味方撃ちOKのスナイパー   作:Damned

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再燃したら死ぬほどおかしくなったので初投稿です。



#02 ニンブルトキシン

 

 

「さて、最後の試合だ。天成少年! 誰か、対戦相手として立候補──」

「私にやらせてくださいっ」

 食い気味に反応したのはお茶子ちゃんだった。

「模擬戦だから勝てたけど、さっきのは反則して勝ったみたいなものでした! もう一度やらせてください!」

 続いて、飯田くんが手を挙げた。

「ならば、俺がその相方を務めるのが的確かと! 先程の対戦でお互いの手を知っていますし、作戦を詰めることも手早くできると考えます」

 

「なるほど、二人とも素晴らしい心意気だ! では、天成少年とコンビを組みたい者はいるかな?」

「先生、提案があるのですが」

「どうした、天成少年!」

「私一人で、やらせてはもらえないでしょうか」

 

 空気が凍ったのが分かる。それまでのざわめきが嘘みたいに静まり返って、二十一人、四十二の瞳が一斉に俺を見る。

「……一人で?」

 最初に口を開いたのは飯田くん。うんうん、言いたいことは分かるよ。俺だってそんなこと言われたら舐め腐ってるって思うもん。それになにより、フェアじゃないって考えるタイプだ。原作を見ていればわかる。

 

「そうだ。私一人で戦おう」

「でもそれじゃ不公平だよ! 私たちは二人で、天成くんが一人なんて!」

「不公平なのはむしろ、そなたらだ。疲労を抱えた二人に、万全の私。人数では勝っているが、損耗があるし情報も晒している。二対二では勝てるのが道理だとは思わないか……人数で勝る相手にも戦わねばならない。将来は、そのような事案も起きうる」

 

 言い訳でも挑発でもない。1vs2(ワンブイツー)上等、前世でも散々やってきたことだし、何より口にしたのと同じ理由だ。この身体でどれほどのことがやれるのか、どこまで身を守り目的を果たせるか。この世界で生き抜くためには、絶対に必要なこと。

「天成少年! その思考、ヒーローとして誇るべき姿勢だ! 数による立ち回りの違いという例を示すことにもなる。危険を感じたら私が止める、思うように、戦ってみせろ!」

「感謝します」

 

「マジかよ」「アツいじゃねェか」「気を付けてね」四方八方から投げられる言葉に微笑んで、俺は攻守を決める。ヒーロー側。ヴィランが有利だが、それも乗り越えるべき障害だ。死ぬことは多分ないだろうし、模擬戦ならば猶更、この先の糧にすべき。

 爆豪は何も言わず、鋭い目つきでこちらを睨んでいた。まぁ、今までデクだなんだって馬鹿にしてた相手に負けた後ならそうもなるわな。

 ぴいん、と澄んだ音を立てて、銃弾が宙を舞う。それを掴んで、俺は上着のポケットへと仕舞う。

 

 ここから先は、試合ではなく戦場だ。言い聞かせるように、俺は呟いた。

 ビルの間取りを把握する。マップの解析はお手のものだ。新しいマップが出るたびに位置取りを把握し、一番死なない場所から回復と阻害を担う。それが自分のやるべきことだったから。

 装備を確認する。睡眠針(スリープダーツ)射出用のハンドガンと、治癒と阻害の両方の弾頭を扱うための狙撃銃、それが、今の俺に出せるアナの能力だ。

 

 スタートの合図が鳴る。息を吐き、ゆっくりとエントリー。足音を立てない構造のブーツだが、それでもゼロではない。

 ビルの中はひんやりと湿っていて、無機質な照明が部屋を這い、空調と配管の音がわずかに音を立てていた。人の息遣いが混じらない一階を歩いていく。クリア。奇襲の気配もない。

 まぁ、飯田くんのことだ。ヴィランになりきるといっても、真正面から突っ込むなんて馬鹿な真似はしない。

 

 階段を上がる。二階にも、空気の揺らぎは──いや、ある。柔らかいものではなく、切り裂くようなものだ。飯田くんならきっと、これを詰めるのは一瞬。腰だめのまま銃口を向けて、次の瞬間。

 空気が割れた。

 床が唸り、排気口が吠える。早い。見失ってしまいそうなほどに。回避は間に合わなかった。左肩で受け流すが、息が乱れた。

 わずかな身長差だが、筋肉によるフィジカルの差は圧倒的、勢いも体重もあって、壁とお友達になる訳にはいかない。なったら最後、飯田くんの速度に轢かれるのは絶対だ。

 

 喉が、焼けるように乾いている。滑らかに空気を裂く、よく切れた刃物のような移動。筋肉の弾性とエンジンの加速が爆発的な推進力を生んで、認識していても回避がせいぜいだ。真正面、違う。角度を変えての突進。認識だけではジリ貧だ。こちらには制限時間があるのだから、手早く終わらせねばならない。

 だから、揺れる空気で察する。風の割れ方、床を噛む靴の滑り、それら複数を繋げば、動きは自然と予測できるはずだ。

 右のくるぶしに向かって、阻害弾を射出する。鈍い銃声とともに直撃したが、装甲に弾かれて有効打にはなりえない。

 

 今は、それで十分。逸れた軌道に踏み込んで、腕をつかんだ。

「ぐっ……おっっっも!? 鍛えすぎだろ!」

 思わず言葉と呻き声が出てしまった。いや、本当に重い。こんなのに突撃されたら間違いなくミンチだ。死ぬ。

 だからこそ、誘導されれば仇となる。骨格が軋むのを感じながら、身体を捻った。

 

 床に叩きつけられた飯田くんは息ができないらしく、目を見開いたまま床に転がり、それでも立とうとする。その勇気と強さを俺は尊敬しているし、流石の頑丈さだが、今回は俺に分があった。

「骨を休めよ、若人」

 言葉より先に、俺はダーツを発射していた。

 一瞬ピクリと動いて心臓が縮み上がったが、効いていたらしい。飯田くんの身体が力をなくしていくのを見て、捕縛用のテープを後ろ手に結ぶ。

 部屋が静けさを取り戻し、縮み上がった心臓がただの速い脈へと戻っていく。──これで、一人目。

 

 息をするたびに肩口が痛みを訴える。ナノセラムの自己修復は緩やかだ。他人に付与するならともかく、自分に掛けての修復は瞬時に済まない。それに、あくまで体液を使用した回復の為、やりすぎると動けなくなる。訓練とはいえ、飯田くんの突撃はラガーマンのタックルを正面から受け止めたみたいに影響していた。

 

 三階に繋がる階段を上る。銃を構えたまま階段の先を覗くと、複数の瓦礫が見える。彼女の個性は〝無重力(ゼログラビティ)〟。触れた物体にかかる重力をなくす。質量をぶつけるだけでなく、敵の抵抗を可能な限り減らし無力化することができる個性。

 目前には核兵器を模したものがある。ごく近く、複数の物体がある中に彼女は潜んでいる。いったいどこにいるのか、警戒を怠らず進んでいった。彼女も、こちらを襲うタイミングを計っている。

 

 一瞬の隙を探して。最初の試合の反省を生かして。

 視覚にも聴覚にも引っかからない。どこだ。背筋を撫でられるような感覚の中で、勝利条件である〝核兵器へのタッチ〟を目指そうとしたあと数歩。

 肌に何かが触れた。いや、何かではない。振り返った先にはお茶子ちゃんがいて、目を見開くと同時に体が浮いた。背後から襲うのは、確実に仕留める為の一手。こんな無様を晒して、何が「彼女のようになる」だ!

 

 支えを失った足が空を切って、銃のスリングを掴んだ。これを手放せば、勝機はほどんどゼロ。視界がゆっくりと回転し、世界が音を失う。彼女の息は耳元に近く、捕縛用の紐がその手にあった。

「ここまでっ……!!」

 身体が瓦礫の先へと押しやられる。柔らかい力だが、振りほどくことはかえって自分を追い詰め、焦りを押し殺す。

 ──喚くな、かすり傷だ。

 

 重力がないはずなのに、腕が重い。浮かされたままでは反動でこちらも壁に打ち付けられてしまうし、何より狙う余裕がある距離じゃなかった。銃は撃つためにあるが、撃てない時にはただの荷物だと分かっている。だからスリングを掴んだまま、腕を振るった。

 鈍い打撃音が、彼女のヘルメットに直撃した。頭はまずいと胴体を狙ったはずが逸れて、彼女は別の方向に動いてしまう。ならば。

 

「おやすみ、麗日」

 

 銃を手放して、お茶子ちゃんの腕を掴んだ。慣性のままに引き寄せられる身体に、もう片方の腕で握った拳銃を撃ち放つ。ふっと彼女の目が焦点を失い、俺は強かに尾骶骨を打ち付けて、戻ってきた重力より先に呻く。

「痛ぁ……」

 怪我をしないよう抱きかかえていたから、彼女に怪我はない。代わりに俺の身体は痛んだが、それだけで他人の身体が傷付かないのならさしたる問題ではないだろう。お茶子ちゃんの両手を縛って、目標に触れる。

 これで、勝負はついた。

 

 

 

 勝利を告げるアナウンスが鼓膜を震わせる。

 お茶子ちゃんを抱えて二階に戻ると、意識を取り戻したらしい飯田くんが上体を起こしている。瞬きをして周囲を見渡している飯田くんに声を掛ける。

「痛みはないか?」

「あ……ああ。俺……」

「麻酔針を打ち込んだからな。薬効は問題ないはずだが、何かあるなら教えてほしい」

「背中は痛いが、特に変なことはない。安心してくれ」

「背中だけで済んだのならよかった。しかし、訓練とはいえ、痛いものは痛いだろう」

 

 左肩が鈍く疼いていた。飯田くんの攻撃に加えて、銃を振り回したことで少しだけ痛みが増えている。スリングを逆にして肩の負担を軽減していると、飯田くんが心配そうに声を掛けてきた。

「君の方こそ、大丈夫か。肩を痛めているようだが」

「しばらくしたら治る。私の生命力はプラナリア並みだ」

「そ、そうか……麗日くんは俺が連れて行こう」

「疲れているところすまないが、頼む。数分で意識は戻るだろうが」

 

 二人と一緒に部屋に戻ると、クラスメイト達が拍手と歓声で迎えてくれる。

 オールマイトがサムズアップとともに、いつもの表情で褒めてくる。

「素晴らしい戦いだった! 今の試合には学ぶ点がいくつもあったね。天成少年、飯田少年、麗日少女。実に見事だった!!」

 俺は「お褒めにあずかり光栄です」と軽く礼をして、飯田くんは背筋を伸ばしながらも少し照れ臭そうだ。目覚めたらしいお茶子ちゃんも、頬に赤みを残している。

 

「この模擬戦、単なる勝敗ではなく戦い方そのものに注目してほしい。天成少年は仲間を持たずして立ち回り、戦術でもって二人を制した! だがそれは力の差ではなく、情報と観察の積み重ねだ!」

「質問があります。天成さんは、戦闘が始まる前から二人の個性と取ってくる戦術をしっかりと把握していました。どのようにして、その準備が可能だったのでしょうか?」

「よい質問だ、八百万少女! では、本人に答えてもらおう!」

 

 突然話を振られた。てっきり、オールマイトが答えてくれると思っていたのに。いやいいんだけど、それって先生のやることじゃないの?

「まず、私の使用した手段は〝睡眠針での無力化〟。名前の通りだ。それを踏まえた上で話すが、しっかり把握していた訳ではない。個性の詳細は入試と、ここでしか確認していないからな。が、急造のコンビで事故を起こさないようにするならば、必然的に使える作戦は限られる。

 そして把握はしていたが、飯田の速さは想定の数段上で、正直なところ──初撃に気付けなければ、床を舐めていたのは私だったろうさ」

「そ、そんな……!」

 

 飯田くんが驚いたように声を上げる。本当の事だ。あんな勢いでチャージを食らったら、壁とお友達にな(敗北す)るのは間違いない。

 謙遜するような態度を取る飯田くんに首を振った。

 

「それほどの速度だったということだ。轢かれるかと思ったさ」

「そ、そういわれると、照れくさいな……」

「そして麗日。彼女の不意打ちは完全に成功していたし、気付かなかったのは本当だ」

 

 あれだけ大見得を切っておきながら、本当に情けない話である。俺が負けていたら「そりゃそうだろ」と呆れた反応が返ってくるのは確実だ。

「そ、そんな、あれはたまたまで……! 私の方こそ対策されてびっくりしたっていうか!」

「対策ではないよ。内心焦っていたんだ。銃を手放してしまっていたら終わりだった」

 

 お茶子ちゃんの言葉に、クラスのみんながくすくすと笑っていた。侮蔑ではない。「そこまで弁解しなくても」という反応だ。

「天成少年が語ったように、この試合における重要な点は建物だけでなく敵の把握、そこからの予測だ!」

 ヒーローはどれほど経験を積もうと知識があろうと、常に未知と遭遇する。その時に勝敗を変えるのは、僅かな情報から敵の動きを導き出すことだ。オールマイトが言えば猶更、その言葉は重い。力だけではできないことだって沢山ある。この人がただ力押しなら、ここまで大成していないから。

 

 ほんの僅か、呼吸が乱れた気がした。ほんの一瞬のこわばりは、知っている者が注視しなければわからない。

 常に肺を膨らませている状態、と言っていたはず。英雄(ヒーロー)とは常に、救う側であると同時に救われにくい存在だ。

 

「でも、あれやっぱおかしいだろ。個性で薬使って眠らせたんだろ? ヴィランの戦い方だって」

 峰田くんが突っ込んでくる。スケベ野郎にだけは言われたくないぞお前、とちょっと思ってしまった。それを表に出すわけにはいかない。否定も肯定もせずに、一拍だけおいて答えた。

「正しいと言える戦い方など、この世界には存在しない。目的を見失わず、救える命を救う。透き通った瞳では、真実を見通せないものさ」

 

「透き通った目? なんて?」

「現実を受け止められない者にはいずれ報いがくるぞ、峰田。正義とは華やかに見せびらかすものではない」

「……ジジ臭くない?」

「老成しているように見えると。誉め言葉だ」

 

 峰田はそれ以上の追及を避けてくれたし、みんなともレスバせずに済んだ。オールマイトがうんうん、と肯いている。

 それから「緑谷少年に講評を聞かせてくる」と凄まじい風圧を残して走っていった。着替えを済ませて、教室に戻る途中──ヤオモモちゃんに声を掛けられた。

「見事でしたわ、天成さん。情報の収集と分析に、即応力。理論上は理解できますけれど、一朝一夕でできるものではありませんわ」

「過大評価だ、八百万。結果的に勝てただけで、想定とは程遠い」

「それでも勝利をつかんだのは、貴方の冷静さと判断力ですわ」

「……どうだろうな。私が一歩遅れていたら、勝利は二人に渡っていただろうさ」

 

 思わず、苦笑が漏れる。

「本当に、紙一重だったよ」

「……自己評価が低いのですわね」

「いいや。正確な評価だよ」

 お互いに譲らない。最終的に、「どちらが正しいというわけではない」という結論に落ち着いて、二人で教室に戻る前。

 

「……貴方は、どうしてこの学校に?」

 自分が欲しかったのは、ヒーローとしての賞賛でも、名声でもない。ただ──

「世界を、見殺しにしてなるものか」

 それが俺の、動く目的の一つだった。

 彼女は何も返さず、俺を見ていた。

 

 

 

 

 放課後の教室は、喧騒に包まれていた。授業を終えたばかりの興奮は残り、めいめいがそれぞれの反省や感想を交わしている。椅子を引く音、笑い声、ノートをめくる軽いもの。それらすべてが重なって、夕暮れの窓に姿を映していた。

 

 飯田は席に着いたまま、ノートにペン先を彷徨わせていた。一戦目の緑谷・お茶子との対決についてはもうまとめ終えているし、それ以外の観戦していた試合も。ただ、最後の模擬戦が、言葉が、頭から離れない。

 ──骨を休めよ、若人。意識が薄れていく中で、自分に向けられた声。優しさと厳しさが同居したそれは、同級生に掛けられるいろでも、内容でもない。もっと年上の、誰かを導く立場の人間が使う調子だった。だというのに。

 ──おっっっも!? 鍛えすぎだろ!! 自分の身体を受け止めながら発したそれはただの高校生のように若く、驚きを前面に出したものだった。

 

 あれほど大人びた振る舞いの彼が、あれほど俗っぽい言葉を発する。その落差が、飯田の胸をざわつかせていた。

 どちらが本当の天成なのか、それとも、どちらも彼の一部なのか。

「……俺には、わからない」

 無意識に眼鏡を押し上げた飯田の向こうで、お茶子もまた、反省会の輪の中にいても、返事はどこか上の空だった。

 

 ──おやすみ、麗日。

 子供を寝かしつけるような、声。

 敗北したはずなのに、毛布にくるまれるように温かく、慈しむような響き。その優しさが、不思議に思えた。殺意とか冷たいとか、そんなものじゃない。同い年のクラスメイトが持っている優しさでは、なかった。

 それほどまでに大人びて、穏やかな言葉を掛けるのはなぜか。

「うーん……」

 飯田に比べて一つ少ない言葉を掛けられた彼女には、わかるはずもなく。

 

「それにしてもさぁ」

 上鳴が話題を移す。

「天成って、なんか俺らとは違うよな。覚えてる? さっきの」

 彼がいないからこそ発せる話題だった。天成はすでに、「用事があるからな」と教室から去っていた。

「正しいと言える戦い方など、この世界には存在しない……って奴?」

 返したのは切島だ。彼にも、その言葉は突き刺さっていたらしい。

 

「そうそう。透き通った瞳じゃ真実を見通せないってさ。映画かなんかのセリフみたいだよな」

「かっけぇけど。言ってること、ちょっと怖いなって。現実を受け止められない者にはいずれ報いがくるってさ、正義は華やかに見せびらかすものじゃないってのはマジだけど」

「でも、本気だわ。冗談で吐く言葉じゃないもの」

 

 梅雨の言葉を、その場にいた全員が肯定した。

「ヒーローだって人間よ。きれいごとだけじゃ、救えないものはたくさんあるわ」

「理屈じゃわかるけど、あの年で言う事じゃなくね?」

「それは本当にそう」

「ねえ」芦戸が口を開いた。「二人はどう思う?」

 二人──飯田は眼鏡の位置を整え、お茶子は戸惑いを隠せない様子だった。二人とも、考えあぐねている状態であるから。

 

「天成君の言葉は正論だ。だが、学生としてはかなり大人な考えだと思う。プロのヒーローのようだ」

 お茶子も同意しながら、机に頬を預ける。

「落ち着いてるって言うか、なんか、全てを見てきたみたいな。焦っても全然表に出なくて。すごいよね」

「そうだな。実戦であれほど冷静に立ち回る生徒は少ないと思う。しかし……」

「しかし?」

 

 いまだ彷徨うペン先。今日は考えがまとまらない。飯田はノートを閉じて、目を伏せた。

「しかし同時に、何かを背負っているようにも見える。あの瞳の奥には、俺たちの知らない何かが宿っていた」

「背負ってる……」

 

 沈黙の後、ややあって、切島が発した。

「飯田の背負ってるってどういう意味?」

「例えるなら……〝使命〟のような。ヒーローを目指すのではなく、もっと個人的なものだ」

「使命ねぇ。俺たちみたいに将来なりたいーみたいな感じじゃないよな」

「将来の夢じゃなくて、確定した道を進むみたいな気がするよね。分かる?」

 

 耳郎の言葉がトリガーとなったように、八百万が発する。

「これは、口外しないでほしいのですけれど……」

 唇に指をあてながらそれに、周囲は自然と黙り込む。

「先程、話した時に聞いたのです。ここに来た理由を」

「理由?」

「ええ。彼は、こう言っていましたわ。──「世界を、見殺しにしてなるものか」……と」

 

 

そういえば相澤先生の抹消使ってる時の色どっちが好き? 原作とアニメでゴリゴリに違うんですけどぉ……

  • 赤(アニメ)
  • 金(原作)
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