とある転生者の旅路   作:メガネキャラ最高

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明けましておめでとうございます
ちょいグロ注意


第五話 優しい冥界の女神の慈悲

第一節

 

 

 

 あの駄目女神がウルクを攻めようしてから早数ヶ月が経ち、ウルクは再び活気を得た。

 土地神がいなくなってしまった為、多少不安定さが残ってはいるがウルクの民自身がそれを乗り越えようとしていた。

 

 そんな中、私ことカイザ・ウォーカーは何をしているかと言うと。昼寝である。

 

 いやいや、読者諸君。これには正当な理由がある。

 

 ひとまず落ち着いて聞いてくれたまえ。

 

 本日は、いつもより仕事が少なくてね朝に勤めるだけで終わってしまうほどであったのだよ。

 

 折角なので、ギルとエルキドゥを誘って何処かへ探検でも行こうとも考えたがギルは仕事が忙しそうで、エルキドゥも街で用事があるみたいだったので諦めて、こうしてジグラットの屋上で日向ぼっこを楽しんでいたわけだが。

 

 これでも悪いと思ったのなら、私の普段の業務の様子を思い返してくれ。

 

 

 話を戻し、今日は一変の曇りもない晴天であり、風は、ほのかに漂い心地が良く、微かに麦畑の麦の香りが漂ってくる。

 

 人間の頃よりも嗅覚が発達したことによってそんなことが可能になったわけだが。

 

 その事実は、私が人間ではないことを証明してくる。

 

 しかし日向ぼっこは、私の精神的疲労を解消してくれた。

 

 いやー、神であっても精神的にはかなりキツいんだよねー。

 

 本当に、日向ぼっこは最高だね。

 

 いやー、昔は大してそんなに疲れなかったのだがね。この私も年かな。

 

 私も軽く宇宙創世から生きているからな。軽く138億年ぐらいか、思い返せば早かったような遅かったような。まぁ、それは置いておき。

 

 さて、っと。

 

 本題に入るとしようか。

 

 イシュタルの一件は、エンリルの介入が主な原因だろう。

 

 エンリル。アヌの子であり神々の議会において議長の任をもつ物か。

 

 奴の行動原理は、理解できないこともないが私に刺客を差し向けて愉悦に浸るのであれば私とて排除せざる負えない。

 

 いざとなれば、

 

 いや、辞めておこう。あれを解放するにはこの世界は脆弱過ぎる。

 

 しかし、奴は父と同じくして主神に並ぶ力を持つ神だしな。まぁ、これ以上私やウルクに誰かを差し向けるのであれば殺すが。

 

 ていうか司法神じゃないだろうあれ。どっちかというとエンリルとかそちら側の神だろう。

 

 しばらくの間、そのように思考を回しながら日向ぼっこを堪能していると、少し曇が出てきて空が暗がってきた。

 

 移動しようかな。けれどもそれもまた、めんどくさいな──────

 

 そんなことを考えていると屋上に私とは違う誰かの気配を感じられた。

 

 おかしいな、ここ人が来るような場所じゃないんだけどな。誰だろうか。

 

 気配をよく探ると、レディーだということとそのものが私に目的があってここを訪れたことが感じ取れた。

 

 しかし、珍しいなここにレディーが訪れるなんて。

 

 用があっても、ここまで来るのなんて議長でもしなかったのだが。

 

 そのようなことを考えながら、突如として屋上へと訪れた女性に向けて話し始めた。

 

「君、何か用があるのなら要件を言ってくれ。私は、業務を終わらせてこのように日向ぼっこをしているんだ」

 

 女性は、こちらの声が聞こえたのか、こちらに近づいてきた。

 

「それなら、もう終わりになさって頂けるとありがたいのですが──ー」

 私の元へやってきた女性は、穏やかな口調で私に遜りながらそのように提案を行ってきた。

 

「先程述べただろう。私は、仕事を終わらせてここにいるんだ。何故、止まなければいけない」

 

 瞼を開き起き上がって、気配がする方へ目線を合わせると、そこには清潔と清純さを現したかのような白い衣服に口元をヴェーレで隠している祭祀のような格好をしている女性がいた。

 

 私は、彼女を知っていた。恰好は、少々異なってはいるが容姿と言葉遣いは同一だ。

 

「し、シドゥリ?」

 驚きのあまり、少々みっとも無いような声を零してしまった。

 

 シドゥリは、なぜ己の名を知っているのか不思議そうな顔をしながら自己紹介をし始めた。

 

「私の名を存じ上げているのですか。その通り、私の名はシドゥリです。本日より祭司長に拝命し、ギルガメッシュ王にお目付け役に任命されました。どうぞ不束な点があるかもしれませんが、本日よりよろしくお願いいたします」

 彼女は、否定しなかった。

 

 本当に彼女であった。

 

「っああ、よろしく頼むよ。ギルの世話は大変だろうから」

 平然を装いながら、シドゥリに微笑みかけた。

 

 まさか、このタイミングで来るのか。

 

 っち、過去の私め。こうなることが分かって知識を消したのか。

 

 まぁ確かに、この方が楽しめるけども。

 

「で、私に用があったのだろう。シドゥリ、要件を話してくれ」

 冷静を取り戻すと、シドゥリの報告を聞き入れることにした。

 

「では、報告いたします。近頃、このウルク市内において不審死が多発しています」

 

「不審死? 具体的には、どのような?」

 聞きなじみのない単語に、ふと言葉を発していた。

 

 不審死というのは、確かに古代であるこのウルクでは当然のように感じるかもしれないが実際は異なる。このウルクで不審死なんて言葉ここ数十年耳にしたことがないレベルである。

 

 その理由は、多々あるが大きな要因は医療の発展によるものである。

 

 このウルクは、人口が多いと言うこともあり病人もそれに比例して多く存在する。

 

 そのため、病気に対する知識がどんどん発展して行き今ではある程度の病気であれば治すことができるほどである。

 

 そんな事情のため、不審死というのは大人はおろか老人でも耳したことがないなんてのはザラである。

 

「多くは、老人や重労働を行っていた奴隷たちが力尽きたように、まるで眠るかのようにして亡くなっています」

 シドゥリは、その者たちをいたわるような表情を浮かべながらはっきりと報告した。

 

 なるほど、そう言うことか。

 

 確かに、今の我々の行動とその影響を鑑みれば彼女が動き始めてもおかしくはないか。

 

「眠るように、ね。シドゥリ、亡くなった者たちはすでに埋葬されているのかな?」

 

「いえ、報告を受けたギルガメッシュ王が『遺体は埋葬するでない』と命を下し現在ジグラッド地下に安置しています」

 私が尋ねるとシドゥリは、そのように報告した。

 

 ギルも察して死体をジグラッド地下に安置したな。

 

 と言うか、なんでこちら側に報告が来なかったのだろうか。神官の彼、こういうときはいち早く報告しに来るのに。

 

「シドゥリ、私に報告してくれる神官の彼がどこにいるか知っているかい」

 

「私が今回、報告しに来たのはその神官の方が亡くなってしまったからなのです」

 

 なるほど、彼は亡くなっていたのか。それじゃー、報告にも来れないわ。

 

 まぁ、いい。ひとまずは、その件も彼女を説得すればどうにかなるだろう。

 

「そうか、シドゥリ。原因に心当たりがある。数日ここを離れるからギル達にもそう報告しておいてくれ」

 

 そうシドゥリに伝えると立ち上がって、第二号を解放して翼を顕現させエリドゥにへと向かった。

 

 

 

 

第二節

 

 

 

 私は、その現象を引き起こした者を知っている。

 

 いや、知っていた。

 

 忘れもしない、FGOの第6章にて心優しい冥界の女神がウルクの民を戦火から避難させるために行ったことを。

 

 誰にも理解されず、誰にも感謝などされずにそれでもウルクの民たちの為に己の命までを投げ打って原初の地母神に打って出た優しい女神を。

 

 誰が忘れられるであろうか。

 

 込み上げてくる感情を抑え、エリドゥに足を地に付ける。

 

 既に、エリドゥは廃村に成り果てていて人っ子一人存在せずまるで村人全員が消えたかのような惨状であった。

 

「ここは、冥界の入り口だからな。正直ここが無事であったのなら、流石に眼を使う羽目になったかもしれないな」

 

 ここが冥界の入り口で無かったのならば、流石に眼を行使して入り口を探す羽目になっていただろう。

 

 しかし、予想は当たっていた。

 

 この地には、多量に冥界のエネルギーが垂れ流れてしまっている。

 

 FGO同様にここから侵食が始まったようだ。

 

 良かった、いや、良くは無いか。

 

 エリドゥの現状を確認し終えると冥界に向かうことにした。

 

 おや、どのように行くのかだってそんなの強行突破に決まっているじゃないか! 

 

「来い、牙月」

 そう呼びかけると牙月が時空の渦から飛び出してきた。

 

 勢い良く飛び出してきた牙月を掴み、鞘から刀身を抜き、地面に向かって牙月を軽く振り斬撃を放った。

 

 土地は、斬撃によって断ち切られたが、断面は到底刀で斬ったとは考えられないほどに滑らかに両断された。

 

 斬撃によって両断された間の奥には少し青白く輝く何かが多数輝いていた。

 

 軽く確認すると、自然にへと踏み込み。深淵へと落ちていった。

 

 しばらく落ち続けるとようやく底にへと着いた。

 辺りはほとんどが暗闇で、檻に幽閉されている魂が青白く輝いているだけでそれ以外は何をなかった。途端、身体の力が弱まる感覚が身体を走った。

 

 ああ、そう言えば冥界は神が暴走しない為に神性を低下させる効果があるんだっけ。しかし、問題はないだろう。

 一応道っぽいものがあったのでそれを辿って歩いているとガララ霊に出くわしてしまった。

 

 しかし、どうやら私の存在には気づかれていなかったようだったので気配を消してやり仰せた。

 

 彼等は、基本的に目が見えないから気配を探って魂を連れてくるんだけど、私みたいに気配が消せる者が相手だと全くの戦力外に成り下がるんだよね。

 

 そんなことを心の中で吐露しながら歩み続けると次第に道が狭まり冥界の中心部に近づくと、道を阻むように門が佇んでいた。

 門は、石で作られており、門の扉は固く閉じられて無理には開けられないようになっていた。

 

 細かく確認しようと門に近づいて行くと門の枠の紋章たちが激しく点滅し始めた。

 

『何をしに、足を踏み入れた。根源の代行者、創生神よ。ここは、死者の世界。何人であろうとも介入を許さぬ静寂の世界。ここを土足で踏み荒らすと言うのであれば、幾ら創生神である者であろうが許さまい』

 貫禄のある女性の声が門から聞こえてきた。

 

 しかし、幾らそのようなことを言われてもな君ぁ。君の意思を知っているものからすれば可愛いなとしか思えないムーブなのだが。

 

 まずは一旦私情を抑え、冥府の女主人に対して要望を伝えることとした。

 

「私は君に話しが合ってきたわけで。侵入する際に、騒音を立て死者の安らぎをそいでしまったことに関しては謝罪しよう。申し訳なかった」

 頭を下げ謝罪を行うと門の光加減が落ち着き始めた。

 

 どうやら、冷静になってくれたらしい。やはり、どこぞの駄目女神よりも遥かに良心的だ。

 

 やはり、エレちゃんの方がいいだな──しみじみ。

 

『貴様が冥界の試練を受けるのであれば掟に従い、面会を許可するが、失敗すれば理解しておろうな?」

 

「勿論、覚悟の上だ。さぁ、始めてくれ」

 

「では、答えよ。生者でありながら冥界に侵入した罪深きものよ。その魂の在り方を答えよ。

 美の基準は千差万別のようで絶対なり。

 黒は白に勝り、地は天に勝る。

 であれば、エレシュキガルとイシュタル。

 美しいものはどちらなりや?」

 

 原作通りの当たり前の問いを女神は投げかけてきた。

 

 そんな当たり前のことを聞かれても、もちろん答えなど一つ。

 

「答えは、エレシュキガルに決まっている。比べるまでもない。逆に、誰があんな駄目女神を選ぶというんだ? あれはただのクソったれな精神年齢の幼い小娘のようなものだぞ」

 

 全世界のイシュタル推しよ。済まない。

 

 だけど君たちだって遠坂凛が依り代になっているから推しているのであって素のイシュタルを押しているわけではないだろう!? 素のイシュタルなんてとんでもない小娘だぞ。

 

 皆、目を覚ますのだ!!!! 奴の権能に惑わされるのでない。

 

 えっ、エレちゃんも大概だって!!

 

 何を仰いますか! 神話でも別に特段変なことなんてしていないdしょ。

 

 まぁ、ネルガルとのは。

 

 あれ今何を考えて(記憶喪失)

 

『せ、正解──」

 その言葉と共に門の扉は開き、同時に光を失っていった。

 

 これで、ようやく1回目。

 全く、一体どれだけ掛かるのやら。

 

 門を潜り、道を進んでいった。

 

 

 

 

第三節

 

 

 

「ようやく、終わった」

 疲れながらも歩みを進める。

 

 長らくの間歩み続け、門の問いに答えようやくこの崖道から道の果てを視認することができた。

 

 道の果てに着くとそこには神殿があった。

 

 神殿とは言っても、そこには何も存在していない。

 

 神らしい神聖なものも、豪勢なものも、質素なものも生命も何もかもそこには存在しなかった。

 

 あるのは、たった二つの柱のみ。

 

 既に知りえていたことであったが、いざこの眼で見ると込み上げてくるものがある。

 

「まさか恐れ戦き逃げ出したなんて話ではないよね」

 何もない神殿の中心で、金星の女神に尋ねた。

 

『愚門なり、原初の神よ。私はここにいる』

 

 その声と共に、神殿に稲妻が走り出し目の前の空中に血が集まっていき血の球を形成していった。血の球が形成し終わると、その中からベールを被った女形の骸骨が飛び出した。

 

「お初目に掛かる。私の名は、カイザ・ウォーカー。この世界を創生した根源の代行者だ、以後よろしく頼むよ。冥府の女主人であり、金星の神イシュタルの姉妹姉の女神エレシュキガル」

 

「最も、私のことは覗いていたんだろう」

 お辞儀を行いながら顔を上げ、ニタニタと笑みを浮かべる。

 

『左様。貴様らウルクの行動は司法神の目に留まった』

 

「ああ、それは理解している。イシュタル、君の妹の一件も奴が企てたことなんてことはとっくにね」

 

『では、何故そうまでして神に反する。貴様とて神であろうが』

 

 結果としてそうなっているというわけだが、人間の可能性を信じているものであれば席に着くさ。

 

「勿論、人間たちの神からの脱却のためだよ」

 

 

 

『それは、本気で言っているのか?』

 しばらくの沈黙の後に、冥府の女主人は口を開いた。

 

 それは、困惑と理解不能が込められていた。

 

「勿論、でなければあんな発言はしないさ」

 当たり前に。当然のようにそう答えた。

 

 その様子に動揺し沈黙ながらも女神は言葉を紡いでいった。

 

『原初の神よ。貴様の要求とやらを聞こうでは無いか』

 

「私の要求は、君が流した死の臭気によって死した者たちの魂をその者たちの肉体に返還してほしいということだ。まぁ、私がここに来たことからある程度のことは推測できただろうがね」

 少々気怠そうにしながら口を動かした。

 

 それは、学生に当たり前のことを質問される教授のようでもあった。

 

『貴様の要求は聞き届けた。しかし、私がそれを行うことはない!』

 

 女神は、そう言い放つと自身の手に雷槍を手にして辺りに雷鳴を轟かせた。

 

 ふむ、やはりといったところか。

 

 では、始めるとするかな。

 

「何故かな? 君がそこまでウルクの民達、メソポタミアの者達を冥界に幽閉するのは?」

 

「所有物にすると言うだけでは肩をつけられなぬほどに、自らの使命を『知ったような口を! 「ああ、知っているさ! 生まれてから休まずにずっとこの冥界で一人、理解をされなかった女神を」

 

『!?』

 辺りに轟いていた雷鳴がその言葉を基点に止んだ。

 

「君は、ただ使命からこの冥界に連れてきたのではない。君は、彼らをウルク民たち、いや人間を愛していたからじゃないのか!」

 

『それは、それは』

 

「最も愚かなことは、己自身に嘘をつくことだ! 君は、何を望む! 何がしたい! 何が欲しい!」

 

『黙れ! 今更そんなことをほざくな! 原初の』

 

黙りなどしない! 君が本音を告げるまでは!

 

『貴様が何故私の本音を聞こうと試みる!? 微塵たりとも関係がないことだろうが!』

 

「それは違う! 君は死を決して軽んじなかった。そのあり方は、賞賛をされるべきものでなくとも理解されるべきものだから!」

 

「だから、私はここに立っている!」

 

 全く、私ながら臭いセリフは吐いたものだ。

 

『黙れ、黙れ、黙れ!』

 女神は、槍を地に撃ち付け前方からは(いかづち)と地の塊が放たれ私の肉体へと向かってきた。

 

 私は回避を行おうと後方へ下がろうとしたが力を制限したままでは、流石の私でも敵わずに雷をモロに喰らってしまった。

 

「クッ」

 

 回避に全意識を統合させて、身体を動かそうとしてがそれは無駄に終わった。

 

 雷よりかは遅いがそれでも、手負いの化け物の懐に入り込むには十分な速度であった。

 

 私の眼前には、視界を覆い尽くすほどの塊が鎮座していた。

 

「クソっ」

 

 それを視認した瞬間、私の意識は回避から防御に移った。

 

 回避のために、無意識に前に出していた左腕に力を入れ、盾として前腕を突き出し構えを可能な限りとった。

 

 他者から見れば、不恰好だったかもしれないが今はそれで十分。

 

 腕だけの損害で済むように、神経を研ぎ澄ます。

 

 そうして、塊が前腕に触れた瞬間全身から軋む音が耳に届いたがそんなことはお構いなしに姿勢を保つ。

 

『ガッ、ドコ、ボキャ、ゴゴゴゴ』

 そんな音が鳴り響き続ける。

 

 しばらくし、勢いが収まり岩が落下したため自身の状態を確認する。

 

 防御のために使用した左腕は、礼装ごとグチュグチュになり肉は爛れて血管が丸見えとなっており、出血は摩擦熱のおかげで出ていなかったが目の前の岩に炭のように黒い血と肉の残骸がへばり付いていた。

 

 衝撃に耐えた際に、中をやってしまったらしく久方ぶりに吐血した。

 

「ぐふ、ぐぶぉ」

 口から大量の血液が溢れて血がシャツに染み込む。

 

 どうやら、冥界の女主人の権能で微力ながらに存在した神性をも意味を無くしていたらしい。

 

 光が四方から輝いたと思い、視線をやると更なる地の塊が向かって来ていた。

 

 しかし、回避しようにも肉体が動かない。

 

 どれだけ指令を出そうが動きはしない。

 

 どうやら、あれらの攻撃で神経がイカれてしまったらしい。

 

 そうして私は、迫り来る攻撃を受け止めた。

 

『ガッ、ドコ、ボキャ、ゴゴゴゴ、ガッ、ドコ、ボキャ、ゴゴゴゴ、ボキャ」

 

 全身のあらゆる骨は粉砕、血が地に滴り落ち文字通りの血の池を作った。

 

 視界の右半分は、目が潰れたのか微かな光を感じるだけでほとんど機能しなくなった。

 

 しかし、足は意思は折らない。

 

 それは、私の数少ない望みのために。

 

「何故、立っている!? その身は、人と変わらぬほどに脆弱ではないか!」

 荒げた声で、しかし優しさを感じる声で立ち尽くす私に言い放つ。

 

「何故って。それは、意思だ」

 

「私は、この世全ての者を救おうとする聖人なんかじゃない。私は、化け物だ」

 

「世界でどれだけの人が苦しんでいようが、私は助けない。諦めを踏破したものにこそ、人道を踏破する権利が与えられる。それが私が嘗て学んだこと、私はそのようなものにこそ手を伸ばしたいと考える」

 

「君だよ。冥府の女主人エレシュキガル、私は君に手を伸ばしたいと思ったんだ」

 

「そのあり方、思想を貫き通した者。なんと素晴らしいことか」

 

 手を彼女に突き出すために、体内に循環していた魔力(オド)を電気に変換して生体電気として無理に神経を動かした。

 

「ッ────」

 

 体内から生じる痛みに、経験不足で少し悶えてしまった。

 

『じゃあ貴方は」

 

 其の言葉を私は否定する。

 

しかし、君は運命を捻じ曲げて民達をこの冥府に誘った。それは、了承しない。だから返して欲しい。彼らにはまだやるべきことがあるのだから」

 

『だけど』

 

「なに、時には見守ることも大切だよ。この地の地母神がそうしたように」

 私は微笑みながら彼女に助言を与えた。

 

『──────確かにそうね。確かに、私らしくもなかったのだわ』

 

 その言葉と共に彼女の骸骨の肉体は、仮初の肉体は、心の仮面は砕け散った。

 

 そこにいるのは、理想の皮を破った冥界の女主人であった。

 

「良いでしょう。冥府の女主人エレシュキガルの名において魂達を解放しましょう」

 

 すると、上層部の檻たちが輝き始めて私が開けた裂け目に登って行った。

 

 それはまさに

 

「ところで、原初の神は」

 

「ウォーカーにしてくれ。硬すぎる」

 

「じゃあ、ウォーカー。貴方、その傷はどうするの? つけた私が言える立場ではないけど」

 

 

「何、大したことではない。この程度で済んだのならむしろ上場だ」

 

『この程度って、その状態で!?』

 

 彼女は何を言っているだろうか?

 

 確かに、私の今の状態は側から見れば満身創痍に見えるだろうが私であればさほど問題はない。

 

 神性を取り戻せば、傷をある程度は直ぐに癒えることだろう。

 

 まぁ、神眼の修復にはそれ相応の時が必要になるだろうがね。

 

 再生可能な私の肉体が損傷した程度でウルクなどの民達を解放すると言う成果を得たんだ。

 

 上々以外になんと形容すべきか。

 

 まぁ、そんなことはどうでも良い。

 

「この地の者を気に入ってる者同士、彼らを見守ろうではないか」

 

「ええ、では私は罰を受けるわ」

 

「ん、どうしてそんなことを?」

 

「何故って、私は魂を解放したけれど罪もない人たちを大勢」

 

 なんだその事か。

 

「ああ、それならギルが肉体をジグラッド地下に安置しているらしいから今頃ひょこり生き返っているさ」

 

「ほらこれが証拠だよ」

 残っている左目の視覚をエレシュキガルに共有した。

 

「ほんとなのだわ。ホントなのだわ!」

 彼女は、心から喜んでいた。

 

 ああ、それだ。私の願いは、

 

「さて、私は久しぶりに神官君と会話に励もうかな。 せっかくの早帰りなんだ。まあ、あと数刻ほどしかないがね」

 再び、重い身体に電流を流して冥界を後にしようとするとエレシュキガルが口を開いた。

 

「それって、貴方がよく話している?」

 

「そうだが。それが何か?」

 

「彼は、死んでいるわよ」

 

「は、? 死ん、でる? 仮死ではなく?」

 その瞬間、歯車の一部が止まった。

 

 

 

 

第四節

 

 

 

 昼の暖気は消え去り、気候帯ゆえの寒気が身を包む中カイザ・ウォーカーはジグラッド屋上にて佇んでいた。

 

 いつもの彼とは違い、彼には多少だが活気が失せていた。

 

「まさか自然死だったとはな」

 

 懐からライターとたばこを取り出し、手慣れたように箱を軽くたたき煙草を出すと口で取り出してライターで火をつけた。

 

 それを吸い込み、まるでため息のように吐いた。

 

 周囲には、甘い匂いが漂ったが、重い空気に負け、すぐに消えてなくなった。

 

「ふふ、君は死んでなお私を驚かせるのか。やるではないか」

 

 苦笑を交えながら再び深く吸い込む。

 

 それの繰り返し。  

 

 幾たびの数を重ねた頃、人々などとうに眠った頃彼は現れた。

 

「何時までそうしているつもりだカイザ」

 

 この屋上に立ち入る者は、そう多くはない。

 

 過去を振り返れば、かなりの者がいたがその多くも今では冥府へと旅立ってしまった。

 

 現在では、指で数えられるほどの者である。

 

 此度訪れたのは、彼の友人であり、この地の王であるギルガメッシュだった。

 

「さぁ、私にも。いや、わかっているがというのが正解か」

 カイザ・ウォーカーは、身体をギルガメッシュに向けると話し始めた。

 

「ギル、私はね。確かに彼の死を悼んでいるが、そこには悲愴がないんだよ」

 

 ギルガメッシュは、黙りながらもはっきりとカイザ・ウォーカーを見つめる。

 

「別れの感情を惜しむ感情はある。しかし、悲しみなどが欠落している」

 

「それは、何故か。人間から神という名の化け物に堕ちたからか。それとも長く生きすぎた結果か。どちらとも違う」

 

「ギル、私には、カイザ・ウォーカーと言うものにはそのようなものがつけられていなかったんだ」

 

「昔話をしよう。ある古くから続く家系があった。その家系は主に科学者が多くいた。ほとんどがそうだったと言っても良いほどに」

 

「しかし、皆がそうであるが故にある問題があった。人間性の欠如、感情が薄かったんだ。科学のためであればどのようなことも行い、どのようなものでも捧げた」

 

「そんな一族である男が生まれた。浮世離れした銀髪に蒼い眼を持ったね。一般の家庭であれば、そんなのは捨てられるか、孤児院に送り込むかの二択だがその家系は違った」

 

「彼らの祖に、同じ容姿を持つ者がいたんだ。その名はカイザ・ウォーカー。嘗て王族であったが、自身の父によって王位継承権を剥奪され、優秀さゆえに貴族として生きることになった科学者の中でも天才な人間がね」

 

「後は言わなくとも分かるだろう。彼らは、その子を祖の生まれ変わり。そのように考えた」

 

「全くもってバカバカしい。科学者の集い、その果てに生まれた思想がそんなものなんてさ」

 

「最も実際、皆そこまでまともにしていた訳ではなかった。一時の気まぐれ。名も戯れで言い出したものが選択されただけに過ぎなかった。しかし、ミナ・ウォーカー、私の母親に当たる人物は違った。本当にそうではないのかという思想を胸に秘めた」

 

「母は、一族の中でも才能がなかった。昔から、優秀と言われても天才とは言われなかった。それは、身内が桁外れであったからだが母はそれが耐えられなかった」

 

「ただ、それを口に出すことはなかった。理性が違うと判断していたんだろう」

 

「しかし私が6歳の時、あることが発覚した」

 

「私に完全記憶能力があることがね。それがトリガーとなってしまった。その力は祖が持っていた力、祖を天才たらしめた力だったからだ。自身は、平凡なのに子には才能がそれも最高と称されたほど祖と同じ。そんなのは耐えられなかった」

 

「そこから母の暴走は始まった。母は、私から完全記憶能力を無くそうとした。しかし、そのようなものは簡単に無くすことなどはできない。そこで母が行ったのは薬物投与だ。毎日致死量にはいかない程度にありとあらゆる薬物を投与した。勿論、物理的にも精神的にも衝撃を与えてきた」

 

「拳による殴打、バットによる脊髄への打撃、溺水に電気ショック。考えられるだけの方の方法を行ったのだろうが努力空しく成果が実ることはなかった」

 

「まぁ、人格形成時にそんなことを行えばどうなるか何て自明の理だろう。その結果、私には一部の感情が欠落した。今では、ある程度取り戻したがやはり悲しみなどが感じられない」

 

「まぁ、特段母を怨んでいるわけではないんだよ。感情の欠落なんてことは、科学者であればそう珍しいものでもないからね」

 自笑しながらカイザ・ウォーカーはギルガメッシュに語った。

 

 それは、病人のようにも見れる状態であった。

 

「カイザ。貴様は、怨んで居ないと言ったがそれは真か? 我には違うように見えるぞ?」

 ギルガメッシュは、表情を崩さずに私情も表にせず、公平に言葉を交わす。

 

 彼の眼は、いつもよりも格段に、星の輝きとはベクトルが違うがそれらに負けぬ眼をしていた。

 

「──ー正直に言うと分からないんだよギル。ただ、こういう時に悲しんだり、涙を流せないというのが腹立たしいだけなんだ」

 

「今の貴様は、我に好奇心を与えた頃と打って変わってつまらんぞ」

 そう呟くと、ギルガメッシュは離れその場にいるのはカイザ・ウォーカーただ一人となった。

 

 カイザ・ウォーカーは、星を見上げながら思いにふける。

 

 

 

 

「ああ、そうか。私は、母を憐れんでいたんだ」

 

 

 

 

 

 手にしていたタバコから灰が落ちる。

 

 カイザ・ウォーカーは、自身について一つ。

 

 遥か昔の自身のことを理解した。

 

 星は、数千年も変わらずにいるが彼は違う。

 

 変化するからこそ尊いのだ。

 

 

 

 

第五節

 

 

 

 ニップルのウブシュウキンナにて神々が集っていた。

 

 そこは、扉をくぐると扇状に広がる豪勢な席が列を成し、正面には質素な座が鎮座しており神々は各々にあてがわれた席に着き、口論を交わしていた。

 

 世間話から思想の押し付け合いと様々な者であったがそれらは1柱の神が現れたことにより静まり返った。

 

 その者は、正面に位置する座に座り込む。

 

『これより、ギルガメッシュに対する処罰を決める。意見がある者は発するがよい』

 王灼(おうしゃく)を地に着けながら、金の髪を持つ一柱の神は口を開いた。

 

 その者の名は、アヌ。

 

 エンリルにより地位は落ちたがそれでも議会の長としての役割についている嘗ての最高神であった。

 

『それなら、論じる必要もない。あれは天の楔としての役割を放棄し、我々との決別を図ろうとしている。天の怒りを見せつけるべきだろう』

 

 初めに意見を上げたのは、マルドゥクであった。

 

 アヌとダムキナとの子であり、原初の母であるティアマトと11の子供たちを殺害し、神々の中でエンリルとアヌと対等に渡り合えるほどと称される太陽神。

 

 その者が処罰を求刑したのだ。自ずと周囲の神々もそれに同意した。

 

 しかし、一部と一柱の女神は違った。

 

「私は反対するわ。貴方達は、あいつの恐ろしさを知らないからそんなことが言えるのよ」

 

 地と豊穣の女神イシュタルであった。

 

 かの女神は周囲とは異なり異論を発した。

 

 その行動を見て、一部の神々は侮蔑な目でかの女神を眺めた。

 

イシュタルか、恥晒しにも議会に顔出した愚か者が。父のグガランナを身勝手にも無断で持ち出し、ウルクへと進行を行った挙句グガランナを破壊され、今では信仰も薄れて行っている。我が愚妹、なぜそこまで天の楔を恐れる!? 

 

「違うわよ。私が恐れているのはあの原初神だけよ。グガランナをも破壊できるほどの力をあいつは持っているのよ!」

 

「ああ、グガランナを破壊せしめたという例の原初を名乗る愚者か。成程、確かにそれであれば恐れても致し方あるまい」

 

「おいおい、マルドゥク! それじゃあ、あまりにもイシュタルが不憫ではないか天の楔もだが原初神を語る愚者にもそれ相応の罰を与えるべきではないのかよ」

 

 語り始めたのは、同じくアヌの子である嵐の神であるエンリルであった。

 

 エンリルは、陽気にカイザ・ウォーカーの処罰を訴える。

 

 イシュタルは、エンリルが自分を思ってではなく踏み台にされたと感づき苛立ちを隠しきれなかったがエンリルとの力量差を鑑みて断念した。

 

「ギルガメッシュを処罰するのには反対だ。彼は原初神を語る者によって毒されてしまっている」

 

 イシュタルと違い、エンリルと同様にカイザ・ウォーカーの処罰を求めたのは正義の神シャマシュであった。

 

 彼は、ギルガメッシュを誑し込んだカイザ・ウォーカーに怒りを感じていた。

 

 他の神々もそれに応じて行った。

 

「しかし、お兄s「イシュタル、ならば天の鎖ではどうだ」なんですって!?」

 イシュタルは、エンリルの提案に怪訝の意を叫んだ。

 

「エンリル、それはどういうことだ?」

 

「何、いくら強いやつでも友人の死は堪えるだろうさ。それにあれも本来の使命を放棄しているではないか」

 

「成程、それであれば天の楔も我々に従うことだろう」

 マルドゥクは、深く頷いた。

 

 後に後悔することなど知らずに。

 

では、決議を取ろう。エンリルの案を承認するものは手を挙げよ

 アヌの決議に一柱また一柱と手を挙げ始めた。

 

 ほぼ全員が承認したが、イシュタルを含め少数の神は手を挙げなかった。

 

 それは件のカイザ・ウォーカーの戦いを直接眺めた者たちであった。

 

 その者たちは、決議に承認を下した神々を憐れんだ。

 

では、承認が多数のためエンリルの案を施行しよう。これにて解散とする

 

 其の言葉により、数多の神々は己の神殿へと期間を果たしたがエンリルは顔をうつむきながらほくそ笑んでいた。

 

 その様子を父であるアヌは見つめていた。

 

 

 

 




はい、作者のメガネキャラ最高です。
投稿が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
年末は、風邪を引くわ。グラボのファンがうるさくなったと思ってドライバーのせいかなと思ったら死んだだけだったし、そのような数多の問題が重なってしまい投稿できませんでした。
いやー、本当に去年は厄年なのかと確認程でしたよ。
38度越えが続いて、風邪じゃないだろ。と思ったら普通に風邪でした。
最近、インフルが増えてきたみたいですね。久しぶりにニュースを見たらそんなことを仰っていました。私自身、インフルではありませんでしたが皆さんも冬場なので菌に負けないように。
それとグラボが届けばスマホでの書き込みでは無くなるので投稿頻度が以前に戻ると思われます。
しばし、お待ちください。
金欠なんです。グラボが高すぎる。
物価おかしすぎるよ。

話は変わり、FGO攻略。
只今ミクラン攻略中 攻略中でございます。
ええ、その通りORTですよ。
強化に必要なQPが全然足りません、boxイベもっとやっていればよかったと後悔するこの頃です!
石1000個は、彼方に消え去り、虚無感だけが残りました。

しかし、後悔はありません。

何故なら、どうせ自分の運ならあったところですり抜けるだけなんでwww

今気づいたんですけど、まほよの銀幕デビューは何処に行ったんでしょうか。やっぱり鬼滅の映画が終わるまでお預けですかね。

まぁ、型月名物の期間延期ですからね。なれたものですよねーーーー

もし実現してくれるのであれば、私個人ではらっきょのような感じにしてくれるとありがたいんですけど、皆さんはどうですか?

おっと、ではここらで筆を置かせてもらいます。

次話をお待ちください!

追記
ロードログレス引きました。
しかし、モニュメントが全然足りません。
FGO初心者(3年目)にはキツイですよ!

次は何編がいいですか?ちなみにここで選ばれなくてもやる可能性はありますが日本編は短いかもしれません。それとケルト編の一部は絶対出ます。

  • ギリシャ編
  • 北欧編
  • ケルト編
  • 日本編
  • ブリテン島編
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