「艦娘を愛してはならない」
軍に入って、艦娘を指揮する事になった時に、僕はそう叩き込まれた。
戦争ではどんな事が起こるかわからないし、九死どころか、一世もない十死の作戦に艦娘を出撃させなくてはいけない時もある。
その時、艦娘に恋愛感情を持っていたら、そんな作戦を実行できないし、特に特定の艦娘に対して、恋愛感情を持っていたら、その特定の艦娘に対してのみ安全を考慮してしまって、結果、作戦を台無しにしてしまうかもしれないから。
「艦娘を人と思うな、女の姿をした兵器だと思え」
とも教えられた。
そして、艦娘はすぐさま犯せとも。
たっぷり犯し、情をかけ、情で操る。
女は情けさえかければ平気で死ぬ事もできるから。と。
だが、僕には出来なかった。
彼女達は兵器じゃない、泣きもすれば笑いもする、僕と同じ人だ。
だから、僕達は心を通じ合わせ、協力しあって、どんな困難な作戦だって乗り越えてきた。
だけど、やっぱり艦娘に対して、恋愛感情を持つのは止めようと思っていた。
恋愛感情を持ってしまうと、どうしても、差を作ってしまう。
死ぬような作戦なんてやらせるつもりはない。
だけど、戦場では何が起こるかわからない。
安全だと思っていたのに、予想外の危機にあった事もある。
だから、好意を抱いている相手を危険な場所に行かせたくない。
そう思うのは人として仕方ない事なのだ。
だから、僕は恋愛感情を艦娘に対して、もたないようにしていた。
だが、気がつけば、僕は彼女の姿を目で追っていた。
僕の艦隊で一番練度が高く、頼りになる艦娘、榛名の姿を。
「はい、榛名は大丈夫です」
榛名はどんな困難な作戦から帰ってきても、ガッツポーズをして、にっこり笑ってそう言った。
たとえ、大破して、大怪我をしていても、榛名はそう言って笑っていた。
榛名を危険にさらしたくない。
でも、彼女ほど頼れる存在もいなかった。
だから、僕は知らず知らずのうちに彼女に頼っていた。
榛名を危険な海域に出撃させ、ハラハラしながら無事を祈っていた。
そして、無事に帰ってくると、僕は安堵していた。
その繰り返しに、気がつけば、僕は彼女の事を好きになっていた。
榛名に恋をしていた。
艦娘は特定の練度となった時に、提督と新たな絆を結ぶ事ができる。
そうすると、その艦娘は新たな力を得られるのだという。
榛名はすでにその練度となっている。
榛名は僕と新しい絆を結びたいと思っているのだろうか…
僕にはどうしたらいいのか決めかねている。
そもそも、仮に僕が新しい絆を結ぶ事を望んだとしても、榛名はそれを受け入れてくれるのだろうか?
何より、艦娘との恋は許されざる禁忌なのだ。
僕はどうしたらいいかわからずにいた。