味方撃ちOKのスナイパー   作:Damned

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相澤先生が誕生日なので初投稿です。



USJ〜体育祭編
#01 レコグニション


 

 

 

 四月の空気は少しばかり冷えていて、低血圧の俺には寒く感じられる。騒がしい校内を縫って歩いて、上がった先でトイレに向かう。

 誰もいない中、鏡に映った自分と目を合わせる。琥珀色の目に、黒い髪。浅黒い肌。いつもと変わらない姿。個人的には、〝エキゾチックな美貌〟と言うのが似合うのだろう。ナルシシストみたいで情けないか。親も顔が綺麗だし、そっくりらしいからそりゃ綺麗。女子に告白された数は……ちょっと覚えてないけど。

 

 はねた髪を整えて、いつもの笑みを浮かべる。いい加減、この練習もなしでできるようにならないと。

 改めて、憧れと、願掛けの混じった言葉を口にする。

 〝私はアナ・アマリだ〟と。あの人のように在りたい──それが、自分を自分として表現する手段だから。そういれば、迷わない。

 鞄を持ち直して化粧室から出る。彼女ならきっと、慌てて走ったりなんてしない。一定の速度で歩いて教室に向かう途中で、走ってきている一人にぶつかった。

「あっ」

 しかし、紫髪の男子生徒は振り返らずに向かっていく。礼儀を知らんのかこの野郎……とも考えるものの、この程度飲み込むのも年長者の務めというもの。

 

 まぁいいだろう。チャイムが鳴り終わると同時に扉に手をかけて、ゆっくりと開く。

 ……当たり前だが、全員が俺を見たし、静かになった。

 

 

 

 雄英高校ヒーロー科一年A組。

 入学して日が経たないというのに、その扉は知らぬ者の手で開かれた。

「……あ? 誰だテメェ。クラス間違えてんじゃねぇのか」

 通学鞄に加えて、アタッシュケースを持った生徒。爆豪が低い声で唸るように発したのに、怒るでも狼狽えるでもなく、天成(あまなり)あまりは目を細めて微笑んだ。

「いいや、私もこのクラスの生徒だよ。初めましてだな」

 

「そうだ」

 のそ、と芋虫のように寝袋から這い出たのは、担任たる相澤消太。一転して背筋を伸ばす生徒たちに一礼をして、彼は名乗る。

「天成あまり。よろしく」

 

 陽だまり、というのが相応しい。

 柔らかい笑みと声音は、警戒も歓迎も何もかもを包み込んで温め、安堵へと変えるもの。緑谷出久さえも例外でなく、よろしくと返すことも出来ずにいた。

「一週間ほど、臥せっていてね。今日が初登校になる」

 ややあって尋ねたのは、上鳴電気。

「え、えーっと、事故とかなんか? 大丈夫なのか?」

「……まあ、そんなところだ。自業自得だから、そなたらが忘れた頃に話そう」

 

 そして着席。そういえば、と誰となく思い出したのだ。天成の座っているそこは、昨日まで空白だったと。

 ホームルームは何も無く終わって、授業の前の準備時間になる──かと思われたが、手を挙げたのは飯田だった。

 

「相澤先生っ」

「何だ、飯田」

昨日(さくじつ)登校していなかった天成君は、個性把握テストを受けていないのでしょうか! そちらは如何なさいますか?」

「問題ない。天成は既に、テストを受けている」

 相澤は天成に目を遣った。

「具体的に話すか?」

「では、遠慮なく。改めて、天成だ。テストの結果は……下から数えた方が早いな。下から二番目だそうだ。戦闘向きでないのでな」

 

 なるほど、医療系の個性か? サポート系? 各々が反応する中で、「何でヒーロー科にいんだよ」爆豪が吐き捨てたのが耳に届いた。

「……サポートと言うのなら、そうかもしれんな。だが戦場において、後方支援を軽んじるのは愚かだ……爆豪勝己」

「あ? どこが戦じ──」

「戦場さ。どんな内容であっても、ヒーローがいる場所というのは」

 

 強い言い方ではない。静かで、どこか訓示めいた厳しさに、爆豪は何も言い返せず、眉を跳ねさせただけだった。

 

 

 

 

 自分がいわゆる〝転生者〟であると気付いたのは、三歳の時。今まで年相応の幼児として生きていた俺は、ガラスで指を切ってしまい──それで溢れた血によってハッと目覚めた。

 流れたばかりのはずの血は色のないナニカへと代わり、ぱっくりいった傷口はゆっくりと塞がり始めている。

 

 いつもならば痛みのあまり泣いたり、両親のところに行くのだろうが。その日だけは、何も見ずにテレビのあるリビングに向かったことを覚えていた。

 液晶に映るのは、筋骨隆々で一人だけ絵柄の違う男──オールマイト。

「……は?」

 現実にはあんな人間がいるはずない。そもそもヒーローとかヴィランとかニュースに出るわけがあるか。突っ込みどころしかない。

 

 確か自分はギリギリアラサー手前、二十四歳のはず。テレビはリアルCGで片付くとして、この身体と年齢は片付くものではない。

 悲しいことに自分の最後の記憶は、目の前が薄暗くなってふわふわしているところで。自分が置かれていた状況が、蘇ってきた。自分の部屋、駆動式のベッドテーブル、置かれた薬。握ったコントローラーと繋いだイヤホンの感触がまざまざと思い出された。

 

 つまり俺は、一度死んだのだ。そしてこの小さな身体に転生したのだと、荒唐無稽でも理解する必要があり。

 ザッケンナコラー! ナンオラー!? スッゾコラー!

 なんでよりにもよってここなんだよ! 確かに俺はヒロアカが好きだけど、転生したくないアニメ世界でも上位でしょうが! 生まれで決まる世の無常と無数の犠牲者、治安の悪さは最高峰! 異世界転生するにももう少し温情ないのかよ! f〇ck! クソ! うんこ!

 

 しかし、どう嘆いたって現実は変わらない。諦めて自分の〝個性〟を成長させ、どうにかして生き延びるのだ。

「あまりー? どうしたの?」

 俺の名前は〝アマリ〟だと理解した。ぱたぱたとスリッパの音を鳴らして歩いてくる女性は、どうやら俺の母親らしい。

 

「………………は?」

 黒髪ショートに琥珀みたいなオレンジの目、暗めの肌の色。すっと通った鼻梁は外国系の雰囲気を感じさせる──が、今大事なのはそこじゃない。

 目の前にいるのは、かつて自分が愛用した()()()()()()()()に似た姿だ。

 

 ──アナ。生前、自分が最もプレイしたと言えるゲーム〝オーバーウォッチ〟は、五対五で戦うチーム制のゲームだ。そのなかで〝サポート〟と称される役割(ロール)のヒーロー。その最も若いスキンである〝スナイパー〟の容姿のまま、母親は俺の目の前にしゃがんだ。

「待って、怪我してるじゃない! 早く手当しないと──あら?」

 床には血があるし、服にも付いている。近くに割れたガラスもあるし、俺が怪我してるのは馬鹿でもわかる。が、先程知覚したとおり、血は透明になって傷口も塞がっている。

 

 もしかしたら、戦争がなければこんな顔をしていたのかもしれない。数度俺の体を見分したあと、母はぱあっと表情を明るくした。

 やはりあれは、個性の影響だったらしい。喜びのあまり俺を抱えて電話をかけ、「あなた」「あまりが」「個性」……断片的なワードを聞くに、父親に個性の発現を知らせているようだ。泣いているような喜んでいるような、どちらかも分からない。

 

 

 その日の夜。母親──(はな)というらしい──の隣で天井を仰ぎながら、俺はようやく一息つけた。家族みんなでお祝いムード。妹の李羽(りは)はよく分かっていないながらもはしゃいでいて、今は疲れてすうすう寝息を立てている。

 どう考えたって、現実から目を逸らした夢ではない。

 何回瞬きしても覚めないし消えない。死ぬほど苦しかった呼吸も眠れない辛さも、それらを緩和するための投薬も、全部。どこにもない。

 

 息をすれば肺が膨らんで、詰まるような感覚などない。怠さだってない。

 その事実だけで、泣きそうだった。

「生きてる……」

 たどたどしい発声にも気が行かないほど、嬉しかった。ただ生きている、それだけで奇跡だと思えたから。自分が死んだことにはもちろん恐怖はあるけれど、それ以上に、あの日の〝俺〟がいなくなったことに、安堵している自分もいた。

 

 だから、今度こそ長生きしよう。親不孝者のままではいたくない。介助も含めて、父さんや母さんには心配も面倒も掛けてしまった。死なないよう、穏やかな生き方で両親に孝行して、ささやかな幸せを噛み締めていたい──そう思ったのは、ほんの一瞬だった。

 脳裏に浮かんだのはひとつのシーン。

 まだ結末を迎えていない物語。

 デクくんが、オールマイトが。栞を挟んだ本のように、俺の中で続きを渇望する声が湧き上がった。

 

「終わって、ない」

 僕のヒーローアカデミアは、俺の記憶している限りでは連載している。そのさなかで、俺は死んだ。最高潮の中、これからどうなるのかと言うワクワクのなかで、その終点すら見られないまま。

 

 未練と言うのは簡単、それよりも少し泥臭いかもしれない。生きたい、この先を見たい、オーバーウォッチだってグラマスで止まってしまった。もっと先へ、もっと向こうへ(プルス・ウルトラ)。前に進んでいたかった。

 あの世界で誰が救われ、誰が報われるのか。どう決着がつくのか。たとえ画面の向こうの世界だとしても、見たかったのだ。

 

 ──ならば、この手で。この目で、この身体で。

 見届けたい、最後まで。

 

 けれど、俺というノイズを含んでしまった時点で、この世界は正史の〝僕のヒーローアカデミア〟ではない。似て非なる、別の可能性で作られた世界だ。それならもう、いいんじゃないか。

 開き直って開き直ってどうにかなるさ。どこかで聞いた言葉が蘇る。多少暴れても、ストーリーを歪めさえしなければ、見届ける権利だって世界の調停者はくれるだろう。

 いや、そうでなければきっと──自分は死ぬ。強さがなければ望みを果たせず、同じ結末を辿ってしまう。

 この世界は残酷だ。努力が報われなくたって、何度折られたって、前に進めるのがヒーローとしての資格。強くならなければ、見ることすら許されない。ならば俺も、強くなる必要がある。

 

「世界を見殺しにしてなるものか」

 かつて、世界のために立ち上がった狙撃手(ヒーロー)

 

 アナ・アマリ。

 彼女は撃って救い、撃って止める。ただの医療者ではない、命の線を引く者。戦場では誰より強く、厳しく、優しかった。

 憧れ。それ以上でも、それ以下でもない。性的な意味ではなく、俺が欲しかった〝覚悟〟のようなものだ。どんな極限でも絶望せず、屈さず。その姿は、死に怯えていた自分には尊敬を超えたものを感じさせた。

 彼女のように、毅然と立つ者であれたなら。

 

 この世界に、彼女の存在はなかった。けれど、だからこそ。俺は彼女の思想をある時からは立ち振る舞いを、口調を、自分の一部に組み込んだ。それは前に進むための呪文であり、生きる意思だった。

 ──私はアナ・アマリだ。

 この一言をスイッチに、俺の意識を切り変える。

 支援のために動き、勝利のために撃つ。一度死んだ自分に、命を吹き込むような感覚があった。

 

 画面の向こうで見ていたはずの景色はいま、手の届く場所にある。けれど仲間も敵もリスポーンしない、それが現実だ。

 彼女ならどう動く? 撃つ? 救う? 答えを見つける度に、判断力が研ぎ澄まされていく。

 

 彼女のアビリティも、俺なりに再現していった。運がいいのか意図的なのか、自分の個性は〝体内で化学物質を生成し、薬液として排出する〟発動型で、それに大きく貢献した。

 人体への理解度、必要な成分、どの形が的確か。身体が大きくなってからは、研究が進んでいく日々を過ごしていた。

 

 寝ても覚めても、俺は彼女の影を追っていた。アナの姿に救われていたし、〝人が死んだ時、忘れるのは声から〟に当てはまらないように明瞭で、自分を鼓舞する言葉でもあった。

 そうして馴染んだ言葉は、いつからだったか。前世の俺と今世の俺は境界を失い、スイッチを切り替えさえすれば自然に、〝アナ・アマリ〟のエミュレートが出来た。そうしなければ自分を鼓舞できなかった時期もある、けれど。それだけじゃない。俺自身が、彼女のように在りたくて。

 

 それに、どれほど言葉を積み重ねたって、結局のところ俺はただの人間でしかない。前世の記憶は羅針盤でしかなく、方角を決めるだけで進めるのは俺。動かないと何も始まらない。

 彼女が戦場で誰かを救ったように、自分もまた、この世界で誰かを救いたい。

 命を救う。その為に撃つ。そして生きる。

 そうしていつか、彼女の名を胸に刻んだまま、この世界の結末を己の手で見届けるのだ。

 

 

 

 

 今日の授業は確か……オールマイトが担当する〝ヒーロー基礎学〟の授業があったはず。原作ではデクくんと爆豪がぶつかって……その後は保健室行きだったかな。具体的な内容は覚えてないけど。

 十年以上経っているせいで、俺の記憶も曖昧になってきた。何度も読み返したとはいえ、ストーリーという名の凄まじい情報量は、覚えておくのにも難儀する。短いせいもあるだろうけど、アナのエピソードとかアビリティとか、アンチピックは覚えてるのに。

 

 いや〜〜〜若アナの服かっこい〜〜〜〜!!

 服、マント、膝と肘の防具、ブーツ、手袋、スリング、そして銃。具体的にお願いしていたコスチュームは、注文通りだ。最高……と言いたいところだが、アナがそんな浮き足立った言葉を口にするわけがない。きゅっと口を引き結んで、遮音性のマフラーを巻く。相澤先生(イレイザーヘッド)のとは違って、口元を隠して読まれないようにしつつ、遮音性能を持った布だ。

 

 初めて着替えることもあって、靴や肘当てといった防具の調整に手間取った。肉体に合わせないと身体を痛めるのは自分だし、俺自身、前世でやらかした事もある。身体にボルトをぶち込んでた時期は本当に痛かったし、二度と経験したくない。

 少し時間がかかったけど調整完了。部屋には誰もいないし、とっとと行かなきゃ飯田くんあたりにどやされるに違いない。だって将来の学級委員長だ。

 歩き出したところで、ドアの前一人居ることに気付いた。ラッキー、もし怒られるとしても二人で仲良くだデクくん。

 

「……緑谷出久」

「ひゃ、ひゃいっ!?」

「そこで立ち止まられては、外に出られないのだが」

「ああああはいっ!! すいません!」

 失礼しましたお先にどうぞと半分悲鳴みたいに言って、勢いよく扉を開く。なにもそこまでしなくたって……。

 二人で歩きながら、デクくんが沈黙に耐えかねて捲し立てるより先に話題を振った。

 

「……入試は見ていたよ」

「へ?」

「あのゼロポイントのヴィランを、殴り飛ばしていたのを。あそこまで凄まじいパワーを出せる個性……オールマイトのようで、眩しいな」

「あぁいやいやいや!! おおオールマイトと比べるなんてそんなっ、おこがましいというか!」

 

 うわぁ……露骨に狼狽えてる。正直すぎるだろ。これでよくオールマイトとの関係バレないな。

「分かっている。そなたの個性はまた、別のものだと」

「そそそうですよっ。あは、は……」

「ただ……」

 

 なんて言えばいいんだろう。年長者っぽい言葉が思いつかなくて、考え込む。こんな時、アナだったらどんな風に声をかけるんだろう。

 数秒唸った後に、答えが出た。

「使う度に負傷していては、救えるものも救えなくなる」

「はい、すみません……。昨日相澤先生にも、そう言われたばかりで……」

「敬語はいらない。抹消ヒーロー〝イレイザーヘッド〟。効率と合理を、何よりも重んじる者だと聞いている……今の状態では、言われるのもやむなしだろうな。そなたの個性は最近発現したものだろう?」

 

 デクくんは頷いた。まぁ「何でもは知らない、知ってることだけ」を装わないと、この先「ヴィランに情報を流した」って疑惑で動けなくなる可能性もあるし。

 いや、そもそも話さなかったら良かったんじゃない? 後の祭りだけど。諦めて、しっかり話すことにしよう。

 

「あの時の扱いもそうだが。暴発しないように抑え込んでいると見える。使いこなすも持て余すも、そなたの鍛錬にかかっているだろう」

「そう、だね」

「誰だって最初は同じだ。そなたを見ていると、昔の私を思い出す」

 いや本当に。個性の扱い方が下手だねぇカイジくん、って感じだったもん。両親にも妹にも迷惑と心配かけたし。

 

「……天成くんも?」

「ああ。子供の頃はよく、薬の調整ミスで寝込んだものだ」

「天成くんの個性は薬? たしかに薬は毒ってよく言うし体内で生成するタイプの個性ならモロに影響が出るはず。そもそも一歩間違えば薬って別の成分になったりすると思うし効果の模索で組み替えてるはずでもしかして学校に来れなかったのもそれでいやでも昔の自分って言ってたし……」

「おや、そこまで察するか。個性博士──いや、ヒーロー博士とでも言うべきか」

 

 突然早口モードに切り替わったデクくんの言葉を切る。嫌な訳じゃないけど、これは飯田くんも言いたくなるわぁ……。

「すすすすみません! 僕つい……」

「本当のことだ。入学前に手を増やそうと思ってあれこれ弄っていたら、副作用で生活もままならず。登校も遅れてしまった。幸い、二日目からは間に合ったが」

「か、身体は大丈夫なんですか」

「大事をとって一日目は夕方に来たが、問題ない。それと、理由については秘密にしてくれると助かる。恥ずかしいからな」

 

 整っている自覚のある顔で笑ってみせると、デクくんは顔を真っ赤にしてOKの返事を複数口にしてくる。そりゃ男版アナみたいな顔してるもんな。俺でも惚れるわ。

「そういうことだ。ともに精進しよう」

「はい!」

 しばらく歩いて、クラスの皆が見えてきた。そこに一際目立つのは画風の違う彼──オールマイトだ。やいのやいの。授業の説明中だが、一気に話しかけられてオールマイトはたじろいでいる。画面の向こうでは微笑ましく見ていたが、改めて見ると面白いが先だった。うーん、聖徳太子でもなければ答えられないな。

 

 授業内容は至ってシンプル、ヒーローとヴィランに別れ、ツーマンセルで行う。勝利条件はヒーロー側がヴィラン二人を捕縛、もしくは核兵器に触れること。ヴィラン側はヒーロー二人を捕縛するか核兵器を守りきるか。

 そういえば、A組の人数は二十一人だった。原作のキャラクターに加えて、俺。本来なら定員二十名のはずだが、おそらく同率四十位の合格者が出て、四十一人の新入生となったのだ。その〝同率四十位〟の人間が、俺だ。順位は知らないけど、どうやらボーダーにいたようだ。──まぁ、らしいと言えばらしい。俺の人生はいつだって当落線上だから。

 ともかく、一人余る。

 

 どうするのだろうと思った矢先、飯田くんが問うていた。

「先程、クジでのチーム分けとおっしゃいましたが、クラスの人数は奇数です!」

「いい質問だ飯田少年! 残りの一人は最後、余力のある生徒と行ってもらう!」

 ざわつく空気の中、箱がずい、と突き出される。

「運もまた実力のうち、というわけだ……」

 

 理屈ではないが、現実とはそういうもの。不条理はルーレットのようにどこかでやってくる。それぞれがクジを引いて、組み合わせが発表されていく中──自分の引いたものが〝K〟であることに気付いた。

 ……ソロだ。正確には今はいない、だけど。

 

「君がチームKか、天成少年!」

 原作でも思っていたが、よく響くし大きな声だ。

「〝アマリ〟だけに〝余り〟ってか!」

「誰が上手いこと言えって!」

「でも最後って大トリじゃん! かっこよくね?」

 

 苦笑いしながらクジを返却する。

「格好よく締めたいものだ。年長者らしくな」

「年長者って。同じ一年だろ? 四月二日生まれか?」

「気にしないでくれ。癖のようなものだ」

 

 つい年上ムーブが出てしまった。半分は本当だけど、半分は嘘。前世の二十四歳プラス今年で十六歳、つまり四十歳のジジイなわけで。高校生たちに交じっていると、そのフレッシュさには守りたいとかそういう気持ちも出てくる。

 笑いの余韻の中で、模擬戦が始まった。緑谷出久&麗日お茶子VS飯田天哉&爆豪勝己の対戦カード。原作と同じスタートだ。

 

 無意識に、息を詰めていた。

 ──この瞬間が来た。この光景は、何度も画面越しに見てきた。けれど今回は違う、空気が肌を叩いて、緊張がひしひしと伝わってくる。カメラの先にいる彼らも、眼前のクラスメイト達も、物語の登場人物ではなく生きている〝人間〟だ。

「見せてもらおうか……」

 受け継がれた個性。その全てを。

 

「何か言ったかしら、天成ちゃん」

 梅雨ちゃんが振り返った。無意識に口にしてしまっていたらしい。内容は他の会話に埋もれてしまっていたらしく、慌てて取り繕う。

「独り言だ。気にするな、蛙吹」

「わかったわ。名前を憶えてくれてありがとう。でも、私のことは梅雨ちゃんと呼んで、ケロケロ」

「承知した」

 

 蛙吹梅雨(あすいつゆ)。原作ではクラスの精神的支柱と言われていて、個性は蛙。ゲームのフレンドには「蛙と人間が神みたいなキャラデザで生まれた最高にかわいい子。一生推し」などと言われていたのを思い出した。あいつは元気だろうか。今でもマーシーでありえないダメージとヒールを叩き出してるといいけど。いつもダメブありがとう、タンクやってる時はすごい助かったよ。

 画面を見ると、デクくん達が建物に侵入するところだった。定点カメラで声も聞こえないけど、何を話しているかは見ていれば蘇ってきた。おそらく、原作と変わらない会話と展開……だが、思ったよりも飯田くんとお茶子ちゃんの損耗がある。終わった後にトイレに行っているのが見えた。さすがゲロイン……。

 

 その後の試合もマッチアップは変わらないはず。ダイジェストじゃなくてこうしてみられるのは、転生者の特権だ。死ぬって代償がなければなおよし。これ、番外編とかで見たかったな。

「凄いな。将来有望ともいわれるわけだ」

 口から飛び出たのは上から目線のように感じる言葉を訂正するよりも先に、オールマイトが頷いた。

「どの戦いも、それぞれの個性が輝いているね! 天成少年の言うとおりだ!」

 満面の笑みでのサムズアップ。その中で一瞬、表情に陰りが見えた気がした。オールマイトのワン・フォー・オールは残り火で、これからどんどん制限時間が短くなっていく。そのせいだろう。ここで長引かせるのはきっと、彼の多大な疲労に繋がるから……だから。

 

 





あらすじで騙しました。ごめんなさい。
許してください。何でも許してください。
作者はヴィジ未履修です。展開被ったりなんだりしたら天成が靴を舐めますのでご容赦……。

そういえば相澤先生の抹消使ってる時の色どっちが好き? 原作とアニメでゴリゴリに違うんですけどぉ……

  • 赤(アニメ)
  • 金(原作)
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