STEINS; GATE ~存在証明のレジスタンス~   作:明治アル蜜柑

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「おはよう、比屋定さん。少しは眠れたか?」

 

昼前になって真帆が起きてきた。が、低血圧なのか目が一ミリも開いていない。

 

「お、おはよう……。ええ。おかげさまでね」

 

髪はボサボサで、ジャンガリアンハムスターみたいだ。もちろんパジャマ姿のままだが、フェイリスのチョイスだけあって真帆のイメージとはかけ離れた可愛らしいものになっている。普段の真帆なら顔を真っ赤にしそうだが、それにも気づかないくらい頭がボーッとしているようだ。

 

「顔を洗ってくるといい。黒木さんが朝食を用意してくれてるからな。食べれそうなら食べておくべきだ」

 

「朝食、か。朝食べるのなんて久しぶりだわ……」

 

「いつもは食べないのか?」

 

「自分一人だとどうしてもね……。用意するのも手間だし」

 

そう言いながらとぼとぼと洗面所まで歩いていく。

 

「はぁ。寝起きの真帆たんも萌えるお。フェイリスたんの家に泊まれるし、娘の可愛い姿も見れたし、ボクって勝ち組なのでは?オカリン、どう思う?」

 

安定のダルが通る。

 

「それを言わなければな。ま、お前はお前だよ」

 

「むぅ。ノリ悪いなぁオカリンは」

 

真帆が俺たちに合流するになったことはもう伝えてある。案の定だが、ダルはすごく喜んでいた。ヘンタイ的な意味もあるが、真帆は超一流の研究者であり、プログラムにも精通している。ダルとしては専門的なことを話せる相手が増えたのが嬉しいのだろう。俺はそういうのはからっきしだからな。

 

 

真帆はその小さな体のどこに入るのか、と思うくらい食欲旺盛だった。黒木さんの作る料理があまりにもおいしいというのもあるが、幸せそうに平らげていた。

 

「何から何までお世話になりっぱなしね。おかげさまで、ずいぶんと楽になったわ」

 

落ち着いたところで、真帆が真剣な顔になった。さて、そろそろ本題に入ろう。

 

「昨日の件についてだが、分かった事がある。まずはそれについて話すよ」

 

分かったのは、俺たちを襲ったのがストラトフォーであるということ。SERN、ロシアを加えて、第三次世界大戦の前哨戦が始まっていると言っても過言ではないということ。

 

「ストラトフォーか。なんだかフィクションの世界のようね。あんなことがあったっていうのに、全く実感が湧かないわ」

 

陰で暗躍する組織なんて、日常で関わることはまずない。それこそスパイ映画でしか見かけないだろう。

 

「やはり比屋定さんは、アメリカに帰るんだよな?」

 

「ええ。私にも協力させてほしいとは言ったけど、さすがに今の立場をすぐに投げ出すわけにはいかないもの」

 

ストラトフォーというアメリカの組織が出てきたことで、アメリカに帰る事を躊躇するかと思ったが、真帆は平然としている。

 

「私の心配なら大丈夫よ。余裕でいるつもりはないけど、怯えていたって仕方ないわ」

 

こちらが心配しているのを察してそう言った。さすが鋭いな。

 

「それに、レスキネン教授とレイエス教授だって白とは言い切れないでしょう?」

 

「なっ……!」

 

そこまで気づいていたのか!?

 

俺は思わずダルと顔を見合わせてしまった。

 

「岡部さんたちは、きっと私を気遣って言わないだろうと思ったのよ」

 

「どうしてその2人を……?」

 

「橋田さんのバイト先で“紅莉栖”から着信があったでしょう?あの子は律義に約束を守るわ。あの子からはかけて来ないって約束したもの。それと私のホテルとオフィスが荒らされたこともそうね。場所を知っているのは教授たちだけだし、タイミングからして内部犯でないとおかしいわ。確証はないけれど、これが理由よ」

 

「おうふ……」

 

これだけは伏せておこうと話していたが、真帆が自分でそれに気づくとは……。

 

「……それでもアメリカに?」

 

危険があると分かった上で、単身アメリカに戻るというのか。

 

「帰らない方が危険よ。ノートPCが破壊されたことで、私や岡部さんの優先度は低くなったはず。それなのに、このタイミングで帰らないなんて言い出したら、また疑われることになる」

 

そこまで……。

 

「だからタイムマシンの場所は聞かないわ。私に万が一があって、秘密を知られてしまったとしても、タイムマシンの場所を知らなければ答えようがないわ。それに、レスキネン教授とレイエス教授に裏の顔がないのであれば、何の問題もないのだから」

 

建前だと分かった上で、真帆はそう言った。

 

「オカリン」

 

「……ああ」

 

それが今思いつく最善であるのは間違いない。

 

確実に巻き込みながら、それでも巻き込みたくないというのは俺のエゴだ。彼女の覚悟に対して失礼だろう。

 

「分かった。それならば真帆。たった今よりお前にラボメンナンバー009の栄誉を与える。以後、このラボの所長にして狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真の手足となり、俺たちのオペレーションに参加するがいい!」

 

「…………はい?」

 

鳳凰院凶真初体験の真帆は戸惑っている。というか呆れている。ゴミを見るような目で俺を見ている。

 

「おお。久々にオカリンの本気を見たお。真帆たんやったな!これで真帆たんもラボメンなのだぜ!」

 

「ら、ラボメン?」

 

思いがけないダルの追撃にさらに戸惑う真帆。ダルもそんな真帆を置き去りにして一人で盛り上がっている。

 

「あれ?そういえば004から008までがいないような気が……。オカリン、数え間違えたん?」

 

「馬鹿を言うな頼れる右腕(マイ・フェイバリット・ライトアーム)よ。この俺が数え間違いなどするはずがない。004は紅莉栖。005は桐生萌郁、ルカ子が006で、フェイリスが007。鈴羽が008だ!」

 

萌郁には昨日襲われたばかりだが、まぁいい。あいつはかつてα世界線でラボメンとし、一度は許したのだからな。シュタインズゲートに到達すれば、奴もまたラボメンに入れてやらねばならん。

 

「そして真帆が009。かがりが010だ。この10人でもって俺たちはシュタインズゲートを目指す。いいな!?」

 

「……………」

 

か、構わん。俺は続けるぞ!

 

「俺だ……。これより、俺たちは新たなるオペレーションを実行に移す。危険はないのか、だと?この俺が送りこんだエージェントがミスなどするはずがないだろう。そして覚えておけ。深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗き込んでいるのだ。連中にはそれを教えてやらねばならん。幾重もの罠が張り巡らされていようと問題ない。奴ならきっとやりとげてくれるさ。俺たちはただ信じて待てばいい。ああ。健闘を祈ってくれ……エル・プサイ・コングルゥ」

 

スマホを耳に当て、恥ずかしいのを必死で堪えながら俺はやり切った。

 

「……………これは、何?」

 

「うぉぉぉお!キタコレ!久々の定時報告だ!やっぱオカリンはこうじゃないとな!俺たちに出来ないことを簡単にやってのける。そこに痺れる憧れるぅぅ!!」

 

「岡部ではない。鳳凰院凶真だ!」

 

まぁ、この半年、鳳凰院凶真は抑えめだったからな。俺を慕うスーパーハカーのテンションが振り切ってしまうのも仕方のない事だ。

 

「真帆」

 

「…………」

 

「真帆」

 

「…………」

 

「真帆よ。頼むから返事をしてくれ」

 

「何よ。ほうおういんナントカさん?」

 

「鳳凰院凶真だ!」

 

「…………」

 

「ゴホン………。俺はお前をヴィクトルコンドリア大学という魔窟にスパイとして送り込む。特急のエージェントだ。失敗は許されん。必ず生きて帰ってこい」

 

「…………」

 

「生きて帰ってこい!」

 

「……はぁ。了解しました。所長」

 

う、うむ。これでいいのだ。

 

 

 

 

 

 

「橋田さん。これから具体的にはどうするの?」

 

「お、おい……」

 

俺とは目も合わせてくれない。

 

「とりあえずは電話レンジ(仮)を完成させたいんだお」

 

「電話レンジ?」

 

「(仮)だって。あー、要するにDメールを送る装置だお。つってももうDメール自体は送れる段階まで出来てる。あとはタイムリープの方なんだよね」

 

「α世界線で紅莉栖が作ったっていう……」

 

「必要なのは記憶のデータ化とデータの超圧縮。圧縮はSERNのLHCを使わせてもらって、ブラックホールを生成するから余裕だお。過去に転送するのも電話レンジ(仮)があるから問題なし」

 

「あとは記憶のデータ化ね」

 

「そうそう!そっちを真帆たんに頼みたいんだお。VR技術ってやつが必要になるし、牧瀬氏の研究まで組み込まなきゃいけんし。ボクらにはお手上げってわけ」

 

「なぁ。おいってば」

 

真帆は俺などいないかのようにダルと話を進めている。

 

「それについては任せてちょうだい。『Amadeus』の技術をそのまま流用すれば問題なく出来るわ。私もプログラムはある程度書けるけど、最終的には橋田さんの仕様に合わせた方が良さそうよね。癖が強いってよく言われているのよ」

 

「ある程度とか謙遜し過ぎだお。『Amadeus』作ったんっしょ?ボクなんてハッキング専門だから、プログラムはあんまりなんだよね。だから真帆たんのアドバイスがほしいわけだが……」

 

「それならビデオチャットか何かで定期的に連絡を取りましょうか」

 

「あ、それいいじゃん!じゃあ絶対盗聴されないように回線作らんと。ボク、後で必要なパーツ買ってくるお!」

 

専門家同士なだけあって、話が弾む。

 

そんなに鳳凰院凶真がいけなかったというのか?あれは場の空気を和ませるための必殺ジョークだと言うのに。真帆はアメリカ育ちのくせして、メリケンジョークの一つも分からんとは……。

 

とはいえ、俺が入れる余地はなさそうだ。

 

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