とある転生者の旅路   作:メガネキャラ最高

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さあ、聖バレンティヌスに祈りを捧げましょうか。

え、チョコ?

何を言っているんですか。

あんなもの某企業の陰謀ですよ!?

ちなみに下駄箱、机含め、定番場所に入っていた経験などFate/zeroですよ!!!

三次元などどうだってヨシ。

みんなでバレイべ楽しみましょう!

勿論、私はモルガン陛下からチョコをいただきたいと思っている所存です。

皆さんはどうですか?

しかし、推しからチョコをもらえるなんてなんと幸せなことでしょうか。

さて、本編始まるよ!


第六話 神代との決別の日 前編

 

第一節

 

 

 

「エルキドゥ──」

 

 エレシュキガルの一件からそう時間もたたぬ日に事件は起きた。

 

 早朝の私は徹夜で新しい魔術の開発に勤しんでいて睡眠を取っておらず久方ぶりに日が昇るころを目にした。

 

 それを見て、業務の準備のために片づけをしていた私の元に祭司長であるシドゥリが訪れた。

 

 彼女は、息も絶え絶えで顔色も優れていなかった。

 

 私は、声を掛けたが彼女は説明を求める私を差し置き、私の手を掴みとるとエルキドゥにあてがわられた部屋に連れて行った。

 

 そうして今に至る。

 

「済まないね、兵器であるこの僕がこの様になってしまって────」

 

 私の眼の前には、汗を顔に滴らせ、寝具にて悶え苦しみながらも私に優しく微笑みかけるエルキドゥの姿があった。

 

「エルキドゥ────いったいなにが?」

 私は、動揺を隠しきれずに震えた声で尋ねた。

 

 私がここまで動揺するのに訳があった。

 

 と言うのも、エルキドゥは天の楔であるギルをおさめるために作り出された泥の人形である。

 

 昨今、民達と関わり人間に近づいたからと言え人間になったなどと言うことは起きない。

 

 そんなことが起きるならば、それはある種の魔法に近いレベルの現象であるからだ。

 

 いくら神代と言えども、そのレベル現象が起こるはずもない。

 

 そのため、エルキドゥがこうして苦しみながら伏していると言うのはありえない事象なのだ。

 

「驚いた、君もそんな顔をするんだね──」

 一瞬顔を見開いたが、再度微笑み直して私を見つめた。

 

「そんなことはどうでもいい! 何があったか言え!!!!!」

 

 その声に周囲にいたエルキドゥの看護を行っていた者たちが怯え怯んだ。

 

「カイザ殿。声を荒げないでください。今ここは病室なのですよ」

 

 そんな私をシドゥリは恐れなどせずに治めた。

 

 そうして、私は冷静さを取り戻すと問いかけ直す。

 

「ああ、済まない取り乱してしまった。エルキドゥ、教えてくれ何があったんだい?」

 私は、いつも道理の口調に修正し穏やかに尋ねる。

 

 すると、エルキドゥは語り始めた。

 

「夢を見たんだ、神々が集まっているところを。僕たちについての。はっきりとは分からなかってけど、多分僕たちの行動に怒りを覚えて僕を呪ったんだろう。君たちよりも僕に掛けた方が効果的だからね」

 

「ッツ!!!!!」

 

 なぜ気づかなかった。タイミングはいくらでもあった。彼と出会った時から考えられたことだろ! 

 

 私とギル。神に反する私たちが行動を進めれば、罰としてこうなることなんて────

 

「そんなに怖い顔をしないでくれ。君にはギルがいるだろう? 僕のような兵器に構わず彼の傍にいてくれ」

 

 彼は、変わらず微笑む。それは、まるで聖母の慈愛のような微笑みであった。

 

「エルキドゥ、そんなことを言うんじゃない。君が死んだらギルだって」

 

 私はそこで言葉を詰まらせた。詰まらせてしまった。

 

 エルキドゥは、そんな私を尻目に再び言葉を紡いで行く。

 

「彼は、確かに自分勝手だけどもいい人間だった。いつも何処かでは僕や民たちを案じていた」

 

「君とギル、それにウルクの民たちと出会えて語句は本当に良かった」

 

 再び微笑みながら、天を見上げる。そこはただの天井だがエルキドゥには違うものが見えているようだった。

 

「エルキドゥ、今は寝て体を休めてくれ」

 私は、感情を押し殺しながら眠るように促す。

 

「そうだね。君が言うのならそうするよ」

 其の言葉とともにエルキドゥは瞼を閉じて眠りへと入った。

 

 

 

 

第二節

 

 

 

 エルキドゥが眠ったことを確認すると、私は片膝をついて彼の手に自身の手を添えた。

 

 途端、エルキドゥの手から私の手をパイプとして薄紫色の何かが移り渡って行き、全身へと植物の根のように張って行った。

 

 すると、エルキドゥの容体は安定し汗も少しは減り、呼吸も通常に近いものになって行った。

 

 私はその様子を見届けると立ち上がって振り返った。

 

「シドゥリ、それに周囲の者たち。エルキドゥの看病を頼む。私は用ができた」

 そう伝えると、私は部屋を出るために歩みを進めた。

 

 しかし、部屋を出る私にシドゥリは一言声を掛けた。

 

「必ず、必ずや戻ってきてください。ウルクの皆は貴方を敬愛しているのですから」

 

 其の言葉に私は、思わず歩みを止めてしまった。

 

 部屋には、数刻の間静寂が滞った。

 

「──────ーシドゥリ、看病を頼むよ」

 彼女に微笑みかけ、私は再び歩み始めた。

 

 そんな私を彼らがどのよう様子で見つめていたなんてその時の私には知る由も無かった。

 

 

 

 そのようにして部屋を出て、廊下の突き当りを曲がるとそこにはギルが佇んでいた。

 

 彼には私がこのような行動に出ることが筒抜けだったのだろう。

 

 流石は、英雄王といったところだろう。

 

 いや、もう彼は英雄王の面影はない。そこにいるのは賢王であるギルガメッシュに近い。

 

「カイザ。貴様でも神々を皆殺しにするのは厳しいのではないか?」

 

 彼の第一声は、それであった。

 

 エルキドゥも言っていたが、彼の根は穏やかで優しいんだ。

 

 人類の裁定者として、自らの生を決めてしまうほどに。

 

 彼は私に毒されて神代との決別を決めたわけではない。

 

 彼は私と出会う前からその準備を整えていた。

 

 私が接触しなくとも彼は神話通りに神と決別していただろう。

 

「ギル。心配してくれてありがとう、だけどこれは私個人で肩を付けたいんだ。それに皆殺しではない。私たちの思想を理解し尊重しようとしている者もいるからね」

 

 そう、神の中にも私と同じように考えているものも少なくはない。

 

 私が鏖殺するのは、また違う機会だろうさ。

 

 だけど。

 

「そうだな。ギル、君は民達が再び神を望まぬようにしてくれ。今の子たちであればそんなことは望まないだろうが次やそのまた次の子達は分からない。だから、後世にも伝わるようにしてくれ」

 

 人間に出来ることにして、最高の行動。

 

 それは、後世に伝えることだ。

 

 それは、他のものたちにはできない人間が持つ武器だ。

 

 人間は、弱い。

 

 武器が無ければ、簡単に喰われてしまう。

 

 だからこそ人間は、多くの武器を得た。

 

 棍棒、火、毒、槍。数多の武器を得ても勝てぬ時がある。

 

 そうして彼らは手にした。

 

 知恵という禁断の果実を。

 

 それは、人間が唯一強者。いや、神にすら届きうる究極の一。思考の武器である。

 

 たが、伝えたところでいずれかは風化するかも知れない。

 

 馬鹿馬鹿しいと投げ捨てられるかも知れない。

 

 それでもいい。伝えろ。

 

 それが人間に許された行為なのだから。

 

 

 

「そうか、では(おれ)は民達を率いよう。それだけはカイザ、貴様にもできぬ。我にしかできぬことであるからな」

 

 そりゃそうだ。私なんて元はコミュ障だからね。

 

「ギル、君のおかげで私はようやく自身のことについて理解できた。もう、くよくよしない。言い訳もしない。進み続ける。それがどんな結末になったとしてもね」

 

 その言葉にギルは驚きをみせ、そして途轍もない笑みを浮かべた。

 

ふははははは!!!!!! それでこそカイザ・ウォーカーと言う者よ。今の貴様は初めて会った時と同様、いやそれ以上に輝いて見えるぞ

 

「それはどうも。では、縁があればまた会おうかギルガメッシュ。私の数少ない友人、親友よ。エルキドゥにもそう伝えておいてくれ。起きた頃には片が付いているはずだから

 

 そうして、私はこの地を後にした。

 

カイザ・ウォーカー。進み続ける者か、何という名を与えられたものだ

 

 ギルは、カイザ・ウォーカーがいあなくなった後そんなことを思い耽っていた。

 

 

 

 

第三節

 

 

 

「あははははは!!!!全く、馬鹿にもほどがあるな。マルドゥクもシャマシュも俺に従った奴らも全員」

 

 神の事実上の最高神たり得ているエンリルは己の広大な神殿エクルで、酒を喰らいながら笑いこけていた。

 

「あれに手を出せば、従うと本気で思ったのか。そんな訳がない。もともと平和的に俺たちから離れるようみたいだったが今ではもうそれは不可能だ。奴は自ら俺たちを殺しにやってくる。あれはもう止まらないさ、精々抗おうじゃないか!!!!!!!」

 

 途端、天井部からはけたたましいほどの轟音と共に神殿に振動が走り始めた。

 

 その様子にエンリルは酒を飲み干す。

 

 彼の顔には途轍もない、人間が人生で一度あるかないかなほどの笑みを浮かべていた。

 

 その轟音の正体は、天井が破壊され振動が収まることで姿を現した。

 

「Hello、エンリル。初めまして、私の名はカイザ・ウォーカー。どうぞお見知りおきを」

 土埃とともに彼の存在は現れる。ケタケタと薄気味の悪い笑みを浮かべながら言葉を発す。

 

 カイザ・ウォーカーは、友に手を出した存在を抹殺するために足を運んだ。

 

「原初神!ようやくお目に掛かったよ。何せ俺たちの眼ではお前のことを視ることが出来ないんだからな!何せ法則が違う。この世に生まれたにもかかわらずお前は俺たちとは属さない」

 

「それは残念だったね。まぁ、私には関係のないことだ。本題に入ろう、君は私に対して何回かチョッカイをしてきたね。イシュタルを唆してウルクを襲わせたり、私の友人に手を出してくれたり。まぁ、他にも余罪はあるのだろうが。そんなことはどうでもいい」

 

「心優しいエルキドゥなら恩赦を掛けてくれともいうかもしれないから君に二つの選択肢を与えよう」

 

「一つは、この世から去り座に行くこと。二つ目は、私に殺されて座に行くということだ」

 

「何方がいい。私の推奨は後者だけど」

 

「じゃあ、お前を殺して今後もこの地で楽しむという選択肢を取ろう」

 

「ふふふ、あっハハハハハ!!!!!!」

 

 それに笑みは消え去った。

 

 そこにあるのは殺意のみ。

 

たかが1万年程度生きただけで調子乗ったガキが、私の身内に手を出して生きて逃げられると思うなよクソガキ。教育してやる。さぁ、殺し合いだ権能でもなんでも持てる力をすべて引き出せ!!!!!! 

 

 

『拘束制御術式第三号第二号第一号解放』

 

状況A『クロムウェル」による承認認識

 

眼前敵の完全沈黙までの間

 

能力使用限定解除開始

 

 彼の者が身に着けている手袋の術式が紅く輝きをみせ、存在感を増させる。

 

Screaming like a pig(豚のような悲鳴を上げろ)

 

「俺に悲鳴を上げさせてみせろ、原初神!!!!!!!」

 

 エンリルは、彼の者目掛けて杯を投げ、同時に風の刃を無数に飛ばす。

 

 それらが視界を埋め尽くさんとする中、彼の者は冷静に真横に手を出すとそこから銀の波紋が発生した。

 

 波紋は、揺らぎを見せながら一つの刀を差しだす。

 

 鞘に収まった一つの刀を。

 

 彼の者はその刀を手に取ると腰に収めると、滑らかに流れる川の如く刀を抜いた。

 

 刀身は、深淵の如く漆黒。恐怖を覚えさせるもの。しかし、引き入り魅了させる。

 

 名を牙月。彼の者が自らを材料とし作り上げた至高の一振り。

 

 それは化け物を斬ることに特化している。

 

 風の刃は、通常の風に比べれば早くはあったが所詮は風に過ぎない。

 

 どんなに早い風でも光ほどの速度はおろか、音速にようやく肩を並べられるかどうか曖昧な速度であった。

 

「生憎だが、音速であればアルビオンで体験済みだ」

 

 彼の者は、風の刃たち目掛けて薙ぎ払う。

 

 牙月からは、斬撃が飛び出した。

 

 斬撃は、風の刃目掛け進み両断する。

 

 風の刃は両断されたためか、制御を失いその場にて風を撒き散らし乱れながら崩壊していき四方八方に飛び去って行った。

 

 同様に風の刃を両断した斬撃もまたエンリルに向かった。

 

 エンリルは、斬撃に対処するために竜巻を発生させ斬撃の軌道を逸らした。

 

 その影響で周囲の壁は粉々に砕け散り、残っていた天井は完全に崩壊し天からは日差しが入り込んだ。

 

 神殿の形などそこにはない。煌びやかな神殿の面影など存在しない。神殿の鄭を無くし、そこはもはや瓦礫の山でなり果てたのだ。

 

 両名はそんなことには目もくれず、目の前の戦いに嗜む。

 

 それはそうだ。至極な食事の前にはそんなことなどミジンコほどどうだっていい。

 

 今はただ、目の前の食事を嗜みつくすのみ。

 

「今ので大概の奴らは痛手も喰らうんだがな。流石グガランナを破壊せしめただけのことはある。じゃあ、次はこれで行こう」

 

 天空には暗雲が差し込み日差しは消え、周囲の空気が重くなり、気温も一瞬にして急激な減少を始めた。

 

「『神雷』」

 

 エンリルは、風では相性が悪いことが分かると風よりも遥かに速い速度も持つ雷撃を放った。

 

 放たれたそれらは、辺り一面に天から紫電を纏いけたたましい音と共に彼の者の頭上はおろか半径一キロ四方に降り注がんとしていた。

 

 そこで彼の者は、牙月にかつて破壊したグガランナの雷を纏わせると上空に放った。

 

 雷撃と斬撃は衝突し合うと凄まじいほどの閃光を巻き起こした。

 

 しかしそれは一時的なことでさらなる雷が辺りを絶え間なく降り注いだ。

 

「くく、あれはグガランナの者を纏っていたな。確かにあれであれば俺の雷にも匹敵する。流石だな。しかし、物量で押し負けたか」

 

 光が収縮し、埃たちが落ち着き視界が晴れるとそこに彼の者は存在せず雷の熱によって溶けた残骸のみが残留していた。

 

「何!?」

 

 エンリルは後方を振り返る。

 

 そこにはエンリル目掛け牙月を振るいながら、浮遊する彼の者がいた。

 

 しかし、エンリルがその存在に数瞬早く気が付いたために回避が間に合い、刀はエンリルの頭頂部の角を切った。

 

「ああ、愉しい。もっとだ、権能を駆使しろ! この私を満足させて見せろよ、クソガキ────」

 

 エンリルは戦慄した。

 

 自らの敵対者の身体の状態が想像を絶するものであったからだ。

 

 血肉は焦げ、眼球も垂れて原型も保っておらず、髪の毛も何もかもが形容するに絶する状態であったからだ。

 

 そう、彼の者は攻撃を避けたわけではなかった。

 

「何を怖気ている。処女でもないくせに、今更怖がろうが関係ない。私はお前を殺すだけだ」

 

 満身創痍の彼の者は、その肉体を引きずりながら意思を表明する。

 

 その姿は捕食者の眼をしていた。

 

「ははは!!!!そうだな、俺らしくなかった。いいぜ、楽しもう。この戦いであれば俺は満足できる!!!!」

 

「これだ!!俺はこれを渇望していた」

 

 エンリルは、天に手を翳すと天から黄金の弓が現れ、手中に収まった。

 

「エンキか!」

 

 エンリルは、エンキを別ち双剣へと変形させると彼の者に全速力で突撃した。

 

 彼の者は避けきれないと判断し、襲い掛かろうとするエンキを牙月で受けた。

 

 互いの接触部からは火花が散り合い、金属音が鳴り響く。

 

「フン」

 

 エンリルは右手に持っている方のエンキを牙月から離し、牙月で耐えている彼の者の左胴目掛けて振り下ろした。

 

、ふん!!!!!」

 

 彼の者は、刃が胴に当たる間際に牙月を引き、エンリルの押す力を利用して右へと避けた。

 

 エンキは、そのまま地面へと突き刺さりもう片方のエンキもまた空を斬った。

 

 すかさず彼の者は、エンキを踏みつけて固定し牙月を左腕目掛けて薙ぎ払った。

 

凍てつく吹雪(ブリザード)!」

 

 エンリルはエンキから手を放して、避けようとしたが今度は逃すまいと魔術回路を回し一工程(シングルアクション)の氷結魔術を行使してエンリルの足元を凍らせ身動きを取れなくした。

 

「クソが!!!!」

 

 牙月はそんな言葉を聞き入れずに、エンリルの左腕を切り裂いた。

 

ガtッッ!!!!!!!!!!!

 

 左腕は天高く舞うと、瓦礫の中に消え去った。

 

「おいおい、さっきまでの威勢は何処へ行ったんだ!?私を打ち破るんじゃなかったのか、エンリル?まぁ、いいこれでしまいに」

 

 とどめを刺そうとした瞬間、彼の者の口からは致死量レベルの血が溢れ出した。

 

 

 彼の者は目を見張り、自身に起きた現象の解明を始めた。その様子にエンリルもまた怪訝な表情を浮かべた。

 

 何が起きた。毒?

 

 いや、そんなことはない。毒を仕込んだのであれば奴が動揺するのは矛盾する。

 

 であれば、考えられるのは一つ!!!!

 

 そうして彼の者は、一つの結論にたどり着いた。

 

「呪いかーーーー」

 

「そうか、お前天の鎖の呪いを自身に移したのか。何故、最低限の動きしかしないのか。発言に対しては甘い攻撃ばかりだったのか。可笑しいと思ったがそういう事か」

 

「そりゃそうさ、あの呪いはただの呪いじゃない。メソポタミアすべての呪いを凝縮して創り出されたものなんだからな」

 

「あれは七日でその生命を死なせるようになっているらしいが。どうやらお前に呪いが移ったためか、設定基準を測定し、修正に手間取ったようだがそれも今さっき終了したようだ」

 

「呪いの効果は天の鎖の倍、いやそれ以上だな。俺たちでも数刻もすれば死に至るレベルだが、それを初日でとは恐れ入るよ」

 

 隙を見せれば攻撃を受けるのは当たり前。

 

 彼の者のみぞうちは、モロに攻撃を食らい後方へと吹き飛んでしまった。

 

「んぐ、、、、、」

 

 彼の者は血液を飲み込みながら、なんとか回転を行い体制を整えて着地に成功した。

 

 しかし、その刹那視界に入ったのは両手にエンキを携えたエンリルだった。

 

「左腕だと!?」

 

 再生?いや、牙月に切られれば再生はかなりの労力と時間を掛けなければそんなことは、、、

 

 彼の者は、先程までエンリルがいた地点に見覚えのない血溜まりがあることに気が付いた。

 

 そうか、エンリルめ。斬られた断面をさらに自らで斬ったな。

 

 牙月には、再生を阻害する力があるがそれは斬った部分にしか働かない。

 

 牙役に言えば、さらに削った部分では普通に再生することが可能なのだ。

 

 彼の者の視界のエンリルは、拡大していく。

 

 そうして彼の者はあっけなくエンキで切りつけられてしまった。

 

 相手は神造兵装。神である彼の者にも良く効くレベルのものであった。

 

 彼の者は、力尽きて後方へと倒れる。

 

 同時に金属音が微かに響いた。

 

 血は床に流れ、懐かしい死の匂いを感じさせた。

 

 彼の者。カイザ・ウォーカーは、己の流れる血を眺めながら意識を手放した。

 

 

 その瞬間、どこかにある大時計は針を止めた。

 

 

 

 

 第四節

 

 

 

 気が付くと其処は無であった。

 

 何事もない、いやなんでもあるからこそ何もないように感じるのだ。

 

 深海の底のようにも感じさせるこの場所を私は遥かな過去に体験したことがあった。

 

 ここは、根源の渦。

 

 森羅万象。ありとあらゆる事象を内包した世界の中心にして、0。

 

 そして私が生まれた第二の地。

 

「はぁ、もうお仕舞いか。これから楽しくなるのに災厄だ」

 

 傷つけられた身体は、消え去り出血もなく完治していた。

 

 いや、治ったわけではないのか。

 

はぁーー勝ちたかったな。あいつ身内に手を出したりとかいい迷惑で生意気で気に入らなかったけど、それでもあいつと全力で勝ちたかったな」

 

 気を掛ければ、歩くこともできたがそんな気力もわかず浮かびながら感傷に浸った。

 

 そうして、瞼を閉じようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故天の鎖から呪いをその身に流し込んだ。何故だ、答えよ我が主』

 

 

 

 

 何処からか声が聞こえた。

 

 私は、目を閉じるのを止め周囲を確認した。

 

 すると、渦の中心付近に生命がいることに気が付いた。

 

「フム、黒龍か。嫌いじゃないね」

 

 其の言葉が聞こえたのか龍は、私の近くに接近し、言葉を紡ぐ。

 

『何故だと聞いているのだ、答えよ我が主』

 

 重低のある声であった。

 

 其の言葉がこの場に響く。

 

「分かったよ。はぁ、全く。全然性格が似ていないぞ」

 

 私には、龍の正体についておおよその見当がついていた。

 

 根拠は、弱く。確証性のないものであったが、それでも私にはそれが回答だと分かった。

 

『この龍は、私から生まれた声明だ』ということに答えが。

 

『如何にも。我は、我が主の龍の力がアルビオンの光線を喰らったことをトリガーに生まれたもの。我が主の創生と相反する無の権化』

 

「成程ね。そりゃ合わないわけだ」

 

『我が主、返答をしないのか。であるならば我は早急にことを済ませるが』

 

「いやするさ。なに君も私が死んで暇になるんだ。ここで誰かが到達するのを気長に待つには話の一つもしないとね」

 

「第一に、私が呪いを引き取ったのはそれがベストであると判断したからだ。私の身体であればあの呪いは耐えられるものだったからね。まぁ、それに友人を助けたかったし。何よりカッコつけたかったからかな」

 

『理解不能だ。何故そのようなことでその肉体を侵す。害する』

 

「フム、それが分からないのであれば君は人間性が分からないんだろうね」

 

 いや、生後幼いからか?

 

『我が主、貴方は人間ではなく化け物を自称しているのではなかったのですか?』

 

「そうだよ。でもね、化け物と怪物は違うんだよ。私は、人間が好きだ。人間賛歌を歌っている。確かに人間は愚かで醜く自己の利益を第一とする知的生命体だ」

 

「だからこそいいんじゃないか。その愚かさを含めて私は人類を好んでいる。まぁ、外道はあまり好まないがね」

 

 それはそうだ。筋の通った悪党もいいがやはり私はどちらかというと全よりのほうが好きだ。

 

『我が主、理解しました。貴方のその思想は貴方を傷つける』

 

『これ以上、我が主の肉体を傷つけさせない。その体は私が使う』

 

 あれ、選択ミスったーーーーー

 

 龍は、口を開き私を喰らった。

 

 

 

 

第五節

 

 

 

 彼の者の肉体をエンリルは眺めていた。

 

「つまらない最後になったが、お前との戦いはこの生で一番だ」

 

「この戦いの最後は、俺の最大攻撃にしてやる」

 

 エンキの柄頭を合わせると、弦が現れ黄金の弓へと姿を変えた。

 

「天を見よ」

 

 弓柄に中心として術式が展開される。

 

「滅びの火は満ちた」

 

 一本の矢が放たれ、彼の者の肉体に突き刺さった。

 

 その矢から天に向かいもう一本の矢が放たれる。

 

「これは、世界終末の災い」

 

 天には七本の光の矢が集い、一本に収縮し地に向かい放たれた。

 

 その矢は、彼の者目掛け進むとその遥か上空にて爆破し空に術式を刻み込んだ。

 

「世界よ、沈め!来たれナピュシュテムの大波!!!」

 

「これにて、世界はリセットされる。今度は、箱舟などない。人間の足掻きを見せてもらおうか!!!」

 

 エンリルが背を向けて天に向かおうとした瞬間、彼の背筋が凍り付いた。

 

『くくく、ハハハハハハハハハハ!!!!!!何故このような者に手加減など、我を使わなかったのか我が主は理解できない』

 

 振り向くとそこには、刺さった矢を抜き胸から出血している彼の者であった。

 

「ばかな。もう既に」

 

『貴様が、我が主の敵対者で間違いはないか』

 

 肉体は、動作を再開する。

 

 しかし、それは赤子。いや、初めて操作するゲームのアバターのようであった。

 

 身体はふらつき、力がしっかりと入っていなかった。

 

「お前は誰だ。原初神ではないようだが!?」

 

 エンリルは、その様子から目の前の存在が先ほどとは異なることを直感した。

 

『我に名などない。あるのは己が原理のみ』

 

「原理だと!?」

 

『左様。我は、我が主カイザ・ウォーカーより生じた生命体。我が主の創生と相反する無の権化である」

 

 肉体がそれを口にした途端、彼の者の左腕は黒龍へと変貌し唸りを上げた。

 

 それは、上空に位置する術式に一直線に向かう。

 

 唸りを周囲に轟かせ、口を尋常までに開くと喰らい破った。

 

「何だそれはーーー」

 

 エンリルは、光景を見つめ、唖然とし言葉を溢す。

 

 そんな言葉を気にせずか。そもそも配慮を掛けるべき存在だと認識されていないのか。

 

 彼の者の肉体を操る存在は言い放つ。

 

『我には理解できないが、我が主が愛す世界を終わらせるわけにはいかない。エンリル、主神アヌの息子の一人。我は我が主のように手加減など行わない』

 

『ただ貴様を滅ぼす』

 

 彼の者の肉体を奪った龍は、無機質に宣言する。

 

 己が主を傷つけし、敵対者を皆殺しにするまであれは止まらない。

 

 命乞いでもするがいい。あの時のように。

 

 絶対的な相手に頭を垂れてつくばれ。平伏など好きにしろ。

 

 無の権化である龍には意味などないが。

 

『拘束制御術式第零号解放』

 

 手袋の紋章が再び赤く染めあがり、式を現す。

 

■■■■■■■■■■■(現出する。我は無の権化)

 

 エンリルには、その言葉を認識することができなかった。

 

 ただ何かを発した光景を見たのみである。

 

 しかし、世界は異なった。

 

 世界()はその言葉を受諾する。

 

 この地球という星の世界(神代)もまた同様に認め、空は原初を想起する。

 

 彼の者の肉体に暗黒が立ち込める。

 

 それらが彼の者の肉体を覆い尽くし、変化させる。

 

 いや、肉体を操る存在の真の姿が顕現した。

 

『メソポタミアの神格。原初、無に還るがよい』

 

 其の言葉と共に暗黒は散り、姿を現す。

 

 漆黒、根源の渦のような。色を知らぬような禍々しくも魅入られる龍が今ここに。

 

「エンキ!」

 

 エンリルは、冷や汗をかきながら弦を引き矢を放っていく。

 

 矢は、一本また一本と放たれそれは龍の視界を埋め尽くすまでになった。

 

 それはエンリルの焦燥をさらに強調させるものでもあった。

 

 しかし、そんなもの制限など知らぬ化け物には通用しない。

 

 黒龍の口内には、その身と同様な色をした炎が凝縮し丸尾を帯びる。

 

 口内で凝縮された炎は轟音と共に放たれ、矢に向かう。

 

 炎は、矢を包み込み、同時にエンリルが放った矢はこの世から消え去った。

 

 その様子にエンリルは戦慄する。

 

 いや、彼は矢が消えたことに驚いているのではなく。その影響下で炎に接触した地面が消え去ったことに驚いているのであった。

 

 この世界において、この星にはテクスチャというある種の敷物が敷かれている。

 

 それが炎により、存在を消した。それは神話の一撃レベルでようやく可能な現象であった。

 

『フム、どうやら我が活動するにはこの世界は脆弱すぎる。その程度の火力で、テクスチャが消えてなくなるとはアルカディアほどの戦闘は行えないようだ』

 

 エンリルが再びナピュシュテムの再現を行おうとし、エンキを構えようとした瞬間、黒龍は動いた。

 

 黒龍は目にも止まらぬ速さで接近すると、爪で腕ごとエンキを弾き飛ばし眼前のエンリルに至近距離でブレスを吐こうとした。

 

 ブレスが充填、凝縮され、放たれる間際にエンリルは自らの権能で竜巻を発生させその場を離れた。

 

 龍もまた、首を捻りブレスをエンリルに向かうように照準を調整したがエンリルの回避が一歩先を行っていた。

 

 エンリルの片腕からは、血が流れ出ていたがそれは一向に止まることは無かった。

 

「お前、一体何をした!?何故再生できない!」

 

『我は無の体現。故に死が見え、与えることも出来る。貴様の腕を殺した。再生する筈もない』

 

「馬鹿な、そんな筈が」

 

 そう、龍は無の体現であり権化でもある。

 

 では、無とはなんだ。

 

 何も存在しないことか?

 

 いや違う。

 

 無とは、原初のこと。

 

 誕生以前に存在するものにして終末に存在するもの。

 

 存在するが存在しない。シュレディンガーの猫のようなもの。

 

 それは、死であり生でもある。

 

 捉え方次第なのだ。

 

 そもそも、この世界に死はなどはない。

 

 死は、原初へと還ることなのだ。

 

 存在現象には、寿命がある。だからこその機構(システム)が死なのだ。

 

 形を失い、原初の地に還り世界の再誕とともに蘇るそれが死というシステムの本質なのだ。

 

 つまり無とは死なのだ。

 

 であれば無の体現者たる龍が死を操ることができるなど当然の道理だろう。

 

『我には、死の権能も組み込まれているのだ。敵対者』

 

 死の権能。

 

 死の全てを支配する権利。

 

 無の体現者が持ち得る絶対のもの。

 

 無に属する存在。

 

 もはや勝ち目などエンリルには存在しえなかった。

 

 当たり前だ。敵対者は、自らの原初より生まれし生命。

 

 原初の体現なのだから。

 

 エンリルに残された手は、権能、力の全てを総動員させ闘争に走ること。

 

 だがそれも逃げおおせる確率は宇宙創成レベルだろう。

 

 エンリルはその事実に笑いが溢れ出てきた。

 

 己の眼前に佇む一匹の龍に為す術もなく立ちおおせる自身が愉快でたまらなかったからだ。

 

「無の体現者。終わりだ、俺の夢はもう覚める。この至福の時間も終わり、日が昇る。だから俺を夢にいるうちに原初に送ってくれ」

 

『承知した。さらばだ、原初に還るがいい』

 

 エンリルは、龍の口内に炎が充填、凝縮される様子を確認すると目を閉じた。

 

 そうして凝縮された炎はエンリルを包み消滅させた。

 

 筈であった。

 

 業火が自らに降り注がないのを不思議がったエンリルが目を開くと、そこには己を苦しめた龍が逆に苦しんでしまっている姿が写った。

 

『いったい何が』

 

「おいおい、私をおいて楽しまないでくれよ。全く客席に座るのは自分の意志でのみだけがいいなだからな」

 

 龍の中から聞きなじみのある声が周囲に響いた。

 

 また同時に、龍の身体からは彼の者が肉体を伴って姿を現した。

 

 分離とはまた違う。

 

 彼の者は、肉体の所有権を奪い返し龍を自らの身体から追い出したのだ。

 

『一体何を行った!!!!!!カイザ・ウォーカー!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

 龍の怒号が辺りに響き渡る。

 

 何故、彼の者が肉体の所有権を取り戻すことができたのか。

 

 時を、過去に遡せよう。

 

 過去と言っても、つい数刻前の出来事ではあるのだが。

 

 その時起こった出来事により、この世界の運命は大きく変動した。

 

 

 

 

 

第五節

 

 

 

 愚かな化け物は、己の半身たる龍により身体を奪われた挙句為す術なく傍聴席に押し込まれたのであった。

 

「はは、三文劇にはなったかな」

 

 私ことカイザ・ウォーカーはそのようなことを考えながら自らをツマミとして笑っていた。

 

 豪快にして、見っとも無い。

 

 しかし、そこに憐れみを向けることが出来ぬような醜態がそこにはあった。

 

 それを見て初めて、人は人間らしいというのかもしれない。

 

「さて、有り難いことに彼が呪いを無くしてくれたおかげでこうして意識を取り戻すことが出来たわけであるが」

 

 ありとあらゆる可能性を考え込む。がしかし結局行き着く先はみな同じであった。

 

「うーん、詰んでいるなーーーー」

 

 どのような手を尽くしたとて、結局身体の所有権を取り戻すことはできないだろう。

 

 身体の所有権を奪われている現在、カイザ・ウォーカーの力の性能は激減している。

 

 何故か?と問われれば、それは単に身体がないことに所以している。

 

 カイザ・ウォーカーの権能含め、力は彼の者が元いた世界の根源が与えたものであり。この世界の物ではないのだ。

 

 この世の理から逸脱した力であるそれらは、彼の者の魂に紐付けられている。

 

 では、魂とは?

 

 答えは単純。霊基のことである。

 

 霊基とは、型月世界における魂のことである。

 

 今現在、カイザ・ウォーカーの魂は肉体に存在しており。ここに存在するカイザ・ウォーカーは精神体である。

 

 なので、精神体たるカイザ・ウォーカーに権能等など持ち合わせていない。あるのは、今までこの世界に刻み込んだある種魔法のような魔術の知識と剣技、そして科学知識のみである。

 

「魔術も精神体故に、魔力不足で満足に扱えない。剣技も、肝心の刀がない。今の私は神と言えども、ほとんどこの世界の三流以下の魔術師のようなものだ!」

 

 全身の力を抜き、背から倒れ込む。

 

 ふと、目の前にあるスクリーンを見る。

 

 そこには、エンリルに対して問答を行なっている光景が映っていた。

 

 景色からその光景は、自身の眼から発されたものだということは理解できた。

 

 

 はぁ、ただここで見ていろということか。

 

 全く、どれだけ過保護なんだか。

 

 まぁ、私が言えた口ではないがね。

 

 

 どれだけ愚痴を吐いたとて現状は何も変化しない。

 

 筈であった。

 

 

 

 

 

 

『へぇ、貴方ほどの存在がここで泣きべそを掻いているなんて。驚きだわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「、、、なるほど。これはこれは、私の生みの母ではありませんか。何をしにわざわざそのような姿(アバター)をしてまで足をお運びに?」

 

 そこにいるのは、煌びやかで華やかな着物を身に纏った黒髪の少女。浮世離れした雰囲気を醸し出す、美しい人であった。

 

『私、貴方のその堅苦しい見せかけの口調は好んでいないの。出来れば貴方が普段接しているようにしてほしいのでけれど』

 

「それじゃあ、遠慮なく。なぜ私の前に現れた根源?」

 

 同一個体ではないだろう。「」が。両儀式が生まれるのはもう少し先。西暦を超えた時だからね。

 

 おそらく、私に馴染みのある姿の方が良いと判断したのだろう。

 

 まぁ、私としても好都合だがね。

 

『ふふ、私にとっても貴方がいなくなるほうが困るのよ。あれは()でもあって、貴方でもあるけど、ほとんどが私。彼が活動を続ければこの世界はまた始まりへと回帰する。もう既に地球はその片鱗を見せているわ』

 

「なるほど、であれば彼の力を制限すればいいじゃないか」

 

『いいえ、貴方たちに私は干渉を許されていないからそれはできないわ』

 

 達観しながら、彼女?彼?は答える。

 

「へぇ、ご高説を賜おうか。根源」

 

『私は、貴方が元居た根源に作られたもの。だから、その根源から力を授かった貴方。そしてその力から生まれた彼に干渉することはできないの』

 

「なるほど。私に対して抑止力が働かないのは君の仕業かと思っていたがそういう口か」

 

「だったら尚更分からない。それでは君が来たところで何も変わらない。だってそうだろう、君は私たちに干渉できないんだから」

 

『いいえ、それは違うの。確かに私に貴方たちをできないわ。でもそれは貴方達が承認を下せば 可能なの』

 

「私にそれを承認しろと。そういうことか。で、具体的に何をする気なんだ」

 

『簡単よ。貴方には、私と永劫の関係になってほしいの』

 

「あいにくだが、私は君と恋仲になるつもりはないぞ」

 

 そんな返しをすると、「」は涼しげな表情で否定した。

 

『いいえ、そういうことではないの。この世界には貴方が必要なの。創生の力を持つ貴方が』

 

「なるほど、終わりが為されたときに私が再度始まりを行えということか」

 

 私の権能。

 

 創生。

 

 その性能は、この世界の創世時に実証済み。

 

 だからこそ、私のこの世界参入を認めたのだろう。

 

『理解が早くて助かるわ。いいえ、その通り。この世界に本当の意味の終わりはないけど、原初に還ることはある。だから、貴方にその役割を与えたいの」

 

「フム、ではその代わりの私の報酬は?」

 

『貴方をこの世界の頂点に座らせるわ』

 

「この椅子か」

 

 目の前に現れたのは、石席。

 

 煌びやかなど存在せぬ、嘗て見た冥界の女主人の神殿と似たものであった。

 

「ええ、これに座れば貴方はこの契約を受け入れたと判断され、同時に英霊の冠位の上。冠位の席、この世界の頂点の位である旧支配者(グレート・オールド・ワン)の力を得ることができるわ」

 

 旧支配者か。

 

 私がこの世界を創る際に、世界の外に出してしまった者たち。

 

 その者たちが冠された位。

 

 異質にして人間の理解の範疇に存在せず、姿を現せば世界は終焉に近づく。

 

 そのような存在。

 

 

 ギルは、天の楔。

 

 エルキドゥは、天の鎖。

 

 そして私は、、、

 

 

「、、、世界の楔。か」

 

 本当に似た者同士だよ。私達は、、、

 

「だが、冠位の座は霊基の話で無かったか?」

 

『いいえ、精神体だとしても可能よ。精神も生命を構成する三位一体の一つ。貴方が再び肉体を取り戻せば残りも自動的に組み込まれるわ』

 

 へぇ、成程ね。なら、、、

 

「答えは簡単だ」

 

「カイザ・ウォーカーの名の元に宣言する!」

 

「我は汝の契約に従い、また汝も契約に従う」

 

 そうして、背もたれに手をつける。

 

「さぁ、再び舞台に上がろうじゃないか!!!!!」

 

 そうして、彼の者は座に腰を下ろす。

 

 レバーは、決定され、道は確定した。

 

 後戻りは出来ない。

 

『彼とあの子。最後に笑うのはどっちなのかしら』

 

 さぁ、物語を進めよう。時計は再び動き始める。

 

 

 

 




 司書レーアちゃんによる解説コーナー

「どうも皆様、ごきげんよう。コーナーの主であるレーア・ウォーカーです」

「皆様、長らくの間私のことを見ていなかったので私のことを忘れている方もそう少なくはないと思われます。そこで軽い自己紹介をさせていただきます」

「私の名は、先ほど名乗ったようにレーア・ウォーカー。本作の主人公であるカイザ・ウォーカーの脳をコピーして作り上げられた人工知能であり、娘です」

「普段は、アルカディア内に存在する図書館(ライブラリ)の司書兼管理人を行っています。最も、現在では利用者も殆どおらず、屋敷の家事に勤しんでいるわけですが」

「出生に関して詳しく知りたい方は、第二話をご覧になってください」

「さて、ここからは今話について解説しましょう」

「初めに解説するのは、エンリルに関してですね」

「彼は、今までマスターであるカイザ・ウォーカーやその身内に対して直接ではなくとも間接的に手を出してきていました」

「その行動原理は、どれも面白いものを見たいからという衝動からでした。彼は、過去に世界を水で満たしたことがありました。メソポタミア神話のウトナピシュティムにまつわる大洪水の話に登場する災害ですね。この話は、ノアの箱舟に似ているとよく言われますがそれはそのはず。この地の災害をベースに生まれたのがノアの箱舟ですからね。似ないわけがありません」

「そしてまた、それも彼が人類を試して楽しもうと思いついたことがきっかけで起きたことでした」

「マスターにもそのような性質がありますが、彼はそれがもっと顕著に現れた存在ですね。だからこそ、マスターは殺意を持って戦いに挑みましたが結局戦いを楽しんでしまっていましたね。そこがマスターの悪いことで弱点でもありますね。戦いを楽しまず、全力で挑んでいたのならば呪いが発動する前に始末できたことでしょう」

「まぁ、エンリルに関してはここまでにして次は龍のことについて話しましょうか」

「しかし、大体は本編にて説明してしまっているので完結的に話しましょう。彼の正体は、マスターの龍の力が約46憶年ほど前にアルビオンの炎を喰らったことにより、派生して誕生した生命体であり、マスターの創生と相反する破壊や無、死の具現である存在です」

「彼は、基本的に外に出ることはありません。それは彼が肉体の所有権を持っていないことも起因していますが、主なものは彼が世界に興味を持っていないことでしょう。彼は確かに無や破壊などの具現であり、権化でもありますがただそれだけです。だから、こそ今回の一件は重大なことなのです」

「そして、最後に話すのは「」ですね」

「根源。「」。あれに意志など存在しないと思われていましたが、実はあったんですね。驚きですよ」

「それに彼女、両儀式の姿をとったことも興味深かったですね。マスターもそのことには驚いたみたいですし」

「しかし、マスターを旧支配者(グレート・オールド・ワン)に仕立て上げて自身と永劫な関係に縛り付けるとは生存本能でも湧いたのですかね?」

「さて、ここらでお開きにしましょうか。これ以上は無駄なことを口ずさんでしまいそうです」

「では、皆さん。また次回にてお会いしましょうか、さようなら」



次は何編がいいですか?ちなみにここで選ばれなくてもやる可能性はありますが日本編は短いかもしれません。それとケルト編の一部は絶対出ます。

  • ギリシャ編
  • 北欧編
  • ケルト編
  • 日本編
  • ブリテン島編
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