深海棲艦の夏の侵攻を食い止める作戦を成功させると、少し遅いけれど、僕達は夏の休暇をもらった。
大打撃を与えておいたから、敵さんも再侵攻はしばらくないだろうから、しばらくゆっくりさせてもらう事にしたのだ。
そんな訳で、僕達は鎮守府からそこそこの距離がある、南に突き出た岬のある町に遊びに来ている。
本当は嫁艦候補の榛名と二人っきりで来たかったけど、いろいろあって、結果、金剛型4姉妹と大淀が一緒になった。
嫁艦候補というのは、榛名の能力的には問題無いんだけど、僕がまぁ、意気地がなくて、榛名にケッコンを申し込めずにいるからという訳で…
僕は榛名の事を好きだけど、榛名は僕の事をどう思っているのかわからなくて…
今回の休暇で、僕は榛名に気持ちを伝えられたらと思っていた。
長いトンネルを抜けると、視界いっぱいに海が広がっていた。
みんな、海に隣接した鎮守府で暮らしているから海なんて見慣れているはずなのに、ずっと続く砂浜の向こうに広がる海は、いつも見ている景色とは違って、何か心を沸き立たせる。
見れば、そこここにビーチパラソルがたっていて、水着姿の男女が夏を楽しんでいる。
つい、車を停めて、降りたくなるけれど、僕達が向うのは岬の南端にあって、プライベートビーチまである軍の保養施設だから、途中で脱落しちゃうのは勿体ないから、我慢して、目的地まで進めた。
軍の保養施設と言っても、民間の海の家を借りていて、その周囲を関係者以外は立ち入り禁止にしてるだけだから、兵隊が立って見張りをしているとかではない。
ともあれ、僕達はその海の家にやってくると、さっそく水着に着替えて、海に出た。
色とりどりのカラフルな水着姿に着替えた彼女達は、そりゃあもう、いずれ菖蒲か杜若、美女しかいないから、どっちを見ても眼福でしかなかった。
これ、普通のビーチだったら、めちゃくちゃ他の男達の視線が集中して、ソッコーでナンパされる奴だよな。
そんな訳で、僕達はたっぷりと夏を楽しんだのだけれど、せっかくだからと、ゴムボートに乗ってみる事にした。
厳選な抽選の結果、金剛と比叡、霧島と大淀、僕と榛名という組み合わせになった。
僕は心の中でガッツポーズしたのは言うまでもない。
ゴムボートに乗ってみると、榛名は
「いつもの艤装をつけて海に浮かんでいるのとは違いますね。」
と言った。
そうなんだ。
艤装を付けて浮かべないから僕にはわからないけど。
沖にあるブイを回って戻って来るという競争みたいになったのだけれど、何故か僕のボートだけが、変な波に捕まったのか、どんどん皆から離れていく。
艦娘とはいえ、艤装を付けていないと普通の人と変わらないから、海に浮かぶ事はできないから、ボートを降りて云々なんて真似はできない。
気がつけば、どんどん、皆から離れてしまい、陸も見えなくなってしまった。
困ったなと思っていると、目前に島が見えてきた。
まるでその島に誘われているかのように、ボートはどんどんその島に近づいて行った。
とりあえず、島に降りてみよう。
僕と榛名はそう決めて、島の周りを回って見ると、ちょっとした砂浜があったから、そこにボートを寄せて、島に降りる事にした。
とりあえず、ボートを岸にあげておき、僕達は島に上陸した。
見た感じそれなりに大きな島だったけど、はたして人は住んでいるのかな?
僕達はこの島を探索する事にした。
砂浜を抜けると木々が茂っているけれど、そんなにジャングルという程でもなく、思ったより歩きやすいのは道らしき物があるからだろう。
「これって道ですよね?道があるという事は人がいるって事ですよね。」
榛名がそう言った。
「そうだよね、きっと、そうだよ。」
僕はそう言った。
人がいるなら、助けを求められるから、そこまで気に病まなくてもいいだろう。
僕達はちょっと気が軽くなった。
そうして歩いているうちに、道の曲がり角に洞窟が見えて、道はその洞窟に続いている。
「洞窟?」
という榛名の問いかけに
「行こう、道はそこしかない」
と僕はそう言った。
その洞窟に入るしか選択肢は無いのだ。
だが、入ってみると、その洞窟はそんなに長くなく、向こう側からの光が見えていたから、そんなに苦も無く歩く事ができた。
外から見た時は、木々で覆われていたから気が付かなかったけれど、これは洞窟じゃなかった。
これは、あきらかに人の手によって掘られ、壁を固められた、トンネルだった。
僕は後ろを振り返って榛名に笑いかけながら、
「これ、トンネルだ。
洞窟じゃない。人の手が入ってる。」
と言うと、榛名も嬉しそうに笑った。
そして、そのトンネルを出ると、そこは広場になっていて、岩壁にはさっきまでのトンネルと同じようにトンネルがあったが、そこは赤煉瓦で組み上げられていた。
その赤煉瓦のトンネルに入って、ちょっと進むと天井がなくなり、赤煉瓦で舗装された壁のある道になった。
ただ、ところどころに入口らしき物があったけれど、そこは鉄柵で固定されて入れない様になっていた。
道の壁は途中から、赤煉瓦からブロックに変わっていたが、苔が生えていて、緑色になっている。
あきらかに人の手が入っているにも関わらず、長期間放置されているようだった…
しばらく歩くと、小さな小屋があった。
誰かいるかもしれない。
僕達は走って、その小屋まで来たが、その小屋は鉄柵で囲まれている上に、朽ちかけていた。
電線らしき物が見えるから、電源室だったのかもしれない。
だが、あきらかに使われていないのがわかる。
僕達の期待は失望に変わりつつあった。
それでも、僕達は歩みを進めた。
道は緩やかな登りになっていた。
そして、島の頂上?らしき場所にたどり着くと、そこには展望台らしき建物があった。
だが、入口は大きなチェーンで頑丈に封鎖されており、入れなくなっていた。
僕達はお互いに顔を見合わせ、嘆息をついた。
おそらく、この島は昔、何らかの施設として使われていたのだろうが、もう、とっくの昔に廃棄されてしまって、今は誰もいない無人島なのだ。
失望は絶望へと変わり始めた。
それでも、僕達は道を歩いてみる。
しばらく、山道を歩いてみると、海沿いに円形に開けた場所があった。
その中央には何か赤茶けた塊のような物がある。
何だろうと思って近寄ってみると、
榛名は青い顔をして口元を押さえ、
「これ、砲台です。
破壊された砲台。」
と言った。
あぁ、それは破壊され、放置されて、すっかりサビた、かつて砲台だった物だ。
そうか、ここは要塞島だったんだ。
おそらく、この島は深海棲艦の攻撃で破壊され、修復不可能と判断されて、廃棄されたんだ。
ここは棄てられた島だったんだ。
つまり、この取り残された島には、誰もいない。
僕と榛名の二人きり。
禁じられた恋の島
ネタ元はきまぐれオレンジロードです。
そのまんま。
TVアニメ版が大好きなんだよ!
で、その廃棄された要塞島のネタ元は横須賀の猿島です。
正直、榛名視点で書くか迷いましたけど、榛名視点で書いちゃうとこれからの展開がね…