STEINS; GATE ~存在証明のレジスタンス~   作:明治アル蜜柑

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12月18日(土) 昼 秋葉原

 

「今日はお疲れだったな」

 

「いえ、そちらこそ。まだこっちのことは全然詳しくないし。案内してくれて助かったわ」

 

「それにしても、警察ってあんなにしつこいんだな……」

 

今日は比屋定さんと警察に行っていた。先日、ホテルの地下で男に襲われた件で事情聴取を受けたのだ。あまり詳しい状況は教えてもらえなかったが、なかなか親身になってくれる警官で、ちらほらと男の情報は教えてくれた。

 

 

もうお昼を過ぎた。もちろん昼食はまだだ。

 

「これからどこか食べに行くか?」

 

「また案内してもらえるのかしら?……そうね。紅莉栖と行ったお店、とかはどうかしら?」

 

「く、紅莉栖と行った店……か」

 

そう言われてギクリとしてしまった。

 

「あ、ごめんなさい。思い出してしまって辛いわよね……?」

 

「あ、いや。そうじゃないんだ」

 

本当にそうではない。さすがに飯のことくらいでフラッシュバックしたりすることはない。

 

ただ、

 

「あいつとは、飯を食いに行ったことなんてほとんどないんだ……それこそサンボかメイクイーンくらいしか」

 

「無理しなくていいわ。お昼くらい適当に済ませるし……って、サンボ?メイクイーン?……じゃがいも?」

 

しがない牛丼とメイド喫茶ですすみません。

 

紅莉栖はねらーだったし、そういう文化に理解もあったが、この人は無理そうだ。オタク文化に理解があるとは思えないし、初心者を連れて行くにはハードルが高い。

 

「あ、ああ。メイクイーンっていうメイド喫茶なんだよ。知り合いがやってる店で……」

 

なんというか、フェイリスとのかみ合わせが絶望的に悪いと思われる。こんな合法ロリ(ダルの言)を連れて行った日には、おもちゃにされるのが目に見えている。この時間ならまゆりもいるはずだが、まゆりは決して助け船にはならないだろうし。

 

「メイド喫茶!そっか、秋葉原ですものね。噂に聞くメイド喫茶か……。可愛いメイドさんが給仕してくれるのよね?」

 

「そ、そうだが……」

 

えらく食いつきがいいじゃないか。

 

「そこには紅莉栖も行ったの?そう言えばあの子って、そういうものが好きだったっけ」

 

すまんな紅莉栖。お前はきっと、そういう話は意地でも隠していたのだろうが、お前の先輩が掘り当てようとしている。そして俺にはそれを止める術がない。

 

「おもしろそうね。もしよかったらそこに連れて行ってもらえないかしら?紅莉栖が行ったところ、一度行ってみたいわ。……あ、もちろん、あなたが辛くなければだけれど」

 

ずいぶんと心配してくれているようだ。俺が躊躇っているのはそれが理由ではないんだが……。

 

だが、ここで断っては余計に心配させてしまうかもしれない。

 

「あんまりおすすめはしないぞ?なんというか……初体験の比屋定さんには刺激が強いというか」

 

「……?」

 

やはり分かっていないな。

 

「そ、それじゃあ行こうか……」

 

頼むからフェイリスが変に絡んで来ませんように……。

 

 

 

 

俺の願いは聞き入れられなかった。

 

「ウニャッ!キョーマが可愛い女の子を連れてるニャ!?しかも背の高さから見て小学生か中学生!?いけない!これは犯罪の匂いがするのニャ!“YES!ロリータNO!タッチ”の掟に反するのニャ!」

 

「違う!」

 

「信じられない。フェイリスというものがありながら、新しい恋人を!新しいロリ恋人を作るニャんて!」

 

「違うって!それに言い直すなバカ!彼女はアメリカの大学から研究のために——」

 

「これはもう、円卓会議で糾弾するしかないニャ!」

 

これはもう、これ以上言ってもしかたない。後先を考えず口にしてしまった罰だろう。甘んじて受け入れることにした。

 

「あの…いったい何の話をしているのかしら?」

 

店内に入るのを足踏みしていた真帆だったが、意味の分からないノリで話すフェイリスを見て、ようやく店内に入って来た。外観を眺めるだけでお腹いっぱい、という顔だったからな。

 

「あ、いや…これは…」

 

「なんだか恋人という言葉が聞こえたのだけれど、岡部さんはこの人と付き合っているの?……ずいぶんと可愛い。というかめちゃくちゃ可愛いんじゃない!?」

 

フェイリスのせいであらぬ誤解を生んでしまった。まぁフェイリスがめちゃくちゃ可愛いのは否定しない。こいつも中身がこんなに残念でなければ、と思うのだが。

 

「断じて違う!」

 

「そんなに強く否定しなくてもいいのニャ!あ、それはそうと、おかえりニャさいませ、お嬢様♪」

 

「………」

 

真帆は目が点になっている。こういう文化は初めてなのだろう。

 

「あの、岡部さん…これは?」

 

いらっしゃいませではなく、お帰りなさいませ。それはメイド喫茶における仕様だが、これも意趣返しだ。

 

「今のはこいつの病気だ」

 

「ニャ!?」

 

「そ、そう…。日本のサブカルチャー。噂には聞いていたけれど、実際に見るとすごいのね…」

 

「ニャー!お嬢様が誤解してるニャ!メイド喫茶ではいらっしゃいませの代わりにこう言うのニャン!それとそれと、申し遅れましたのニャ。フェイリス・ニャンニャンだニャン。お嬢様、お名前は?」

 

「…比屋定真帆よ」

 

「ひやじょう…というと、沖縄のお嬢様かニャ?」

 

「あら、よく知ってるのね。いつも聞き返されるか、間違えられるかのどっちかなのに。しかも沖縄の名前ということまで」

 

「当然だニャ!フェイリスは三世代前の前世で、琉球王国の彼方にある理想郷、パイパティローマを守護する精霊だったんだニャ」

 

また始まった。フェイリスの病気——厨二病が。

 

「…はい?」

 

「そう…あの頃、フェイリスたちの精霊の声はノロを通じて人々に届き、王国を正しい姿へと導いていたのニャ。ところが、荒ぶる海神たちがパイパティローマに攻め込んできて、ついにフェイリスたちは……ううう………」

 

「あ、あの…ごめんなさい。この人は何を言っているの?」

 

「病気…もとい、アキバで通じる特殊な言語、だな」

 

来店早々、真帆は気がめいっているようだ。

 

 

 

 

席に着くやいなや、フェイリスがほぼ付きっ切りで相手をしていた。

 

人気ナンバーワンのメイドさんに相手をしてもらえるのは幸運なことだ。まぁ、彼女にとっては災難かもしれないが。

 

「それじゃあ、これからパンケーキをさらに美味しくする魔法をかけるニャン♪」

 

「ま、魔法?」

 

「さぁ、まほニャンもご一緒にっ♪“世界がヤバいニャ、陰謀ニャ~♪”」

 

「ふ、普通に食べさせもらえないかしら…」

 

その後も真帆は、パンケーキのハチミツを垂らしてしまったり、口元に付いた生クリームをフェイリスに拭かれたりと、子供をあやすかのように扱われていた。

 

まぁ、楽しそうで何よりだ。

 

俺は仏にでもなった気持ちで、粛々とオムライスを口に運んでいた。

 

俺のオムライスの上にはケチャップで、『抜け駆け禁止』と書かれていた。

 

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