味方撃ちOKのスナイパー   作:Damned

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ヴィジランテのミッドナイト先生すげえ服装なので初投稿です。



#14 お狐さん、教えてよ

 

 

 観客の声は、ただの波だった。歓声だと理解はできても、その内容は聞き取れない。焼けるようなフィールドの中心に、俺は歩いていく。

『一回戦ではまさしく紳士の振る舞い! あれもうばーちゃんじゃなくて王子様だろ! ヒーロー科・天成あまり!』

「やめてくれよ……」

 芦戸ちゃんにまた殺されそうだ……。本当に心配だったし、眠っているだけなのにロボで搬送されるのも大袈裟かと思っただけなのに。

 

『バーサスッッ!!! 男気一つでド根性! 鋼鉄とすら互角の戦いを見せた赤い魂!! 切島鋭児郎ッ!』

「ッしゃあ!!」

 さっきまで後ろにいた時と同じ。切島くんは活力に満ちた声を上げている。この子鉄哲とガチ腕相撲やってたんだよな? 元気すぎるわ。

 

「よろしく、切島」

「おうよ! ばーちゃんだからって優しくしねぇからな!」

 

『行くぜェ!! 二回戦第二試合、スタァーーートッ!!』

 ──あ。

 ──ルーチン、忘れてる。

 切島くんの速攻よりも先に、それがよぎった。

 

 

 

 

「何してんだあのババア……!!」

 真っ先に漏らしたのは爆豪だった。言いたいことは、わかる。今の天成は、どこからどう見ても注意散漫だった。普段どころか、芦戸とやりあった時とさえ違う。どこも見ちゃいない。

 回避は間に合ったが、その表情は驚きにも近い。目の前にいる人間でなく、自分の内側を見ていた。そのせいで、天成は後手に回ったのだ。

 

「……めだ、……は、めだ……に、なれな……」

 呪いの文言は、環境音にかき消されていた。

 幾度にも渡って振るわれる拳。受け流しに徹して、天成は目的の液体を編み上げていく。

「やく、……もどさないと。……しは、あ…………り、だ……」

 ──時間が足りない。ハイドロジェルに加えて、表面用の薄膜HA。瞬間的な衝撃を抑制して散らし、硬化に対してもある程度までは渡り合えるようにする。それが当初、天成の立てていた作戦だった。

 時間が鍵になるこの対策で、数秒の遅れは致命傷だった。硬い拳が頬を裂いた。動作も判断も問題なし。ただ、思考と反応の間に空白があった。

 

 ルーチンを忘れた。それだけで、動きが乱れている。指先で弾丸を弾き、金属音を確かめる。天成あまりを〝私〟として構成するのは、言葉だけではない。己を整え、〝私〟となる二段階目のスイッチ。──それを飛ばした今、砕けつつあった精神に拍車がかかっていた。

「おいおいばーちゃん! ちゃんと集中してるかよ!?」

 切島の声はいつもと変わらず、真っ直ぐで明るい。その言葉が、今の天成をどんな刃物よりも鋭く切り裂いた。

 

「──ッ」

 受け流す。踏み込む。生成した液体を腕に纏わせる。その範囲を広げて、衝撃をより拡散させる。

 重い──。

 鋼鉄とぶつかり合うように、切島の拳が天成の手を焼いていた。彼の硬度と速度が、自分の予測を上回っていた。上手く噛み合わない。特に左側を狙われるのが苦しく、天成は荒く息を吐いた。

 

「……相変わらず、硬いな。アーマーが可愛く見える」

「硬いのが俺の売りだからな! どんな相手でも真っ向からぶつかって受ける!」

「勇敢だな。……だが、それは。ときに蛮勇となるぞ」

「アドバイスどうも!」

 僅かに首を傾けて避ける。彼は笑っていた、強者と研鑽し合える喜びに──この状況でそうあれるのに、天成は少しだけ羨望を覚える。

 

「天成っ」

 その向こうで、思わず立ち上がりそうになったのを、心操は座り直す。明らかにおかしい。自分の前とも、尾白がいた時とも違う何かがそこにはある。

「何があったんだよ、お前……!」

 

 芦戸との試合の後、心操と天成は合流しなかった。主に心操のために。それが今、天成の異常を察知できない理由の一つになっている。

 拳を、蹴りをいなして、防御に徹するだけ。なぜ、そんなことを。雁字搦めのなかで抵抗するような状態にも似ていた。

 何が今、天成を縛ってる。

 

『えー……膠着状態ですねぇイレイザーさん。どう見ます?』

『膠着状態じゃない防戦一方だ。個性で衝撃吸収の液体作ってなんとかいなしてるだけだろ。一回戦と違って攻めないな、何か待つ理由があるのか』

 

 言葉の通り、天成は防戦一方に近かった。流れるように見える動作も、相澤から見ればそう。打撃をひたすら捌いているだけであり、相手を倒すための一撃がどこにもない。

 硬い空気が天成に衝突するたび、足元に透明な液体が飛散していく。滑る、受け流す、だがその足取りには、焦燥が混じり始めていた。

 防御はできる。時間も稼げる。だが、彼自身が攻撃に転ずることができない。戦いの中で、それは致命的な欠陥だった。

 

『……確かに無茶苦茶な動きだな。これどういうこと? 焦ってるのか? それとも何か策があるのか!?』

『無茶苦茶なのはいつものことだ。そういうやり方だからな』

『えっ? そういう流派みたいな?』

『そういう流派だ。独学だろうな』

 

 AにはBを返す、そしてCにはDを。格闘術とは、基本的に型がある。だが天成のそれは、距離感、重心、力の込め方、何をとっても継ぎ接ぎのちぐはぐだ。複数の術が混ざりあって、それが予測を困難にしている。

 でなければとっくに、切島に攻略されているのだ。

 相殺出来なかった拳が側頭部を掠めて視界が揺れる。まともに食らっていたら即ダウンだ。揺らぐ視界の中で、畳み掛けてくるだろう切島相手に距離を取るも、詰められる。

 

「……なあ、()()

 飛んできたのは、声だった。拳でも蹴りでもない。妙な静けさのあるそれに、応じる。

「何だ」

「……ほんとは分かってた。お前、ずっと何か怖がってたんだろ」

 彼にしか拾われない言葉で、風が止まった。拳も止まる。観客にはごく、一秒もないだろうか。

 

「みんなには言わねーよ」

「……何の話だ」

「俺バカだからさ。間違ってるかもしれねーけど」

 すぐそこにある切島の顔は、優しいものだった。

「さっき泣いてた時よ。あれ、〝ばーちゃん〟じゃなくて──〝天成〟だった」

 

 その瞬間、天成の全身から血の気が引いた。

 言葉にならない何かが喉に詰まって、歓声も、実況も消える。世界が一拍、遅れて見えた。

 その向こうで切島の腕が引かれて──避けようとした身体が、反応しない。

 

 肉を打つ鈍い音が、会場に響いた。

 

 

 

「ッがは……!」

『つ、痛烈ーーーッ!! これはモロだぁ! 天成立ち上がれるかぁ!?』

 肺の空気が追い出されて、地面に打ち付けられた。いくら吸っても、空気が入ってこない。痛み、よりも恐れが勝っているのだ。切島の言葉が、走馬灯のようにリフレインする。

 

 ──ばーちゃんじゃなくて天成だった。

 どうして、気付かれた。どうして。白んだ視界が鮮やかを通り越して色をくすませていく。

 違う、違う違う違う。違う。俺じゃない。俺じゃいけない。〝私〟でいなきゃ。いないと、みんなが見てる。A組のみんなが、見てる。ここで俺を出したら、きっと全部おかしくなる。私というクラスの歯車が、追い出されて噛み合わなくなってしまう。求められてない矮小な〝俺〟じゃその場所にはもう、いられなくなってしまう。

 

「ッは、はっ、……はあっ、はっ……」

 太陽の光が、二重に見える。焦点を合わせようとするのに、逃げられるみたいに定まらない。立て。立ち上がれ。どう命じようとも、さっきから身体が言うことを聞かない。

 呻きと吐息だけが喉を擦った。──腕が、動かない。切島くんに、後光が差しているように見える。眩しい。焼けるように痛い。どこまでもまっすぐな、俺とは正反対のいろ。飾らず、作らず、恐れずに、自分でいられる。

 

「……なあ、立てよ」

 切島くんが、拳を構え直す。全身が硬化するのが、見える。胸を強打されたのにこの程度のダメージで済んでいる──それは、彼が勝つために声を掛けたわけじゃないという証明だ。

「そんな顔すんなって」

 どんな顔してるかなんて分からない。ただ、呼吸の音だけがやけに大きい。笑って変えそうな唇は上手く言葉を作っちゃくれない。

「……あ、あ」

 

 声にならない声が、喉の奥で粟立った。何かを言いたいのに、出てこない。言葉が出ればそれは〝俺〟の声になってしまう出すな出すな出すな〝私〟でいろその熱が怖い眩しくて直視できない。

「俺はな、天成。……本気でぶつかるって決めた時、もう怖いとか考えねぇ」

「……ぇは、無鉄砲、って」

「そーかもなぁ。でもよ」

 

「俺は、怖がってるやつを笑ったりなんかしねぇ。怖いままぶつかってきたら、それだって本気だろ」

 

 言葉の端が、焼け付いた。何かが、胸の奥を引きずり出すみたいに動いた。

 立たなきゃ、って思った。

 立てない。

 でも、立たなきゃ。

 それが、皆の知ってる〝天成あまり〟だから。

 ここで倒れたら、皆が見る。俺の〝俺〟を、見られてしまう。それは嫌だ。──怖い。

 

『立ち上がったぁーーーーッ!! ここから復帰できるか!? もう流すだけじゃ止まらねぇぞ! どうする!?』

 

 切島くんが、口角を上げるのが見えた。

「……そうだよ。それが見たかった」

 また拳がくる。受け流す。受け流しきれない。硬い衝撃が左半身を襲って、態勢が崩れる。さっきまでのダメージが影響して上手くいかない。避けても受け流しても、距離が詰まる。皮膚が燃えて、喉が焼ける。押し込まれる。腕で受けても衝撃が骨の奥まで響いて、床が近づいてくるのが見える。膝が、沈む。

 

「天成っ」

 切島くんがの声が、耳に届く。怒鳴っているわけでも、挑発しているわけでもない。何かを届けようって、その声が、俺の心臓を掴む。

「天成!」

 違う。

「──ああぁあッ!!」

「天成!!」

 

 違う。

 それは、俺じゃない。〝俺〟を、呼ぶな。

 声を出したら、〝俺〟が、出てしまう。笑ってくれたみんなが、いなくなる。あの場所から、弾き出されてしまう。それが怖くて、喉の奥で息を殺した。

 拳が、振り抜かれる。

 避けられない。

 

「っは……!」

 腕が勝手に動いていた。冷たい金属の感触を確かめて、セーフティを外しながら引き抜く。

「いくら硬化しても、変わらない……」

 自分の声が、別人みたいだった。震えて、途切れて。切島くんの目が、まっすぐ俺を射抜いていた。逃げ場なんてない。

「生理機能を改造し、体温を下げない限り」

 今度は腹に、入った。胃液が逆流する中で、声になっていただろうか。

「この薬は、誰もを夢の中にいざなう」

 だから、頼む。

 もう、眠ってくれ。

 

 ぶしゅ、と水鉄砲にも似た音の後、切島くんの身体はびくりと震えて動かなくなる。スリープダーツの接射(ダイレクト)、外れる道理はない。銃を下ろそうとして。

「薬が、効いていない……?」

 物理的にも外せない。だからこれは、発射のミスか生成の失敗しかない。

「きいてる、よ……ちゃんと……」

 

 足が震えているのが見える。俺も切島くんも、震えている。

 それでも、切島くんは立っていた。息を荒げて、目はほとんど閉じて、それでも、拳を解こうとはしない。

「……もう、やめろ」

 懇願だった。

「やめてくれ……」

 彼は答えず、ただ笑った。乾いた唇がわずかに動いて、細い言葉が口の端を伝っていく。

 

「こう、さん……だ……」

 

 膝を折ることもなく、倒れることもなく……切島くんは立ったまま、静かに目を閉じた。

 なんにも、聞こえない。耳の奥で、心臓の音がうるさく鳴っていた。握っていた銃のトリガーは、指先に食い込んでいる。離せない。離してしまったら……

「──ぁ」

 立っていられなかった。膝が勝手に折れて、地面が近付いている。

「……あぁ……」

 

 撃った。

 自分の意思で。

 誰も傷つけたくないと願いながら、結局、引き金を引いた。

 守るためでも、救うためでもない。ただ、怖かった。〝俺〟を見られるのが、怖かった。見られるくらいなら、眠らせてしまえばいいと思った。

 

 耳が、壊れてしまいそうだ。肩で息をしても、空気が入らない。喉の奥で跳ね返される。肺が潰れているのかもしれない。脳が酸素を求めて、世界の色が抜けていく。

「っ、っ……ぅ、ぁ……」

 苦しい。息を吸おうとしても、空気が足りない。喉が引きつって、視界が揺れて、怖い。

 誰かを撃った。

 俺が撃った。

 俺が眠らせ(ころし)た。

 

 銃が、重かった。

「天成くん、天成くん!」

 太陽が、眩しい。

 切島くんが勝者だって、照らしてる。

 あいつこそが、切島鋭児郎こそが勝者だって、燃えてる。

「天成ッ!」

「天成!」

「──天成!!」

 

 ……違う。

 それは、俺の名前じゃない……。

 

 

 

 

 夕暮れの光が、目を焼いた。お祭り騒ぎの終わった学内は静けさを取り戻して、白い扉の前で手を持ち上げる。

 躊躇うように下ろして、深呼吸。それを数度、心操は繰り返していた。──怖いのは、扉の向こうではない。この先に天成がいる。けれどそれはもう、自分の知っている〝天成あまり〟ではないのかもしれない。そんな考えが、身体の先を冷やしている。

 

 ほんの数時間前、天成とチームを組んだ。食事を共にした。

 心操の個性を知っても、彼は構えなかった。言葉一つでお前を操ることだってできると脅しても、彼は受け入れてくれたのだ。ただ真っ直ぐに、自分の声を聞いてくれる。それが、乾いた喉に染み渡る甘露のようだった。

 

「遠慮要らないでしょ。縛るために使うんじゃなくて、解くためにさ。誰かの足枷を外すっていうのかな。そういうの、きっとあるから」

 そう言ったあいつの声が、今も耳の奥に残っていた。

 あの一言は、心操人使のもうひとつの〝誕生日〟だったのかもしれない。祝福とまでは言えないが、自分の声を呪いだと思うのを、やめてみようと思った。たった一日だったのに、彼にとって天成と過ごした時間は確かに救いだったのだ。──それなのに。

 

 ベッドの上にいた天成は、別人のようだった。

 目を開いているのに、どこも見ていない。天成のはずなのに、話しかけても反応がない。呼んでも、聞いても、肩を叩いても、瞬きさえしない。まさに〝魂が抜けた〟ように。

 言葉が、出なかった。

 出したところで、届きはしないと。どこかが、そう感じとっていた。

 

 半ばほどまで開いた瞼、アンバー・オレンジの瞳は、天井という名の何かを見ている。呼吸もある、脈もある。体温もある。ただしそれを「生きている」と言えるのか、心操には分からなかった。昼間、共に笑っていた人間とはまるで繋がらない──たった数時間で、人とはこんなにも遠くへ行ってしまうのか。

 

 心操はベッドの脇に膝をついて、口を開いた。

「……天成」

 変化は、なかった。

 小さく息をついて、もう少し強く。

「天成。俺だ」

 何も、起きなかった。

 彼の唇がかすかに動くが、ただの呼吸だった。

 

 ──声が、届かない。あの時自分に、ちゃんと届いたと、確かに言ってくれた声が。ほんの少しでも、彼と歩めるかと考えたのに。

 今は、届くためのパスがない。

 ベッドの上で、彼は微動だにしなかった。呼吸の度に前髪が僅かに揺れ、そのささやかな動きがむしろ、生の実感を遠ざけた。

 

「……聞こえてる、だろ」

 分かっていた。自分がそう願いたいだけだと。けれど、それでも呼びかける。

「俺、言ったよな。「呼んでくれ」って。あの時、約束したよな。お前が呼んだら、来るって」

 広がる沈黙が、重い。

 心操は〝声〟で人を支配できる。その個性を、誰かに向けて使いたいと思ったことは一度もなかった。しかし今、この沈黙の前に立つと、ほんの一瞬だけ思ってしまう。

 問いに答えて欲しいと。命令すれば応じてくれるかもしれないと。

 

 「起きろ」と。

 「俺を見てくれ」と。

 

 そうすればまだ、帰ってこられるんじゃないかと。

 喉が僅かにひくついて、けれど声を生まない。それをしてしまえば、自分は彼を操ってしまう──天成のくれた言葉を、台無しにしてしまう。

「……お前が、言ったんだろ。解くために使え、って」

 唇が乾いて、指先に力が入る。

「今、俺が。それを守れてるか、分かんねぇよ……」

 

 沈黙を守りでなく、自然体として受け入れてくれた人間は、初めてだった。何を話せばいいかも分からず、定期的に遠くを見つめた心操に、天成は何ともないように発したのだ。

「ん。いーよ。話題提供するもしないも。静かにしたかったらすればいい。話したかったら話せばいい。それでいいのよん」

 彼の軽さが、自分の中に離せぬものとして残った。

 沈黙を受け入れてくれて、言葉を恐れなくて、自由を選ばせてくれる人。たった一日で、そんな相手になっていた。

 

「……嘘みたいだよな」

 喉の奥が鳴って、笑ったような声が漏れる。

「たった一日で、こんなになって」

 こんなにも、胸が苦しい。

 

 初めて喋ってくれた時、天成は確かに言った。

「お前の個性。ヴィラン向きとかみみっちい言い方されるもんじゃないでしょ」

 その言葉は、まさしく救いだった。だからこそ今、この静寂を壊したくなってしまう。彼の声を取り戻したい。例えそれが、まさしく〝ヴィラン〟の使い方になったとしても。

 でも、その一線は踏み越えられなかった。喉が熱く、言葉がせり上がる度、心操はそれを押し殺した。声は、自分の牙である。それでも使いたいと思ってしまった自分を、心の底から忌まわしく思った。

 

「……ずるいよ、お前」

 嘆きでも怒りでも、ない。擦り切れていた。

「たった一日でさ、人をこんなにしといて……」

 自分でも信じられなかった。これほど他人のことで心が揺れるなど、想像もしていなかったから。

 

「帰って、来てくれよ……」

 祈りだった。答えを求めるものじゃない。返ってくる見込みがないと分かっている。しかし言葉にしなければ、幽世(かくりよ)に攫われてしまいそうだったから。

 

 

 

 鼻の奥に、優しい匂いが残っていた。遠くで誰かが喋っている。海の中にいるみたいに、自分から出る音以外、なんにも聞こえない。音が鼓膜を撫でて、形にならずに消えていった。

 目の前が、ゆらゆらしてる。相変わらず水の中で、でも、喉は痛いくらいに乾いている。

 瞬きをしても、何も見えない。

 誰かが名前を呼んだ気がするけど……きっと、気のせいだ。

 

 

そういえば相澤先生の抹消使ってる時の色どっちが好き? 原作とアニメでゴリゴリに違うんですけどぉ……

  • 赤(アニメ)
  • 金(原作)
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