第一話 王に願望を持つ青年との邂逅
第一節
俺の名は、イアソン。いずれ王になることが約束された男でありイオルコスの前王であるアイソンの息子だ。
俺の人生は、正直に言って波乱万丈だった。
小さいころに、父が叔父によって王座を奪われるとケンタウロスでも穏健で人に寄り添い、教えを説いているケイローン先生の元に預けられた。
前者だけでも壮絶と言っても過言ではないが。問題は後者の方だ。
別に、ケイローン先生が嫌いというわけではない。
ただ、先生は厳しすぎるのだ。
例えば、与えられた課題を期日よりも少しでも遅れた際には反省文を10枚を一日で書かされたし、魔物の洞窟に突っ込まれたりした。
でもおかげで魔物の威嚇など大したことがないと思えるようにもなったし、弱いやつなら殺せるようにもなった。
が、それだけだ。あいつらに比べれば俺は凡人だ。ポルクスにカストロ、アスクレピウス。あいつらは人間離れしてる。
それだけでも、ありがたく思っているが、もうちょっと優しくしてくれても良いんじゃないかな!
まぁ、先生は善意でやってるから反論しようとも意味がないわけで。
流石英雄になる器は違うね。でも、そんな俺でも王になることは出来るはずだ!
そんなことを考え、叔父であるペリアス王の元を尋ねて王座を譲ってくれと願い出れば『コルキスの宝である
ちっ、つまり無理難題で王座を明け渡したくないってことだろう。いいぜ、やってやるよ。数年後に、その仏頂面が崩れるのを楽しみにしておくよ。
『王とは、民を扇動し、尊敬を受け、民達を食べ物も水も何もかもを充実させる者のことである』
そんな理想を抱いて、ようやくここまで来た。
嘗て、共に学舎にいたカストロ・ポルクス、それにアスクレピオスを始めとして各地の英雄どもが俺の元に集っている。
その中でも格別なのは、ヘラクレスだろう。
英雄ヘラクレス。神ゼウスと王女アルクメネとの子であり、あの嫉妬深い女神に目をつけられ幾多の偉業を成し遂げた英雄。
このギリシャの地にて、かの英雄の名を知らない人間などいないだろう。
その中でもヒュドラ退治はその最たるものだろう。
まぁ、そんな感じで旅に出る準備は整って行った。
それで、出航記念に酒場で一杯船員たちと飲むことになった。
勿論、男連中は大多数が騒ぎ、ヘラクレスとヒュラスの奴は離れたテーブルで仲睦まじく談笑に浸っていた。
女連中はどうしたかだって?
ポルクスは、お兄様にベッタリで船で仲良くやって。アタランテは、女神アルテミスに祈りを捧げてたよ。
まぁ、そんなこんなで酒も入り、俺はいつものようにテーブルの上に立って理想を語る。
そんな俺をからかい混じりで周囲は弄り嘲った。
だが、今日はそんな中に珍しく関心深く俺を眺める奴がいた。
髪は銀。瞳は、海のような青に黒縁の眼鏡を掛け。ギリシャの世とは逸脱した服を纏った10代程の青年だった。
青年に、飲み相手は居らず。年季が入ったジョッキで酒をつまみながら俺を眺めていると、こちらが気付いたことに気づいたのか残りの酒を飲み干して酒場から出ようとした。
「おい、君。なんで逃げるんだこの未来の王から」
やや大げさに周囲の者たちが気を引くようにして声を上げる。
思惑通り、周囲の目線が酒場の出入り口を跨ごうとしている青年に向けられた。
その瞬間、青年は動くのを止める。急に止まったせいか、服の留め具としてのチェーンが擦れる音が響いた。
青年は、深くため息を付くと俺のいる席に近づく。
俺は、テーブルから降り、席に座り野郎を退かして手を空いた席に向けた。
「一体何のつもりだ、アルゴー船の船長たるイアソン君」
青年は座り込むとそのようなことを掛けた。
しかし、君か。成程、良い度胸だな!!
「私の答弁に熱い目線を向けてくれたからね。つい、声をかけてしまったのだよ」
ハハハと、笑いながら青年を見る。
青年は、つまらなさそうに近くにあったポテトを摘まんでいた。
「おい、聞いているのか!? せっかくこの私が君に声をかけてやったというのに!!!」
ため息を吐きながら、ポテトを咥える。
「その取り繕いを辞めさえすれば、少しくらい話の席についてもいい」
ふん、まぁ気に障るが良いだろう。
「お前、なんで俺から逃げたんだ」
「ただ、面倒ごとは避けたかった。それだけだよ」
「へぇ、じゃあなんで俺のことをあんなに眺めていたんだ?」
「君の語る理想は、理想だ。理想のままで終わるだろう。なぜなら君のその理想はオリュンポスの神々からすれば数人は面白がるが最終的には否定するものだろう」
「ふん、そんなことはお前のような小僧に言われなくてわかっているさ!!!」
そう、そんなことは分かっている。
奴らは基本的に人間を好んでいるが、その性質は観客だ。
俺たちで喜劇や悲劇を作り上げて、それを酒のつまみにして眺め、愉悦に浸っている。
そんな連中が、ただ幸せに人々が暮らす光景で満足するわけが無い。
「だが、君は周囲の者に嘲られようとその理想を聞き往々と語っていた。以前からそうしていたんだろう」
彼は問い掛ける。まるで、人の子を試すロクでもない神々のように。
「それがなんだ。お前も俺のことを笑っていたのか」
「いや、私は君のその理想を笑わない。理想だって、人生の最後まで貫き通せばそれなりのものにはなるというのが持論でね」
青年の手に取られたポテトは、一瞬の内にして口の中へと消え去り、その手は一向に止まる気配を感じなかった。
「そんなことを言われたのは始めてだ」
基本的に馬鹿にされてきた。仲間にも友人にも馴染みの奴にも。
ただ、先生だけが私の理想を黙って聞き、『それは苦しい選択ですよ』と呟いていた。
気まぐれだったが、もしかしたら俺は大切な出会いを得たのかもしれない。
「お前、名は?」
呟くように囁くようにその言葉を告げた。
「アレイスター。辺境からやって来たただの魔術師だよ」
肘をテーブルにつきながら、手を軽く振るう。
「へぇ、アレイスターか。じゃあ、アレイスター。お前、俺の船に乗らないか!? 俺の武勇を見せてやるよ」
その言葉に、ポテトだけに目線が入っていたアレイスターがようやく俺の顔を見た。
「くくく、武勇を見せる代わりに乗れか。いいね、悪くない。存外君を好ましく思い始めて来たよ。では、よろしく頼むよ船長?」
整った顔が崩れるほどのニヤケ面をし、ニタニタと微笑かけながら手を差し出した。
「ああ、大船に乗ったつもりで着いてこい!!」
差し出した手を勢い良く掴み取る。
あの時の俺は分かっていなかった。一時の気分にて誘った者の正体がどのような者なのかを。今後起こる波瀾万丈の日々を。
第二節
そんなわけでアレイスターを船に連れ込んだ俺は、決起集会を行うことにした。
甲板に集まったのは、船員の大半。残りは部屋で女と盛り疲れて寝ているバカどもだ。
全く、記念すべき船出にみっともないな。いや、アイツらの場合それが正しいのだろうが。
そんなことを頭の片隅に置きながら、俺は胸を張り宣誓を遂げる。
「これから始まるのは伝説だ。この旅はきっと後世に話し継がれて行くだろう。であれば、我たちが行うのはなんだ! そう、後世が目を見開いて驚くような偉業を打ち立てることだ!!さぁ、その前日譚として宴を始めようではないか!!!!」
船首にて俺は手を見せつけながら傲岸不遜に叫ぶ。
「うぉ!!!!」
船員どもは、俺の語りに感化して声を上げる。
そうして船を出す。
コルキスの金羊の皮を求めて漕ぎ出す。
これは俺が王を目指す物語だ。
「イアソン。魔術で食糧庫のものは腐らないようにしておいたよ」
夜も更け、夜風が厳しくなってくる刻限。
甲板にて再度宴会を行っていると船首に立ち尽くす俺の元にアレイスターが現れた。
「おお、流石は俺が見抜いた男だ。そうでなくてはな!!!」
しかし、魔術でそんなことができるなんてそんな魔術初めて耳にしたな。
先生なら知ってるのかもしれないが。
「と言うか、何故そんなにポテトを食べまくっているんだ。軽くイモ十日分ぐらいは食べてるようだけど」
ポテトを頬張っているアレイスターは、それらを大きく呑み込んだ。
全く、どこに行っているんだ?
「私の生まれた地は、絶望的に食文化が廃れていてね。そんな中でも数少なく美味しい食べ物はポテトぐらいだったんだよ」
「なんだその土地。イカれているのか?」
ポテトだけ! 貧困な国であっても一部の王族や権力者が豪勢を尽くしている。それなのに食文化が廃れているというのは理解が及ばない。
「私もそう思う。味より効率を取るような仕事命の連中の末裔だからね。まぁ、私の家は比較的まともな分類だったね。それでも、一か百だったけどね」
うまさより効率?
それはまるで馬車馬だ。一切の無駄をも搾り出し、おおよそ人と呼べる生活を送っていない馬車馬だ。
いや、馬車馬の方がマシだろう。
「ちゃんとしたご飯を食べた時には、涙が出たものだよ」
しみじみと感傷深く悦に浸っていた。
やはり可笑しい。どこか俺たちとは違う。
「イアソン、そこの少年にちょっかいを出すのは止めろ」
後方の甲板近くから耳の痛い声が聞こえてきた。
「おい! どこがちょっかいだ、ちょっかい! お前の目は節穴か!!!」
振り返るとそこには、金に翡翠色が混じった髪を持つ女が帆の近くにて縄に手を掛けていた。
女は、目を細め鋭い眼差しで俺たち、いや俺を見つめていた。
「私は迷惑を被ったこともあったが今は別に嫌悪を感じていないから問題はないよ、お嬢さん」
ぉ、お嬢さんだと!
あいつはそんな女じゃ。
「む、お嬢さんとは、子供が言ったものだな」
アタランテの奴も自分よりも幼いアレイスターにお嬢さんと言われたのが参ったのか。苦笑を交えながら軽く返答していた。
「ふふ、お嬢さん。私は君よりも年上だよ」
「何!?」
何だって!?
「ははは、良い反応だ! よく言われるよ」
「嘘を言え!!どう見たって10代中盤であろうが!?」
その言葉にアレイスターは気恥ずかしいそうに。頭をポリポリと掻きながら言葉を紡いでいった。
「いやぁ、魔術を酷使する一環でこのような身体になってしまってね。最も老化が著しくなってしまってるだけで、数百年もすれば老けて老衰して死するさ」
その姿は、幾多の年月を経た老人のようにであり。達観していた。
見た目通りの10代の男は、そんなことは言わない。
いや、そもそも死のことなんて大して考えてすらない。
中には戦闘狂もいる。だが、それでもそんな連中に比べては死を受け入れすぎている。
それらが俺たちに証明させていった。
「なるほど、魔術師であったか。それは済まない、年上の者に軽口を叩いてしまった。いや、気にしないでくれ純潔の狩人アタランテ。君に謝られるとあの恋愛頭がうるさくなる」
顔を上げ、夜空に一際輝いている月を見上げてながらそのようなことを呟く。
「?」
そのような行動を行うアレイスターを不思議がりながらアタランテは言動の意味について考えていた。
「いや、気にしないでくれ」
ポテトを気分転換に摘まんで行く。一瞬にして周囲のポテトは膨大な胃袋に消え去っていく。
「よく、身体にその量が入るものだな」
アタランテの奴は、アレイスターに近づきその様子を覗き見る。
「っ? ああ、私の身体は基本的に消費が激しくてね。食べておかないと一日寝込む羽目になってしまうんだよね」
「それはまた難儀なものだな」
「まぁ、前までは違ったんだけどね。もうあれは緊急事態以外使わないと決めたからね」
「さてと、アタランテ。これから多分数年ぐらい? の間よろしく頼むよ」
ズボンから布を取り出し、口元を拭うと手を差し出した。
それに、アタランテも手を出して繋いだ。
「ああ。ところで、汝の仕事は何なのだ? 魔術師ということだが」
ふと、アタランテがそんなことを口走った。
「私? 私の仕事場は厨房だよ? 何せ調理は科学だからね。私の専門分野の一つだからね」
「魔術師が料理? 聞いたことがないな」
「まぁ、そう言う反応になるよね」
「私は、魔術師でも科学者でもあるから。そう言うと錬金術も齧っているが」
「科学? 錬金術?」
「ああ、科学というのは君たちの神の根源でもあるものでね。錬金術というのは極東の技術でね」
手の平を合わせると、その間に光が現れ、稲妻が走った。
開くとそこには、黄金のような輝きを放つ未知の物で出来たナイフが現れた。
「大気の物質の原子構造を弄って窒化チタンを作り出した。君にあげるよ、一応木であれば切れる程度には仕上げたから非常に使うといいよ」
「ふむ、では頂こうか」
それを受け取ると、懐に仕舞い込み、その場を離れた。
「お前、ああ言うのが好みなのか!?」
俺は聞きたかったことをすぐさま聞き出した。
「いやいや、あれは気を掛けてくれたこととこれから世話を掛かるかもしれないことに対してのお礼だよ」
手を振り、首を軽く左右に振りながら否定した。
「なーんだ。今後お前のことを揺さぶってやろうと思ったのにつまらないの」
「そもそも、私の好みはお淑やかで本を静寂の中で読み耽っているような女性だ」
「そんな女いる訳ないだろ」
この地にいるのは基本ヤンデレ、メンヘラ、ヒステリックな奴らだ。
そんな中にその条件が合う者がいるものか!?
「やっぱりそう思う? まぁ、理想は理想。そもそも、私のようなものにそのようなものは身が重すぎる」
またもや、分不相応な姿を見せつけた。
「さて、明日からはバシバシと仕事に励んでくれよアレイスター」
「分かっているさ。この船の連中に飯なんて作らせたら一瞬で壊血病になってリタイアすることになるぞ」
「壊血病? 何だそれは?」
「ビタミンC、主に果実に含まれている成分のことでね。それが体内に全く摂取されないと発症する病気で、君たち船乗りに果実を喰えというものがいるのはそう言う理由だよ」
宙にポテトで何か書くような素振りをしながらそのように語った。
「へぇ、そんな理由だったのか」
「まぁ、そんなことになればアスクレピオスの逆鱗に触れることになるがね」
おお、そりゃ怖い。あいつに関わると碌なことにならなくなる。
「さて、私は厨房に戻ることにするよ。お休みイアソン君」
俺に背を向け、手を振りながら船内の厨房へと歩みを進めて行った。
第三節
ノブに手を掛け、厨房に入る。
厨房に身を入れると、新しい木の良い香りが鼻腔を刺激し、精神を落ち着かせる。
厨房は、至って普通の厨房で上げるとするならば船に対して大きすぎることと奥の方に一つの扉があることだろう。
奥の扉は周囲の木と違い、夜のような愚か者を見つめる深淵のような引き込まれる漆黒に満ちた物であった。
「さて、っと」
扉に手を掛け、奥へ行こうとすると動きを止める。
少しため息を吐きながら後方へと振り返る。
そこには、一人の女性。いや、機械仕掛けの女神が降臨していた。
『なんの用だ、原初の神。なぜこの地へ踏み入り、この船に席を置いた』
女神は、私に憎悪を向けながら、言葉を吐き捨てる。
「私が居ては都合が悪いか、、、ヘラ」
『黙れ。我が夫と交友を結んでいるからと減らず口を』
人間より模倣した感情というパラメータを自身の元として。偽を正にして私の眼前に立っている。
素晴らしいものだな。
「そう感じるのは、君が腹にあくどいものを抱えているからだろう」
「そんなにアルケイデスに執着しているのか? 全く持って愚かだね」
蔑みながら、道化のように戯言を口にする。
女神の周囲の空気は、重圧を帯びていく。
『その減らずを縫え。二度と話すな』
「ふはは、良いか。君がたとえ彼の浮気に憤怒の意を示すのは正しい。だが、生まれた子にそれを押し付けるな。それはお門違いというものだ」
素晴らしいがこれとそれとでは話が違う。
「いいか、怒りは当の本人に共に与えろ。二度と生まれた子にあのような事をさせるな。違えば、貴様を本当の意味で殺すことにするぞ」
私は、気配の一端を解放する。
船は、荒波に揉まれたように激しく揺れを見せ。外には雷が海上に降り注いでいた。
『良いだろう。貴様をその状態にするのは得策ではない』
その言葉と共に、環境は平常を取り戻した。
「よろしい、では彼が浮気した際捕まえるのに協力しよう。代わりに君はゼウスの子に手出ししない。これでwinwinだ」
『本当か! それは頼もしい! それならば違える理由がない!』
先程とは、打って変わって乙女(笑)の声色で話し始める。
怒りも一瞬にして、消え去ったようだ。
(ゼウス、これも良い機会にだよ)
そんなことを考えながら目の前の女神をどうするか思案を重ねる。
『違えたならば、分かっているな』
途端、その言葉に答えるかのように女神の眼前には一つの羊皮紙が現れた。
『本気のようだな』
再び威厳に満ちた声に戻る。
「サインは済んでいる。君が記名すれば契約は受理される」
女神は、浮かんでいる紙を大雑把に取ると顔を近づける。
羊皮紙には、このようなことが書き綴られていた。
──────────────────────
対象 カイザ・ウォーカー
ヘラ
各条件の成就を前提とし、制約は戒律となりて、例外なく対象を縛るものなり。
制約
旧支配者、「」の代行者、原初の神たるカイザ・ウォーカーは、星間戦闘用殲滅型機動要塞たるゼウスの不義行為に対するヘラ及びそれに属する者が処罰を与える際、ゼウスが処罰から逃走した場合にのみ探索に全力を尽くし。神々の女王たるヘラは、ゼウスの不義行為によって生まれし子に私情にて呪詛及び用いる力を行使することを禁ず。
また、いずれかが制約を違えたならば。違えた者の力を封印し。力の解放は両者の同意を持って行われる。
署名
カイザ、ウォーカー
──────────────────────
それは、旧支配者としての力にて作られた契約。
名を。
神々同士により結ばれる永久契約であり、遵守を遂げなければ力を封印という罰が与えられる。
それは神にとっては、自身の高位性を失うことでありただの人間に堕ちることである。
この契約は双方にとってもメリットとデメリットが大きいものであり。ヘラはペンを紙に着けながら渋んだ。
しかし、記入の際は滑らかに記していた。
「契約は成立した。これより制約に遵守しよう」
紙は天高く舞い上がると、花弁のように散って行った。
『クハハハ! まさか貴様がこのような契約を差し出してくるとはな。さて、ではここにいる必要はない。去るとしよう』
女神は、光を纏いながらこの場から消え去った。
「はぁ、、、彼女と敵対するよりかはましだな」
窓辺から夜空を眺める。宙には、星々が輝いている。
重苦しい空気から打って変わり、軽快な雰囲気にへと移り変わる。
「さて、拝見しようか」
天を見上げ、腕を広げて高らかに宣言する。
「君がマキナのために見込んだ英雄が幾多も乗っているこの船で」
「私は、彼が王になる姿を見てみたいんだよ。理想家でなんか私が終わらせないさ」
「それに彼は気が付いていないがこの船の中で一番英雄と言って遜色ないのは彼なんだよ」
「戦いだけで英雄になる?それも悪くは無い。だが、真なる英雄と言うものは蔑まされようが、疎まれようが、理想を突き通す」
「そのようなものなんだよ」
「は、ハハ。ぁっ、ハハハハ!!!!!」
そんな高笑いが船に響き渡った。
さぁ、これから始まるのは一人の王を目指す青年を英雄視する一人の愚者の物語。
とある大時計の針は、その動きを開始する。
司書レーアちゃんによる解説コーナー
「どうも皆様、ごきげんよう。コーナーの主であるレーア・ウォーカーです」
「毎度恒例、長期間お会いできなかったことをお詫び申し上げます。これもすべて作者のせいなのです」
「本当に申し訳ありませんでした。作者曰く、『春どこ行った?花粉だけ来られても困るんだよ!?ただでさえ私ハウスダスト持ちなのにさ。鼻水が垂れてそれどころじゃないよ、、、』らしいです」
「それは嘘ではなくて、加湿器でもどうにかなっていません」
「最近では、風呂場にスマホを持っていき作業を行っています」
「そんなことはさておき、このコーナーの意義を果たすことにしましょうか」
「さて、今回解説することは錬金術についてでしょうかね」
「マスターが使用するのは、皆様ご存知の鋼の錬金術師の錬金術と錬丹術を複合させ作り上げたものです」
「勿論、等価交換の原則はマスターであっても逃れることは出来ません。今話で錬成した窒化チタンは空気中に漂う原子たちの原子構造を弄り、凝縮させ作り上げたもので。その際のエネルギーは生命力を消費しているのです」
「しかし、この方法は人間では行使できない。しかし、人間という生命体にそのような衝撃を耐えることは出来ません。だって本来人間に存在しない回路をを陣として強制的に作成する過程を通すなんて人間が耐えきれるわけないでしょう」
「魔術師たちにだって耐えられないでしょう。血管とホースとでも言いましょうか。魔術回路と錬金術によって作成する回路とでは管は近似していますがその中に流れるものは違う。生命力といえども格別。水と血液ほどの差」
「それに、もしも耐えられたのならその時点でそのものは人世から逸脱してしまい。もはや人間とは言えませんから」
「まぁ、術式を弄り。本来の外からエネルギーを供給する仕組みに変更すれば良いのですがその場合は陣を別に用意する必要が発生したりなどで型月世界の錬金術の方が楽という結論に片付いてしまうのです」
「まぁ、魔術よりも容易に。一代のみで真理にたどり着くことができる。その一手では優れていますがね」
「でも皆さん。錬金術は魔術に比べて楽なので、やり始めるならば錬金術のほうがいいですよ!」
「魔術回路を作らずとも先に述べた地脈などからエネルギーを確保すればいいのですから」
「では、ここらでお開きにしましょうか。久しぶりのコーナー楽しかったですよ」
「皆さん。また次回にてお会いしましょうか。では、御機嫌よう」