STEINS; GATE ~存在証明のレジスタンス~   作:明治アル蜜柑

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俺たちはフェイリス邸にお邪魔していた。秋葉原で最強のセキュリティを備えている場所と言えば、やはりここになる。鈴羽もここなら安心だと言っていた。フェイリスには悪いが。

 

真帆はフェイリスに勧められて湯船に浸かっている。俺とダルと鈴羽はリビングでゆっくりとさせてもらっていた。

 

「おじさん。話しておきたいことがある」

 

フェイリスは不安がる真帆と一緒にお風呂に入っている。いろいろと気を遣ってくれているようだ。

 

「なんだ?」

 

「さっきは言い出せなかったんだけど、あたしが戦闘した連中のことだ」

 

最初にビルに侵入してきた連中だ。SERNでもなく、ロシアでもない、おそらくアメリカの勢力。

 

「奴らの正体が分かった」

 

「何っ!?」

 

「組み伏せた男を軽く拷問した。もちろん、殺したりはしてないけど……」

 

鈴羽はさらっと言うが、聞き流せない単語が聞こえたような気がする。

 

「わ、我が娘ながら恐ろしいお……」

 

おかげで情報を引き出せたのなら御の字だ。

 

「奴らはストラトフォーだ」

 

「ストラトフォー……アメリカの民間会社だな。影のCIAとも呼ばれている」

 

正式には『STRATEGIC・FOCUS』。特に軍事関係に特化しており、湾岸戦争やイラク戦争でも、その能力は遺憾なく発揮されたと聞いている。

 

「所詮は金で雇われた連中だからね。簡単に口を割ったよ」

 

「……………」

 

正体が分かったのは喜ばしいが、米軍ではなかったのか。予想というほどのものではないが、外れたということになるか。

 

「あんな民間会社までタイムマシン狙ってるとか……」

 

そう。民間会社であるというのが引っかかるのだ。SERNなども国家ではないが、あれは300人委員会の傘下にある国家を超えた存在だ。

 

ストラトフォーはあまりにも影響力の強い企業だが、言っても所詮は民間。ロシアやSERNと渡り合うとは恐ろしい。

 

「おじさん。どうかした?ストラトフォーについて何か知ってるとか?」

 

「いや……」

 

俺の頭に浮かんだのは、ロシア世界線でのことだ。

 

「ロシア世界線にいたとき、米軍というワードを頻繁に聞いたんだ」

 

俺を筆頭にリーディングシュタイナー保持者は日本政府によって沖縄に集められた。1か月にも及ぶ移動の中で、米軍に対して悪態をつく自衛官がたくさんいたのだ。

 

「リーディングシュタイナー保持者を集めるように指示を出したのは、最初は米軍だったらしい」

 

つまり、『Amadeus』に辿り着いたのも、もとは米軍だったということだ。おそらく、ダルがそれに気づいて先手を打ったから、俺の元に『Amadeus』が届けられたわけだ。

 

「米軍とストラトフォーは別物、だよな?」

 

「そうね。昔、ストラトフォーをハッキングしたことあるけど、全然米軍とは関係ないとこだったお」

 

「そうか。そうだよな………ってはぁ!?お前、ストラトフォーにハッキングしたのか!?」

 

「だからそう言ってんじゃん。友達とどっちが先にハッキング出来るかって賭けてさ。ま、もちろんボクの圧勝だったけど」

 

こいつときたら、遊び感覚でそんなことをしているのか……。鈴羽の拷問発言といい、とんでもない親子だ。

 

「で、ストラトフォーと米軍に何の関係があるん?」

 

具体的に何があるというわけじゃない。だが、紅莉栖のノートPCを狙ってきたのがストラトフォーなら、米軍は何をしているのだろうか。単純に米軍はこの世界線では『Amadeus』に気付いていないという可能性もあるが。

 

さすがにダルにペンタゴンをハッキングしろ、というわけにもいかない。バレたら首が飛ぶとかいうレベルではない。

 

「いや、忘れてくれ……」

 

話を戻そう。

 

「鈴羽はお手柄だったな。敵がストラトフォーだと分かったのは大きな収穫だ」

 

米軍はともかくとして、ストラトフォーに狙いを絞る事が出来る。

 

 

 

 

 

 

 

「た、た、大変だニャー!」

 

名案が出ずに悩んでいると、フェイリスの悲鳴が聞こえた。俺たちは急いで声の方へと走る。

 

「死んじゃう!真帆ニャンが死んじゃうー!」

 

何が起こった!?まさか襲撃がっ!?

 

場所は脱衣所だ。俺は躊躇することなく飛び込んだ。

 

「どうしたんだフェイリス!」

 

「ひっ!」

 

「あ…」

 

「ニャ……!」

 

目に飛び込んできたのは、一糸纏わぬ生まれたままの姿で後ろから真帆を抱きかかえるフェイリスと、一糸纏わぬ生まれたままの姿でフェイリスに身を預けている真帆だった。

 

「あ、ああ……」

 

 

 

 

俺は死んだ。

 

 

 

 

 

「本当に済まなかった。この通りだ」

 

「あ、謝らなくてもいいわ。さっきのは、あくまでも事故なんだから」

 

極度の緊張と緩和により、筋肉が弛緩してしまい、真帆は体に力が入らなくなっていたのだ。あられもない姿を見られたにもかかわらず、自分では動けなかった真帆を、お姫様抱っこでベッドまで運んだ。

 

……恥ずかしくて顔を見れない。

 

もちろん、フェイリスにも土下座した。ダルは直前で鈴羽に止められて、その姿を拝むことが出来なかった。俺にブちぎれていたのは言うまでもない。

 

「身体は平気なのか?病院に行かなくても?」

 

「もう少し休めば、回復するとおもう。心配かけてしまったわね。みっともないわ」

 

「みっともないもんか。今日みたいなことに巻き込まれれば、誰だって怖い。具合だって悪くもなる」

 

「あなたでも、怖い?」

 

「ああ」

 

「…そう」

 

俺の言葉に安心したのだろうか。真帆の表情に色が戻って来たような気がする。

 

「今夜はもう休むといいニャ。事件のこととか、これからどうするかとか、難しい話は元気になってから考えるといいニャン」

 

フェイリスはすぐにパジャマに着替え、全く気にしていない様子で涼しい顔をしていた。さすがだな……。

 

「そうね。ええ…そうするわ。ありがとう」

 

真帆が目を閉じたのを見て、俺とフェイリスは電気を消して部屋から出ていった。

 

 

「ほんっとうにすまなかった。この通りだ!許してくれ!」

 

「ニャフフ~。乙女の柔肌を見た罪は重いニャ。ナンバーワンネコミミメイドのフェイリスはみだりに裸を見せてはならないのニャ!」

 

「オカリン、まじで許さん。フェイリスたんはみんなのフェイリスたんなんだぞ!血の盟約があるんだぞ!それをこのクソ厨二病が……っ!」

 

ダルは声にならない声で怒っている。

 

「父さんには母さんがいるんだから、いちいちルミねえさんを変な目で見る必要ないだろ。それにルミねえさんもルミねえさんだ。裸を見られたくらいなんだって言うんだ」

 

鈴羽から強烈なツッコミが入るが、鈴羽よ。それはかなりズレたお説教だぞ?

 

「む……。スズニャンはもっと自分の体を大事にするべきニャ。そんなことでは淑女にはなれないのニャ」

 

「しゅくじょ……って何?」

 

「おしとやかで可愛い女の子のことだニャ」

 

「可愛い……か。別にあたしは可愛くないからそんなの関係ないよ」

 

「ぬあっ!鈴羽!自分で可愛くないとか言っちゃいけません!鈴羽は世界一可愛いんだお!世界一可愛いボクの娘なんだお!」

 

なんだか雲行きが怪しくなってきたな。

 

「お世辞はいらないよ。可愛いって言うのはルミねえさんとかまゆねえさんみたいな人のことを言うんだろ?あたしの体なんて傷だらけだし、ごつごつしてるし。それにそういうのは母さんに言ってあげなって」

 

いつか聞いたようなやりとりが繰り広げられている。

 

「ふぇ、フェイリスたん!これは重症だお!」

 

「ヤバいニャ!自覚がないところがなおさらヤバいのニャ!こうなったらダルニャン!」

 

「おう!あの作戦を発動する日がやって来たお!」

 

なんだかよく分からない2人のテンションに鈴羽が圧倒されている。

 

「お、おじさん……」

 

「鈴羽。よく分からんがあとは任せた。そして健闘を祈る」

 

俺は逃げるように、用意された寝室へと向かった。

 

 

 

「岡部様。いつもお嬢様がお世話になっております」

 

と、廊下を曲がった先で執事の黒木さんと鉢合わせた。

 

「こちらこそすみません。いつも頼ってしまって……」

 

この人はフェイリスの親代わりだ。SERNの陰謀によってなくなってしまった両親に変わって、フェイリスを育ててきた。

 

これだけ騒がしくしているというのに、小言を言うでもなく、深々と頭を下げられてしまった。

 

「お気になさらずに。お嬢様は岡部様や椎名様と一緒におられると、非常に楽しそうにしておられます。私の口からお嬢様のことを申し上げるのは気が引けるのですが、お嬢様はこういったご友人と過ごされることのないまま育ちましたので……」

 

「そんな。感謝されるようなことは何も……。フェイリスには助けられたばかりです」

 

「これはまたご謙遜を。ですが、それなら今後も、何か困りごとがありましたらお嬢様をお頼りください。きっとお嬢様も喜ばれるでしょうから」

 

それだけ言うと、黒木さんは自室へと戻っていった。

 

「俺はそんな立派な人間じゃないさ……」

 

黒木さんはもっと人を見る目を養った方が良い。

 

 

「黒木の話は終わったかニャ?」

 

「な、フェイリス!」

 

「こっちに来ようと思ったら、2人でお話してたから、出てくるタイミングを待ってたのニャ」

 

「……聞いてたのか?」

 

「フェイリスは何も知らないニャ」

 

全部聞いてたくせに、白々しい顔をしている。

 

「……さっきはすまなかったな」

 

「もういいニャ。でも、お詫びとして今から真帆ニャンのお部屋に行く事。それがフェイリスへの償いニャ」

 

「比屋定さんのところに……?」

 

「強がってたけど、かなり弱ってるニャ。ここは男らしくキョーマが話を聞いてあげるのニャ」

 

こういう気遣いがナンバーワンメイドとしての地位を確立させているのだろう。

 

「分かったよ。俺が何かの足しになるとは思えないが、そうする」

 

「キョーマはもっと自信を持つべきニャ。フェイリスはあの頃のキョーマの方が好きだったのニャ」

 

あの頃、というと鳳凰院凶真全開だったあの頃か。あの頃の俺の方が好き、と言われると、それはそれで考えさせられるが……。

 

「ありがとう。それと、何をするかは知らんが、鈴羽をあまりいじめてやるなよ?」

 

「スズニャンにはいろいろと分からせてやる必要があるのニャ♪シュタインズゲートではメイクイーンでメイドさんをやってもらわないといけニャいからニャ。そのためのレッスンなのニャ!ニャフフ~♪」

 

怪しい笑みと共にフェイリスはリビングへと戻っていった。

 

「………がんばれ、鈴羽」

 

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