ホグワーツからの手紙
ベルの音が部屋に響く。
誰だろう、と扉を開くと、マクゴナガル先生が少し緊張している様子で立っていた。
「こんにちは先生。今日はどうされました?」
「こんにちはアリス。」
先生が微笑む。そして手紙を取り出し、封筒を差し出す。
「今日はホグワーツへの入学を伝えに来ました。そして、買い物に行きましょう。」
そう、私は11歳で、あと数ヶ月で12歳になるのだ。つまり、ホグワーツ入学の年。喜びのあまり、ついにやけてしまう。ホグワーツの印が捺された封筒を受け取る。
「買い物?何を買うんですか?」
「入学に必要な物たちです。ほら、その紙に書いてあるでしょう?」
私が開けたばかりの封筒の中に入った1枚の紙を、先生が指さす。さっそく紙を取り出すと、1枚の紙にびっしりと持ち物が書かれていた。『魔法史』に『幻の動物とその生息地』…これを全部買わなくてはいけないなんて大変だ。大鍋は家にあるから買う必要はないだろうけど。
「さあ、さっそく行かなくては。」
先生が部屋に置かれた壁掛け時計をチラッと見る。
「時間を気にしてどうしたんですか?」
何か予定でもあるのだろうか。それとも私のあとにも他の人を案内するから時間通りに行きたいのだろうか。
「ああ、いえ。特に理由はないのですが。」
明らかに何かを隠している。なんだろう…まあ、兎に角、買い物に行かないと。
「じゃあ、よろしくお願いします。」
私が手を差し出すと、先生は姿くらましをした。着いた場所は普通の街並みに見えるが、その中に古すぎて街並みに似つかない酒屋がある。先生と並んでその酒場に入る。道を歩く人達は誰もこちらを見ない。きっと何らかの魔法がかかっているのだろう。
ドアベルが鳴る。
「こんにちは、トム。」
「おや、先生もですか。」
先生がカウンターの内側へ声をかけると、立っていた男性が振り向いた。
先生も、ということは他にも先生に付き添われている生徒がいるのだろう。マグル生まれの子などは特に付き添いが必要だろうし。
「ええ、新入生の付き添いに。すると、ハリーはもう?」
ハリーとは『生き残った男の子』のハリー・ポッターだろう。そういえば、同級生なのだった。
「ええ、少し前に。先生がハリーを付き添うのではなかったんですね。」
トムさんが不思議そうに言う。
確かに、付き添いの先生が誰かは分からないけれど、マクゴナガル先生の方がしっかりしているだろうし。
「ええ、色々と事情がありまして。」
ただの生徒1人の付き添いに事情がある?なんだろうか。
「そうですか。ところでそちらのお嬢さん、お名前は?」
私に目線が向けられる。慌てて思考を振り払い、お辞儀をする。
「アリス・スカーレットです。よろしくお願いしますトムさん。」
トムさんは驚きながら、
「スカーレット!これまた凄いお方だ…今年のホグワーツは凄いですねぇ。」と息を漏らす。
毎年誰かしら凄い人は入っていると思うけど…。まあ、ハリーほどの凄い人はかつて居なかっただろうけど。それに私はハリーと比べたら全然すごくない。
「では、そろそろダイアゴン横丁へ行きましょうか。」
マクゴナガル先生が会話を切り上げる。
「そうですね。」
トムさんに見送られながら、私達はレンガの壁に向かう。先生が杖でレンガを叩くと、レンガの壁が動き、ダイアゴン横丁の姿が現れる。
「では、まずはローブを買いに行きましょうか。」
ダイアゴン横丁に入ってすぐ、先生が提案する。
「そうですね。」
特にこだわりはないので頷く。
しばらく歩くと、店の前に着く。ブロンドの少年と黒髪の少年が店の中にいるのが見えた。ブロンドの方はドラコだろう。ドラコ・マルフォイ。マルフォイ家はデスイーターではないかと言われている。というかほぼ確実にそうだったのだろう。一応家としての付き合いはあるが、こちらを恐れている感じがする。もう1人の黒髪の方はもしやハリー・ポッターだろうか。ドラコはもうローブが完成したようで、店から出ようとしている。何やら黒髪の少年に話しかけている。隣のマクゴナガル先生も、2人に気づいたようだ。
「先生、黒髪の彼がハリーですか?」
「ええ、店の前にハグリッドがいるのでおそらくそうでしょう。」
扉の前にいる大きな人を見ながら答える。先生と話しながら店の入り口へと向かう。マクゴナガル先生がハグリッドさんの方へ近づいていく。
「ハグリッド。石は取り出せましたか。」
先生が小声で話しかける。きっと私に聞こえないようにしているのだろうけど丸聞こえだ。
「おお、マクゴナガル先生。ばっちりですよ。ほら、ここに…」
ポケットから何かを取り出そうとする。なんだろう。私のこぶしぐらいのサイズのものが白いもので包まれているようだけれど…
「ハグリッド!!人がいるところで出してはいけません!!」
マクゴナガル先生が叫ぶ。
「おおっとそうだったそうだった…あぶねえあぶねえ。」
あわててポケットに仕舞いなおすハグリッドさん。あぶないというかもうアウトな気がするけど。
「おお、そこのお嬢ちゃんも新入生で?」
「アリス・スカーレットです。よろしくお願いしますハグリッドさん。」
ハグリッドさんが笑いながら手を差し出す。
「ハグリッドでいい、よろしくなアリス。」
「じゃあ、よろしくお願いしますハグリッド。」と返しながら手を握り合う。手をがっしり握られ、痺れてきた頃、ドラコが店から出てくる。私と一瞬目があったが、すぐに逸らされる。
「では、行ってきますね」
マクゴナガル先生を振り返ると、「はい。」と頷きが返ってくる。
ハリー視点
金髪の子と入れ違いに女の子が入ってくる。
「こんにちは。」
「こ、こんにちは。…もしかして、君も新入生?」
「ええ、私アリス・スカーレット。よろしくねハリー。」
笑いながら、名乗っていないはずの僕の名前を言う。
「うん。よろしくねアリス。やっぱり、僕の名前を知ってるんだね。」
「まあね。生き残った男の子ですもの。」
やっぱりみんなから『生き残った男の子』とよく言われる。
「ところで、さっきの子に何か言われなかった?」
青みがかった瞳で僕を見つめながら問いかけてくる。さっきの子はなんだか難しい話をしていた。
「うん。ハッフルパフは嫌で、ホグワーツには魔法使いだけが入学すべきだとか…僕、よく分からなかったんだ。」
「あれは気にしなくて良いよ。そんな考え、少数派だから。」
アリスが笑いながら言う。
「マグルを知らないってことは、魔法界のこと、よくわかってない感じかしら?」
「うん、ホグワーツのことも手紙が来て初めて知ったんだ。」
そう言うと、アリスは少し驚いていた。
「ホグワーツには四つの寮があるってことは聞いた?」
「うん、なんかスリザリンは良いんだって。ハッフルパフは良くないって言ってたけど。」
僕の言葉を聞いてアリスは苦笑いする。
「私から改めて説明したほうが良さそうだね。」
よく分からなかったから説明してもらいたいところだったので大きく頷く。
「じゃあお願いしていい?」
「まず、グリフィンドールは勇猛果敢な寮。勇気と騎士道精神を持つものが多く集まるところで、多くの偉大な魔法使いを輩出してきたの。」
「偉大な魔法使いと言えば、今の校長先生とかね。」
「次にレイブンクロー。レイブンクローは博識で、探究心が強い人が多く集まる寮ね。多くの、偉大な発見や発明をした人を輩出したわ。」
「次は、ハッフルパフ。確かにハッフルパフは劣等生が多いと言われているわ。けど、それは間違っていて、どんな人でも受け入れてくる寮なの。心優しくて、温厚な人が多い印象ね。もちろん、ハッフルパフ出身の偉大な魔法使いもいるわ。ホグワーツの1年生の教科書にもなってる人よ。」
「そしてスリザリン。スリザリンは…そうね。客観的に見て、あまり良い印象を持たれていない寮ね。純血主義が強く根付いていて、闇の魔術に手を出した人を多く輩出してきたわ。でも、仲間意識がとても強いから、仲間割れは他の寮と比べてあまり起こらないわね。逆を言うと、他の寮だと仲間割れは少なからず起きているということになるけど。」
なるほど。さっきの子から聞いたものと全然違うなぁ……
「さっきの彼―ドラコは、純血主義だからね。」
僕の考えを見抜いたように言われる。
「その、純血主義って何のこと?」
「魔法使いはね、親が魔法を使えなくても、子供は使えるという場合があるの。でもそうじゃなくて、親もその前も魔法が使える家系が一番偉い、という考え方が純血主義。純血っていうのが、魔法が使える人のみの血筋、的な意味で使われている言葉よ。」
な、なるほど…。
「逆に魔法が使えない人達のことをマグルと呼んだりするわ。」
「僕はどうなのかな?」
「お父さんとお母さんがどうかが分からないと…まあ、純血か半純血だと思うけどね。」
「アリスはどうなの?」
アリスは少し困ったように笑う。
「私は純血よ。かなり昔から続く。でも、純血主義ではないから。」
「なんか、魔法界って難しいね。」
ふと思ったことが口から出る。
「そんなこと無いよ?よくわからないで言葉を使ってる人もいるし。きっとすぐに馴染めるから。」
アリスが励ましてくれる。すぐになじめるといいんだけど。今のところさっきの子とアリスとハグリッドしか知らないので、アリスと同じ寮になりたいな。少なくとも話しかけてくれるだろうから。違くなっちゃったらきっと仲間外れだ....と、僕のローブが作り終わったみたいだ。
「じゃあねハリー。また、ホグワーツで。もしかしたらキングズクロス駅で会うかもだけどね。」
「うん、またねアリス。」
手を振りながら店をでる僕に、アリスも手を振ってくれる。どうしてキングズクロス駅に行くのだろうと考えながら、店の外で待っているハグリッドの元へ向かう。
「先生、お待たせしました。」
店を出て、マクゴナガル先生に声をかける。
「ああ、アリス。では、次は教科書を買いに行きましょうか。」
マクゴナガル先生と並んでダイアゴン横丁を再び歩く。本屋に着くと、店内に見覚えのある顔が見えた。
「あ、ダフネ!」と呼びかけると、「アリス!!」と、ダフネが振り向く。
「アリスも、教科書を買いに?」
「うん。今年からホグワーツで沢山会えるね!」
「そうね、よろしくねアリス。」と言葉を交わし合って、分かれる。
「ミス・グリーングラスですか?」と分かれた後にきかれる。
「はい。」
「では、私達も教科書を探しましょうか。」
「そうですね。」と答えて、目的の棚へ歩き出す。
教科書を買い終わり、次はオリバンダーさんの店に入る。やはり杖と言えばオリバンダーだろう。
「これはこれはマクゴナガル先生。杖は大切に使っていますかな?」
店に入るとオリバンダーさんが先生にきく。
「ええ、もちろんです。」
先生は頷き、そして隣に立つ私を見る。
「今日は彼女の杖を探しに来ました。」
いよいよ私の杖が決まるのだと思うと緊張してくる。
「アリス・スカーレットです。よろしくお願いします。」
「おお、お嬢さん。では、杖腕はどちらかな?」「右です。」
「ではこの杖はどうかな?ヒイラギにユニコーンの毛」
オリバンダーさんが箱を取り出す。杖を渡され、一振すると、店内に暴風が吹き荒れた。オリバンダーさんは、杖を一振して風を止めると、また別の杖を差し出した。
「イチイにドラゴンの心臓の琴線。」
私が杖を握った瞬間、杖から炎が噴き出した。オリバンダーさんがまた、別の杖を差し出すも、中々私に合う杖が見つからない。
「ふむ…では、これはどうだろう。」
杖を探すことしばらく。オリバンダーさんが店の奥から箱を取り出す。差し出された杖を振ると、店内が光に包まれた。
「おお…この杖に持ち主が現れるとは…」
オリバンダーさんが驚きと感嘆が混じった息をつく。
「これは初代のころから店にある杖でして。」
初代……一体どのくらい前かは分からないがかなり前と言うことは伝わる。
「木はアルダー、芯は不死鳥の尾羽根。」
手の中の白い杖を見つめる。
「長年見つからなかった持ち主が決まるだなんて、今日は本当に不思議な日ですなぁ。」
お礼を言って料金を支払い、店を出る。
「ところで、入学祝いとして何かプレゼントしようと思っているのですが、何か欲しいものは?」
店を出てすぐ、先生が質問してくる。
そんな急に言われると…いや、そういえば梟が欲しいと最近何度も思っていたんだった。
「そうですね…では、梟が欲しいです。手紙を送れますし。」
「では、買いに行きましょうか。」
梟を買いに店へ向かう。店で梟を選び、行きと同じようにマクゴナガル先生の姿くらましで家へ帰る。因みに梟は、真っ白な梟を選んだ。
「マクゴナガル先生、ありがとうございました。」
頭を下げると先生は「いえいえ。」と微笑みながら首を振る。
「では、ホグワーツで。行き方は分かりますよね?」
「はい、キングズクロス駅の9と3/4番線からですよね。」
「そうです。くれぐれも乗り遅れないようにしてくださいね。」
「はい。」
私が頷いたことを確認してからマクゴナガル先生が姿くらましで消える。私もさっそく準備をしなくては。
アリス・スカーレット
今作の主人公。
過去に家同士で何かあったのか、マルフォイ家に恐れられている。
因みに名前の由来は、アリス・マーガトロイドとレミリア・スカーレットからだったりします。
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