STEINS; GATE ~存在証明のレジスタンス~ 作:明治アル蜜柑
ラボ
電話で話した通り、ラボにはサンタがたくさんいた。しかもミニスカサンタだ。
「あ、オカリ~ン!」
目のやり場に困る、赤いミニスカサンタのまゆり、フェイリス、カエデ、フブキ。そして…。
「お、岡部さん……」
黒サンタの格好のルカ子。
最も露出度が高く、すごく艶めかしい。
「っ………」
だ、だが男だ!
「凶真さん……僕…僕……っ」
「ルカ子……なんて言うか、その、お疲れ……」
そんなルカ子を見て、綯が自分もサンタの格好をしたかったと羨ましがっている。サンタ服は全てまゆりの手作りだ。綯の分は間に合わなかったのだろう。
「さぁ、オカリン。入って入って~!」
「あ、オカリンおじ……オカリンさん」
と、かがりだ。かがりも例にもれずサンタコスをしている。さすがに露出度の高いものではなく、子供らしく可愛らしいものだが。
「おーかがり。可愛いじゃないか。まゆりに着せてもらったのか?」
「うん!マ……じゃなくて、お姉ちゃんが作ってくれたんだよ!どう?どう?かがり似合ってる?」
かがりはまゆりと共に、今日のパーティの準備に尽力していた。飾りつけのほとんどはかがりが考えてやったものだ。
「ああ。似合ってるぞ」
フブキやカエデ、そして比屋定さんも来る手前、今日はまゆりのことをママ、俺とダルのことをおじさんと呼ぶのを徹底的に禁じた。おじさんならまだなんとか誤魔化せるが、ママだけは無理だからな。
「えへへ~。かがり、お料理も手伝ったから、おじさ……オカリンさんも食べてね」
無事?に危機を乗り越えて、かがりはキッチンの方へと去って行った。
「かがり、頑張ってるな」
「そうでしょう?そうでしょう?かがりちゃん、すっごく張り切っちゃって。楽しんでくれてるみたいでよかったのです」
「そういえば、ダルと鈴羽は?」
「うん。まだ連絡ないんだ~」
このパーティにはいろいろと目的がある。が、かがりと鈴羽に楽しんでもらうというのもその一つ……いや、まゆりとしてはそれが最大の目的だろう。まゆりはそのために今回のパーティを主催したと言っても過言ではない。鈴羽はおそらくこういう雰囲気が苦手だ。来ない可能性があったため、今日はずっとダルに張り付かせておいたのだが。
「ちなみに、オカリンのお客様は~?」
比屋定さんが来ることは事前に連絡済みだ。俺はさっそくゲストを呼び込んだ。
彼女を紹介すると、皆がそれぞれ反応を見せた。ほとんどは小動物を愛でるような感じだった。ルカ子だけはきっちりとお辞儀をしていた。
「まほニャン。また会ったニャ」
「ニャンニャンの人…」
ネコミミメイドだったフェイリスが、その雰囲気は残しつつサンタになっているのを見て驚いているようだった。
室内はすでに飾り付けがされており、こんな賑やかなラボは見た事がない。俺と比屋定さんはフェイリスに案内されるままに隣に座った。
「やっぱりキョーマも隅に置けないのニャ。またまほニャンを連れまわしてるのニャ」
と、やはりフェイリスが絡んできた。
まぁ、比屋定さんを連れてきた時点でこうなるのは分かっていたが
「そ、そんな言い方するなよ。俺はクリスマスパーティに招待しただけで……」
チラリと比屋定さんを見る。
「……ここはあなたの言うラボ、なのよね?メイド喫茶ではないのよね?」
比屋定さんは俺とフェイリスの会話よりも、ラボの状況が気になっているようだ。
どこを見てもサンタ。サンタばかり。フェイリスに至ってはその上からネコミミだ。
「そうニャ!ここは世界の支配構造を破壊し、混沌をもたらす未来ガジェット研究所の前線基地。通称、ラボなのニャ!」
俺よりも先にフェイリスが説明する。いや……それは確かにそうなのだが。
「…………はい?」
「キョーマはその所長にして狂気のマッドサイエンティスト。岡部倫太郎とは世界を欺くための仮の姿。その真名こそ……」
「だぁぁ!フェイリス!ストップ!ストップだ!」
こいつは俺を殺すつもりか!?比屋定さんの前では鳳凰院凶真は全く出していないというのに。
「なんでニャ?鳳凰院凶真をリーダーとする対世界レジスタンスニャのに~」
俺をからかうためではなく、こいつは本気でこう言っているのが分かる。少しくらい空気を読め!
「やっぱり、フェイリスさんって岡部さんのこと、キョーマって呼んでいるわよね。……ほうおういん、だったかしら?」
「え、えっとだな……」
以前は何とか誤魔化したが、ここでもう一度触れられると俺が死んでしまう。
そうやって言い訳に苦心していると、
「ふーん。すごいね。いつものラボとは思えないや」
ドアが開いて、鈴羽とダルが入って来た。
「スズさん!いらっしゃーい!すごいでしょう?みんなで飾りつけしたんだよ。えへへ~」
さっそくまゆりが出迎えている。
「うん。本当にすごい。きれいだ」
そう言うと、鈴羽は困ったように笑いながら、ゆっくりと後ずさって外へ出て行こうとした。
「鈴羽。ダメだお」
この空気に耐えられないのだろうか。ずいぶんと居心地が悪そうにしている。だが、逃げ出そうとしたところをダルにつかまっていた。
「べ、別に何も言ってないだろ……」
「いーや。絶対にどっか行こうとしてたじゃん。今日の主役はかがりたんと鈴羽なんだから。主役がいないと始まらんっしょ?」
「うぅ……」
流石に鈴羽もダルには勝てないようだ。
鈴羽にはここにいてもらわなければならないからな。
「……あれ?あなたどうしてここに?」
そんなやりとりを見ていた比屋定さんが首を傾げた。
「うん?そこにいるロリっ娘は……って真帆たn、いやいや比屋定氏!?」
わざとらしいダルの態度も介さず、ダルがこの場にいることに驚いている。
「あ、あなた……岡部さんと知り合いだったの?」
「あ、比屋定さん。数日前はお世話に……」
「鈴羽さん……だったわよね?体調はもう大丈夫なの?」
「おかげさまでね。でも、どうして比屋定さんがここに?おじさ……オカリンさんが連れてきたの?」
これまたわざとらしい鈴羽。こいつら親子は隠し事をするつもりがあるのだろうか。それにおじさんって呼ぼうとしているし。
「あぁ。この人は比屋定さん。ヴィクトルコンドリア大学の研究員で、今は日本に来ているんだ。今俺はこの人の研究の手伝いをさせてもらってる。そういえば、鈴羽は比屋定さんに助けてもらったんだってな」
「そんな、私は何も……。ほとんど漆原さんが……あ」
黒サンタ姿のルカ子を見て比屋定さんは黙ってしまった。男だと説明した手前、最も露出度の高い姿に絶句しているのだ。
「お、岡部さん!」
無理矢理軌道を変えて俺に話しかけてくる。
「どうしてあの人……橋田さんがここにいるの?」
「それよりも、比屋定さんがダルと知り合いだったことに驚いたんだが……」
これは嘘だ。既に知っている。
「え、ええ。パソコン関係でちょっと依頼をしたの」
「あ、言っていい感じ?」
「別に構わないわ。私は全然詳しくないのだけれど、そっちの業界では有名みたいだし」
「まぁね。ボクは天才だからね。業界じゃDaSHって名乗ってるんだよね。今後ともご贔屓によろー」
ダルが比屋定さんから依頼を受けたのは偶然であったため、こういう演出にすることにしたのだ。正直に打ち明けてもよかったのだが、それは鈴羽が断固として反対した。
比屋定さんを通して、レスキネン教授の出方を見たかったのだ。
和光市のオフィスでの話はその場の流れによるものだが、どのみち俺はクリスマスパーティに2人を誘うつもりでいた。
レスキネン教授に裏の顔があったとして、俺から情報を引き出すことが目的の場合、是が非でもラボにやって来たはず。結果として教授は来なかったが。
その反応を見れただけでもよしとするべきだろう。
鈴羽は教授を徹底的に疑っている。
その教授が来ないと分かって、鈴羽は多少気を緩めているようだ。ラボの雰囲気を見て帰ろうとしたのもそのせいだろう。
今は比屋定さんと会話をしつつ、彼女を調べているのだろう。例えば盗聴器が仕掛けられていないか、など。
「それにしても世間って狭いわね。紅莉栖と知り合いの岡部さんと出会ったのも偶然だけど、橋田さんとも繋がっているなんて」
「まったくだ。俺もダルがそこまで有名だとは知らなかったぞ」
比屋定さんの反応も、俺を安心させるのに一役買った。
というのも、鈴羽としては比屋定さんが未来の仲間だと確信しているようだが、俺としてはもう少し確証が欲しいところだ。だが、紅莉栖のPCをダルに預けていたり、そのことを隠すでもなく話しているのを見て、彼女がその中にタイムマシン論文が入っているなんてこれっぽっちも考えていないことが分かった。
彼女としては、純粋に中に残された紅莉栖の痕跡が気になっているのだろう。研究者である前に、2人は理想的な先輩後輩関係にあったのだ。それは“紅莉栖”との会話を見ていても分かる。
彼女は白だ。
「悪いんだけど、解析にはまだまだ時間がかかると思うから、気を長くして待っといてほしい罠」
「ええ。別に急いでいるわけではないから大丈夫よ。ま、岡部さんとはこれからも会うわけだし」
「お、それは意味深な感じ?いやーんな感じ?」
「茶化すなバカ」
鈴羽をちらりと見ると、少しだけ表情が緩んでいるように見えた。