ジンクス…………、ジンクスねぇ。

もし俺がララや西連寺のどちらかと同じペアになって、一緒にゴールしたらメインヒロインと付き合えることになるわけだが…まぁ、ありえないだろう。

まずララがリト以外の男と付き合う想像ができない。西連寺も同様に。

でもこの世界にリトさんはいない。

いや〜、マジでこれからどういう展開になっていくんだろうね。

メインヒロインの心を射止める男がこれから出てくるのか。

それともやっぱり梨子がリト枠で、百合ハーレムを創るのか。

楽しみで仕方がありませんねぇ。

ToLOVEるのifストーリーをこんな間近で観る事が出来るなんて、ホント転生させてくれた神様に感謝ですわ。ありがとうございます‼︎

 

それからすぐに教師陣の話は終わり、事前に決めていた班ごとの客室へ案内が始まった。

案内された部屋は和室。

畳特有のい草の香りが前世の実家を思い出させ、とても懐かしい気持ちになる。

ゆったりと寛ぐ時間が流れるが、いつの間にか風呂の時間に。

猿山達が「女子風呂、ノゾキに行くぞ!」と誘ってくれたが、それに断りを入れて客室に独り残る。

ここで突然だが、フリージング星人の話をしよう。

我らフリージング星人は、温かいものがあまり得意ではない。

地球に来てから温かい食べ物や飲み物を飲む練習をして、何とか対応できるようになったが、1つだけどうしても無理なものがある。

それは風呂だ。地球の風呂は熱すぎる。

一度だけ前世と同じぐらいの温度で入ろうとしたら、足先が大火傷したんじゃないかと思うぐらいの熱さを感じたのだ。

それ以降、俺は風呂で冷水やたまにぬるま湯を浴びて生活をしている。

つまり、温泉や旅館の大浴場は熱すぎて、とてもじゃないが俺には入れない。

凄い損した気分だが、こればっかりはしょうがない。

独り寂しく備え付けの小さな風呂で水風呂を作る。

風呂から上がったら、髪や身体をドライヤーの冷風で乾かす。

最後に浴衣に着替え、誰もいない畳の上で大の字に寝転び、皆んなの帰りをのんびりと待っていた。

 

 

◼️

 

 

綺麗な星空が見える夜の中、生徒達は旅館の前に集合していた。

 

「さて‼︎では今から、肝だめしのペアをくじ引きで決めまーす!」

 

何があったのかはわからないが、顔がボコボコになっている校長が元気よく肝だめし大会の進行を始める。

猿山の情報どおり、くじ引きは同じ番号同士がペアになる形式。

校長の前に長方形の机が用意され、教師陣がくじ引きの箱をそこに2つ置く。

各クラス、男女別で好きな順番に並び、番号が書いてあるくじをどんどん引いていく。

俺の順番になり、引いたくじの数字は13。

列から離れると、既にくじを引き終わったクラスメイト達が番号を確認し合っていた。

籾岡達に番号を聞かれた西連寺が「5番よ」と答えている声も聞こえてくる。

さて、猿山でも探すか。と思っていると、ちょうどその本人がこちらに向かって走ってきていた。

しかし、どうやら様子がおかしい。

目の前に到着した猿山にいきなり肩を掴まれる。

 

「たっ、大変だ!古織っ。あっ、あれっ!あれを見てくれっ!」

 

焦った表情で猿山が指差した方向に顔を向けると、そこには梨子がいた。

いたのだが…、

 

「……何…… ……だと……」

 

そこには、女子列の最後尾でララと談笑しながら並んでいる梨子の姿があったのだ。

瞬時に、とんでもない誤算が生じていた事に気づく。

 

「しまった…。彼女達が並ぶ順番を、俺達は読み間違えていたっ!」

 

このミスの原因は、先入観だ。

好奇心旺盛なララは、人生で初めてであろう肝だめしを楽しみにしているはず。

だからペア決めのくじも、いつも一緒にいる梨子や西連寺を引っ張って、真っ先に引きに行くものだと安易に考えてしまっていた。

 

「どうしよう、古織。これじゃあ、梨子ちゃんの番号がわからない。もしわかったとしても、くじを交換する前にペア同士がくっついちまうよ」

 

「くそっ、万事休すか…」

 

さすがにこれは予想外。

色々考えても施すべき手段が見当たらず、猿山が自力で運を引き寄せるしか方法はなかった。

すると、猿山の右手にくじがある事に気づく。

何となく嫌な予感が働いたので、くじの番号を確認させてもらう。

するとそこには、5という数字が書かれていた。

 

「…猿山、5番の相手は西連寺だ」

 

「なっ⁉︎マジかよっ⁉︎」

 

「あぁ、さっき籾岡達と話しているところをちょうど聞いた。西連寺がわざわざ嘘をつく必要もないだろうし、この情報は確実だと思う」

 

「…もうダメだ…おしまいだぁ…」

 

猿山は膝を着いて、四つん這いの状態になる。

絶望の表情と台詞も相まって、ベジータにしか見えない。

 

いやいや、そんなに落ち込む程の事でもないだろ。

 

とも思うが、それほど好きな女の子と一緒に肝だめしがしたい!という現れなのだろう。

気休めにしかならないが、最後の手段を猿山に提案する。

 

「猿山、最後の提案だ。お前の5番は西連寺確定だが、俺の13番はまだ相手が誰かわかっていない。確率はかなり低いが、まだこっちにはチャンスがある。どうする、交換するか?」

 

四つん這いで顔を下げている猿山だが、一度だけピクリと肩を震わせる。

土埃を払いながらゆっくりと立ち上がった猿山の表情は、まだ希望を捨てていない顔に変化していた。

 

「…古織は最近、梨子ちゃんと仲良いからな。なんか彼女と縁がありそうだ。だから、交換するぜ」

 

差し出していたくじを猿山は受け取り、5番のくじと交換する。

 

「あっ!でも、安心してくれ。これで梨子ちゃんとペアじゃなかったとしても、古織を恨んだりはしないからよ。色々手伝ってくれてサンキューな!古織」

 

「あいよ。もし仮にペアが夕崎だった場合、マジで明日の昼奢れよ?1番高いやつ」

 

「任せとけ……って、1番高いやつかよっ⁉︎お前って、ケッコー現金なヤツだったんだな⁉︎」

 

そこから猿山と笑いあい、他クラスを含めても最後になるくじを梨子が引くと、すぐにペアを発表する時間となった。

まず最初に、1-Aから順にペアが発表されるようだ。

うちのクラスで1番のくじを引いた男女が前に出て、旅館の従業員にスタート地点まで案内される。

すぐに5番が呼ばれ、俺と西連寺は提灯を1つ渡される。

女性の従業員に案内されている最中、よく知っている男の

「梨子ちゃんのペア、的目かいっ!!!!!!!」

という叫び声が後方から聞こえ、隣にいた西連寺がビックリしていた。

 

ごめん、猿山。

やっぱり俺は主人公じゃないから、運命的な引きの良さは持ってないみたいだ。

 

 

 

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