第一節
あれから、十数年か経ちウルクはそれなりに平和にはなっていた。
食料供給もある程度解決し、餓死者も減り、浮浪者にも役割を与えて誰もが役割も持つ国へとなった。
そのような政策が上手く行き、最早ウルクは、私がかつて過ごした21世紀の国々にも劣らぬ福利厚生が整備された国へと成って行った。
流石に、平均寿命は医療技術が発達していないためにそれなりにはなってしまっているが隣国に比べれば大差である。
勿論のこと、私が医療技術を教えることは無かったよ。
えっ、何。お前、科学者じゃ無かったのかだって?
私は、科学者でもあるがどちらかと言えば発明家の方に近い部類でね。学生時代には、医療関係にも携わっていたこともあって、医学書も多数頭に詰め込んでいたんだよ。
ほら、私には完全記憶能力って言うどこぞの銀髪シスターでアイデンティティが私と被りまくりのインなんとかさんっていう人と同系統の能力を所持していたわけで、知識系には万能だったんだよ。一冊でまぁ、大体一時間もしなかったからね。
さてさて、軌道修正してウルクについて話し直そう。
しかし、それでもある程度は平和のはずのウルクには暗い空気が漂っていた。かつてのウルクとは見違えて活気が失せ、それを暗示するかのように常に暗雲が集まり、人々の顔も暗くなってしまっていた。
その原因となっているのは只今現在、私の執務室に勝手に王座を持ち込んで座している『この世全ての財は俺の物』などと今すぐにでもほざきそうな世界最古のジャイアニストである英雄王ギルガメッシュであった。
「何をジロジロと見ている、カイザ。我に何か用か──」
ギルは、私の視線に気が付いたのか目を細めて、私に少し睨みをきかせながらギルはそう言い放ってきた。
「少し考えごとをしていたんだよ、別に用はないよ」と私は軽く言葉を返した。
本当に、なんで毎日この部屋に来るんだろう。
分かっていたことではあったが、それでも信じられないことであった。あの小柄で比較的穏やかなギルがこんな暴君になってしまうのは。
最近では、初夜権などと言うものを作り町の美女と無理やり夜を楽しんだりと。もう、私一人では暴走を止められなくなってきた。
はぁ、ただでさえ書類仕事が多いって言うのに。ギルは全然仕事はしないしさ、基本的に休みなんてない。
唯一の娯楽といえば、アニメを脳内再生している程度のことだ。いっその事、いやそれはやめておこう──
はぁ、もう隠居したい。アルカディアに戻って趣味に浸りたい。しかし、隠居なんてしたらこの国は終わってしまうし。エルキドゥ、いや彼が居たら場合によってはもっと酷くなる。このままだと私、過労死するかもな。
とほほ────
などと精神的にも疲れ果て、机に身体を突っ伏していて精神を休めているとギルが私に話しかけてきた。
「そういえば知っているか、カイザ?」
「うん? 何が」
私は、伏すのをやめて上体を背もたれに身を任せて視線を正面にいるギルに合わせ直した。
ギルは、蔵から取り出していた杯を軽く回しながら口を開き始めた。
「最近になって、我を恐れてかアヌども神々が何かをしているらしい」
「へぇ、あのアヌがね」
私は少し驚いた。
何故ならばあのアヌの名が出て来たからだ。
主神アヌ、メソポタミア神話における最高神でありあのイシュタルの父でもある神。このウルクの土地神の1柱でもある神で、神の議会においては議長を務めてかなり厳格な性格であるが、娘であるイシュタルに対してはかなり甘くギルガメッシュに結婚を断られたことに腹を立てたやつがグガランナを要求して来た際にはグガランナを渡したという暴挙をしたという。
まぁ、この通り娘に対しては甘いが他のことに対しては厳しいやつなのだ。そのアヌが動くとなれば今のギルは相当な脅威になり得ているのだろう。
「何かしているって、一体何をしようと言うのかな? あの神共は」
「どうやら、我を処分しようと言う算段らしい。奴らは数年前に泥の人形を作り出して世話をシャムハトに任せていたらしい。泥の人形とやらは出来たばかりの時はまるで獣ようなものであったらしいからな」
「奴らは我のことを全くもって理解していないらしいな」と呆れながらギルはそう呟いた。
しかし、泥の人形? ああ、エルキドゥのことか。そうか、そうか! 、そうか!! 、そうか!!! もうとっくにそんな時期になったのか!!!!!
あれ、ってことは私はそのレベルでウルクに働き詰めている──
いや、蓋を閉じよう。思い返してはいけない。
「ギルは、その人形とやらが敵対して来たらどうするんだい?」
私は、ただの純粋な疑問を口にした。
「何を当たり前なことを。敵対するのであれば処理するだけだ。それに例外はない」
ギルは、私の問いに迷うなく即決した。それだけは、彼の変わらないものなのだろう。
「ふぅん、そっか」
ギルとの会話は、私のそのあっけない言葉で締め括られた。
その後も、ギルは相変わらず王座から私を観察しているだけで、とくに何もして来なかった。
第二章
さらに月日が経ち、私がいつも通りギルの代わりに仕事を片付けていると、祭司長が慌てて息を切らしながら持久走終わりの学生の如く疲れ果てながら私の元を訪れてきた。
何事かと思い理由を尋ねてみると、『緑髪の青年がギルガメッシュ王の儀の場に近づいている』と言う報告を切れ切れの言葉で受けた。
祭司長には、以前に天の鎖がギルを戒めに来ることになると告げていたため、その青年が天の鎖だと察しがついたのだろう。
私は一先ず慌てている祭司長を落ち着かせ、避難を呼びかけるように指示した。指示を受けた祭司長は、身体に鞭を打ちながら避難を呼びかけるために走り出した。
あの二人が戦うと途轍もなく被害が出ることになるのは自明の理だろう。ともあれ、二人の戦いに干渉はしないことにしよう。あまり歴史に干渉しすぎれば、アラヤが出張って掃除屋を差し向けてくるかもしれないしな。まぁ、現代と比べてこの神代では力など対したことなどなく、ガイアの方が圧倒的なのだ。あれがそれなりの抑止力として働き始めるのは神代が終わった人代の頃だろうな。
そんなことを考えながら、祭司長が出ていったのを見届け続けるとすれ違いで兵士長が鎧の腰れる音と供に私の元に訪れてきた。
兵士長は、先程訪れてきた祭司長と異なり常日頃から身体を鍛えているからか息は一定で、比較的に落ち着いていた。
兵士長が報告してきたことをまとめると、すでにギルが抗戦しており周囲の建物や近隣住民にも被害が出てしまっているとのことであった。私はその報告を聞くとこめかみを少し押さえた後に、すぐさまギルの元に向かった。
さて、あのクソガキにお灸を据えてやろうか────
第三章
報告の場所に着くと、そこは残骸だらけであった。
彼方此方に、建物の残骸と思えし粘土の塊が散乱し、所々赤いシミが付いていた。量から推測するに、近くにいた民たちが逃げそびれ残骸が掠り、その際に付着してしまったのだろう。その証拠に少し離れたところに、避難した民たちが身体を布で押さえていた。
彼らの目線は、私を超えた遠くに位置していた。その先には、エルキドゥとギルがおり、砂埃と火花、輝かしい閃光を撒き散らしながら戦い合っていた。
「来たか、カイザ。わざわざ来て悪いが、我は此奴の相手をしている。手出しはするなよ」
ギルは、エルキドゥの鎖攻撃を躱し弾きながらそう言ってきた。
「戦闘中に、会話とは相当な余裕があるみたいだねウルクの王」
エルキドゥは、その隙を狙い右腕を剣に変化させ畳み込んだがかすり傷を与えただけで致命傷には至らなかった。
ギルは、蔵から幾多の武具を射出し腹部を狙ったが、間一髪のところで回避されてしまい、武具たちは此方に飛んできた。軌道上、民たちに被害が出るため、地を強く踏み込み上空に飛び上がり、武具たちを蹴りエルキドゥのもとへ向かわせた。
がっ、しかし、エルキドゥが大地を操り土壁を形成して防ぎ切ったことでその行動は、無駄になった。
土壁に刺さった武具たちは、ギルの宝具によって光の粒子を撒き散らしながらその場から消えていった。
ギルは何か勘違いをしている。私は決してギルを助けにきたのでもなく、エルキドゥを助けに来たのでもない。
「ギル、戦うのであればもう少し離れてくれないかな。被害が出ているんだ」
「であれば、貴様が対処すると良いわ。民たちが傷ついたのであれば、薬でもくれてやれ」
「カイザ、貴様もしや仕事が嫌でここへ来たのか。ふははははははぁ! いやわかるぞ、あのようなこと誰であっても嫌悪するの当然の通りというものだ」
その発言を聞いて、私の中の何かが切れた。切れてはいけないものが切れてしまった。
地獄の釜の蓋が開き、地獄が溢れ出すように。
「ギル、私はね。本来ならそんな仕事はするはずがないんだよ。それなのに何故私がやっていると思う?」
「ふふ、仕事が嫌? そんな当たり前じゃないか! こちとら、ほぼ休み無しで年中働いているんだよ!」
私の様子を見てギルとエルキドゥは戦闘を止めた。
「おい、カイザ。貴様何かおかしいぞ、少し休んだらどうだ」
ギルガメッシュ君は、なぜか突然焦ったようにしながら声を掛けてきた。
「ギルガメッシュの言う通り、休んだ方がいいんじゃないかい?」
ギルガメッシュ君だけではなく、エルキドゥ君までもが声を掛けてきた。
「っ休んで方がいい!? 何度もそうしようとしたさ、だけどね私が休んだりすればこの国終わるんだよ!」
拳を空に叩きつける。其の最中、手袋に刻まれていた紋章は赤々と発光し始め、速さを増した。
加速した拳よって空には、ガラスのように罅が入り込んでいった。それは、徐々に進行を広げていき、瞬く間に砕け散っていった。また、手袋の光も収まっていた。
砕け散った破片は、地面を刺すかのように落下していき、地面に触れた途端それは雪結晶のように消えてなくなっていった。
しまった、怒りのあまり術式が解けてしまったか。初めて目にする現象だな。
砕いた空を覗いてみるとそこには何もなかった。ただの深淵のような暗闇が存在しているだけであり、何もなかった。
その様子に彼らは、驚愕したように目を見開いていた。
ギルは、勝手に遊びに出て仕事は放置。その分の仕事は、私が全部片づけないといけなくなる。
「本当に可笑しいなぁ、こんなの何処ぞの王様が働けばしなくて済むんだよ!?」
「わ、分かったカイザ。今度からやることにする。だから機嫌を直せ」
ギルは申し訳なさそうに言った方がもう遅い。
手遅れだ。
「『拘束制御術式第三号第二号第一号解放』
状況A『クロムウェル」による承認認識
眼前敵の戦闘不能状態までの間
能力使用限定解除開始」
「『
私は龍の因子を発動させて身体能力を向上させて一瞬で彼らのところに行き、ギルとエルキドゥの服を掴むとウルクに被害が出ない程度のところまで投げ飛ばし『時空操作』で飛ばしたところまで向かった。
ゲートを抜け切ると、既にギルとエルキドゥは立ち上がっており戦闘態勢に入っていた。
私は、牙月を取り出すと、ギルに切り掛かった。しかし、その攻撃はギルに当たることは無かった。ギルは私が切り掛かることを確認すると、蔵から斧を取り出して私の剣撃を受けた。武具同士からは、火花が散っていき、ギルが取り出した斧には罅が入り込んでいった。
士郎のやつは、半端ものと言っていたが半端ものは半端ものでも最高クラスの半端ものだよ。
拮抗しながらそのようなことを考えていると、エルキドゥが私ごとギルを排除することにしたのか複数鎖を展開して私たち向けて飛ばしてきた。
鎖は、一直線に側頭部目掛けて向かってきた。
そのことを確認すると、斧を断ち切り、その勢いのままギルの左脇に入り込むと、回転を利かせながら蹴りを入れ込んだ。ギルは、鎖の方に吹っ飛んでいった。
「『
ギルは鎖に対処するために蔵から宝具の原典を射出したが、全ては対処することは出来ず、幾ばくかの鎖がギルの肉体を掠めた。
「カイザ! この我に傷をつけさせようとは」
ギルは、ついに沸点に到達したのか怒りを顕わにした。
「最早、出し惜しみはせぬ。エルキドゥとやら、貴様もカイザ諸共排除しよう!」
するとギルは王律鍵を取り出して蔵に差し込んである剣を取り出した。
乖離剣エア。
神造兵装の一つ。
王の財宝の中でも最高クラスの一品。
剣の言う概念が生まれる前から存在している剣の原典。
それから放たれる一撃は世界をも切り裂く。
ギルは、天へと浮かび上がり乖離剣を我々が居る地に向けた。
「原初を語る
天地は分かれ、無は開闢を言祝ぐ
世界を裂くは我が乖離剣
星々を廻す臼、天上の地獄とは創世前夜の祝着よ
死を以て靜まるが良い」
エルキドゥもギルが乖離剣を取り出すのを見て本気になったようだった。地に掌を向けると、周囲から植物などの生命が芽生え光が満ちていった。
「呼び起こすは星の息吹
人と共に歩もう、僕は故に」
二人が全力を出すのならば、私も絶技を使うことにしよう!
鞘を取り出して収めると、姿勢を低くして構えをとった。
「我が剣技を見よ
空を喰らい、世界を斬り、星をも断て」
「『
「『
「『蒼天』」
三人から放たれた三つの攻撃は互いに衝突した。
その衝撃は凄まじいもので、天地は揺らぎ辺りのテクスチャは別ち、真下には巨大なクレーターが形成されていた。ボロボロと成り果てた私たちは、三人諸共後方へと吹っ飛んでしまった。
第四節
私としたことがあの衝撃によってすこし気絶してしまっていたようだ。今後の課題に追加しておくことにしよう。
周囲を確認すると、それほど遠くないところに吹き飛んでいた。衝撃によってテクスチャはボロボロになってしまっていたが、既に治っていた。
周囲の確認を終えると気絶していたギル、エルキドゥを回収した。
しばらくして、私が冷静になるために鎮静剤を投与して精神を統一していると、エルキドゥが目覚めた。
エルキドゥは、目覚めると、すぐさま戦闘体制に入り私に襲い掛かろうとした。
「止めよう、ここ等で止めておかないと私は君のことを殺してしまう」
「エルキドゥこの際だ。君へは別に怒ってはいないんだ」
確かに、彼は民たちに間接的に危害を加えた。しかしそれは、大したことではない。死者も出ていないし、建物も何れかは修復されて行くことだろう。
「君がこの馬鹿に対して反感の意を持つのは当然の通りだけども。一旦、話を聞いてくれないか」
「ギル、私も切れてしまってすまなかった。一旦辞めないか?」
「カイザって言ったかい。君は一体誰なんだい」
「僕は君のことは知らないんだ、なんなら神たちも詳しくは知らないだろうね」
「エルキドゥ、私のことが知りたいんだろう。いいだろう、私の名はカイザ・ウォーカー。根源に作られ、この宇宙を創り出した原初の神だよ」
「根源の作られた? それが本当なら僕たちは似たもの同士だね」
「ギルガメッシュを諌めるために神に作られた僕」
「人を諌めるために神に作られたギルガメッシュ」
「宇宙を作り出すために根源に作られた君」
「三人とも誰かにために作られたものじゃないか」
確かに言われてみれば。
私の場合、本来ならしなくても良かった仕事押し付けられているだよな。
それも説明をされずに──
「エルキドゥ、久しぶりに戦えてストレスも無くなったから。この戦いも辞めないか?」
「確かに初夜権なんて馬鹿げたことをしでかしているけど。ギルも色々人類も進化させるために暴虐しているところもあるんだ、意外にね」
「一言多いぞ、カイザ」
「ふふ、君たちって面白いね」
エルキドゥは、私たちの様子が面白かったのか口を押えて笑っていた。
「確かにそういう考えもできるね、じゃあ僕の使命は果たされていたということか」
「いやいや、私は神だけど君の創造主であるアヌとアルルとは別に仲間ではないからその発言を正しくないから」
「それに私は、人は神と決別すべきと考えているからね」
「それはどうして?」
「君も知っているだろう。神は基本的に人を見下している「下等生物だ』とかね。しかし、まぁたまに人間の本質を理解して支配すべきという神や人間は我々から決別すべきと人間の可能性を信じている神がいる」
「私は、人の可能性は無限大だと信じている。しかし、人間が神と決別しなければ人は神に甘えて堕落する」
「だからこそ、私はねエルキドゥ。人は神と決別すべきと考えているんだよ」
しばらくの間、エルキドゥは悩み続けていた。
エルキドゥにも神々には思うことがあったのだろう。
さらに時間が過ぎ、ようやくエルキドゥが顔をあげた。
「確かに、人間は素晴らしい生物だと思うよ。僕のこの姿もシャムハトを模したものだ。僕は、まだ人間のことをよく知らないだからはっきりとしたことは発言出来ないけど。それでも、正しいと思う」
「いいのかい、この思想は君の創造主に反するものだが」
「僕は、天の楔であるギルガメッシュを諌め天上に返すことが目的だった」
「だけど、それが人間たちにとって不利な方向になってしまうのなら僕は神と反する」
其の言葉を聞いた私は、頬をわずかに緩ませてしまった。
「よし、分かったエルキドゥ。これで君は私たちの友達だ」
私はエルキドゥに向けて手を出した。
「何だい、そう行動は?」
「握手だよ。信頼や協力するときに行う行動でね。ほらギルも一緒に」
「何故、我が」
「何故って、エルキドゥは私とギルとの友達になったんだから。早く」
「ええい、わかったわ。そう急かすなカイザ」
そうして、三人で握手を交わした。
ギルはいやいやであったけど、やってみたあとは案外そうでもなくなっていた。
しかし、この大穴どうしよう。
まぁ、放置でいいや。
宝具の跡は放置して、早速ウルクに帰ることにした。
お久しぶりです、メガネキャラ最高です。
バビロニア編第二話どうだったでしょうか。
いつの間にか、11月中旬になっていました。いやー、なんででしょうか。
これもすべて、乾〇とかいう人の作品を久しぶりに見返してたせいなんだよ。
すみません反省しています。
次話は、構想が決まっているので今回ほどには遅くならないと思いますが、私のいうことは信用しないでください。
さて、ここらで筆を置かせていただきます。
ご拝読ありがとうございました。
次は何編がいいですか?ちなみにここで選ばれなくてもやる可能性はありますが日本編は短いかもしれません。それとケルト編の一部は絶対出ます。
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ギリシャ編
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北欧編
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ケルト編
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日本編
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ブリテン島編