作:信頼できる語り手


オリジナルファンタジー/ホラー
タグ:R-15 残酷な描写 転生
 全部私だったら、どうする?

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私へ

 何かの衝撃で前世の記憶を思い出す。転生モノでは定番の展開だ。

 

 ある夏の日。私は階段から転げ落ちた衝撃で、自身が転生者である事を思い出した。

 

 とは言え、アニメでお馴染みの異世界転生ではない。私はこの世界で転生を繰り返している。

 

 ──どうやら、転生は時間や場所に縛られないようだ。

 

 私Aが死ぬ。私Bとして10年前に転生する。BはAと友人になり、Aの最期を看取った。そうした循環を1000億回以上積み重ねる事で、私という個人は『人類』を形成している。

 

 その事実に気付いた時から、私には人類の営み全てが滑稽に見えるようになった。

 

 私が私を褒めている。私が私を好いている。私が私を尊敬している。私が私を見下している。私が私を叱っている。私が私を虐待している。私が私を差別している。

 

 馬鹿は死んでも治らない、と私が言った。ならば、全人類がそうなのだろう。

 

 今の私にとって世界は黒歴史上映会だ。共感性羞恥なんて言葉があるが、自分の前世のやらかしを得意げに披露されるのは顔から火が出るほど恥ずかしい。

 

 ただ1つだけ救いがあるとすれば、人類社会は未だに存続している。自分で自分を滅ぼさない程度には、私は賢明だったらしい。

 

 転生者だと自覚した今では、人類共通の悪癖や愚かさにも納得がいく。それこそが、きっと私の『個性』なのだと思う。

 

 ああ、なんて窮屈な箱庭だ。私だけが空が雲に覆われている事を知ってしまった。

 

 次の転生後にも、私はこの記憶を思い出せるだろうか。それとも綺麗さっぱり忘れてしまうのだろうか。

 

 もしも。

 

 私以外の観測者がどこかにいたとしたら、この茶番劇を笑っているのだろうか。

 

 

 

「実は私、前世の記憶があるんですよ」

 

 誰かがそんな文面を送ってきた。

 

 私は『転生者である事を思い出した他の私』を探すために、釣り餌のようなオカルトサイトをいくつか運営している。

 

 前世などのワードに釣られて、このような話しかけられ方をする事も珍しくはない。

 

「どのような前世ですか?」

 

「えっと、数が多くて一概には言えないんですけど、印象の強いところで言うと……貴方です」

 

 私は立ち上がってPCの画面を凝視した。

 

「会ってお話しませんか、私?」

 

「ええ、勿論、喜んで」

 

 私は場所と時間を指定して、椅子に背を預ける。

 

 あの私が何を考えているのかは分からない。危険人物でない保証は全くないし、本当なら警戒すべきなのかもしれない。

 

 だが、そのリスクを侵してでも、息苦しさを共有したかったのだ。

 

 ──同じ曇天を見上げている、誰かと。




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