STEINS; GATE ~存在証明のレジスタンス~   作:明治アル蜜柑

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真帆は結局寝付けないでいた。隣には椅子に座ったまま、寝息をたてる岡部がいる。

 

律義に自分が眠るまで傍にいてくれようとしたのだ。岡部も自分と同じように、恐怖の中にいたはずなのに、自分のために気丈に振舞ってくれている。

 

語ってくれたこれまでの経験が、いやおうなしに彼を強くしたのだろう。襲われた時だって、ただ取り乱して呆然としていた自分とは違って、ずっとずっと冷静だった。

 

そして、自分が岡部たちに加わろうとするのを、最後まで躊躇っていた。それはきっと、いや、間違いなく、真帆の身を案じての事だ。

 

おそらくもう、引き返せないところまで来ている。それなのに、岡部はまだ、真帆を巻き込まない未来があるのではないかと考え続けているのだ。

 

至や他のラボのメンバーは、紅莉栖とは直接の交流はなかった。皆が岡部に協力しているが、紅莉栖を失った悲しみを本当に共有できている者はいない。

 

だからこそ、なのだろう。

 

真帆だけは、紅莉栖を失った悲しみを知っている。苦しみを知っている。だからこそ、真帆を巻き込むまいとしたのだ。これ以上、悲しまないために。

 

「馬鹿な人……」

 

 

岡部の顔を見つめる。その寝顔は、とても苦しそうに見えた。少しでも和らげば、と思い、真帆はおずおずと体の向きを変え、布団の中から手を伸ばした。

 

岡部の手の甲にそっと触れる。

 

その手のぬくもりを、指先に感じる。

 

「紅莉栖は、あなたのことをなんて呼んでいたのかしら?」

 

ガラにもなく、そんなことを考えてしまう。

 

「岡部さん?それとも…倫太郎、だったのかな……?」

 

分からないけど、まあいい。

 

「しっかりしなさい、岡部倫太郎」

 

彼の名を呼ぶ。

 

「この私が好きになった人は、そんなに弱い男だったわけ?」

 

少しだけ、紅莉栖の話し方を意識して、そうささやいた。

 

ほんの少しだけ、苦しそうな岡部の息づかいが、楽になってくれたような、そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

1月24日(月)

 

 

「お、オカリン早いじゃん」

 

7時を少し回った頃、寝室を出るとダルと鉢合わせた。

 

「お前こそな」

 

ほとんど疲れは取れていないが、あんなことがあったばかりで気が昂っているのか、こんな時間に目が覚めてしまった。

 

「真帆たんどう?」

 

「っ……!」

 

何気ないダルの質問に、俺は挙動不審になってしまった。

 

「ん?どうしたん?もしかして良くないん?」

 

「あ、いや……そういうわけではないが」

 

昨夜、紅莉栖を殺したのは俺だと打ち明けようとして、それを止められた後、俺はあのまま椅子で寝てしまっていた。身体が痛くて目が覚めたのが朝の5時。

 

目を開けると、真帆の手が俺の手にそっと重ねられていた。おそらく俺を案じてそうしてくれていたのだろう。

 

だが、ベッドから少し離れたところに椅子を置いていたわけで。つまり真帆は布団から身を乗り出していたわけで。

 

……がっつりと見えてしまっていたのだ。

 

何がとは言うまい。

 

俺は慌てて部屋から退散し。自分に宛がわれた部屋に戻った。布団をかけ直そうとも思ったが、それによって真帆が目覚めたら気まずい事この上ないため、そのまま放置して立ち去ったのだ。

 

と、そんなことを思い出して俺は顔が赤くなってしまった。

 

「そう?それならよかったけど」

 

こんなことをこいつに知られてしまったら、ずっと擦ってくるのは目に見えている。……忘れよう。

 

 

「キョーマ、ダルニャン。おはようだニャ!もっと寝てればいいのに……少しは眠れたかニャ?」

 

リビングに入ると、既に制服に着替えたフェイリスの姿があった。

 

ネコミミもばっちり装着済みだ。それで学校に行くのか、と聞きそうになったがぐっと堪えた。どうせ聞いても無駄だからな。

 

「おはようフェイリス。おかげさまでなんとかな。フェイリスには頭が上がらないよ」

 

「そんな水臭い事は言いっこなしニャ。みんなが無事ならそれでいいニャ!」

 

本当に頭が上がらない。

 

「ところで、こんなに早くに学校に行くのか?まだ7時だろ?」

 

「学校はまだニャ。まずはルカニャンのところに行ってくるのニャ。かがニャンを迎えに行かないとニャし」

 

「あ……」

 

かがりのことはすっかり忘れていた。まゆりとルカ子は学校に行ってしまう。昨日の事があって、さすがにかがりをラボに連れて行くわけにもいかないし。

 

「でもフェイリスたん1人でだいじょぶ?ボクも行くお?」

 

「大丈夫ニャ!スズニャンが一緒に来てくれるのニャ」

 

「あー。鈴羽が」

 

「2人はマホニャンとゆっくりお話しした方がいいニャ」

 

だが、鈴羽の姿がどこにもない。

 

「スズニャンならお風呂に入ってるのニャ」

 

「な、なぬーっ!?鈴羽のお風呂!?」

 

「どうしてお前が興奮するんだ……」

 

そういえば、昨日は鈴羽に分からせる、とか言ってたな。一体何をしたんだろうか。

 

「むふふ。キョーマもエッチな想像したかニャ?」

 

「ば、バカ!そんなはずないだろ!」

 

「そんなに必死にならなくていいニャ。スズニャンの魅惑のボディを見て、興奮しない男はいないのニャ♪」

 

まぁ、ダルと違って鈴羽はスタイルがいいからな。ダルからどうやってあんな美人が生まれてくるのか不思議だが。

 

「あれだけ可愛いと、フェイリスも服を用意した甲斐があったのニャ。恥ずかしそうにするスズニャン。ニャフフ~。可愛かったニャァ~」

 

おもちゃにして遊んだ、というわけか。ご愁傷さまだ。

 

「と、おふざけはここまでニャ。かがニャンのことは任せてほしいのニャ!」

 

何から何まで世話になりっぱなしだ。

 

「キョーマは心配しなくていいニャ。気も使う必要はないのニャ。これはフェイリスがしたくてしてることなのニャ」

 

「………助かるよ」

 

「ところで、まゆしぃたちには伝えておいたほうがいいかニャ?」

 

「あ……」

 

どうだろう。昨日の事を知ればまゆりたちは心配するだろう。ルカ子なんかは気絶してしまうかもしれない。冗談抜きに。

 

「帰りは俺が迎えに行くって伝えといてくれるか?詳しい事は俺から話すよ」

 

さすがに俺は今日は家に帰るつもりだ。ラボには近づかない方が良いから、かがりも鈴羽もここに泊まる事になる。となると、ダルも泊るだろう。鈴羽はその方が守りやすいだろうし。俺までやっかいになるのは気が引ける。

 

「キョーマもここにいていいんニャぞ?」

 

「ありがとう。でも大丈夫だ。家の様子も気になるし」

 

親にもそれとなく注意喚起しておきたいしな。

 

「さて、それじゃあスズニャンが出てくるまでの間、フェイリスにも詳しい事を説明してほしいニャ。自警団の方にも話を通しとかないといけないしニャ」

 

そういえばフェイリスにはあまり詳しく話せていなかったな。何も事情を聞かずに受け入れてくれるのは、さすがフェイリスの為せる業だ。

 

「ああ。まずは…………」

 

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