とある転生者の旅路   作:メガネキャラ最高

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第四話 駄目神の進攻

第一節

 

 

 

 夜が明けて太陽が昇り、民たちが仕事に着き始めた頃とある異変が起きた。

 

 突如としてウルクの空が夜のように暗がり、雷鳴が轟き暴風雨が降り始めた。

 

 重たい体に鞭を打ちながら机から起き上がると遠くには、巨大な積乱雲の中に微かに黄金色に輝くパーツを持つ牛のようなものが見えた。

 

「やはりグガランナを引っ張ってきたか。アヌの奴め、いや脅されたのか」

 執務室で相も変わらずに仕事を行っていた私は、その様子を確認すると頭を押さえた。

 

 幾ら溺愛しているからとはいえそのようなことをするだろうか? あれが顕現すれば悲惨なことになるぞ。

 

 グガランナ。天の雄牛であり、主神アヌによって創造された神造兵装。顕現すればその土地に七年の饑饉を与えると言われるもの。

 

 例え脅されたとしても到底渡すとは考えられないのだが。やはり今回の一件は

 

「取り敢えず、グガランナの対処に移ろう。そんなことは後でいくらでも考えられる」

 

 しかし、流石の私でもあれには手こずりそうだ。

 

 椅子に掛けていたマントかジャケットか判断に戸惑うものをつかみ取り纏うと、執務室を出て王座の間にへと向かった。

 

 着くと王座にはギルと近くにエルキドゥが。そして、王座の正面には議会の者たちがギルに縋っていた。

 

 ちなみに、議会っていうのは私が創立した小ぢんまりとしたものでね。基本的には、私の手伝いと王の方針について語ってそれを報告して国をより良くするために作り出されたものなんだ。

 

「お主何奴。ここは、王座の間。兵士ども奴を捕らえよ!」

 近づいて話そうとした瞬間、議会の長である老人に捕縛の令を出されてしまった。そのせいで、周囲で警護していた兵士たちが私を囲み、法陣を組まれて逃げ出せなくされてしまった。

 

Why? なぜに? 

 私、君たちの上司、っあ! そうだった。私、今礼装を外しているのだった! 

 

 昨日は、姿を顕わにする前に皆逃げおおせてしまって知るわけないんだわ。

 

「待った。君たち、私はカイザ! 君たちの上司でそこのギルとエルキドゥの友達だって」

 ギルたちを指さしながら説得したが、意味はなく逆に不信感を積み重ねさせてしまった。

 

「何を言うか。カイザ殿は、そのような容貌などしてはおらんわ!」

 

 駄目だ。君とは一番接点があるというのに。

 

 よしここは──────────

 

「ギル、説明してやってくれ。今の私では、説明力がないからさ」

 

秘技奥義他人任せ

 

 この奥義は、何か困った際や対処しきれない際、他者の方に任せた方が楽に処理することが出来る際に行う奥義なのである。

 

 ちなみに、この奥義を一般人に対して使うと友好関係が薄れてしまうから、注意して使用するように! 

 

 でないと、攻略中のメガネキャラに後ろからバッサリと腹をナイフで刺されてDedエンドルートに突入してしまうよ。

 

 みんな気をつけようね! 

 

「そこのは、カイザで合っている。姿を惑わす礼装を外しただけだ」

 

「何と。それは誠ですか! 王よ」

 議会の長である老人の一人が質疑を行った。

 

 やっぱり、信頼できるものにはもっと開示しても良かったかもな。

 

「僕も肯定するよ。実際に見ていたからね」

 ギルの近くで佇んでいたエルキドゥが議長の質疑に答えた。

 

 議長は、しばらく一人の事をブツブツと唱えると納得したのか私に身体を向け直して謝罪を行ってきた。

 

「申し訳ありません、カイザ殿。この無礼は、いかようにも」

 

 彼の謝罪を見るのは初めてのことだった。

 

 彼とは、先も述べたようにかなりの仲だった。

 

 嘗て、私が初めてこのウルクに訪れた約数十年前からの間柄だった。

 

 このウルクに訪れた翌年には議会を作ってはいたが、彼はその頃から議会に在籍していた。

 

 お互い仕事関係で、酒を飲み交わすこともしなかったがそれでも数十年の仲でそれなりに築いたものというものがあった。

 

 数十年経ってようやく見つかるものがあったとはと思ってしまうな。

 

「いやこちらにも非がある。こんなことが起きないように君含めてここにいる物たちはこの事を伝えてくれないかな」

 

「「承知致しました」」

 集まっていた全ての者が皆、背を正して返答した。

 

「今後について話すから、ここは散ってくれないかな」

 

「了解しました。皆の者、聞いておったな。この先我々は邪魔となってしまう。早急に散るのだ」

 その言葉と共に、周囲の者たちは去って行った。

 

 

 

「全く、イシュタルの奴アヌに訴えてから来るのが早すぎないか。行動力の塊だねあれは」

 皆が去ったあと、三人でグガランナ対策について話し始めていた。

 

「奴はそういう奴なのだ。でカイザ、どうする気だ? 貴様であってもあれには厳しいと思うが」

 王座に座しているギルが目線をこちらに向けながら訪ねてきた。

 

「そうだね、僕も同感だ。あれは僕と同じくして主神によって作られた神造兵装だからね」

 傍で佇んでいたエルキドゥも同意してきた。

 

 まぁ、確かにあれは私にとっても相性が悪い。あれは範囲が段違いだからね。早めに活動停止状態にしなければ。

 

「何、奴は私の警告を無視してこちらに攻めに来たんだ。それ相応の覚悟あるんだあろう。宣告通りにしてやるだけだよ」

 笑みを浮かべながらそのように話す私を見て、他の二人は軽く固まり苦笑いをしていた。

 

「まあ、それなりには苦戦するかもしれないから。二人とも手伝ってくれないかな?」

 

「何、僕は兵器だ。いつでも尽力するよ」

 エルキドゥは、微笑みながら一言で了承してくれた。

 

「まあ、本来我たちの仕事であるからな」

 

 ん。あれ、今なんて。

 

 ギルは、やはり本来の

 

 

 

 

第二節

 

 

 

 天の雄牛の足元に着くと其処は、地獄であった。

 

 既にウルクの外れの村に入り込まれてしまっていた。

 

 辺りには踏み潰された大人に子供、老人に赤ん坊の死体がらしき血肉と内容物の残骸が地面に染み込んでいた。

 

 これを地獄と言わないのであれば、何というのやら。

 

「ようやく、来たのかしら。全く、私に恐れを抱いたかしら。畏敬の意を示しなさい、さすればギルガメッシュたちの首だけで済ませてあげるわ」

 

 あの駄女神の声が聞こえてきた。

 

 声が放たれたところに目線を向けると、駄女神がマアンナとともにグガランナの前を浮遊していた。

 

『■■■■■■■■■』

 

 言語化のしようがない唸り声を響かせながら、天の雄牛は此方を覗いた。

 

 眼鏡を外し、天の雄牛を解析する。

 

 どうやら、天の牡牛には自己意識がどうやら存在しないようだ。そこにあるのは、神に造られたただの神造兵装だ。ただ指定されたものを排除するために行動を行う兵器だ。

 

 容赦はいらないな。

 

「アヌに用意してもらったおもちゃがそこまで嬉しかったのか? それを得るためにどんな脅し文句を使ったんだ? まあ、それはあとでアヌに問いただせばいいか。で、自分を信仰する民を殺した感想は?」

 

「この私に殺してもらったのよ。この私に殺されるなんて光栄なことでしょう、それが何か?」

 駄目女神は、私の問いになんの悪気もなくそう言葉にした。

 

「そうか──そうだよな。基本神なんてそんなものだったな」

 そうだった。信仰があるだけで神も化け物だったな。

 

 私としたことが────

 

 何とも滑稽ではないか。

 

「やはり、君を敢えて殺さずにいたのは間違いだった。分かっていたはずだ、脅しをかけてもそんなことはお構いなくこの国を攻めてくると」

 

「女神イシュタル、金星の女神。私は貴様を殺す、肉の一片も残さずに。宣告通りになんて生易しいものではなく」

 

 ただ冷淡にその言葉を紡いでゆく。

 

「まさか勝てるとでも思っているのかしら。私には天の雄牛がいるのよ」

 駄目女神は、胸を張り自信満々でそうと言い放ってきた。 

 

「なぁに、お前に勝つなんて造作もない。お前は、道具に頼っているだけのただの3流だ。金星の女神イシュタル、そんなだからお前は弱いんだよ。バーーーーカ!!!」

 

 其の言葉により女神の身体は、フルフルと小刻みに震えながら拳を握りしめた。

 

「グガランナ! 私をコケにした者たちを排除しなさい!!!!!!!!!!!」

 

『グオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』

 そのように吠え叫びながら私たちのいるところ目掛けて雷撃を纏った足で踏みつぶそうとしてきた。

 

 ギルとエルキドゥは、後方に下がり回避しようとしたが私は回避を行わなかった。

 

「貴様は、私の逆鱗に触れた。そのことを精々後悔するといい」

 

 手を突き出し、己の鎖を解く。

 

 己の力を縛る鎖を。

 

『拘束制御術式第三号二号一号』解放

 状況A『クロムウェル」による承認認識。眼前敵の完全沈黙までの間、能力使用限定解除開始」

 

 手袋の紋章は紅く輝き、私の力を縛っていた鎖を解き放った。

 

「死者の眠る地では戦いべきではない」

 

 それぞれの上空に時空の渦が現れて、それらは一瞬にして彼らを飲み込んだ。飲み込まれると、先程までとは違う景色の場所に立っていた。

 

「一体何が!?」

 周囲を見渡しながら、自身に起きた事象を確認しようとしている女神ことなど関係なく話を続ける。

 

「死者が眠る地を荒らすではない。その魂らがガララ霊たちによって回収され、骸が埋葬をされるまでは決して荒らしてなどはいけないのだ」

 

 グガランナはそんなことお構いなく足を止めなかったが私は拳を握り、思いっきり殴りつけた。

 

 迫ってきた足は、衝撃により粉砕して崩れていった。

 

 しかし、その程度の破損では動きは止まらず再び攻撃を仕掛けてきた。

 

『■■■■■■■■■』

 

「エルキドゥ、奴の動きを止めよ。我とカイザの攻撃を少しでも当たりやすくするようにな!」

 

「わかっているよ、ギル」

 

 二人は、攻撃を避けた後にギルは蔵から宝具の原典たちを射出して攻撃を行い、エルキドゥは鎖をグガランナに巻きつけて拘束していた。

 

 拘束され、数多の攻撃を喰らい続けていたグガランナだが、鎖を引き千切り辺りに雷撃を撃ち込み始めた。

 

「『龍王の顎(ドラゴンストライク)』!!!」

 

『■■■■■■■■■』

 

 私は、龍の力を使用して右腕に龍の頭部を顕現させた。

 

 龍は、首を振り久方ぶりに顕現したことに歓喜したのか、それとも目の前の戦いに歓喜したのか非言語化できない咆哮を轟かせながら雷撃を喰らい尽くしそのままの勢いでグガランナを喰らおうとしたが間一髪で避けられた。

 

 避けられたのを確認すると、左腕で杖を蔵から取り出して魔力を込めて魔術式を起動させた。

 

術式選択、術式『アルテミスの弓矢(クリューセーラカトス)展開開始。天の牡牛グガランナを攻撃目標に設定。術式の重複展開及び行使を承認。自動修正術式の平行行使開始。術式発動開始

 

 術式を発動させると空中に魔術陣が展開され、そこから蒼い閃光のような魔力矢がまるでシャワーのようにグガランナに放たれていった。 

 

 アルテミスの逸話をモチーフにした神からの矢攻撃。

 

 オリジナルとはかなり違うものだが、性能は同等だ。放たれる矢の一本一本が対軍宝具級の威力を持っていた。

 

 放たれた矢たちは、迫りくる風を物ともせずに轟音を奏でながらグガランナの体に射刺さった。

 

 けれども、グガランナは攻撃を食らいながらも前進と攻撃を止めなかった。

 

 グガランナは、さらに私たち目掛けて雷を降らして四方八方から風を吹かせてきてギルたちの行動を制限してきた。

 

「ふむ、やはり権能に近いものがシステムとして組み込まれているのか。久しぶりに楽しめそうだ。こい、牙月!」

 

 そう発した瞬間、空間が捻じ曲がりながら渦を描きその渦の中から牙月が飛び出てきた。

 

 私は牙月を掴み鞘から抜き、龍の力によって脚力を上げてグガランナを斬りつけようとした。

 

 グガランナは、また雷撃を行使し始めたが牙月で雷を切り裂き対処した。

 

「エルキドゥ、ギル足止め頼む。今度は破られないくらいのを!」

 

「了解したよ、カイザ」

 

「たわけ、我に不可能などないわ!」

 

 ギルは、動きを抑制する宝具の原典を蔵から射出し、エルキドゥは、今度は破れないようにとグガランナ全身に鎖を巻きつけた。

 

 これであればグガランナであっても今度のは破れまい。

 

「よっ、と」

 

 背中に翼を顕現させ、空中へ飛び上がる。

 

「天の雄牛グガランナよ。我が秘技を使うのに値するものよ。冥土の土産として我が秘技を見せよう」

 

 牙月を鞘に納め、構えをとる。全身に龍の力を顕現させて全魔術回路の回転を早め、生成した全魔力を強化に回す。

 

我が剣技を見よ

 

 空を喰らい、世界を斬り、星をも断て」

 

 前に放った時とは、威力が段違いだそ。

 

 エルキドゥとギルは、構えをとった時点射程圏外である私の後方にへと下がっていた。

 

「『蒼天》』」

 

 光の速さで、刀身を抜き放たれた斬撃はグガランナを斬り裂いた。

 

 グガランナは、切り裂かれるとその巨大な胴体を地に着けて眼光を薄れさせていった。

 

「君との闘い、楽しかったよ。天の雄牛」

 

『■■■■■■■■■』

 唸り声を上げながら天の雄牛は長い活動に終止符を打たれた。

 

 

 

 

第三節

 

 

 

「こんなのあり得ない、グガランナよ!! 天の雄牛。お父様が創り上げた最高傑作の一つなのよ!」

 

 女神は、目の前の光景を飲み込め慣れていなかった。彼女は、負けないと高をくくっていた。父であるアナを『天の雄牛を渡さなければウルク民たちを惨殺する』と脅してかの天の雄牛を手に入れたのだ。

 

 女神は、カイザ・ウォーカーのことを危険視はしていたのだ。ジグラッドにおいて向けられたものは、己が恐るほどのものであったからだ。しかし、かの女神は間違いをしてしまっていた。己によりも強い天の雄牛であるのならば、苦戦などしないだろうと。

 

 しかし、それは皆目見当違いであった。

 

 カイザ・ウォーカーは、力を解放すれば軽く天の雄牛をボディーを破壊する程度のスペックを持ち合わせていた。女神の下には、上下が綺麗に真っ二つに別れ動作を止めたグガランナの残骸が倒れていた。

 

 そもそも、勝てるはずがなかったのだ女神には。幾らどんなに強い武器を持って来ようが無理なのだ。

 

「逃げれば、そう、逃げれば良いのよ。奴が追って来れないところまで」

 

 女神は、そう自分に言い聞かせて恥をおおせずに逃走を図ろうとした。しかし、それは儚く散った。

 

おい、どこに行こうと言うんだ駄女神

 

 後方から、高音であるが重く深く殺意が込められた恐ろしい声が聞こえてきた。

 

 女神は、恐る恐る振り向くと天の雄牛を破壊せしめた神がそこには居た。

 

 神は、悪魔の如き笑みを浮かべながら女神を見つめていた。

 

「さて、有言実行だ。お前は、私の忠告を無碍にしてウルクを攻めようとした。宣告通りにさせてもらうことにしよう」

 

 女神はその言葉を聞き入れると、創生神に背を向けて天へと昇り逃走を図った。

 

 しかし、そんなことを見逃すほど創生神は甘くはなかった。

 

「逃げられないぞ、お前」

 

 創生神は、一瞬にして女神の上空に上がり、地面へと蹴り付けた。

 

 金星の女神は、それなりの信仰を持つためスペックが高いことが功を奏して肉片を周囲に撒き散らすことにはならず、地面に蹴り付けられる程度で済んだ。

 

 程度とは言え、口からは血が流れて身体中の骨は粉砕していたが。

 

 地上に降り、駄目女神のそばに立つと女神が何か言おうとしていた。

 

「私にこんなことをしてっ、お父様が黙っているとでも思っているのかしら」

 

「さあ、どちらでもいい。そもそもお前は溺愛とはされているとは言え、奴はそこまでお優しい神でもないだろう。お前が冥界下りに失敗したとき、奴はどうした。何もしなかっただろう。所詮はその程度の存在なんだよお前は」

 

「さて、そろそろ始めるか」

 

 創生神の横に銀の波紋が現れると、腕をその中に入れ込んだ。

 

 腕を波紋から抜き出すと、手には一粒のカプセル状の薬が収まれていた。

 

「これなんだと思う? 当たったら使わないであげよう。ヒントは刺激に関係するものだ」

 

「媚薬?」

 

 其の言葉を聞くと創生神は腹を抱えて笑い始めた。

 

「あはははは!残念、外れ。これはね、痛覚上昇薬なんだよ」

 

「と言ってもあまりイメージが湧かないか。例えば本来、関節を動かすことで発生する痛みは痛み認識出来ないほど小さいものだ。しかし、この薬を服用すればその痛みは何倍にもなる。この薬を服用すれば、個人差はあるだろうが私個人が試した際には体感で約10倍程であった。君は一体何倍になるんだろうね?」

 

 創生神は、馬乗りになって女神の口に薬を入れようとしたが抵抗されてしまい上手く入らなかった。

 

 ちなみに、寝ている人に無理矢理飲ませようとしても反射によって抵抗されてしまい最悪手噛まれるから気をつけた方がいい。

 

「ふむ、対抗するのか。ではこの手で行こう」

 

 創生神の手元付近に時空の渦が発生すると、創生神はその中に薬を放り投げた。

 

 途端、女神の様子が変わった。身体を動かし悶え苦しみ、手で腕を、首を、胸を全身を抑え始めた。

 

「あ、なた。一体何を!」

 

 悶えながら金星の女神は創生神にそう言い放った。

 

「何、面倒だったからね。時空を曲げて直接君の胃の中に投与したんだよ。しかし、どうやらちゃんと座標は合っていたようだ。良かった良かった。これで実験が出来る」

 創生神は、微笑みながら喜んだ。

 

「実験って、何を」

 痛みに悶えて震える駄目女神に対して創生神はこう言った。

 

「私はね、人体実験は自分自身で行ってきたんだ。どうしても他人を巻き込むことに抵抗があってね、神に堕ちたあとでもそのような感情はなくならなかった。どんなに悪人であってもね」

 手に着けた刻印の刻まれた手袋を調整しながら、話を続ける。

 

「しかし、お前にはそんな感情も湧かない。私以外のサンプルデータを得られる貴重な機会だ、じっくりと試させてもらおう。なぁに、大したことではない。一つの薬だけだからね」

 

Are you ready?(準備はできたかクソガキ) 

 

「冗談じゃないわよ!」

 

 創生神に対して駄目女神は殴り掛かった。

 

 しかし、創生神は避けることなど容易である単純な攻撃を回避しようとせずに拳を受け入れた。

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 

 

 しかし、絶叫を叫んだのは創生神ではなく金星の女神イシュタルであった。

 

 女神は、殴った手を押さえながらのたうち回り白目に成りかけながら初夜を経験する処女のように叫び散らしていた。

 

「なるほど、対して痛みに耐性が無い所為で余計に痛みが増している。いや、元々の感度が基準となって変化するのか。私ながら良い薬を生成したな」

 

 創生神は己の眼で解析しなから、見逃さぬように視線を固定した。

 

「ふむ、おおよそ300倍と言ったところか。よし、もういいか」

 

 創生神は、先程と同様にして時空の渦を創り上げ、その中に解毒薬を投げ入れた。すると、駄目女神の動きは落ち着き白目になりかけていた目には赤い瞳が戻り、動きの激しさも沈静化していった。

 

御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい何でもします貞操でも何でも上げます。だから許してください

 

 その代わりに、女神による命乞いが行われた。

 

 そう涙を流しながら創生神に訴えかけてきた。手足は震えが止まらずに声を震えてて恐怖心が伝わってくる。

 

「そうだな、じゃあ君の美貌の身体とやらをぐちゃぐちゃにしよう」

 微笑みながらそう答えた創生神を目の前に倒れ伏している金星の女神は認識を改めた。

 

「ば、化け物! 化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物、化け物!!!!!!」

 

 其の罵詈雑言を聞き入れて、創生神は本日何度目かも分からない笑みを浮かべた。

 

そう、私は化け物だ。自ら神という名の化け物に堕ちた愚かな化け物だ。だからと言って同じく化け物である君が言うのは少し可笑しいとは思わないか? なぁ、金星の女神

 

 創生神という名の化け物は、そう言い放つと女神の身体を破壊し始めた。

 

 まずは、手足の指を一本一本丁寧に折り曲げた。

 

「あ゛がぁ」

 

折り曲げるごとに悲鳴が上がったがそんなこと無視してどんどん丁寧に折り曲げた。

 

 次は、胸を殴った。殴ると幾人もの男たちを誘惑した胸はグチャグチャになり残念な物にへと成り果て最後には、顔を殴り付けた。

 

 顔は誰かを判別できぬほどのものになった。誰もを魅了する金星の女神は、見るも無惨な姿に成り果てたのだ。

 

 創生神は、腰に収めていた牙月を鞘から抜くと刀身を向けた。

 

「さて、死ぬがいい。己を信仰していた民たちを殺したことを」

 

 刀身が女神の胸元を、貫こうとするその刹那の時。

 

 刀身は、その動きを止めた。

 

 創生神の目線の先には、誰もいなかったが。彼の眼には、幾人かの人々が写っていた。

 

ウォーカー様、イシュタル様は悪くありません。私たちが悪いのです。ですのでイシュタル様に慈悲をお恵みなさってください

 

 其の言葉とともに、彼らはガルラ霊たちに連れ去られていった。

 

「そうか、君たちは。君たちは、殺した相手にそんなもの抱くのか」

 創生神は己の刀を納めて、深呼吸をすると女神に話しかけた。

 

「君がウルクの民たちを殺したことについては、彼らがすべきことだ。私がしたのは忠告を無視しウルクへと侵攻したことに対しての罰だ。しかし、彼等の願いだ。君がもう二度とウルクに危害を加えないと誓うのであれば君を元に戻そう」

 

 女神は、ゆっくりと、しかしはっきりと首を縦に振った。

 

 それをお届けると彼女の体を元に戻した。

 

君に殺されても尚信仰心を持ったものたちに感謝するんだな

 

 そう言うとイシュタルを背にして、翼を顕現させその場を飛び去った。

 

 

 

 

第四節

 

 

 女神を背にウルクへ戻ろうとして歩んでいると、グガランナに踏み潰された離れの村にたどり着いた。

 

 そこには、先程見かけた死体はなくなっており代わりに数カ所に大きめの石が置かれておりギルとエルキドゥ黙祷を捧げていた。

 

「カイザか。ここに来たと言うことはイシュタルめへの罰は終わったのか」

 

「うん、殺す気だったけども。彼らに止められてしまったからね」

 

「まぁ、その前に痛覚上昇薬の被検体にしたり、全身ぼこぼこにしてやったけど」

 

「君、案外僕たちよりも恐ろしいよね。キレさせると」

 エルキドゥは、もう慣れてきたのかあまり驚かずに淡々と言った。

 

「まぁ、イシュタルだから問題はあるまい。そこまでしてようやく、奴のやってきたことに帳尻が合う」

 

 ギルたちは、黙祷を捧げ終わるとそのように言ったきた。

 

 私ながら少々やり過ぎたと少し心の片隅に抱いていたのに、あれでようやくか。まぁ、確かによくよく考えて見ればそうか。

 

 そんなことを考えながら墓たちの前で黙祷を捧げ始めた。

 

 済まななった。もう少し早ければ君たちを死なせずに済んだかもしれないのに

 

『イシュタル神に慈悲を与えてくださり感謝申しあげます』

 

 そんな言葉が聞こえた気がした。

 

 そんなはずはないのに。

 

 彼らは、既にガルラ霊たちに冥界へ連れ去られたではないか。私はそれをこの眼で。

 

「帰ろうか、ギル、エルキドゥ。私たちにはやるべきことがまだ残っているのだから」

 

 其の言葉とともに私たちはジグラッドにへと戻って行った。

 

 

 

 

第五節

 

 

 

 女神イシュタルと戦闘後、ニップルにてその戦闘の様子を眺めながらケタケタと愉快そうに笑っている者がいた。

 

「なるほど、流石は俺たちの始祖だ。かつての父上にも匹敵する力ではないか!」

 

 その者は、黄金の二本角がついた冠を被った髭の長い男であった。

 

 己の神殿にて、そのものは豪勢な座に腰を据えながら創生神について思考に耽っていた。

 

「しかし、奴はこの俺がイシュタルを唆したことに少なくとも気が付いている様子であったな。くく、あはははははははは!」

 

「全く、この眼で捉えることが出来ぬのが煩わしい。さあ、気が付いているのだろう。この俺を楽しませてみせろ!」

 

「あっははは!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 その笑い声は、神殿内に響き渡っていた。

 

 

 




 司書レーアちゃんによる解説コーナー

「はい、第二回目の司書レーアちゃんによる解説コーナーのお時間です」

「どうも、前回に続き参加しています本作の主人公ことカイザ・ウォーカーです」

「では、早速解説に移りましょうかマスター」

「そうだねレーア。で、今回解説するのは」

「はい、今回解説するように言われたのは特にありません」

「えっ、ないの」

「はい、ありません。ですので今回はなぜこのコーナーに司書が付いているのかについて説明してくれとのことを言われました」

「ああ、そのことか。実は私の愛しの愛娘のレーアはアルカディア内の図書館であるライブラリの司書を兼任しているからなんだよ」

「はい、その通りです。作者は、そのことを前回書き忘れてしまったからつたえてくれとの「レーア、それ以上はやめておこうか」はい、わかりましたマスター」

「では、ここらで今回話すべきことも終わったし、これにて幕を閉めることにしようか」

「ええそうですねマスター」

「「ご拝読ありがとうございました。次話をお待ちください」」

次は何編がいいですか?ちなみにここで選ばれなくてもやる可能性はありますが日本編は短いかもしれません。それとケルト編の一部は絶対出ます。

  • ギリシャ編
  • 北欧編
  • ケルト編
  • 日本編
  • ブリテン島編
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